読割 50
電子書籍
吉岡清三郎貸腕帳
著者 犬飼 六岐
依頼人からの無理難題を解決するのは、おのれの腕1本のみ。京流の剣の達人にして、まだ見ぬ伝説の強敵と対峙することを夢想し、胸を踊らせる。だが普段は、ひたすらに不機嫌。「2」...
吉岡清三郎貸腕帳
ワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
吉岡清三郎貸腕帳 (講談社文庫 吉岡清三郎貸腕帳)
商品説明
依頼人からの無理難題を解決するのは、おのれの腕1本のみ。京流の剣の達人にして、まだ見ぬ伝説の強敵と対峙することを夢想し、胸を踊らせる。だが普段は、ひたすらに不機嫌。「2」という数字とお人好しは、大嫌い。雇われるのはもちろん、我慢ならない。豪快すぎる男の生き方を描いた、7話を収録。期待の新鋭が放つ、痛快時代小説。剣の達人にして、ひたすら不機嫌な男が己の力で無理難題を解決する!
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
小分け商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この商品の他ラインナップ
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
武蔵のせいで一門断絶となった吉岡の嫡流が活躍。ハードボイルド風エンターテインメント時代小説。
2011/12/08 18:32
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
おれは吉岡清三郎。貸腕屋をやっている。
腕を元本として貸しつけ、返却の時に利息を取る。
言ってみれば、金貸しの親戚のようなものだ。
利息は、相手が誰であろうと容赦なく取り立てる。
利息の形に、おさえという小娘を下女として働かせているが、同情からじゃない。
おさえを女郎屋へ売り飛ばせば、複利すら払えないこいつの父親が首をくくりかねなかった。
利息を完済する前に成仏されたのでは、こっちが浮かばれない。
「お客さまです」
噂をすれば、だ。相変わらず陰気な声を出す。
よく働くが、作る飯も不味い。おれは味にうるさいのだ。
さて、今度の客も気にくわなければ追い返してやる。
さっきも勝二とかいう小悪党を追い返したばかりだ。
おれは『二』とつくものが嫌いなのだ。
* * *
主人公の設定が面白い。
主人公の吉岡清三郎は、なんと『一乗寺下り松の決闘』などで宮本武蔵に破れ、一門断絶となった吉岡の嫡流なのだ。
最近では、色々と武蔵伝説の真実が明らかになりつつあるが、本書では吉岡側の反論も描かれていて、なかなか興味深い。
そんないわくを持つ清三郎は、仏頂面をしたハードボイルドな男である。
嫌いなものには腕を貸さず、利息の取り立てに容赦なく、味にもうるさい。
しかし、ハードボイルド一転、意外な一面も魅力的である。
陰気な下女おさえには、なぜだか弱い。
辛気くさいとぼやき、飯が不味いとこぼし、冷たく接するものの乱暴に扱わないのだ。
子供の涙にも弱い。
「ほんまに、怖い顔をしてはるんや……」
と腕を借りに来た、七つ八つの女の子が出した利息は三十文。
「それで足りる?」
「足らん!」
女の子の目に涙が盛り上がると、
「腕には足らんが、小指のさきぐらいなら……」
と思わず口にするのである。【第四話 小指貸し】
もちろん、剣の腕はたつ。
武蔵側の広めた話のせいで人から失笑を買う『京八流』の使い手である。
その腕を生かした貸腕屋に持ち込まれる依頼は、さまざまな厄介事の火種となる。
清三郎は、そんなごたごたを剣の腕だけでなく、頭脳プレイでも解決する。
依頼の裏に隠された秘密を暴き出し、刀を抜かず問題を解決するのだ。
そんな貸腕家業の最後に姿を現すのは、謎の二刀流剣士。
とうとう、因縁の対決か、と思いきや、次回へ持ち越しのようだ。
続編『桜下の決闘―吉岡清三郎貸腕帳』が楽しみである。