紙の本
ニーチェ入門書として自分としては得たもの非常に大の一冊
2022/05/12 22:19
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Haserumio - この投稿者のレビュー一覧を見る
手に取ってみてよかったと思えた一冊。ニーチェの著作を読みたいと思い、肩慣らしというか本番前のウォームアップ、ないしは本チャンへの橋渡しとして一読。これまで俗流的にしか理解していなかったニーチェ哲学の基本概念である「奴隷道徳」や「永劫回帰」、「超人」などについて、まずは簡潔にして明快な捉え方を理解することができました。
「黒哲学(実存哲学)は、「本質についてばかり考える既存の哲学(白哲学)」を批判するために生み出された反逆の学問である」(41頁)。
「人間は実存(現実の存在)であり、生まれながらの「生きる意味」など持っていないが、すべてに意味(価値)がないとしてしまうと、人間は「ニヒリズム(虚無主義)に陥って「生の高揚(充実感)」を失ってしまう」(71頁、背後世界=社会から押し付けられた常識とか価値観、末人=忙しく働いて暇を潰すだけの人間)。
「神は死んだ。神は死んだままだ。そして我々が神を殺したのだ」(66頁、ニーチェの言葉、神を信じられなくなった=人間に生きる意味を与えるような絶対的な価値観は、遅かれ早かれ、いつか壊れるということ)
「奴隷にされている弱い民族がいた。その民族は弱いため、強いものに復讐できなかった。そこでその弱い民族は、空想上で復讐を果たすため「強いのが悪い、弱いのが善い」という価値観を作り出し、この架空の価値観が宗教を通して世界に広まってしまった。これが道徳の起源である」(93頁、道徳の起源としてのルサンチマンとキリスト教によるその伝播)。
(キルケゴールの「絶望は死に至る病だ」について)「「死にいたる」は、「致命傷」って意味じゃなく「死ぬまで続く」という方の意味ね。つまり、人間は、絶望という病を死ぬまで抱えて生きている存在なんだ」(110頁、単なる実存=その辺に転がっている「石ころ」と同じで、いつかは死んで消えていくだけの存在)。
「「生に意味がないなら、死のう」という発想自体、「死に対して意味を見出している」よね。たとえば、「死はこの無意味な生から解放してくれる唯一の救いだ」みたいな感じ。でもね、ニーチェは、死の意味すら否定しているんだ!」(113頁)
「「永劫回帰」は、「最強最悪のニヒリズムの世界」であり、宇宙全体が永遠に同じことを繰り返すことである」(175頁、シーシュポスの神話、人類誕生から最後の審判へという単線の時間ではなく円としての時間論、それにしても評者は本書で「ビッグクランチ理論」(137頁)というのを初めて知りました)。
(すべてのことに有難味のない)「「永劫回帰」を乗り越えるには、「今、この瞬間を力強く肯定して生きよう」という強い意志が必要である。また、そういう意思を持つ人間を「超人」と呼ぶ」(同頁)。
「事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである」(199頁、ニーチェの言葉、環世界論とも通底か)
尤も、永劫回帰の議論に従うと、生の充実を得るという一過程もまた無限に繰り返され(得)ることになり有難味はあるのか(未来は依然として無価値ではないか)という話になりそうだが、この議論そのものがニーチェいわく「聖なる虚言」(141頁)とのことなので、その境地にまで至れば、「自分の人生を肯定し、もう、一度同じ人生を繰り返してもかまわない、そう思えるまでになれ」る(246頁、即ち、無限ループの外に出る)ということなのでしょうね。
電子書籍
ニーチェの哲学書と併せて読むべき最高の書
2019/08/19 21:39
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ツァラトゥストラ」を読んだ経験から、ニーチェを嫌っていたが、代表的哲学家としてその哲学が取り上げられることが多く、理解を深めたいと思っていた。
