呪いの鯱

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投稿者：SlowBird　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

超指向性の音波あるいは電磁波というテクノロジーが可能になった場合、物体の探査の精度向上が期待でき、もう一つにはそれを使って人間の洗脳に使えるだろうという。誰もがあり得ないというが、その分野で世界トップクラスの技術者がそれに狙われていると言い出して、狂人扱いされ、しかし逃亡中に謎の組織に拉致される。
さて鯱軍団の仙石文蔵にはなんと孫娘がいることが前作「神聖の鯱」であきらかになった。かつて世界放浪をしていた頃に、倒した術者の娘を犯して生まれた子と、またその子をひそかに超能力部族にて育てられていたのがその「ゼロ」だ。そして鯱軍団抹殺のために送り込まれるが、文蔵は彼女を迎え入れる。
本作でその美少女ゼロの能力に目を付けた勢力というのは、金融業界を足がかりに世界征服をたくらんでいたというもので、あたかもソ連崩壊後の世界秩序のあり方を見通していたかのようだ。
そして超指向性技術の解明、略取されたゼロと技術者の奪還、世界危機の回避のための舞台はヨーロッパへと飛ぶ。千石文蔵、関根十郎、天星清八、十樹吾一の四人はそれぞれ各国で暮らしていたが、文蔵が監禁される羽目になってようやく腰を上げて、謀略組織をぶった切っていこうという成り行き。
デリバティブや金融工学はまだ得体も知れず、FXもハッキングも無い時代ではあるが、超指向性というオーバーテクノロジーを手に入れた「アルプスの影」は資本にものを言わせた企業乗っ取りで巨益を目前にするが、鯱軍団の方も、魚やら植物やらトリュフやらと会話するというスゴ技で対抗する。
モノや兵器を動かすより、人間を動かすより、現金そのものを動かしてしまうのが手っ取り早いと気が付いたのは慧眼だったのだろうか。オンラインシステム上の現金であれば、なおスピーディーである。ローテク超能力軍団はそのスピードに勝てるだろうか。そしてゼロの純潔の行方はいかなることになるのか。つまりけっこう死に物狂いなのである。