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姫君の賦(PHP文芸文庫)
著者 玉岡かおる(著)
戦国最後の姫として、生まれた定め――時代に翻弄され、いわれなき悪名を浴びながらも凛として生きた千姫の生涯を鮮やかに描く、著者渾身の歴史ロマン! 徳川家康の孫で、二代将軍・...
姫君の賦(PHP文芸文庫)
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姫君の賦 千姫流流 (PHP文芸文庫)
商品説明
戦国最後の姫として、生まれた定め――時代に翻弄され、いわれなき悪名を浴びながらも凛として生きた千姫の生涯を鮮やかに描く、著者渾身の歴史ロマン! 徳川家康の孫で、二代将軍・秀忠の娘、千姫。天下の泰平のため、幼くして大坂の豊臣秀頼のもとへ嫁ぐが、徳川、豊臣の争いを止めることはできなかった。そして大坂城落城。その後、再嫁した本多忠刻の愛に包まれて穏やかな日々が訪れたかに思えたが、豊臣の影がどこまでもつきまとう・・・・・・。動乱の時代における“姫”という存在の悲哀を、千姫の波瀾の生涯を通して描き切った著者渾身の長編小説。
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紙の本
賦とは
2022/08/31 13:08
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルにある「賦」という言葉、様々な意味がありちょっとわかりにくかったので辞書を引いてみると、
1 とりたて 2 みつぎもの 3 役所が人民を集めて使役すること となにか税金的な意味合いが強い印象を抱いたが、「賦性」、「賦質」という熟語になって、1天性 2 天からさずかった性質または運命 という意味にいたって、なるほどと腑に落ちた。
生きる意味、あるいはミッションと言ってもいいかもしれない。それは自身で見出すものなのか、他者から与えられるものなのか、どちらにしてもその人間の核になるものには違いない。
よく知られた、あるいは知った気になっている戦国最後の姫「千姫」の主に大坂落城後の人生を、その傍らで影として生きた侍女「ちょぼ」の目を通して描いたのが本作。悲劇の生涯を生きたお市の方、三度の落城の炎に人生を焼き尽くされた淀殿、何度も政略のために他家に嫁いだお江の方らの系譜に連なる生まれだが、戦の世から泰平の世へと移り変わるはざまを生きた彼女は、祖母とも伯母、母とも違う運命を生き抜いた。
姫君とは家臣らが調えた道をまっすぐ進むもの、というのが自由な選択に慣れた我々からすると想像の外だが、ある時代や政策の象徴としての生が彼女らの果たすべき「賦」なのだろう。
現代の王族、皇族の方々も、この大いなる「賦」というものから自由にはなっていないように思う。いやむしろ様々な価値観があふれるなかで、唯一人々の安心できる精神の拠り所として、その生き方により注目が集まっているようにも思える。
本作の千姫は、最初の「賦」であった豊臣、徳川の紐帯となることは残念ながら出来なかったが、徳川と譜代家臣の結束という第二の「賦」には自らの意思で臨み、そのなかに個人の幸せという近代的な充足をも見出すことができた。公けと個人という相反する立ち位置のバランスが見事にとれた例だった。この時代としてはかなり稀なことだったのではないだろうか。
ラストの姫の前の襖が次々と開けられ、光降り注ぐ長廊下に出ていくというシーンが素晴らしい。彼女の人生そのままであり、まさに千姫以外の誰にもできない生涯の象徴だ。
人にとっての「賦」がいかに大切か、知らずに手にしている場合もあるし、紆余曲折の中から見つけ出す場合もあるだろう。いずれにしても各人各様の「賦」に今一度思いを馳せてみたい。