紙の本
『しずかな魔女』
2019/06/15 19:18
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:百書繚乱 - この投稿者のレビュー一覧を見る
中学校に行けず図書館ですごす草子
学校?
行ってません、そんなもの。
見ればわかるでしょ? 不登校なんです。
べつにめずらしくもないでしょう?
そうは言えない小心者の草子だったが、言葉を交わすようになった職員の深津さんにお守りの言葉をもらう
〈しずかな子は、魔女に向いている〉
そして夏休みの前日、深津さんから託された封筒には、プリントアウトしたばかりの真新しい物語が入っていた
『しずかな魔女』
それは、ふたりの女の子の、まぶしい夏休みの物語だった
《本の森で出合った宝物のような物語》──帯のコピー
著者は『よるの美容院』で第52回(2011年)講談社児童文学新人賞、『ABC! 曙第二中学校放送部』で第49回(2016年)日本児童文学者協会新人賞、『小やぎのかんむり』で第66回(2017年)小学館児童出版文化賞を受賞した児童書作家
本書は『よりみち3人修学旅行』(2018年)につづく7冊目の単行本
投稿元:
レビューを見る
2020年、読み初めの一冊。じんわり心にしみる物語だった。
「西の魔女が死んだ」とちょっと似たテイストで、学校に行けなくなり、「図書館へいらっしゃい」の呼びかけをあてにしつつも居場所として安心しきれないでいた引っ込み思案の主人公が、自分と距離を取りつつもあたたかく見守る大人たちの存在に気がつく。「心からの願いは、自分や周りを動かし、魔法のようなできごとをおこしうる」という希望を感じられ、この本もまただれかにとっての「魔法の書」になるといいなと願わずにいられない。
投稿元:
レビューを見る
「しずかな子は魔女に向いている」
不登校の草子が図書館司書の深津さんから受け取った言葉が謎めいていて、またそこから始まる物語が草子の心に寄り添っていた。
平日に図書館にいる草子に遠慮ない、または遠慮がちな視線を向ける利用者たち。居場所を求めている草子にさりげない手を差し伸べている深津さんがいたことで、草子は救われていた。
投稿元:
レビューを見る
『よるの美容院』や『子やぎのかんむり』同様繊細な女の子が主人公。得意分野だ、著者の。
不登校の女の子が図書館で司書と交流し(心の交流は深いが、表面上は本当にささやかなのが好ましい。)、司書が書いた物語に入っていく。
小学4年の少女たちのひと夏の友情を生き生きと描いたこの小説中の小説も上手い。おばあちゃんについて魔女修行ってところは、まあ、ちょっと『西の魔女が死んだ』みたいでもあるけど。
さらっと読めて後味も良く、いいのだけど、お行儀良すぎの感じもする。
いつの時代か書かれていないので、ネットやSNSに毒されてない時代なのかもしれないが、その前はゲーム、その前はテレビと、子どもが夢中になる(大人が眉を顰める)メディアが存在してたわけで、たまたま知り合った2人がどちらも本や自然が好きとは、団地に住んでるわりにお上品だなあ、という印象。昭和の団地って庶民中の庶民って感じだったよ。(『西の魔女が死んだ』はイギリス人のおばあさんがいてハーブに囲まれてそうな森の一軒家で、テレビやゲームが出てなくても違和感なかった。)それに、こんなに気が合って価値観も共通している友だちなんてそうカンタンには見つからないもんだけどな。そして小学生の友情が永遠に続くこともない。子どもが憧れる友情だからこれでいいのかもしれないが。
草子という最初の語り手についてもっと書いてあれば、結末が感慨深いものになったのではという気がする。
汚れちまった大人の私は、司書は正規雇用は少なく給与も安いので、夏休みにモンサンミッシェル?に行ける深津さんは実家住まいだろうなと思う。児童文学の作家としてデビューするのが目標で、実家で頑張ってるんでしょう。内面はクールでシニカルなところもあるはず。そういう面も垣間見えれば更に面白くなったかも。
投稿元:
レビューを見る
不登校の草子は、図書館に通っていた。その図書館の司書の深津さんは、愛想はよくないけれども、優しい人のようだ。そんな深津さんから「しずかな子は魔女に向いている。」という言葉をもらい、その本を読んでみたいと思い、草子は初めてレファレンスをお願いしてみたところ……。
