紙の本
人間の運命の不思議を巧みに描いた人情劇。
2023/10/12 12:02
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投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間の運命の不思議を巧みに描いた人情劇。地域社会の人々は多かれ少なかれ誰かと繋がっており、一人の行動が意外な連鎖反応を引き起こす面白さに着目した作品。更にその連鎖反応が時間を経て一つに収斂していく展開は予想してはいても驚かされる。負の連鎖が結構あるにも拘わらず、それを各人が飲み込み消化していく結末にはほっとさせられる。根っからの悪人は出てこない無難な作品。
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遺影が専門の写真館「鏡影館」。その街を舞台に、男子小学生から死を目前に控えた老女まで、様々な人物たちの人生が交差していく―。数十年にわたる歳月をミステリーに結晶化する、技巧と世界観。道尾秀介にしか描けない、その集大成といえる傑作長編小説。
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横浜で無事サイン本をゲットしました。
陳腐な感想だけど、おもしろかった!
「執筆活動の集大成」というのは、今の時点ではまさにその通り!
でもまだまだ素晴らしい作品を期待します。
読みながら頭に浮かんだのは、映画の『スライディングドア』。ちょっと違うけど『バタフライエフェクト』。
20年(もっとかな?)くらい前にそれらを観て以来「偶然は必然」だと思ってきた。
実際の人生では、俯瞰で見られないわけだから、本当のところどうなのかわからないんだけど、そのようなことを疑似体験できるのが、読書の素晴らしさです。
その他
根っからの悪者が出てこないのがいいところ
どストライク佐藤=どすとは、別の物語にも出てこなかったっけ? 気のせい?
オービーは『ソロモンの犬』と同じ名前!
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第一章 心中花 Shin-chu-ka
第二章 口笛鳥 Kuchibue-dori
第三章 無常風 Tsune-naki-kaze
エピローグ 待宵月 Matsuyoi-no-tsuki
それぞれに別の物語なのに、少しずつ関係がある。もしもの分岐点が数知れずあって、今の状態になっているのが奇跡のような不思議な感じ。誰を恨むのでもなく、今とこれからを大切にしていきたい。
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ある出来事は、いくつもの偶然から成り立っているということを思わせる物語でした。ビックリするような物理的なトリックはないですが、時間と幾つもの事象を組み合わせて作られた物語は秀逸だと思います。
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【数十年にわたる歳月をミステリーに結晶化する、技巧と世界観】と本の紹介にはあったので、もっとミステリー要素の強いのかな、と思って読み始めたが、読んでみての個人的な印象としては、ミステリー感は薄かったような気がする。
とは言え、章が進むごとに、見えていた事実が事実とは異なり、新たな事実が見えてくる。そんな物語の進み方は、やはり道尾さんらしいミステリーとも言えるのかもしれない。
この小説では、「嘘」が1つのキーになっていると思う。嘘にも、色々と種類があって、人を騙すための悪意ある嘘だけではなく、逆に人を思うが故の嘘もあるし、自分のつらさやコンプレックスを隠したいだけの嘘もある。ちょっとしたおふざけのこともある。
けれど、そんな様々な「嘘」が、複雑に絡み合って、思いもよらないことが起き、人の生き方にまで影響を及ぼしていく、、、やるせない気持ちにもなった。
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西取川を挟んだ上上町と下上町、その2つの町で起こった3つの物語。バラバラに思えたそれぞれのエピソードがまるでドミノのように最後にはひとつの線になっていく。淡々と綴られていくのに先が気になって気になって、気付いたらこの西取川を挟んだ2つの町に住んでいたかのように彼らの物語に没入していた。
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ある海辺の町にある遺影を専門に扱っている写真館「鏡影館」。そこを舞台に数十年前に起きた出来事の数々と絡めながら、完結したはずの出来事が反転するかのように隠された真実が明らかになっていきます。
全3章とエピローグからなる物語で、3つの物語はそれぞれ独立しているかと思いきや、細い糸で繋がれているかのように複雑に絡んでいきます。
第1章は、遺影を取りたいということで訪ねた奈津実。飾られていた写真の中に何となく知っている男性がいました。名前を聞いて、昔の出来事が蘇ります。
奈津実が高2の時代に遡り、恋愛や流出事件など最初は穏やかだった雰囲気が、段々と不穏な雰囲気へと変化していくので、世界観に引き込まれました。
第2章では、小五の通称・まめと転校生が、流出事件と複雑に絡んでいきます。ネタバレしない程度で書くのが難しいのですが、第1章とは別の角度から、流出事件だけでなく、現代でも絡んでいくので、違った面白さがありました。
第3章では、第1章と第2章に登場した人物の関係者が、また別の角度から、複雑に流出事件と絡んでいきます。パズルがはまるかのような謎解きが、次々と発見していくので、爽快感がたまりませんでした。3つの物語が一つの大きな物語として、集約していくので、「あっ、この人って・・・」と思うことが多くありました。
