- 販売開始日: 2021/06/22
- 出版社: 裳華房
- レーベル: 「数学選書」シリーズ
- ISBN:978-4-7853-1317-3
多様体入門(新装版)
著者 松島与三
※この電子書籍は固定レイアウト型で配信されております。固定レイアウト型は文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。多...
多様体入門(新装版)
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商品説明
※この電子書籍は固定レイアウト型で配信されております。固定レイアウト型は文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。
多様体は“空間”の概念を近代数学の立場から定式化したものであり、幾何学においてその根底をなすだけにとどまらず、理論物理学の大局的理解にも必要なものである。本書の旧版(初版1965年)は、長年にわたって多くの読者から親しまれ、英語版も刊行された本格的入門書である。その旧版をもとに、2017年刊行の新装版では、最新の組版技術によって新たに本文を組み直し、レイアウトも刷新して読者の便宜を図った。なお改版にあたっては原則、一部の文字遣いを改めるにとどめ、本文は変更していない。
目次
- 1.序論
- 2.可微分多様体
- 3.微分形式とテンソル場
- 4.リイ群と等質空間
- 5.微分形式の積分とその応用
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多様体に関わる数学を学びたい方におすすめ
2019/07/06 18:40
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:類太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
誤植が多少訂正されドイツ文字とローマ字の対応表が追加された.
多様体の初学者向けではなく,「数学ガール ポアンカレ予想」や「多様体の基礎」を読んで多様体やその微分法に慣れてから, 群と環など代数系の初歩と複素解析の初歩を補いつつ読んでみることをおすすめしたい. 幾何学・代数学・解析学が高度な立場から融合している様子や幾何学のおもしろさが伝わってくる.
ユークリッド空間R^Nの開集合U上のN変数実数値C^2級関数f:U→Rについてpがfの臨界点であるとき, f(p)が極小値であるか極大値であるかどちらでもないかは, pにおけるヘッセ行列(((∂^2)f/(∂x_i)(∂x_j))(p))_(i, j=1, …, N)が定める対称双一次形式(二次形式:斉次二次関数)H(f, p)のpの近傍U(p)⊆Uにおける符号の変化すなわち
H(f, p)(x)=Σ_(i, j=1, …, N)((∂^2)f/(∂x_i)(∂x_j))(p)(x_i)(x_j)
が正値(⇔ヘッセ行列の固有値が全て正)であるか負値(⇔ヘッセ行列の固有値が全て負)であるか符号不定(⇔ヘッセ行列が正の固有値と負の固有値を持つ)であるか, に対応する. これはU(p)においてfのグラフが下に凸の楕円放物面で近似できるか上に凸の楕円放物面で近似できるか双曲放物面で近似できるか, に対応しているからである. これはテイラーの定理による. 特にN=2の場合はヘッシアンのU(p)における符号の変化に対応する. この事実の幾何的な背景を述べるモースの定理を早い段階で知ることができたのはうれしかった. モースの定理を知ってこの事実の理解が深まった. モースの定理は「多様体の基礎」には書かれていない. 私としてはモースの定理も基礎に入ると思う.
(関数z=f(x, y)が(x, y)=(a, b)で極小であるときz=f(x, y)のグラフは点(a, b, f(a, b))の近傍で下に凸の楕円放物面
z=α(x−a)^2+β(y−b)^2+f(a, b)
で近似できる. ここでα,β>0はfのヘッセ行列の固有値である. 極大となるときは(a, b, f(a, b))の近傍で上に凸の楕円放物面
z=α(x−a)^2+β(y−b)^2+f(a, b)
で近似できる. ここではα,β<0でありやはりヘッセ行列の固有値である. (a, b)が鞍点, すなわち極大でも極小でもないときはfのグラフは(a, b, f(a, b))の近傍で双曲放物面
z=α(x−a)^2+β(y−b)^2+f(a, b)
で近似できる. ただしαβ<0である. )
数学の専門的な本や多変数関数の微分積分と理論的な線型代数そして位相空間論にも慣れていないと読むのはきついだろうけど, 読み応えがあり「多様体の基礎」では触れられていない多様体のパラコンパクト性に関する位相的構造と幾何的構造・複素多様体・コホモロジー・リー群など現代数学や数理物理学を学ぶ上で重要になっている話題があり参考になる.
ただ, 自力で直せる程度ではあるが, 関数と関数値を概念上区別しているのに数式では混同している表記がいくつかある. 理解には差し支えなかったが, 私も書き込んで直しながら読んだ.
必ずしも分かりやすくはないが, 幾何学を学ぶためには必須の入門書であろう. 私は, 或る複素多様体の計量の一意存在問題をその計量を未知関数とする非線型偏微分方程式の解の一意存在問題として考える理論を理解するため, 本書を参考にしている.「多様体の基礎」を読んでからでないと理解できなかったが, 問と注意と脚注も含めてより基礎的なことや発展的なことが豊富に書いてあり, 読んでいておもしろいと感じる. 数学を本気で学ぼうとする方はぜひ読んでみるといいと思う. きっと数学の見え方が変わるだろう.
なお曲線座標系と微分形式とコホモロジーは「解析演習」も参考になる. コホモロジーについては数学セミナー2017年12月号も参考になる.