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怪人さんのレビュー一覧

投稿者:怪人

254 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

同感です

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

大学学部の卒論では中世の瀬戸内海水運について研究し、大学院に進み、イギリスオックスフォード大学院での17~18世紀のテムズ川の水上交通の研究につながる。さらに、水が深まり世界の水問題に対象領域が広がってゆく。
 これまで講演したものから編集されているので、各章とも内容に無駄がなくわかりやすい。とりわけ、4章、5章のイギリス留学体験記は興味深い。テムズ川の河川改修については建設工事の頃は人々の注目が集まるが、改修後のテムズ川がどのように使われ、活用されているのかについてはあまり知られていない、と指摘し、水上交通の調査研究に邁進する動機付けが述べられている。
 日常的に利便性が実感できる道路とは異なり、河川や港湾といったやや地味なインフラ施設に関する指摘は同感である。
 何より、人の生活に欠かせない水問題全般に関心を抱き研究を続け、広範に活動されていることに敬意を表する。

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紙の本

時間をかけて

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

フーバー元米大統領が20年の歳月をかけて第2次世界大戦の過程を検討した回顧録であり、上・下1300ページにも及ぶ大著である。
 この大著を読む前に訳者の著作渡辺惣樹「誰が第2次世界大戦を起こしたのか」を読んでおくと理解が早い。
 日米の戦争に至る経過については種々論考が発表されている。米側の記録としては当時の状況を整理し妥当な評価ではないかと思う。但し、だからといって、ルーズベルト、チャーチル、スターリン達だけが諸悪の根源というものでもないだろう。
 一方の当時の日本を経過をみれば、戦争を回避するように、可能な限り情報を入手し、適切な判断の基に決断できる指導者がいなかったということなので、大きな責任は一方の当事者として免れないだろう。
 不可侵条約を結んでいたソビエトに英米との戦争終結の調整を依頼するような愚をおかしている。情報戦争に著しく能力を欠いていたことは大きな不幸だった。外交下手は昔から変わらない。情報収集能力も含め外交能力の抜本的改善を図らないと再度の不幸な事態に陥る危険性は高い。
 フーバーとルーズベルト、2人の元大統領の生い立ちや人柄について訳者が記している。これを読んだだけでもフーバー元大統領の高潔さがわかる。

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紙の本

頷ける

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

経済学は何のためにあるのだろうか。ある経済学者は、経済学はすべての人々ができるだけ豊かな生活を営むことができるようにするためにどうすればよいのか、という実践的な要請に応えなければいけない、と言う。著者は、効率性、経済成長だけでなく、分配の公正、貧困の解消という経済学本来の立場に返って、新しい経済学の分析的枠組、展開を求めて経済学の努力がなされなければならない、と述べる。
 経済学者は専門家として政治家に次いで下から2番目の信用度、つまり信用されない存在らしい。日本でも同様だろうと思う。政治家が経済学者の意見を聞いて政策を行った時に、うまくいくこともあるが、失敗することの方が多かったようだ。
 「貧困の経済学」を読んで考えさせられたが、この本ではさらに刺激的であった。貧困問題を研究してきた著者は、アメリカの状況を実証的に調査分析して論じ、貧困国で起きていることは先進国でも起きているという。アメリカのダイナミクスは顕著な地域格差を覆い隠しており、この現象はヨーロッパの国でも起きているとする。
 世界全体としてみれば経済成長により数十年前に比べれば貧困状況は改善されてきた。とはいえ、良い政策もあれば悪い政策もあり、問題も累積し、それが顕在化している。
 良い経済学もあるが悪い経済学もある。悪い経済学に基づく政策に対して次のように行動することを訴える。根拠のない考えに対してできる唯一のことは油断せずに見張り、「疑う余地はない」などという主張に騙されず、奇跡の約束を疑い、エビデンスを吟味し、問題を単純化せず、根気よく取り組み、調べられることは調べ、判明した事実に誠実であることだ。
 こうした警戒を怠ったら多面的な問題を巡る議論は極度に単純化あるは矮小化され、政策分析も行わずに安直な見かけ倒しの解決に帰還することになるだろう。
 改めて見渡せば頷けることも多い。