図書館も司書(の仕事)も好きの私は、この物語はどんなお話なかな? と楽しみにしながら読んだ。司書の深津さんは、口数は少ないけれども、本当は優しい人という設定のようだ。司書って、そういう「静」のイメージがあるのかな。実際にはそうでもないと思うし、深津さんのようなタイプは向いていない気もするのだけど。
あと、魔女の修行が、どうしても『西の魔女が死んだ』を思い出さされて、二番煎じ感があった。
草子のような子どもはこれから増えてくると思う。草子はこれからどうなっていくのだろうか。そして、不登校の子が図書館に増えたらどうなっていくのだろうか。いろいろ考えさせられた。
投稿元:
レビューを見る
とてもピュアな気持ちになれる本。現実にはこんな司書さんはいないけどw
でも途中でうっかり泣きそうになってしまうところもありました。
自然でいられる場所を求めるのは子供も大人も同じです。
そういう場所を持てたら、幸せなことですね。
投稿元:
レビューを見る
不登校の草子は図書館で過ごしている。司書の深津さんから受け取った物語の意味は…。自分に言い訳したり守りながらヒリヒリ生きている子がいる。草子にも ひかりのような友達ができるきっかけが訪れるといいのにね。草子が図書館以外の居場所を見つける物語も読んでみたい。
投稿元:
レビューを見る
魔法のない世界で「魔女」になる、リアル路線のストーリーは好感が持てた。そういう意味では、もしかしたら起こりうるかもしれないレベルの冒険を、空想の世界と重ねあわせながら楽しむ子どもたちを描いたアーサー・ランサムを思い起こさせる。そういう在り方をおばあちゃんが子どもに伝えているのは、ある意味リアル。
魔法や異世界に逃げず、この世界の中でしっかりと生きていく道を見つけていく物語を、不登校の女の子に伝えたかった司書の深津さんの姿に共感を覚えた。
うちの長男もとても気に入っていたようだ。
投稿元:
レビューを見る
学校に行かない草子の居場所は図書館で、他の利用者の「学校はどうしたの?」視線に怯えながらも、司書の深津さんのさりげない気遣いに助けられていた。ある日知らない人に面と向かって不登校を非難され傷ついた草子に、深津さんは<静かな子は魔女に向いている>と書き、「これ、お守りです。だから、だいじょうぶ」と言うのだった。
この言葉が気になった草子は、このタイトルの本を探し始めるが見つからない。ついにレファレンスカウンターにこの文章が出てくる本を探してくれるよう依頼する。カウンターにいた深津さんは、この言葉はそのようなものではないと断るが、どうしても読みたいと食い下がる草子に承諾する。しばらくして<館長>から手渡された茶封筒には、白い紙の束が入っていた。それは、作者名のない「静かな魔女」と書かれた物語だった。
理解されにくい少女が、周囲の優しさから勇気を得ていく物語。
*******ここからはネタバレ*******
傷つきやすい草子への、図書館の人たちの心配りがとてもとても優しい。
野枝とひかりの物語も、愛らしくて楽しい。
ユキノさんが魔女修行の先輩として、とてもいい味を出しています。
「他人の心はね、その人だけのものよ。じぶんの心は、じぶんだけのものですからね」
お化け騒動や、いつも美味しいものが入っている「焼きのり」の金色の缶に入っていたのが、干ししいたけだったところには笑ってしまいました。
小学校4年生のお話なのに、ラストでは泣きました。
この年代の話になると、人生の問題が山積みなものが多いのに対して、この本はとてもシンプル。舞台も図書館の中だけです。華やかさはないけれど、優しさがじぃっと沁み入るお話です。
不登校の話の多くは、再登校することでハッピーエンドとなるものが多い(「鏡の孤城」もそうでした)のに対して、ここでは草子はこのあとも学校ではなく図書館に通います。著者が、安易に不登校の解決場所を「登校」としなかったところに、大きな大きな拍手を贈りたい。
中学年から読めるとは思いますが、これはすべての人にオススメしたいです。
投稿元:
レビューを見る