そして、流出事件の隠された真実だけでなく、色んなことがひっくり返るかのように裏側が見えてきます。約500ページぐらいでしたが、あっという間に読めました。
文章の表現がわかりやすく、内容の構成に圧倒されました。浮かび上がる事件の真相、嘘から始まった様々な出来事、長期にわたる贖罪。切なく哀しい物語でしたが、読み手としては、段々と謎が解ける興奮さに最後まで楽しめました。
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風が吹けば桶屋が儲かる的な、蝶が竜巻を的な。
あくまで後から考えればだけど、
あの時こうしてたら、あの時ああしたから、の積み重ねが今で。今は未来で、未来は今で。
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遺影専門店という珍しい写真館の『鏡影館』
その写真館がある町で起こる人々の分岐点。
第一章 心中歌
母の遺影を撮りにきた親子の物語り。
その鏡影館で目にしたある写真から始まる謎。
第二章 口笛鳥
まだ、鏡影館が普通のカメラ屋さんの頃の話し。
2人の小学生が大胆な作戦である人物を救い出す。
第三章 無常風
ここで、第一章と第二章がガッツリと絡む。
過去の謎を探るための調査。
果たしてその結末は…
第四章 待宵月
締めの物語り。ほのぼのです。
人間の嘘・勘違い・すれ違い・・・そんな偶然が重なり私たちはここにいるんでしょうね〜。
というか、題名の『花鳥風月』…気づかなかった〜(汗)
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ミステリかと思い手に取ったが、予想とは違い
読後感は爽やかだった。
日常は沢山の偶然が重なり合って出来てるのだと改めて認識する。
ぐるりと回って最後に色々と繋がっていきスッキリ。
私は1番最初の章が好き。
火振り漁というものを初めて知る。
調べてみたらとても幻想的だった。実際に見てみたいな。
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道尾秀介作品の、様々な色の謎と不安と情景が少しずつ絡み合って糸になり、それが最後にはモザイクアートのように浮かび上がる…そんな展開が大好きだ。
世界観に没頭してしまうので、次の日休みの夜に一気読みが理想。
ぼやけていたものが鮮明になっていく心地良さは本当に癖になる。眠かったはずなのに目が冴える。時間があっという間に過ぎていく。
日本人なのでコナン・ドイルの貝の砂の話よりもついつい『風が吹けば桶屋が儲かる』がよぎった。
私がこの本を手に取った時を思い返し、ギョッとする。
本来は別の小説を大型書店に買いに行ったのだが、それが実は来月の刊行で。せっかくだからと物色し、新しいシリーズモノに手を出した。それが意外に面白くて、2巻を買いに近所の本屋へ。しかしそこにはあまりメジャーじゃない出版社(失礼)はあまり揃っておらず。でも何か読みたいんだ!!と、また物色していたら、普段は行かないマイナーな出版社(失礼)コーナーで道尾秀介を発見。一旦スルーしつつ、残り1冊しかないことと内容で購入決定。
あの時近所の本屋に目当ての小説があったらこの本は買っていなかっただろう。
そもそも、私がおっちょこちょいで、ありもしない新刊を探しに行かなければ。
そう考えると、今いる場所、していること、考えていること、食べたもの、着ているもの…全て過去の選択の重なりで出来ているのだなと思う。
誰かにとって不幸だったことが、巡り巡って自分の幸いになることもあるだろう。逆も然り。
とても、おもしろいものだ。
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風が吹けば…的なバタフライ効果の話。各章ごとに現在と過去が語られ、それぞれがまた時を経て次第に繋がっていく凝った構成だが、後半は説明的に過ぎる感あり。道尾さんお得意の子供視点もしっくりきたり、こなかったり…。神シリーズ(三部作)の2作目は癒し系。インパクトは初期の「龍神の雨」の方があった。次作「雷神」に期待。
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第1章はスピード感好きだし主人公の心が手に取るようにわかる描き方だし、しかも二転三転?というか、真実か偽りか伏線もあって、最後泣けた。
第2章
まめとでっかちの2人の写真館でのシーンめっちゃ緊張した。
誰が悪い人!?1章との関わりを考えて読んでたけど、
第3章で全部スッキリする。ちょっと腹立つシーンも登場人物が代弁してくれるし、最後の謎のおじいさんに関しては確かに終始出てきたけど出る必要なくね?と思ったけど真珠の話聞いてこの本を簡潔にしてるなと関心した
伏線すごい。すごく楽しか
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自分は今、あと片手ほどで還暦を迎える人間なのだが、高校生になりたての15歳の時、とあるアルバイトを始めなければ現在22歳となった我が家の長男は間違いなく産まれていない。
別段、その職場で知り合った女性と18年間愛を育んだ末に息子が産まれた訳ではないし、愚息の母親はそのバイトと一切関わりなく、更に彼女と知り合った時、私はもう28歳だった。
どこがどうなって、と言えば遡る事は可能だと思うが、かなり煩雑なルートを辿る筈である。
『風吹けば桶屋が…』と言うけれど、
世の中にはそういった運行がきっとあるのだろう。
ただ、以前にも綴ったと思うけれど、その運行が人の人生全てを決定する訳では無いとも思う。
あくまでも与えられるのは状況であって、それがどれだけ狭くとも、選択の余地は必ずあると思っている。
例え、それが人様からうしろ指を指される結果になったとしても、それは自分の下した選択の結果であって、勿論自分一人が引き受けるべきものなのだろう。
と、思えるのは以前に読んで感銘を受けた警察小説の小さな巨人の影響だ。