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紙の本

寛容と自制

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

民主主義の雄、アメリカにおけるトランプ大統領誕生は民主主義の自壊の始まりだ。アメリカは憲法があるから民主主義が守られてきた、ということではなく、2大政党間に寛容と自制心があったからこそ民主主義の崩壊を防いできたという。これまでにも崩壊の危機は幾度もあったのだが、両党間、両党政治家達の寛容と自制心で克服してきた歴史がある。しかし、トランプ大統領の出現はこのガードレールがなくなってしまったことを意味するという。
 トランプ大統領誕生は一夜にして起こったわけではなく、民主主義を殺すそれまでの流れがあったわけで、これが加速した結果である。アメリカ建国以来、アメリカの民主主義制度、大統領制について丹念に分析されているので理解がしやすく、納得させられる。
 池上彰氏が解説を行い、日本について触れている。安倍1強体制の下で国会の討論が機能しなくなり、行政は忖度が横行、政党間同士罵り合う現状を憂いている。同感。

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紙の本

有益で為になる

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

第1次世界大戦については、著者の指摘するように多くの日本人の中の一人である自分自身にとってもほとんど空白期である。第1次大戦は日露戦争時代、18C末~19C初等から続く国際的な状況から途切れている訳ではなく、繋がっている。日露戦争は第0次大戦というらしい。兵器の技術発展、戦争の戦い方、経済財政状況、情報戦、特殊工作などなど話題も多く、400頁近い本だが、読み応えもあり、有益である。現代の為政者も歴史に学ぶ必要がある。

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紙の本

いのちの水

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

災害や渇水などで断水騒ぎがあるとニュースになるが、身近な水道事業について報じられることは多くない。蛇口の水がどこからどうやって運ばれてくるのか、関心が無い、あるいは知らない人も多いようだ。
 世界の水問題については現天皇も皇太子時代から強く関心を持ち、講演などを積極的に行われている。その水問題について日本でも今後に大きな課題が控えているのだが認知度は低いようである。一方では、その課題の解決策としてそれなりの理屈を付けて水道事業の民営化に邁進する自治体もある。水道法の改正がそれを後押しする。
 世界の水情勢を冷静にみれば、PFI、コンセッション方式で民営化した水道事業の失敗は明らかであり、本家イギリスでも問題が多いとしてPFI は止めている。日本ではこれから始めようとしている。住民の反対で中止や延期された自治体もあるが、住民不在で知事が暴走している県もある。詳細を知ればいかにおかしいかわかるのだが、県民には情報が行き渡っていない。県民置いてけぼりの県知事による民間のための水道事業の民営化のようだ。
 今後将来の水道事業についてそれぞれの住民が真剣に向き合わなければならない大きな課題の一つであることは間違いがなく、そのことを考える手がかりと指針を与えてくれる本である。

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紙の本

10%?

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あなたの体うち、ヒトの部分は10%しかない。あなたという存在には血と肉と筋肉と骨、脳と皮膚だけでなく、細菌と菌類が含まれている。あなたの体はあなたのものである以上に、微生物のものであるのだ、だそうだ。
 マレーシアでのコウモリの調査中にダニに刺され、熱帯病になってしまい、治療のために使った抗生物質により回復したものの、別な不調に苦しめられることになった。この経験から体内に棲む細菌、微生物のことに関心を深くし、共生微生物と健康問題について調査を始めたそうだ。
 「共生微生物のアンバランスが胃腸疾患、アレルギー、自己免疫疾患、さらには肥満を引き起こしているという科学的証拠が続々と出てきていることを私は知った。体の病気だけではない。不安症、うつ病、脅迫性障害、自閉症といった心の病気にも微生物が影響している。私たちが人生の一部としている病気の多くはどうやら、遺伝子の欠陥や体力低下のせいではなく、ヒトの細胞の延長にある微生物を軽んじたせいで出現した、新しい病態のようなのだ。」
 腸内細菌とヒトの健康問題が中心であり、モイセズ・ベラスケス=マノフの「寄生虫なき病」のように寄生虫の話はほとんど出てこないが、女性らしい視点もあり、読みやすくまとめられている。