ニーチェの書籍の中で購入の決め手となったのは、著者飲茶氏の書籍「史上最強の哲学入門」シリーズは哲学の心得がない者でも本質をわかりやすく説く良書であったためである。
わかりやすさという点では紛れもなく当たり本であった。
話は悩みを抱えた架空の女性と著者との対話形式で進み、初心者が抱きやすい疑問を丁寧に抑えつつ展開されているので読んでいて引っかかりがなくスッキリと読むことができた。
なりより嬉しかったのは、私自身が「ツァラトゥストラ」を読んで感じた疑問、誤解を解消できたことである。
私が理解できていなかったニーチェの諸概念を挙げる。
・ニーチェの差別的発言
「ツァラトゥストラ」の物語では、戦争を必要悪だと述べていたり、あらゆる人々に対して軽蔑的な発言が度々繰り返されるため、独善的な差別主義者だという印象を持ち私がニーチェを嫌う最大の理由であった。しかし著者はその言葉の裏にニーチェの同情を最低なものだとする信条があり、人々を奮い立たせるために敢えてそのような表現をしていると分析している。もしかしたらニーチェは本当に浜田省吾なのかもしれない。
・ニヒリズム
ニーチェの永劫回帰の世界観がニヒリズムだと勘違いしていたが、神が死んだ世界で、人々が陥るであろう心理状況を指していることが分かった。
・永劫回帰
そもそも永劫回帰が何かということは「ツァラトゥストラ」では説明されておらず、ずっと疑問であったが、本書でニーチェの想像しうる最悪の世界であるということが分かった。そして永劫回帰を肯定することこそが実存哲学の答えだと知り、自分にとって革新的気づきだった。
・大いなる正午
概念としては正直印象になかったが、「ツァラトゥストラ」の締めくくりの部分がずっと心に引っかかっていたいた。本書でその意味するところが分かり、なぜ"あのような"ラストになっていたのか溜飲を下げて納得することが出来た。
・力への意志
「ツァラトゥストラ」を読んで、この言葉自体というよりはそのメッセージが印象深かった概念である。「赤子の我欲する」とは何なのか、なぜこの表現が頭に残っていたのか、それは多くを否定するニーチェが肯定するに値するものであったからこそだと思う。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ハム - この投稿者のレビュー一覧を見る
哲学は、難しいと思っていましたが、これは読みやすくて理解しやすい工夫をしっかりとしてくれていて、理解できました。
投稿元:
レビューを見る
さすが飲茶さん、安定の分かりやすさ!「白哲学(本質)」「黒哲学(実存)」という表現が理解しやすくてありがたかったです。図解も豊富。また、「哲学を知ることが人生にどう影響するのか」を体験談から綴った5章には胸を打たれました。明日どころか、今すぐ役立ちます。オススメです!
投稿元:
レビューを見る
飲茶さんの哲学本は、ほんとにおもしろい。
哲学本の中でも、読みやすく、すんなり心に入ってくる。
今の時代にこそ、ニーチェが必要。強く生きていけそう。目指せ、超人w
投稿元:
レビューを見る
ニーチェの著作を読む際に必須の
奴隷道徳、永劫回帰、大いなる正午
などのキーワードがわかりやすく説明されている。
著者の体験も交えての話で、情熱が伝わってくる。
ニーチェの他の著作も読みたくなった。
投稿元:
レビューを見る
これはズガンときた。対話形式で進むお話は、するすると頭に入ってくるし、なにより内容がおもしろい! 流石の飲茶さんである。「現代社会を生きる人への一服の清涼剤」的な意味合いではなく、「あぁ苦しい」と思う人に読んで欲しい。
投稿元:
レビューを見る
哲学関係の書籍を他にも執筆している飲茶さんのニーチェに絞った入門書。
ニーチェの書籍は読んだことがないが、「末人」「背後世界」「永劫回帰」など重要なキーワードについて一通り解説していて、この一冊で大体読んだ気になれる。
