電子書籍
ero・mala LES MALADIES EROTIQUES
著者 やまだないと
救われるより、ここにいたいLES MALADIES EROTIQUES――エロティックな病気。ひとりで死ぬのが怖かったので、みんな誰かと抱き合っていた……。表題作は雑誌連...
ero・mala LES MALADIES EROTIQUES
Èro・mala Les maladies èrotiques
商品説明
救われるより、ここにいたい
LES MALADIES EROTIQUES――エロティックな病気。
ひとりで死ぬのが怖かったので、みんな誰かと抱き合っていた……。
表題作は雑誌連載分を全面改稿。カラー作品も多数収録した、必読の短編集
【目次】
バルスーズ
3/3
愛の教育
僕と先生と白い車
個人授業
エロマラ
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
小分け商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この商品の他ラインナップ
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
世界中が愛し合っているみたい、っていう冗談
2004/10/02 23:18
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ツカサ - この投稿者のレビュー一覧を見る
96年に、やまだないとが様々な雑誌で発表した短編が収録されている。
その中でも、表題にもなっており最後のシメも担っている『エロマラ』が秀逸だ。
やまだないとは、マックで漫画を描く。それゆえ、線やコマ割が独特である。また、登場する女の子は唇が暑く一直線の眉毛に大きな黒めがちの目をしていて、エロティックな魅力をふんだんに漂わせている。
『エロマラ』の主人公トリコは、18歳になっても生理が来ず、訪れた病院で「常に男性と性交渉をもたなくては成長できない体」だと告げられる。
そこでトリコは「つまりあたしは、ペニスがないと生きていけない体なんだわ」と納得する。
成長しないことが死であるという極端な認識をしたトリコだが、愛とセックスを切り離している彼女にとっては、今現在に感じられるものしか求める対象にはなかった。
つまり、愛という不確かなものを排除し、快楽欲しさにコールガールをする日常を淡々と過ごすことに、何のうしろめたさもない。
しかし、快楽は快楽、愛は愛、という線引きをしていた彼女だが、シゲルという美術学校のモデルとしてやってきた男とセックスをし、そこで初めて愛のようなものを感じ、彼と同棲し始める。
その後、感染したら100%死に至るという病が世界で蔓延し、次々と友人たちが感染していくが、トリコの生きている日常とは別のところで起こっているように描かれる。
死がリアルではないというのは、トリコだけではなくトリコの周りの人間にも言えることであったが、ついにシゲルまでも感染してしまう。
物語は、トリコの語りで終焉を迎える。数カ月後に自分もシゲルも死んでしまうことを語りながらも、「なんだか世界中が愛し合ってるみたいだった。なんてね」とほくそ笑むトリコ。
死に侵されていく世界が、それでも快楽を捨てきれられずに滅亡へ向かっていく、ではなくて、不安や死がうずまく中で愛が散らばっているという様子を、そう言ってしまえる感情に衝撃を受ける。
衝撃とは、言うまでもなく、物語の中におけるトリコという人物像を明確に描く上での決定的な魅力の要素についてだ。
不安や孤独、恐ろしいものである死というものが、それに対峙しても朗らかにほくそ笑むことのできるトリコを、この台詞で描ききっている。
やまだないとという漫画家は、スタイル重視のオシャレ漫画家だと言われがちだが、こういう感覚一つとっても、素晴らしく力のある作家だと感じた。