紙の本
ロシアの世界観
2022/12/24 16:09
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投稿者:とらとら - この投稿者のレビュー一覧を見る
ロシア(というか、プーチンの?)の世界観、もしくは、理屈では、主権国といえるのはアメリカ、ロシア、中国など限られた国々で、日本やヨーロッパなどはそうではないとのこと。そういった基本的な観念から違うということは、その前提、あるいは、双方のすり合わせをしないと、関係や情勢・予測を誤る危険性が高いんだなと思った。中国(もしくは、習近平の?)世界館ってどんなのなんだろうか。
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ロシア独自の「勢力圏」概念及び、ロシアの言う「主権」がようやく、どんなモノなのか理解に近づくことができた。
ロシアが「勢力圏」や「主権国家」をそのような意味で用いることは理解する必要があるが、その「勢力圏」や「主権国家」概念を受け入れることは決してできないことがウクライナやバルト三国などの「事例」を通じて、理解できた。
また、北方領土問題を抱える日本としては、これは決して他人事では無く、現在進行形且つ自らの身に降りかかっている火の粉である。
なればこそ、ロシアの概念としての「勢力圏」や「主権」を理解する必要がある。そして、その概念からして、「共同経済活動」が穂法領土の返還に繋がるものでは無いという結論は容易に導き出せる。(そもそも先方に「返還」の意思などない。
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【あるいは、ロシアを夢見る巨人と見立ててもよいかもしれない。ユーラシアの巨大な陸塊の上で、ロシアは壮大な「勢力圏」の夢を見ている】(文中より引用)
「地政学」や「勢力圏」といったキーワードを軸としながら、冷戦崩壊後のロシアが持つ国際秩序観を丸裸にしようと試みた一冊。著者は、東京大学先端科学技術研究センター特任助教を務める小泉悠。
ロシアに関する作品は数あれど、ここまで同国の国際秩序観を支える内在的論理・感情に迫った一冊は稀なのではと思うほどの名著。サントリー学芸賞を受賞したのも宜なるかなというほどの充実ぶりで、今後もこの著者の作品は追っかけていきたいなと。
今年のトップテンに入ってきそう☆5つ
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著者が実際に歩いたロシアの周縁部の風景から、ロシアにとっての国境、ひいては国家観が描き出される。
ソ連という国はなくなったし、それはロシアとは異なるものだということは分かってはいても、ロシアの人々にとっては、どうもすんなり片付けられるものでもないというのが、旅先で出会った人たちの話すあれこれから浮かび上がる。
旧ソ連諸国とは冊封体制のような関係で、自分たちはその中心でありたい、というものなのだろう。
少なくともチャイナのように、全世界の中心を考えているわけではなく、自意識としてはあくまでも旧ソ連邦の範囲内というのがロシアらしい。米と張り合っての超大国はもう目指すべくもないということか。
無論その自意識は、もうソ連の一員ではなくなったのだから干渉しないでくれ、という国々とは軋轢を生むし、またその自意識は少なくとも北方領土においてもそれがその枠内にある以上、日本との交渉もうまくは進まないだろうことも容易に推測できる。
ウクライナ紛争についても、この視点からの解説である。
自分などウクライナの場所も地図を見てもあやふやで(、というか先日ポンペイオも記者から場所がわかるかと問われて激昂したらしいが、)あの紛争の内実もよくわからなかったが、ウクライナ海軍の総司令官が、クリミアが侵攻された後には、ロシア黒海艦隊の副司令官になったとかいうくだりを読むと、紛争と言っても自分らが持つ領土戦争の感覚では到底理解出来なさそうで、今後も下手にコメントしないようにしようと思う。
全編通して、大陸国家と海洋国家の国家観の違いについて、改めて驚くとともに、日本を含め周辺国を主権国家とは見ていないロシアの本音がチラホラと見え隠れする様に、やっぱり核武装は必要との思いを強く持つに至る。
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Twitterで人気のイズムィコ先生著。プーチンの"主権国家"観をベースに現代ロシアの外交戦略を分析。「安全保障を自国で完結できて初めて主権国家であり、日本もドイツも非主権国家」とのロシアの(プーチンの?)安全保障感覚は言われるとめちゃくちゃ納得する解釈だった。シリアにロシアが絡む理由とか全然分かってなかったが、改めて納得。読みやすい文章やし、サントリー学芸賞にハズレなしという法則を改めて実感。
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『#「帝国」ロシアの地政学』
ほぼ日書評 Day425
ロシアは日本を「主権国家」と見做していないという主張は刺激的である。ただ、これは日本だけではない。ドイツを始めとする「西側国家」の大半は、NATO、さらに極論すれば米国の軍事力の傘なくしては独立を維持し得ない「半主権国家」ということになる。逆に、その価値観に基づいて主権国家と呼べるのは、中国とインド、加えて見方によっては北朝鮮。
そうした価値観によれば、ソ連、それを引き継ぐロシアが、北方領土を手放さない理由も、大いに納得出来るということが、本書終盤に語られる。
北方領土へのビザ無し渡航は船で行く。かつては、軍用を除いては飛行場がなかったという理由もあるが、船ならば、現地で宿泊する必要がない。万一、団員の誰かが死亡した場合にも、船でそのまま日本へ引き返す。万が一にも、北方領土で死亡し、ロシア人医師の検屍を受けることなどあってはならない。それはすなわち、ロシアの行政権を認めることになるからだ。
ロシアの国境は「浸透膜」。決して、かっちりと内外を分離するものではなく、内外の浸透圧の差で、主権がグラデーションのように影響し合う。
北方領土もさりながら、ウクライナ問題で顕著である。
中盤、バルト三国の歴史博物館で、ソ連時代を「占領」と呼んでいる話や、ドイツ人エリートの微妙な立ち位置、おそらくはロシアが指揮したと考えられている大規模なサイバー攻撃やフェイクニュースによるプロパガンダの拡散等、非常に生々しい。
