紙の本
等身大のぬるい熱量
2023/08/07 20:57
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
音大を中退して物書きになろうとするフリーターの主人公と、神憑った演奏をする友達と、その彼女。3人の間にある友情と恋愛感情と才能への羨みとが(いい意味で)等身大のぬるい熱量をもって描かれる青春小説のようななにか。
この小説の中で何度も繰り返される才能の差っていうテーマが、変に熱く書かれてなくてむしろ褪めてる感じがしてとても良い。20代そこそこで人生に軽く絶望してる自分を否定もしないし、かといって肯定もしない。中途半端に毎日を生きているけどなんとなく楽しい。そんなモラトリアムの書き方が凄く好み。
あと、主人公に思わせ振りな態度をしながら、何度でも「好きじゃないよ」と繰り返す彼女の存在がたまらない。何故そんなことを?と思うけど、大体においてその人にしか分からない「距離感」ってあって、そういうシーンを第三者として見る時の、あのなんとも言えない感覚を文字で味わってしまった。最高
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芥川賞受賞作でも思ったのだが、この作家とぼくは相性が悪いようだ。本作は内容もそうだが、文体も、漢字を使わずひらがなにする感覚も、すべてが合わなかった。まあ、仕方がない。
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初出 2019年「新潮」4月号
芥川賞とったら文芸誌1回掲載で単行本になるのね。
タイトルの「コンテスタント」はコンクールに挑戦する人という意味らしい。これを知らない人は読んでも面白さが十分わからない。
クライマックスでショパンのコンチェルトop.11といわれてもピンとこないので、読み終わってからYouTubeで聴いて「ああこれね、ピアノは4分待つんだね」と思うような人間には理解が浅くなるのだろう。
主人公が書く小説の出だしがたくさん登場し、現実と入り混じって進行するのは面白い。というか、小説に書いた事を面白がって実行もする。
「 」に入れられたセリフと、入れられてないセリフが交互に置かれたりして、目新しいけどどうなんだろ。
音大のピアノ科に入ったが周りの才能に挫けて半年でやめた主人公は、唯一の音大の友人源元に勧められて小説を書き始め、源元の彼女が勤めるファミレスで深夜のバイトをして暮らす。
家にいづらくてアパート暮らしをすると源元が入り浸り、ショパンコンクールの映像を見て語り合うのだが、このくだりがダンタイソンの弟子の入賞の話だとか、なかなかに専門的でわかりにくい。
源元の彼女の潮里に惹かれて「好き」と言うがうまくあしらわれて、この潮里なかなかの人物。他に調理担当のバイト寺田は名古屋の金持ちの坊ちゃんで、みんなを連れてふらりと旅に出たりするのだが、寺田の分身のような彼女チカに振られたと言うので、源元のコンクール当日に、ゲネプロをキャンセルしてまでみんなで名古屋まで行ってチカを連れて来るが、チカは消失する。
クライマックスは、コンクールで久々のファイナリストになった源元が、オケとショパンのop11を弾き、崩壊しかけて踏みとどまるが入賞しない。
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挑戦的な作風ではあるけれど、結局上っ面だけで終わってしまったように感じた。
端的に、語りが不十分なのでは。
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某ゾンビ小説のピアノ版か?
期待は良い方へグゥーンと軌道修正。
まさかまさかの純文学。
どこを開いても読んでもこれは素晴らしい。
サラッと読み飛ばそうと思ったけれど思わず熟読。
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絶望ではなく ぜつぼう という表現、絶望 ほど重くてしっかりと存在しているもの ではなく、挫折すらないという ぼく の言葉の通り、なんだかハッキリしない不安定な感じを表現しているように感じた。
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『ショパンゾンビ・コンテスタント:町屋良平著』
単刀直入に言うと…全く以って意味不明。
感想を書くまでも悩み続けてどうにか支離滅裂な文を記すに過ぎない。
はじめ数ページは主人公の邂逅か成長過程の前置かと思う。
何しろスマホですら次の単語が漢字で出てくるような物でも平仮名。
小学生時代の邂逅シーンをリアルに表現しているのかと思えばラストまでそのスタイル。
「 」の後に絶対に一言二言はみ出る。
いいようにとると尻つぼみやボソっと呟いたとも取れるが、そうでもない。
尻つぼみや相手に聞こえたかどうか怪しいくらいのボソッと呟きを表現する場合にこの手法を私は使いたい。1つ勉強!
ショパン、ピアノに惹かれてページを捲るも早後悔。
中盤まではなかなか面白いかも!と錯覚を起こして読めたが、中盤以降苦しい苦しい。
主人公は音大中退のフリーターで小説家を目指す。
友人の源元は天才肌のコンテスタント。
源元の彼女の潮里で主人公が恋心を寄せている。
主人公と潮里のバイト仲間の寺田と遠距離許嫁のチカ。
この5名を取り巻く物語だが、私には音が聴こえてこない。
引用文のみが安らぎと音楽を感じられる部分だった。
そもそも著者はこの作品をと通して読者に何を伝えたいのか?
別にショパンもピアノもコンクールもいらないのではないか?