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紙の本

わかりました

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日銀の元総裁白川方明氏の回顧録である。経済や金融について詳しくない者の一人だが、この本を通じて改めて金融政策の難しさを感じた。日銀の業務や使命に関して、理論と現実、全体と部分、短期と長期などの多様な軸の中で、総合的な視野、実証的な分析、学究的姿勢などによる取り組みは強く共感できるし、本の内容もなんとか理解できる。
 日本銀行の中央銀行としての役割や目的について熟考し、行動していく著者の態度は一貫している。第3部のところの中央銀行の組織論は現代の他の組織でも通用できる議論ではないかと思う。
 一方で現在の日銀の対応状況を見ていると、元総裁の教訓が活かされていないばかりでなく、手段が目的化し、思考停止状態に陥っているように思える。現総裁も将来退いたら回顧録を著して、後世に教訓を伝えていく義務があるのだろう。
 戻ってこの回顧録、700ページをこえる長編ものなので、読む終えるのに一苦労する。広く一般の人に著者の考え方を知ってもらうようコンパクトにまとめた本の出版も期待したいところである。

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紙の本

敬服

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30年の時間は十分に長いといえるが、支援した大事業を成し遂げれば達成感も一塩ではないだろうか。昆虫好きの医師が混乱の地アフガニスタンで医師活動を経て灌漑計画と用水路建設事業を行い、砂漠化してしまった荒廃農地を元に戻し、穀物栽培を復活させた。まだ用水路事業は続行する予定という。
 人間にとって何が必要であるか、何が大切なのか、改めて根源的な問題を問われているように思う。
 中村哲氏には敬服しかない。

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紙の本

紙の本消費低迷と日本経済

2017/12/28 20:13

首相にプレゼント

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小野善康氏の読みやすく、分かりやすい説明の本である。帯には「将来不安だからお金を使わない?「お金を使えば不安は消える」が正解です。」とあるが、だからといって行動は逡巡する。何と言っても、某首相や某銀行総裁のもとでは先行き不安で、大幅な消費に向かうことはできない。処方箋はあるが、薬は飲めない?

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電子書籍

電子書籍知ろうとすること。(新潮文庫)

2017/12/23 18:26

一読を

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先月、11月下旬、仙台市において、第1回世界防災フォーラムが開催されたが、本会議の前日祭としてフォーラムが行われた。「青少年からのメッセージ」の中で、被災地域の若い世代の活動が本人達から発表された。福島県からは福島高校の生徒が「福島高校放射線班の活動」を発表した。福島県内の放射線量測定を行い、その結果をまとめて発表しているもので、英文の論文にしたてて世界に向けて発信もしている。それが縁で、ヨーロッパ、フランスでの国際会議に参加したり、フランスの高校生との交流活動などを通じて国際交流も経験しているという内容である。
 この高校生の活動を支援したのが東大の早野教授であることを報告の中で知った。英文の論文作成の指導も行い、ヨーロッパへも引率した。
 高校生の活動を支援した早野教授と糸井重里が対談した際の記録がこの本である。福島原発事故の影響、放射線の影響などについて、原子核物理学者の知識を生かしながら行った活動が縷々報告されている。
 宮城県に住み東日本大震災については強い関心をもって情報収集に努めているつもりだが、隣県の福島県のことについては知らぬことも多かった。早野教授がツイッターの発信から活動が始まったようで、私費も当時ながらも福島に通い続けたそうだ。
 3年前に文庫本として発行されたものだが、先月のフォーラムから辿りついた。福島県の高校生にも感心するが、早野教授にも敬意を表する。一読されることを薦める。

