電子書籍
読後感が爽やか
2020/09/22 15:35
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投稿者:みぽこぽこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
好きな著者の本というだけで読み始めたのですが、あっという間に引き込まれていました。何度も緩んだ涙腺は、気持ちいい読後感へと続きます。出会えて良かったと思える1冊になりました。
紙の本
作者の真骨頂
2019/12/01 20:47
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投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
気楽な第二の人生を送るつもりだった隠居がひょんなことから関わる事になった子供たちの物語。
子供たちの生き生きとした描写、商売の有りようの面白さ。
商いと子供たちを書かせたら西條さんの右に出る者はないと再認識。
西條さんのこの路線、大好き!
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巣鴨で六代続く糸問屋の嶋屋。店主の徳兵衛は、三十三年の働きに終止符を打ち、還暦を機に隠居生活に入った。人生を双六にたとえれば、隠居は「上がり」のようなもの。だがそのはずが、孫の千代太が隠居家を訪れたことで、予想外に忙しい日々が始まった!千代太が連れてくる数々の「厄介事」に、徳兵衛はてんてこまいの日々を送るが、思いのほか充実している自分を発見する…。果たして「第二の双六」の上がりとは?
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身代を息子に譲って隠居した徳兵衛は、商売一筋にやってきたので、隠居して間もないというのに、その隠居家で無聊をかこつ有様であった。そんな折やってきた孫の千代太が、やさしい気性ゆえに、さまざまな厄介事を運び込んでくるようになり、最初こそは疎んじていたが、次第に抜き差しならぬ状況になり、さらには、千代太が連れてきた子どもたちに触発されるように、新しいことを考えついては愉しむようになっていくのだった。徳兵衛の変化や、千代太や子どもたちの成長、妻のお登勢との関係など、興味深い要素は満載である。なにより、人生というものの神髄が語られているようで、得心がゆくことも多々ある。文句なく面白い一冊である。
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初出 2017〜18年「公明新聞」
文句なく面白い。笑えるし泣ける。
商売一筋の厳格な糸屋の主徳兵衛が隠居して、隠居所に引きこもったが、心優しい8歳の孫の千代太が、「かわいそうな」犬、猫、欠食の兄妹を、寂しくて「かわいそうな」おじいさまの隠居所に連れてくる。
徳兵衛は商人の心得を教え込み、貧しい者に手を貸すのをやめさせようとするが、どんどん巻き込まれていき、隠居所は手習い所になり、組紐の工房になり、子供芝居の稽古場になる。
徳兵衛は人を助けることが経済を回すことになると気づいて行き、初めて商売が楽しいと感じ、今まで心が通じていなかった人々と心が通じていく。
続きが読みたいのだが、徳兵衛さん亡くなっちゃいましたね。
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西條さんやっぱいいねえ
最後にはお登勢さんが3人組を懲らしめてくれると期待していましたが、やり返さずに自分たちで新たな道を切り開いて行くところに意味があるんでしょう。銀さんが捕まってどうにも困った時、「ゴメスを出せ!」と思ったのは私だけかな?
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読み進むうちにどんどん引き込まれていきました。
糸問屋の六代目徳兵衛が隠居してからのお話。
孫の千代太が徳兵衛を巻き込んでいきます。
徳兵衛が千代太に、そして千代太が徳兵衛に感化されお互いが成長していきます。
とても心に残るいい本でした。
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巣鴨で六代続く糸問屋の嶋屋。店主の徳兵衛は、三十三年の働きに終止符を打ち、還暦を機に隠居生活に入った。人生を双六にたとえれば、隠居は「上がり」のようなもの。だがそのはずが、孫の千代太が隠居家を訪れたことで、予想外に忙しい日々が始まった!千代太が連れてくる数々の「厄介事」に、徳兵衛はてんてこまいの日々を送るが、思いのほか充実している自分を発見する…。果たして「第二の双六」の上がりとは?
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隠居して家移りもした。これからは悠々自適の隠居生活・・・?
おもしろすぎて一気に読んでしまった。
子供達特有の言いようと、そこを収めていく隠居さんがさすが。
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巣鴨で六代続く糸問屋の嶋屋。店主の徳兵衛は、還暦を機に隠居生活に入った。
静かな時間を過ごすつもりが、孫の千代太が隠居家に訪れたことから、厄介ごとが舞い込んでくる。人生の「第二の双六」の賽を振ってしまった徳兵衛。心優しい千代太がかわいくて、情が幸を生む。読んでいてほっこりとする、西條奈加さんが描く時代物。今回も楽しませていただきました。
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のんびりした隠居生活のはずが,孫の千代太の優しさからの頼みごとがどんどん膨らんで,いろんなことが大きく育っていくところ,手習いから始まって,組紐の立ち行き,子ども芝居や商売の工夫,それらがお互いを成長させていく.お見事というしかない人物の動きと口上,涙あり笑いありの物語.本当に面白かった.