ただの友情と恋愛物語に過ぎない。
ピアノの弾きの端くれの端くれをさせてもらっている私には理解不能。
比べる物ではないが実際のショパコンや浜コン、そして『蜜蜂と遠雷』の素晴らしさを知ってしまっていると苦虫を噛み潰したような気持ちになる。
芥川賞作品が苦手で避けて通ってきた。
初めての読了がこの一冊だった。
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音楽って文なんだと思った。
楽器を奏でることは、「音楽」という一つの流れに参加することで、楽譜は作曲者のものではなく外に開かれたもの、ピアニストの無数の解釈によって更新され、「音楽」という流れを作る
p109「源元のショパンをきく。ケイト・リウの、エリック・ルーの、イーケ・トニー・ヤンのショパンをきく。ショパンの二百年前の"いま/現在"を、各人の"いま/現在"に繋げている」
p139「ピアニストが多ければ多いほど、楽譜自体が充実する。余計なピアニストなんてこの世にいない。楽譜とピアニストが交通し、音楽が生まれる。」
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巨匠のつくりあげた音楽を現代っ子がピアノでどう表現するかという話なのかな? おもしろそう、と思って読み始めた。
だけど、そういう話ではなかった。最初の2、30ページほどを読んで、愕然とした。
「こ、これは、青春のぽえむ!!!」
しかも、主人公は小説家志望。そういう設定の小説が世の中には意外に多いような気がするが、私はあまり好きじゃない。だいたいがファミレスとかコンビニが舞台になって地味で受け身な主人公ってパターンだから。
でも、頑張って読んだら、意外に悪くなかった。
文章が整ってなくて、完全にとっ散らかったまま散らかしっぱなしで終わっちゃってるけれど、自分の中にあるものを自分の声で一生懸命に言語化しようとしている感じがあって、好感を持った。
最近、スッカスカの小説が多いからなぁ。どっかで読んだような流麗な言葉を並べて体裁だけ綺麗に整えている小説。それに比べて、この人は借り物じゃない自分の言葉で語っている感じが良いわ…などと思いながら、この著者の略歴を見たら、その私が思い浮かべたスカスカ小説と同じ時にこの著者も芥川賞を取っておられた。知らなかった。この人、芥川賞作家だったとは。(←そこに驚いている)
この小説は最後の方に行くとポエム感がどんどん強くなっていって、それにはちょっと困った。でも男の子たちについての描写はけっこう良かったので、このポエム感というか、青さが取れれば、この人ならではのおもしろい小説を書きそうな人だと思った。(青さはきっとそのうち勝手に取れるはず!)
もしくは、一人称じゃない方がいいのかもしれないなぁ。
しかし、最近の芥川賞は、ぽえむ感強めの作品が好きなのかな? 某漫才師の作品もぽえむ感強めだったような・・・
受賞作をあんまり読んでいないから、よく分からないけれど。
ところで、ダン・タイ・ソンの引用とか、ポゴレリチの言葉がすごく印象的だった。それらの言葉を発するに至るピアニストたちの生涯とか頭の中にとても興味ひかれた。
教えてくれてありがとう!って感じです。最後の引用文献を参考に、探して読んでみたい。
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こじらせ系の青春ストーリー。
青春って泥臭くて、エゴや欲にまみれていて、めんどくさくて、でも美しいって言われる不思議なものだなと。
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著者の作品は初めてでしたが、軽いテンポの文体で楽に読めた。青春ストーリー。会話の紡ぎ方が独特。この作品だけなのか筆者の作風なのか?わからないけれど、嫌いじゃない。さわやかな風が吹き抜けた後のような読後感。登場人物たちの個性の度合いも丁度よい。
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光がほとばしる音を言葉で紡ぐ作品。
空想と会話とモノローグが散らばる様子に僕はリアリティを感じとった。
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音大を中退し小説を書く「ぼく」
ピアニストへの道を突き進む「源元」
源元の彼女で同じバイト仲間の「潮里」
常に「ぼく」から見た一人称で語られる。
挫折と羨望、そして叶わぬ恋…
独特の文体、唐突に挿入される「ぼく」の小説。
好き嫌いが分かれそう。
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淡い色の金平糖を常温の水に入れて優しく転がしたような、物足りない甘美さのある一冊。小説ってこういうのだよなぁと思った。意味分からんところとストーリー性の比率が自分にとってはちょうど良かった、なんというか曖昧さとか不明瞭さが邪魔になってない、ちゃんと余韻になっている。登場人物のすべてを簡潔に説明しなくたっていい。そのバランス感覚が肌に合う。
恩田陸の「蜜蜂と遠雷」を思い出したけど、ピアノってほんと小説に向くなぁ。どちらもピアノ奏者を介して、あらゆる表現のスペースを獲得しているというかなんというか…誰かや何かを宿らせたり人格憑依させるの、RPGにおける魔法のエフェクトみたいなもんで、何か引き込まれるものがある。
独特な鉤括弧の使い方や多用される平仮名も、意図は汲みきれんけど読み進める上で邪魔にはならない。文体も好き。
あと、34項「すきな相手にすきと告げる鮮明な言語化は、いちど経験したら病みつきになった」にはめちゃくちゃ同意した。そうそうそうなんだよってなった。これなんでなんだろうな。
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言語化できないものを表現する手段としての音楽。その輪郭をなぞる、理屈っぽい言葉。
なんだか自分も「本を読み続けるゾンビ」のようなものだなあと思えました。