著者の学生時代の辛い体験とニーチェとの出会いを絡めていてそこにもぐっとくる物があった。
またこれは個人的なことだけど、学生時代に自分が考えていたこととこの本で解説されていたことが思わぬ一致を見せることが多々あり、少し驚くとともに、一回ちゃんと読まないとなと思わせてくれた。
投稿元:
レビューを見る
ニーチェの哲学書と併せて読むべき最高の書。
「ツァラトゥストラ」を読んだことがあり、ニーチェを嫌っていたが、代表的哲学家としてその哲学が取り上げられることが多く、理解を深めたいと思っていた。
ニーチェの書籍の中で購入の決め手となったのは、著者飲茶氏の書籍「史上最強の哲学入門」シリーズは哲学の心得がない者でも本質をわかりやすく説く良書であったためである。
わかりやすさという点では紛れもなく当たり本であった。
話は悩みを抱えた架空の女性と著者との対話形式で進み、初心者が抱きやすい疑問を丁寧に抑えつつ展開されているので読んでいて引っかかりがなくスッキリと読むことができた。
なりより良かったのは、私自身が「ツァラトゥストラ」を読んで感じた疑問、誤解を解消できたことである。
私が理解できていなかったニーチェの諸概念を挙げる。
・ニーチェの差別的発言
「ツァラトゥストラ」の物語では、戦争を必要悪だと述べていたり、あらゆる人々に対して軽蔑的な発言が度々繰り返されるため、独善的な差別主義者だという印象を持ち私がニーチェを嫌う最大の理由であった。しかし著者はその言葉の裏にニーチェの同情を最低なものだとする信条があり、人々を奮い立たせるために敢えてそのような表現をしていると分析している。つまりは
「敢えて言おう、カスであると!」
ということであろうか。
・ニヒリズム
ニーチェの永劫回帰の世界観がニヒリズムだと勘違いしていたが、実際は神が死んだ世界で、人々が陥るであろう心理状況を指している。
・永劫回帰
そもそも永劫回帰が何かということは「ツァラトゥストラ」では説明されておらず、ずっと疑問であったが、本書でニーチェの想像しうる最悪の世界であるということが分かった。そして永劫回帰を肯定することこそが実存哲学の答えだと知り、自分にとって革新的気づきだった。
・大いなる正午
正直な話概念としては印象になかったが、「ツァラトゥストラ」の締めくくりがずっと心に引っかかっていたいた。本書でその意味するところが分かり、なぜ"あのような"ラストになっていたのか溜飲を下げることが出来た。
・力への意志
「ツァラトゥストラ」を読んで、この言葉自体というよりはそのメッセージが印象深かった概念である。「赤子の我欲する」とは何なのか、なぜこの表現が頭に残っていたのか、それは多くを否定するニーチェをして肯定するに値するものであったからこそだと思う。
以上のようにニーチェの重要な諸概念が抜かり無く抑えられていたこと、なおかつ相談者の女性との軽快なトークが魅力だった。
個人的には、飲茶さんのルーツが知れたことが一番嬉しかった。
投稿元:
レビューを見る
飲茶氏の『史上最強の哲学入門』を読み終えて、同書のニーチェ(第三ラウンド 神様の『真理』の最後部分)の項が、前項のトマス・アクィナスに関する"神学 vs 哲学論争"の解説から続いた形で、多くのページを割いて熱く解説されていたため、同氏の著したニーチェに特化した解説本である本書を手に取ってみた。
本書は、入門書によくある構成ではあるが、著者と哲学初心者の女の子(アキホちゃん)との対話形式によってニーチェ哲学のエッセンスを読者に伝える方式を採っている。
語り口調は分かりやすさを優先して現代風で平易な表現であるものの、「哲学とは何か」という、知っていそうで実は理解できていないような基本事項から、「背後世界」「ニヒリズム」「末人」「ルサンチマン」「奴隷道徳」「超人」「永劫回帰」「大いなる正午」「力への意思」といったニーチェ哲学独特の言葉に至るまで、図解入りで中高生でも理解できるレベルで解説されている。
