紙の本
10年かけて描いた大河ドラマ
2022/05/24 18:14
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投稿者:GORI - この投稿者のレビュー一覧を見る
小池真理子さんの小説を久しぶりに読んだ。
ページをめくる手が止まらないとはこの小説を意味するのではないかと思う。
570ページの長編を一気に読んだ。
物語は夫婦の殺害の場面から始まる。
誰が犯人なのか、動機はなんなのか、すぐには明らかにされず、残された小学生の娘の百々子の一生が語られていく。
事件後百々子は、家政婦だったたづの家へ引き取られすくすく育つ。殺された母親の弟の左千夫は、そんな百々子を不憫に思いながらも温かく見守っている。
登場人物の描きかたが素晴らしく引き込まれる。
百々子の小学生の担任の三村の心理描写も素晴らしく、何か起こるのではと思わされた。
しかし一番は左千夫だ。
心がうす暗く、奥底に沈んでいるものがなんとも恐ろしい。
左千夫は百々子が大人になるまで近くにいるのだから。
物語は百々子が還暦を過ぎて自分の一生を辿っていくように終焉を迎える。
波乱に満ちた人生であったはず、そんな人生を逞しく強く生き抜き、いつも自分の信念を忘れずにいた姿が、強靭で美しい。
紙の本
長かった
2022/08/19 23:45
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投稿者:ぼちぼち - この投稿者のレビュー一覧を見る
1963年11月には「魔の土曜日」と呼ばれた日があった。多数の死者を出した炭鉱事故と列車事故が同じ日に起きたからである。この作品はその「土曜日」に起きた殺人から端を発する。実際に起こった事件が登場することで読者を序盤からしっかりと捕まえることができる。また、馴染み深い料理などが出てそれも親しみやすい利点であった。
両親を殺害された百々子の波瀾万丈の一生の物語。
犯人は最初から明かされるもののどのようにして周囲の人間がその犯罪を知ることになるのかがとても気になり読み進めた。
ただ、一つのものを表現するのに形容詞と副詞、「まるで」や「あたかも」がとても多いことや、例えばだが「窓」を表現するのに10行ぐらい要する時もあったりでそれがなければ半分くらいのページで済んだのではないかと思った。これが波瀾万丈が否かは読み手の人生経験に委ねられる。あなたは百々子が波瀾万丈だと思いますか?
紙の本
百々子の波乱万丈の生涯
2023/04/23 03:30
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
いきなり小学生で、両親の殺害を経験。かなり、衝撃的な始まりです。その百々子の周りの人たちとの関わりと成長、60歳過ぎてから……みたいなお話なんですけど、もう少し、この内容ならば、短くできるのでは?と思いました。ストーリー自体は面白いので。
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推理小説のはじまりの殺人の出来事から、
ある裕福な美少女の転落と再生を緻密な
心理描写で描いた女性の一生。
彼女の信じていた人々は次々と彼女の元から
天上へと去って行く。
唯一無二の正しさを持った家政婦だったちづ一家
彼女の周りにはいつも、陰鬱な両親殺害事件
が纏わりつく。
信じていた叔父のとてつもない彼女への
執着をしり絶望、そして恋人の豹変そして離婚。
それからの晩年の彼女はようやく落ち着いた
暮らしを手にするが、病の為すべてはその内忘却の彼方へと忘れ去って行くのだろう。
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”伴侶の看取りを挟んで10年かかったミステリ大作”ということなのだが、ミステリ要素がちょっと少なかったかも。小池さんの作品はあまり読んでないので、こういうものなのかどうかもちょっとわからず。最後に認知症が出てきたのは今風。
作中で流れたチャイコフスキーの「舟歌」を弾いてみたくなりました。
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これでもか!と思うほど波乱の人生を歩む主人公 百々子と出会えたこと、わたしにとって貴重な経験になったと感じています。
重厚な長編ですが、夜更かしして一気に読んでしまいました。
物語の内容はもちろん、登場人物・風景の表現がとても豊かで、濃密で贅沢な読書時間となりました。
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黒沢百々子という非の打ち所のないお嬢様の人生の物語。ある日、突然奪われた幸せな日々。家政婦として勤めていた、たづとその家族に支えられなければ心が壊れただろう。刑事がもっとしっかり捜査しなよ!って思ってしまう。紘一と結ばれていたら又 違う幸せもあったのか…いろいろ考えてしまう。
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たづさんの存在がすごく地味に素敵であった。
ラストの百々子が左千代を許す?みたいなくだりは予想というか納得であった。恐竜云々の最初とラストのリンクも感慨深い。
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久しぶりの小池さん作品。
本の分厚さに証書圧倒されながらも、読み始めるとあっという間に読んでしまった。
この本を読んで再確認したこと。私は小池さんの描く女性が好きだ。
可愛くて、色っぽくて、茶目っ気があって。
計算高くて、男に媚びたりもする。
でも、ただひたすらに「強い」のだ。
可愛いだけではない。「賢い」のだ。
終盤、恩師に「強い人だ」と言われ、「いいえ。ただ、生きてきただけです」と答えた百々子。
しびれた。かっこよすぎる。
桃子の両親を殺害した犯人は早々に明らかになるしおまけに自殺してしまうし、ミステリー要素は薄い。この本はあくまでも百々子の歴史であり、読み進めるうちに百々子を応援し、最期を見届けたいと願っている自分がいた。
若年性認知症を患ってしまった百々子が、一つ一つの行動を口に出して確認しながら家を出るシーンがある。最初はバカらしく思っていたけど、できるだけ自分の事は自分でしたいから、と。
そんな状況になっても尚、地に足をつけ、「ただ生きている」百々子が、あまりにも百々子らしく、涙が出そうになった。
神よ、憐れみたまえ。どうか百々子を守ってください。そう願いながらページを閉じました。
やっぱり小池さんの作品が好き!!
