紙の本
よかった
2022/02/28 10:55
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投稿者:怪人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近はあまり小説本を読まないのだが、題名に誘われて読み始めた。引き込まれる内容と文章のおかげで一気に読了する。人の一生とは何なのか、どう生きたらよいのかなどについて改めて考えさせられる1冊でもあった。人生の途上で多くの人との出逢いと交流をくり返しながら、しかるべき目標を掲げても、くねくねと寄り道しながら進んでいくものなのだろうか。
明治の時代に生きた著名な文学者の生涯を描いた小説だ。本人の資質なのか、こうした人材が育っていく時代だったのか。現代に生きていても、漱石が文豪になったのか想像できないが、近代国家として成長してゆく明治時代の日本を体験してみたい気もする。
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この本を読んでから社会で明治時代の作家の名前や作品を勉強していたらもう少しつながりとかがわかって面白く授業を受けれたのになぁと思う。夏目漱石が日本の純文学を広げる一人者であることがよくわかり、後の芥川龍之介に引き継いだ件が感慨深い。それにしてもこの時代巨匠といわれる作家が次々に生まれ、なにより昔の日本人は勤勉だったんだなと思う。まぁ、悪たれはこの時代にも多くいたんだろうけど勉学に励む人の多さに感心するばかりだ。
小説としては幾分「夏目漱石とは」みたいな説明的なところも多く、読んでて眠たくなることもあって面白いかといわれると、上下巻トータルしてもやっぱり資料集を読んでいるような気分でワクワクはなかったかな。
実際夏目漱石の本を読んでも面白いと思ったことがないんだけど、この本を読み終えて、荒þに読み直してみると気づかなかった発見があるかもしれない。ただ、読むにしても現代用語で表現しなおされたものがあるなら読んでみたいけど、昔の候だの、ゐるだのと読み疲れるようなものはいまさら勘弁。
娯楽で読みたいのであって勉学で読みたくない笑
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下巻では、「草枕」の舞台となった小天(おあま)温泉への旅行、イギリスへの給費留学、親友・正岡子規の死去などを経て、小説家としての地位を確立し、晩年に至るまでを描く。史実に沿いながらも、それぞれの場面が明るく生き生きと、また、鮮やかに読み手に伝わってくる。
漱石(金之助)がイギリス留学中に発狂したのではと言われたその背景、教師生活がいやになり小説家を目指す上での苦悩もよく描写されていた。
また、今更ながらではあるが「ホトトギス」に掲載された「吾輩は猫である」に始まり「坊っちゃん」、「草枕」、「三四郎」、「こころ」そして晩年を迎え、未完となった「明暗」など多数の名作を残したことの偉大さを実感した。加えて、執筆のきっかけやモデルについても触れられていて小説の舞台裏や漱石という人物の奥行を知れたのも良かった。
さらに、寺田寅彦、中勘助、内田百閒、島崎藤村、志賀直哉、芥川龍之介など、そうそうたる顔ぶれの作家が漱石と交流があり、彼を慕っていたことにも驚かされた。
日清、日露の戦争、文明開化など明治期の時代背景の挿入、ミレイが描いた水辺に浮かぶオフィーリアなど美術作品の紹介もあり、勉強になることも多かった。
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上巻の栞が水色で下巻が茶色。表紙も
着物姿と洋装。黒猫と美しい鏡子夫人。
今まで持っていた漱石の知識がガラガラと崩れました。イギリスでちゃんとしてるし、
小泉八雲先生の後も人気出てるし、鏡子さんにも愛されてるし、この本を読んで、本当に良かった。
木島櫻谷の「寒月」を新聞社時代に酷評していて、なんで美術を勉強していない漱石が絵の評を書けたんだろう?と思っていたけど、
成る程、分かりました。
漱石の作家人生が、たった11年!
漱石の寄り道、失敗、道草のおかげで生まれた作品だったんだと、あらためて知りました
また、漱石山房に猫のお墓参りをして空也の最中を食べたいなぁ~。
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若くして亡くなり、波乱に満ちた人生だったと思いますが、実際、金之助本人としてはこんな感じで案外あっさりとしたものだったのかも知れません。月並みですが、漱石の作品を久しぶりに読んでみたくなりました。
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【文豪】という言葉が初めて使われたのが、漱石が亡くなって新聞や雑誌がこぞって追悼特集を組む中、『新小説』が発刊した『文豪夏目漱石、臨時号』だったそうだ。
夏目漱石は、元祖‼︎文豪だったのだ。
「日本の小説」というものの土台は漱石が作ったのかもしれない。
この作品は、小説というより伝記かな〜などと思いながら読んでいた。
時代背景が丹念に描き込まれ、歴史小説のようでもあった。
その流れの中で、漱石が、有名な作品を次々と生み出すきっかけも分かり、興味深い。
しかし、読み終われば、やはり小説らしく「人間」を描いた部分がよく思い出される。
正岡子規との深いつながり。
個性的な奥様・鏡子、子だくさんの家庭。
漱石を慕って入り浸る寺田寅彦。
異国の地で知る親友の死。
福猫との別れでは、猫の訃報を葉書で友人に知らせる漱石先生である。
毎日のように自宅に詰めかける学生たち。
新しい才能を発掘し、活躍の場を与えたのも漱石先生だった。
おしまいの、芥川龍之介が寺田寅彦に漱石の昔の話を聞く場面が良い。
寺田は、漱石流「築山の登り方」を教えるのだ。
山は、いかに早くてっぺんに登るかではない。
どこから登っても、転んでもいい。
むしろ汗を掻き掻き半ベソくらいした方が、同じてっぺんに立っても見える風景は格別。
『ミチクサはおおいにすべし、と。