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読み初めは、こんなじいさま嫌だ~、めんどくさいよ、と思ってたんですが、子どもたちに振り回されて、さすがのご隠居様も形なし状態にはなかり笑えました。しかも、なんだかんだで女性の手のひらで踊らされてる様子もおかしくて。タイトルの『隠居すごろく』って、本当にうまいタイトルつけたなと思いました。子どもたちが隠居家に通うようになって、すさんだはすっぱな感じがとれていって、明るく希望を持っていく様子が本当に嬉しくなり、ホロリときました。現代にも置き換えられそうな物語だったけど、やっぱり人とのつながりにしろ、商売のことにしろ、現代だと難しいのかなと思いました。寂しいけど。
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商売に厳しく、細かいことまで目が届き、厳しく怖いそんな6代目の店主が還暦を迎え、ある日隠居を宣言する。
糸問屋「嶋屋」は大店とは言えないまでも堅実に7代目に引き継がれた。
隠居、徳兵衛は、女子供でも歩けるほどの近くに、丹念にリサーチした百姓家を隠居屋とした。
妻のお登勢は、おっとりした跡取りの嫁に、まだまだ助けて欲しいと、嶋屋にとどまる。
あんなに、恋い焦がれた隠居の生活。
早くも一月で飽きてきた頃、孫の千代太が女中とやってきた。誰にでも何にでも優しい千代太は初めは犬や猫を拾っては徳兵衛を閉口させたが、綱吉の例をとって説明し、人助けができるように、と諭す。
ところが千代太は次の日から三日も何も食べていない、しらみがたかっているような貧乏人の子供を連れてくる。
徳兵衛の人生は、お家を大事に、無駄遣いもせず、商売仲間とも遊ばないという、石橋を叩いて渡るような堅実な生き方をしてきた。
8代目を継ぐはずの、千代太の商いの勉強をさせると決めた。
千代太にわかるように諭し教えるようになると、徳兵衛は商いについて、深く考え直すようになる。
余計なことには耳を貸さなかった今までとは違い、失敗しながらも、千代太に理解させ納得させ、一つづつ、貧しい子らの家族の生業が、立つようにと、工夫をする。
千代太を師範にして寺小屋を始め、できることを考えて協力して、少しでも収入が立つようにと。。。
結果的に、いつの間にか貧しい人々が十八人も集うような家に。そして徳兵衛も今まで感じなかったような幸福感を感じるようになる。
いつになっても、成長することはできる、いつ賽が投げられるか?どこがターニングポイントになるのか?
最後までワクワクするお話でした。
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店を息子に譲り、静かでのんびりした隠居生活を始めようとした徳兵衛。
しかしその思惑は、隠居所に孫の千代太が現れたことから大きく外れていく…。
西條さんらしい、楽しくテンポよく展開していく作品。
最初は口うるさく融通の利かない老人だった徳兵衛と、お坊ちゃんで優しいだけが取り柄の千代太が段々変わっていくというベタな展開ではあるものの、これまで店を守るためだけの商いをしてきた徳兵衛が隠居だからこそ出来る自由な商いの楽しさを知り、千代太もまた同年代の子供たちとともに商いのアイデアを捻り実行し実際にお金を手にして商いの楽しさを知るところは面白い。
またこれまで施しが大嫌いだった徳兵衛が、実際にその日暮らしの親子たちに接することにより、怒鳴りつつも手も差し出すようになるのも良いし、千代太もまたその日暮らしの子供たちと共に商いを学ぶなかで施しではない人助けを知るのも良い。
偏屈な老人と子供たちの取り合わせは楽しい。なんだかんだで子供には勝てないし、子供たちも老人に学ぶ。
周囲の人々も良いし、これぞ活きた学問だろう。
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巣鴨で六代続く糸問屋の嶋屋。店主の徳兵衛は、三十三年の働きに終止符を打ち、還暦を機に隠居生活に入った。人生を双六にたとえれば、隠居は「上がり」のようなもの。だがそのはずが、孫の千代太が隠居家に訪れたことで、予想外に忙しい日々が始まった! 千代太が連れてくる数々の「厄介事」に、徳兵衛はてんてこまいの日々を送るが、思いのほか充実している自分を発見する……。