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資産家の家に生まれ、優しい両親を持ち、才能も美貌も兼ね備えた百々子。しかし十二歳の時に何者かに両親を殺され、「血塗られた土曜日の令嬢」などと称されるようになってしまう。それでも生来の負けん気で力強く生き抜いた彼女の人生を描いた物語。
と、あらすじだけを見ると、大変不幸な人生のように見えてしまうのですが。百々子の人生は決して不幸ではないと思います。もちろん両親を殺されるという大きな不幸はあったものの、彼女のことを思い支えてくれる温かな人たちが多くて救われました。全く不幸のない人生を送る人なんてきっといないはずだし、それなのに不幸ばかりを見つめて生きること自体が不幸。前を見据えて生きる百々子の姿勢には勇気づけられます。
その一方で、百々子の両親を殺した犯人の男。途中で「もしやこの人が?」と分かるようにはなっているのだけれど。何故彼がそんなことをしたのか、というのには驚愕。しかし確かに彼の嗜好は、一般的には変態的で犯罪者のように扱われてしまうものだろうけれど。彼の行動だけを思えば、間違いのない愛情でもあったところは悲しいです。あくまでも秘めた思いであり彼自身もそれを自覚していたのだから、それさえ知られることがなければ、あんな悲劇は起きなかったのに。ひたすらやりきれない思いです。ただ、百々子がそのことにきちんと気づいたことには救われた気持ちになりました。
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待ちに待った小池さんの新作。
途中、ご主人の看護、ご逝去を挟み、十年以上かかった大作。
一人の女性の一生が描かれてる。
ご両親殺害犯人がまさかの叔父?と行間から漂ってきたときは戦慄か走った。
殺害の動機となったノートを読んだ母の気持ちを考えるに、よくぞ、あそこで踏みとどまった、と。
叔父と函館へ墓参りに行くシーンは、まさか、心中??とページを捲る手が急いた位だ。
そしてアルツハイマー。
まあ、今の時代、ある話だよね。
この仕舞い方はどういう意味があるんだろう。
読後、Alexaくんに、題名となった、バッハのマタイ受難曲をリクエスト。
これを聞いて、小説とセットで、世界観が広がった。
そして、小池さん、
書いてくれてありがとう。
少し休んだら次作、待ってます
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一人の女性の物語。少女から大人へと成長していくなかで経験した思いがけない両親の死、その事件。それによって変わってしまったもの。人生、自分。そういうなかであっても耐えて生きること、進んでいくこと。その強さがある。それが際立つほどに不安や弱さも見えてきて気持ちを揺さぶられる。中盤あたりから犯罪小説のような展開があり犯人の描写がどんどん濃くなっていくにつれて面白さはさらに加速していく。女性の幕引きのような終章。その生と死を見つめるラストは本当に素晴らしい。今のところ今年のベスト。
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❇︎
長編
一人の人間が女という性別で生まれ、
美しい容貌と人を魅了する色香故に
運命に翻弄され続けながらそれでも強い意思を
もって人生を強く生きる物語。
筆者が10年をかけて書き上げたと
帯にある通りとにかく長い。
そしてバードカバーだったのですが、
字が小さくて目がつらかった。
一つの章の中で話手が度々入れ替わるため、
誰が何の話をしているのかしっかり
文字からついていく必要があります。
でも、えっ飛んだと戸惑うのは束の間で
また次の流れに引っ張られるのは、
やっぱり大御所さんならではでしょうか。
これでもか!と言うほど主人に様々なことが
起こるので結構お腹いっぱいになります。
それでも腐らず歪まず、生来の気の強さを
失わず生き抜く主人公の強さや逞しさは、
数奇な運命に翻弄された人生ではありますが、
神に生きることを強く祝福された類い稀な人
と感じました。
ーーーーー
何不自由ない環境に生まれ優しい両親の愛情に
育まれて伸びやかに育つ百々子は、
ある日、何者かに両親を殺され生活が一変する。
犯人逮捕への手がかりが見つからない中、
周囲の憐憫と同情の目に晒されながらも
強靭な生命力に支えられ生きる百々子。
美しい容姿、人を魅了してやまない色香を
持って生まれたために、波乱に満ちた運命に
翻弄される一人の女性の物語。
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恐らくこの主人公があまり好きではないからだと思うのだけど、特に刺さるものはなかった。
どちらかというと叔父の方が不憫に思えてならない。だからといって殺人は許されないが。
どの登場人物も微妙に相手の真意を読み取れていない印象で「見たいものを見たい様にしか見ない」。
それが人間らしいと言えばそうなのだけれど、主題はそこではなさそうなのでどうなんだろう?
その筆頭に思えた担任の先生が終章でまで登場する辺りが滑稽にも見えるのだけど、その滑稽さをもってして「神よ憐れみたまえ」なの?まぁ人の生なんて滑稽なものではあるけど。
なんかそれも違う気がするけど、まぁ人それぞれなので置いといて、刺さらないにもかかわらずその筆致には読み手を引き込む力があって、夢中で読んでしまうものだったので、もう少し歳を重ねたらまた違う感想を持つのかなと思う。覚えていたら再読しようかな。
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初めて小池真理子さんの本を読みました。
物語の中にぐいぐい引き込まれて、一気に読んでしまいました。
読んだ後に、複雑な余韻が残る本に久しぶりに出会え、読んで良かった...と素直に感謝の気持ちが湧きました。