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紙の本

10年前と同じにならないように

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ごみ収集について地方自治、行政学を専門とする大学研究者がその業務を自らも体験して、 研究を深めた。ごみ収集、処理だけでなく関連して、連帯による地域創生とまちづくりに発展した事例も紹介しながら論考したものだ。昨年のコロナ禍での収集作業への影響なども詳細に記されている。
 ごみ収集作業は、住民にとって日々の生活に不可欠な公共サービスの中で、普段は感謝することさえ忘れ去られているものの一つである。行政改革によって真っ先に削減された現業と言われる部類の業務である。職員が削減された部分は次第に民間委託が拡がり、行政側の職員も少数化・高齢化が進んでいる。そのこともあり、災害時などの非常時には大混乱し、サービスが一時停止することもあり、今次のパンデミックのもとで現実化した。一方で、コロナ禍で見直され、住民にも感謝されたのだが、その気持ちも数ヶ月ぐらいしか持続しないらしい。
 コロナ禍のゴミ行政を体験した著者は言う。
「・・継続的・安定的な行政サービスの提供という大局的な視点を持つのであれば、これまでの新自由主義的な改革路線が果たして私たちの生活や福祉にとって有効であったのかを考えていく必要がある。
 今回のコロナ問題はゆきすぎた効率化に対する検討を促す機会を提供するものであったともいえ、行政に限らず、我々一人一人も社会のありようについて考えていく機会になったのではなかろうか。・・・」
 我々一人一人の中には当然議員や政治家なども入ると思うが、そのような方々で指摘されたことを自覚している人はどのくらいいるのだろうか。喉元過ぎて以前のままにならぬことを少しばかり期待しているのだが、さてどうなるのか。

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紙の本

紙の本日本語を、取り戻す。

2021/05/18 09:10

よし

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著者のことは全く知らなかったのだが、書評か広告かで知り本書を手にした。SNSをほとんど利用しない人間なので、炎上云々の類の話はほとんどわからない。
 本書はここ数年にかけて著者が発表した作品が編集されている。どれも読みやすく、共感できるし、主張についても概ね賛同できる。特に前首相のことが多く書かれており、評した内容も同感である。突拍子もなく政策を発表したかと思うと詭弁にもならない嘘の答弁をくり返して国会の論戦に水を差し、人のヤジには強く抗議するが、人間性を疑われるような野次に努力を傾注した御大だったと思う。どんな人間にも長所短所があり、政治家としても功罪あるので一面的な見方をするのも気の毒だが、どれほどの国民が彼の退陣を惜しんだろうか。
 代弁してくれた著者に感謝したいが、自分が溜飲下げたところで世の中は変わらない。

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紙の本

読み返す

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

50年以上も昔の1968年に発売された早川書房の世界SF全集の一巻にハックスリイの「すばらしき新世界」とオーウエルの「1984年」が収められていた。当時16歳の頃にこの本を購入して読んだ。SFとはいえ内容が難しいものに思え、次第に忘れていった。その後、学生時代、英語の講義で使用されたエッセイ集でもオーウエルに出会い、再度、例えば1984年が来たら読み返してみようと思っていた。
 そうこうしているうちに、21世紀になってしまった。この本はその後転居する度に持ち続けて今も書棚にある。そのオーウエルが没後70年だという。本書を読みオーウエルの人や人生について初めてわかったような気がする。
 階級格差、植民地政策と人種差別などイギリスの社会も複雑性に富んでいるが、サッチャー以後の新自由主義的政策により格差も激しくなっているという。そのような背景をもつ社会に生まれ育ったオーウエルも強い影響を受けていたのであろう。波瀾万丈、破天荒とも思える行動は人間としての理想に対してそれを損なうものへの怒り、憤りをもって表現してきた人生だった。今年はオーウエルの作品をじっくり味わいたいと思う。

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電子書籍

電子書籍コロナ後の世界

2020/10/20 09:18

読み応え

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

岩波新書の「コロナ後の世界を生きるー私たちの提言ー」は日本国内の有識者のコロナ禍の論評だったが、この本は米英の世界的な著名人のものである。
 日本に関するコメントがあり、6人の識者の日本評は妥当なものと思える。各人の専門分野における日本政府や政策に関しては概して厳しい反面、日本の長所も指摘してくれ、希望を持たせてくれている。各論とも読み応えがある。
 日本の為政者にも是非読んでもらいたいものだ。

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