書評は高い。でも「隠居すごろく」というタイトルと表紙絵に引くところがあるなぁ、孫と祖父のハートウォーミングストリーだったら嫌だしと思いながら図書館に予約を入れました。が、いい意味で予想を裏切りました。そんな単純な物語ではなく含蓄のある好著でした。
優しい孫の千代太が、新しくできた友人・勘七の家が貧乏で可哀想だとぽろぽろ涙をこぼしながら、何とか援けられないかと徳兵衛に頼む。徳兵衛はそれは憐れみをかけてるのと同じで、腹を空かした動物を拾って飼うのと同じことだ。友人を見下しているのに等しいと、教え諭す所から始まった。先生が怖くて手習い所へ通えない千代太に、そんなおまえを可哀想だと人に言われてどんな心持がするかと投げかける。徳兵衛さん、す、凄いぜ! それだけでなく、幹太の困窮している母親が組み紐仕だったことを知り、組み紐商いへと発展させて経済的な基盤を作るように仕向けて行く。幹太だけでなく似た様な境遇の子供たちで隠居屋は大所帯となる。
徳兵衛も隠居するまでは代々続いた暖簾を守る商いしかやって来れず「商いは楽しい」と思えなかったのが、攻める商いをやれ、商いの醍醐味を再発見する。
徳兵衛と千代太の両者は相まって相乗効果を生み出していくのだ。
小説背景の頃は経済がエコノミック(economic)となる転換期だったのだろう。それまで経済は「経世済民」と言われていた。唐の古い書物にある言葉で、世を治め民の苦しみを救うことを意味し、元々は治世で政治や行政の在り方を示唆していたが、貨幣の流通が盛んになると意味合いが変わってきて、生産や消費、売買などを指すようになった。「経済とは金と人をまわすことで民の助けとなり得るもの。商人はその担い手でなくてはならない。それが私の矜持」と、徳兵衛が胸を張って応えるようになったのは、どうして千代太のおかげだろう。
子供らの活躍も鮮やか。近くの王子権現に参詣する人らの荷物運びや道案内をやって糊口をしのいでいたが、横やりが入って商売敵が現われる。それに抗して寺社の縁起芝居を打ちお客を獲得し、さらには参加した人に組み紐をプレゼントする案を出す。お仕事小説の手本のようだ。芝居の脚本を書く立作者など「 渦 妹背山婦女庭訓 魂結び」の世界観に再会できたようで愉しかった。
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嶋屋徳兵衛(しまや とくべえ)は糸問屋の六代目あるじ。
このたび、隠居して、店の主の座をを息子に引き継ぐ、と宣言した。
長年、手堅く商売に励み、代々続いた暖簾を守りぬいた。
幼い頃から商人として、父親に厳しく躾けられ、趣味も持たず仕事一筋。
隠居したら好きなことを思う存分にしよう!
と楽しみにしていたのだが…
"仕事人間で家族を顧みなかった男の定年退職後"
テーマは現代にも置き換えられる。
仕事人間?
趣味が無かった?
やばいぞ、ボケるぞ、家族に邪魔にされるぞ―――!
元百姓家の大きな家を買い取り、まだ大おかみとして頼りにされている妻とは別居。
何もしない生活と静かな自然を楽しむが、ひと月で飽きる。
そんな徳兵衛の元に、嵐を呼ぶ(!)、孫の千代太が参上!
次々と人助けと事件の渦に巻き込まれ…
あ~れ~…とか言いながら渦潮でくるくる回ってるじじさまが目にうかぶような…
とにかく退屈しない。
困っている人を見ると放っておけない、純粋で優しい、孫の千代太、
隠居屋で徳兵衛の世話をするベテラン女中・おわさもとってもいいキャラ。
「貧乏は怠慢の報い」と冷たく突き放すばかりだった徳兵衛も、庶民の様々な事情に触れて、変りはじめる。
隠居で「上がり」だったすごろく=人生ゲームの二枚目が始まった。
一回休みも、三マス下がるも普通にありますぞ!
釣りも俳句の会も、お茶屋遊びも、結局、性に合わなかったのだ。
自分は根っから商売が好きだった。
「リタイア後、得意な事を生かして地域の役に立ちませんか?」
地元の広報誌などで見かける言葉。
それが、飛びきり面白い小説になった
すごろくに「上がり」はなく、誰かに引き継ぎが出来るのは幸せなことである。