不登校の草子が毎日通っている図書館には、温かく心優しい大人たちがいる。びくびくと周りの様子を気にしながら過ごしているが、実はそっと見守られているのだ。「しずかな魔女」の作者であろう深津さん、勝手に草子が「館長」と名付けた男性司書。草子自身もそれに気が付くのだが、それは草子が成長していく大きなきっかけになっていくに違いない。
投稿元:
レビューを見る
「学校が死ぬほどつらい子は図書館へいらっしゃい」と呼びかけたのは、鎌倉の図書館の司書さんでしたね。
「自殺したくなったら図書館へ」は、米国の図書館に貼られていたポスターの文言だそうだ。図書館には問題解決のヒントや人生を支える何かがあるというメッセージだそうだ。
そして利用者の秘密を守るのも、図書館の大事な原則だということも。
中学生の草子が、学校に行かずに図書館で静かに過ごす事ができるのも、この原則のおかげだ。
そんな図書館にいても、周りを気にしてオドオドしてしまう。
ある時、図書館司書の深津さんから「しずかな子は、魔女に向いている」と言う不思議な言葉をお守りとしてもらう。草子は、その言葉がでてくる本をレファレンスサービスで探してもらい、読むことになった『しずかな魔女』のおはなし。
このおはなしがまた良いのです。
読み終えた草子は、すこし生きやすくなった。自分の気持ちを言葉で伝えようと一本前に踏み出す。
この本には、静かな森にたとえた居場所としての図書館と素敵な司書さんが登場する。
図書館好きの心に響くお話です。
投稿元:
レビューを見る
フォローしている方のレビューを読んで、図書館で借りました。ご紹介いただき、ありがとうございます。
市川朔久子さんの作品は、今まで2冊読んだことがある。
いずれも中学生が主人公で、学校や家庭に居場所がないと感じている子たちの話だった。
当事者である中学生が読むには、ちょっと重い感じがするなぁ…というのが正直な感想だった。
この作品は、不登校の主人公の置かれている状況がメインではなく、主人公が手にしたある物語がメインに描かれている。
その物語を読んだ後の、主人公のなかに起こる小さな変化と、それによって簡単に学校に行けるようにはならない、その誠実さがよかった。
2020.8.6
投稿元:
レビューを見る
2020/8/3
913.6||イチ (3階日本の小説類)
中一の草子は、学校に行けなくなってしまい、毎日公共図書館に通っている。
そんな草子に心ない問いを投げかけてくる大人もいる。
さりげなくフォローしてくれるのが司書の深津さん。ある日ふとしたことをきっかけに、初めて図書館でレファレンスを希望する・・・。
話すことが苦手なあなた、
何か書いてみませんか?
投稿元:
レビューを見る
中学生の草子は不登校。人と話すことが苦手な草子は毎日身をひそめるように図書館に通っている。そんなある日、図書館内で草子に小さな事件が起こる。助けてくれたのは司書の深津さん。深津さんはお守りだと言って「しずかな子は、魔女に向いている」と書いたメモをくれる。本の題名かと思い自分で調べるが見つけられなかった草子は、この言葉の載っている本を探してほしいと深津さんに依頼する。後日、深津さんから渡されたのは白い紙の束、1ページ目に『しずかな魔女』と書かれた原稿だった。
投稿元:
レビューを見る
学校に行けなくなった「草子」が、図書館の司書「深津さん」に探してもらった物語のタイトルが「しずかな魔女」。
そして、キーワードが「しずかな子は、魔女に向いてる」。いったいどういうことなのだろうと、好奇心が湧き、読んでみた物語は、大いに私のノスタルジーを刺激した、二人の女の子のひと夏の想い出。内容のひとつひとつが事細かく新鮮でいて、かけがえのないものに感じられた物語は、本当に素敵だった。
また、その物語は草子自身にも、大きな影響を与えており、他人に解決してもらうのではなく、自ら意識を変えさせるよう促す物語の構成が素晴らしい。
更に教えてくれたのは、本の素晴らしさ。当たり前なんだけど、本の世界では誰にでもなれるし、何処にでも行ける。楽しくて、素敵だ。
でも、それだけでなく、「本の力で人生を変えることだって出来るんだよ。」ということを、この作品は教えてくれた。これって、すごくないですか?
児童書だということで、読まないのはもったいないですよ。