中露国境は4千km、ロシア・カザフスタンの7千kmに次ぐ長さとあるので、意外に思い今一度地図を見ると、中国とカザフスタンに挟まれるモンゴルとの国境は直線に近いのに比べ、中露国境はかなり入り組んでいるのが分かる。にしても、モンゴルというのも不思議な国である。
最後に、硬い内容でページ数もあるが、非常に読みやすい。非日常的視点から、自分を見つめ直すには良いテキストだ。
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再び小泉悠氏の著作を読んだ。本書は、北方領土、ロシアの考える「主権」・「勢力圏」、シリア、北極について、ロシアの地政学という観点で記述されている。
ソ連崩壊は、ロシアにとって「ロシア」とはどこまでなのかを考えさせ、アイデンティティを揺るがす「地政学的悲劇」であり、ソ連崩壊後のロシアは、アイデンティティと地政学の癒着により、「大国志向」へ転じた。ロシアは、旧ソ連地域を「勢力圏」とみなし、この「勢力圏」を維持するために実施したのが、2008年のグルジア紛争、2014年のウクライナ危機である。この箇所の説明はとても説得力があり、非常に参考になった。
その他、シリアでの「限定行動戦略」、新たな地政的正面である北極、日本と深く関わる北方領土問題など、ロシアの対外政策を知る上で、とても有益な情報がそろっている。
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受け入れられるかどうかは別として、ソ連時代を含めたロシアのイデオロギーや周辺諸国に対する考え方、そして西側諸国に対する見方など理解することが出来た。
それと同時に、個人的なレベルは別として、ロシアをはじめとする権威主義的な国家と国同士で分かり合える事は無いのだろうと、絶望的になった。
今起きているウクライナ侵攻はロシアにとって必然であり、さらには日本にとって懸案事項である北方領土返還など、実現する事はないだろうと思わされた。
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大国ロシアを取り囲む極東(および中国)、北極、西方(=西側諸国との境界となるNATOおよび旧ソ連邦)と中東に関し、とりわけ軍事的観点に軸を置いた政治的状況を概観する。
ストーリー的というよりは現状分析的内容(歴史から読み解くというよりは軍事的重要性の読み解きや目下軍事行動などからロシアの現状の考え方を整頓する内容)。
誤解を恐れずに表せば、架空戦争モノの漫画やアニメのようなクリアな整理がどんどん出てくるエンターテインメントとして読める。他方、ニュース解説を聞いているような感じで、ロシアをわかったという気にはあまりならないと感じた。
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刊行から少し時間は経っているものの、特に前半では「ロシアが考えていること」がわかる。バルト三国、グルジアの話は今目の前で起こっているウクライナの状況に通ずる部分が多く、何か解決の糸口はないか、と考えさせながら読んだ。
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丁度、読んでいる瞬間にロシアによるウクライナ侵攻が始まった。ウクライナとロシアの関係についても言及されており、侵攻にいたった経緯を理解できた。ロシアが北方領土問題を抱える我々日本の隣国であることについても記述されており、筆者の旅の感想がリアリティーがあり、興味深い。
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イズムィコ先生の代表作。ロシアの対外戦略を勢力圏をキーに読み解きます。勢力圏の概念自体は19世紀や20世紀には存在して今も根底にはあるのでしょうが、それを武力で公然とは主張しないというのが国連時代のルールなんじゃないのかなとは思うわけで。そもそも過去の最大領土を元に現在の勢力圏拡大していこうっていうのは、一度も負けたことの無い国の我儘でしかない気がします。
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ロシアの地政学的な理解から今の状況を理解出来るが、こんな身勝手な理解を持つ国とは。国民一般の理解もこのようなものなのか。身の丈に合わない故に粗暴になっている様に見えてしまう今のロシアだが、納得出来る。
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ロシア目線での世界観がよくわかる1冊。
2022年のウクライナ侵攻は唐突感があると思っていたが、ロシア側の理屈の上では、いつ起きてもおかしくなかったことも理解できた。
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小泉悠さんの著作。ストーリーとしてよく組み立てられていて、北方領土訪問の導入は成功だと思う。読み始める前はやや警戒していたがどんどん読み進めてしまった。
西欧近代がいわゆる「モダン」であり、国民国家をベースとして組み立てられてられているのに対し、ロシアは融通無碍でロシア人がいるところが「ロシア」であるといういわゆる「帝国」概念に基づいている。その中でも、ウクライナ、ベラルーシ、ジョージア(著者はグルジアと呼ぶ)は特に重要な国=地域でその国々が独立して西欧的な国民国家になるのは「帝国」を脅かす脅威と認識される。
ただこの考え方はあくまで権力者目線だと思うわけで、結局モスクワ、サンクトペテルブルクの市民もマクドナルドやコカコーラに代表される西欧文化を満喫していたことからも分かるように、別にロシアなるものは鬱屈した権力者や弱者のアイデンティティを慰める概念でしかないんだと思う。そんなことより、ロシアは地方に目を向けて全国民的に真の意味で豊かになれば、別にウクライナだって反発はしないだろうし、日本だってそこまで警戒はしない。要はそういうことなんだと思うので、プーチンには仮想現実的世界にでも引きこもっていただいて、その世界で自由にやってもらいたい。その意味でメタバースの発展は世界を救うかもしれず、一刻も早い進化が待ち望まれる。