さらに最終章では、筆者の身の上話と過去の体験談を基にして、ニーチェを学んだきっかけから自らの生きる意味を獲得するまでの経緯を、リアルに包み隠さず赤裸々に述べられている。
この哲学入門書には有り得ない"著者のリアルな生き様の開示"が、読者との距離を一気に縮めて哲学を身近なものに感じさせるとともに、読者が考える「理想の生き方」や「信じて疑わない価値観」に対して強烈に投げかけてくるのである。「その生き方や価値観は誰かから押し付けられた物ではないのか?」と。
自分は転職を何度か繰り返した後に起業し、40代半ば過ぎに大学院の博士後期課程に在籍しながら、2019年に創業から10期目を迎え、いわゆる世間一般の社会人とは大きく異なった道を歩んできた。そんな自分が人生の折り返し地点を過ぎ、今後の半生の生き方や方向性を考えた時、ニーチェの「奴隷道徳」や「超人思想」、「力への意思」といった考え方は、自分のこれまでの人生を肯定し、さらには今後の人生の指針を与えてくれたように感じた。
特に、AIが発達し社会に急速に浸透していくであろう2020年以降の時代において、人間の存在意義を際立たせ、人間を人間たらしめるものとしては芸術(=Art)が特に重要になってくると感じている自分にとって、「力への意思(より優れたものを目指したいという欲求)を具体的に現実化する行為が「芸術」である」としているくだりには非常に共感する。
自分を取り巻く社会通念や価値観、他人からの評価に関係なく、自分の追い求めるものや自分がやり続けてきたものを芸術の域にまで高めることこそ、生を充実させることである、と。
2010年代が終わり、そして元号が改まり、さらに自社が10期目の節目を迎えた今だからこそ、本書は次の時代に向けて何が出来るか、何を備えれなければならないのかを真剣に考えさせてくれた一冊であった。
今後も本書を時折読み返しながら2019年を振り返り、己の成長度合いを再認識していきたい。
投稿元:
レビューを見る
ニーチェの代表的な考え方を理解できた。奴隷道徳に関しては強く共感できるところがあり実体験から"神は死んだ"を想像できた。
投稿元:
レビューを見る
ニーチェについて、ぱっと概念を理解できるようにまとまっている本。どういうことをニーチェが言っていたのか、などをいろんな視点で見ることが出来るので、単純に有名な言葉だけでなく背景とかも理解できて面白い。まぁ、こういう話は一度読んだだけで完全に理解できるわけでもないので、何回か復習して読んだ方がいいかとは思う。あと、著者がどうしてニーチェに出会ったのか、という話もあって、単純に知識だけではないところが良いかと思う。
投稿元:
レビューを見る
ニーチェの思想が分かりやすくコンパクトにまとめられており、哲学を学んだことの無い私が読んでもニーチェの思想を理解することが出来ました。また、現代人が何故こんなにもニーチェに惹かれるのかという個人的な疑問も本書を読んで解決しました。
社会が作りあげた価値観に振り回されず、今を肯定して力強く生きよう。超人を目指そう〜!
投稿元:
レビューを見る
同じく #飲茶 さんの #史上最強の哲学入門 から興味を持った #ニーチェ について、同氏の入門書。最終章のまとめにその要諦がまとめられている。
人間は社会から押し付けられた「架空の価値観」に振り回されているが、そもそも人間は意味もなく世界に放り出された存在で価値などなく、そんな価値観に囚われる必要はない。しかしそうなると全ての価値は否定されてしまう。自分の意志で「今この瞬間」を肯定して生きよう!
投稿元:
レビューを見る
ニーチェの哲学についてザックリと理解したい人の入門書、としても分かりやすくて良いが、それ以上に「良質な自己啓発書」のような価値もある本だと思った。
『嫌われる勇気』のアドラーじゃなくてニーチェ版みたいな。対話形式なところも似ている。
豊かになっている分仕事や働き方、生き方に意味を見出そうとする人が多い現代人はこの本で救われる人も多いのではないだろうか。
飲茶さんの本は本当に面白いなあ。