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ほぼ正岡子規との関係を通じて描かれる夏目漱石の生涯。
漱石としての活動年数は短く、夏目金之助として書かれた本書はその実像に近く感じる。
作者の小説は余り読んだことがないが、親しみやすくどこか暖かみやユーモアを感じさせるもので、本書にふさわしい。
短い活動期間に、前例のない小説という形式を開拓し、傑作を多数残し、数多の後進を育てた漱石は正に巨匠、文豪であったが、人間的な魅力にも溢れた人物だったことだろう。
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生涯の友を失って無念だろうけど~流産した妻を湘南で労り,熊本の五高では寺田寅彦が始終出入りしていた。四年経過して,文部省の金で倫敦に留学し,不足する金に困りながら過ごす内に子規が死んでしまった。帰国した後の列車には妻と義父が国府津から乗り込んできて,新橋では娘二人を含む出迎えがあった。神経衰弱を理由に五高を辞職し帝大と一高で講師を務めても悪評が立ったのを糺してくれたのは子規の弟子・高浜虚子だった。ほとどぎす小説を書けと言ったのも虚子だった。教職を辞し,朝日新聞社員になっても,教え子や門下生を名乗る人物が出入りし,木曜以外は面会を断ったモノの,その中から物書き名人を次々に発掘していった。修善寺では死なず,家族・弟子・出版関係者に看取られて生涯を閉じる~羨ましいほどの友情で結ばれている,漱石と子規,そして漱石と寅彦。本人が飛び抜けた才能を持っていないと素晴らしき友は得られないだろう・残念!それにしても,漱石観が変わったし,鏡子さんも今までのイメージとちょっと違うのかもと思わされた。伊集院さんは優しい眼差しを持つ人かも知れない
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正岡の登場は下巻半分までくらい、以降は寅彦にバトンタッチする感じで女房役として描かれています。鏡子さんも丁寧に、また好意的に描いてくださっていてとても良かったです。虚子の人物像も変に逸脱せず抑えがちでそれも良かった…
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あー、漱石没、47歳という若さで。
胃腸は悪かったみたいだけど、糖尿病も併発してたのね。
最期は吐血に次ぐ吐血で、でも皆に(門下生、子どもたち実に6人くらいの子沢山だったのね。)見送られて安らかに逝ったのが救いだわ。
明暗が絶筆となってしまったのは周知のこと。
子規の妹の律の専門学校の資金を用立てたり、里子に出された養父に(充分養育代は払ったのに)幾度と無心されその度用立てたりで(引っ越しも多かったらしい)けしてお金に余裕があったわけでなさそう。
意外だったのは森林太郎(鴎外)と交友があってお互いの才能を認め合い手紙も出し合ってたりした仲だったとは。
”三四郎”に触発されれ”青年”を書いたとか。
同じ時代を生きていた二人だものね。
47歳という短い人生で(作家としては更に短い)あんな多作で名作を残せたのも、朝日新聞社の池辺三山という今でいう編集者的な人の出逢いも見過ごせない。
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夏目漱石を取り巻く名だたる人物たち。
時代考証も丁寧にされている。
私たちは夏目漱石の作家としての顔しか知らないが、彼は49歳の生涯を終えるまでに数多くのミチクサをしている。しかしながら凡人とは違い、どのミチクサも一流だから感心してしまう。
家庭人としては多少変わり者だった衒いもあるが、奥様の人物像も素晴らしく家庭はうまくいっていたと見られる。
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下巻です。
私が今まで持っていた漱石像とは大分違っていたので少し戸惑いました。
青年時はともかくとして、それ以降は神経質で気難しい癇癪持ち(妻も悪妻で有名ですよね)だと思っていたのに、本書の漱石は最後まで慈愛に満ちた紳士、でした。江戸っ子らしさもなかった。
元々の先入観が拭えなくて読後直後はどうしても違和感が残りましたが、まあこういうとらえ方もアリなのかな。
寺田や子規との友情は本物だと思うし、こういう一面もあったのね、と受け入れた方がいいかなと今は思っています。
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伊集院静さんの○○先生シリーズ、且つ、夏目漱石先生ときたら読まないわけにはいかない。
ノボさんとの交流と別れ(真の友との関係が羨ましい)、松山熊本での教師生活(教わった生徒が羨ましい)、帝大の講義や講演会(聴いてみたかった)、寺田寅彦他の弟子との交流(木曜会に入りたい)、鏡子夫人との生活(思っていたよりも素敵な夫婦だ)、そして猫との関係。
3度目の漱石制覇がしたくなった。
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英国留学を経て小説家へと進む金之助。
文豪はこうして誕生したんだな、と勉強になりました。日本人なら誰もが知る夏目漱石。氏の有名な作品より先に読んでおきたい1冊。
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■ Before(本の選定理由)
上巻を読了。まだ小説は書いていない。
正岡子規には死の影が近づいている。
果たして漱石はその後どんな日々を過ごしたのだろう。
■ 気づき
最後に会った日に正岡子規が漱石に送った句「秋の雨 荷物濡らすな 風邪ひくな」。死期を悟ったなかで、こんなにも気丈に振る舞い、ユーモアを大切にした姿に涙が止まらなかった。
また、漱石が文学を志すのは意外に遅く、公費留学中のロンドンで、安アパートで一人、35歳の正月を迎えた朝だったという。
■ Todo
この感慨を胸に漱石の小説を読み返したから、きっと違った風景=漱石の日々の断片を見ることだろう。分量で敬遠していた「吾輩は猫である」も読んでみよう。
そして、何かを始めるのに、遅すぎるということは無い。
自分の中の「兆し」の感覚を大切にしてあげよう。