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電子書籍
神様のパラドックス上
著者 機本伸司
大学の文学部に通う一年生の井沢直美は、大学生活に慣れたものの、満たされない日々を送っていた。そんなある日、五月祭で直美の前に現れた小佐薙と名乗る男。彼の勤める会社は、なん...
神様のパラドックス上
神様のパラドックス 上 (ハルキ文庫)
商品説明
大学の文学部に通う一年生の井沢直美は、大学生活に慣れたものの、満たされない日々を送っていた。そんなある日、五月祭で直美の前に現れた小佐薙と名乗る男。彼の勤める会社は、なんとスーパーコンピューターなどを製造するメーカー。小佐薙の言葉に惹きつけられ会社のアルバイトに応募した直美だったが、その内容は驚くべきものだった! 最先端の量子コンピューターを用いて占い事業を展開しようというのだが……。傑作SF長篇、待望の文庫化(全二巻)
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紙の本
意外にがっつり化学本
2010/12/22 09:55
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
表紙が萌え系女の子であったり、物語の始まりこそその女の子の今一物足りない大学生活を描いていたりで油断しがちだが。どうしてどうして本作品は、想像以上にがっつりと最先端科学をテーマにした作品。いや最先端科学と宗教、倫理や哲学も取り混ぜて考察し創り上げた一作になっている。そういう意味では以前話題になったダン・ブラウンの「天使と悪魔」に、ちょっとテイストが近いか。だから萌え要素を期待して本作品に入ってくると、ちょっと期待はずれとなってしまうかもしれない。
男の子というのは、概してメカが好きなものである。カメラや車などは、その性能よりも見た目やスペックに魅力を感じてしまう。そう「マシン的な物」に憧れてしまうのだ。そういう意味で「大型のコンピューター」というのも、伝統的に子供たちの憧れである。私のような昭和生まれなら、バビル二世や宇宙戦艦ヤマト等に登場してきた、何か不思議なレバーが付いてたりやたらとボタンがたくさん付いてる、巨大なコンピューターに憧れた記憶があると思う。そういうマシンやメカの話になると思わずムハムハとして来てしまう少年達に、本作品は最高にオススメである。
科学の粋を極めたスーパーコンピューターを、その性能ではるかに上回る「量子コンピューター」。現実ではまだ実用に至っていないその量子コンピューターが物語の中心に来る。そのロジックや原理などもつぶさに説明してあり、ある程度の知識や理解力がないとしっかりと理解するのは難しいかもしれない。でもしっかりと理解する必要は無いと思う。最先端科学のテイストを感じて「うは、すげえ!」とムハムハとしていれば、本作品を充分楽しめる。
主人公の直美は、大学生活にあまり魅力を感じていなかった。そんな時に「量子コンピューターを使って占いをする」と言う某コンピューターメーカーの、壮大なプロジェクトにアルバイトとして参加する。そしてそのプロジェクトは二転三転をするうちに、「神」を作り出そうという事になっていくのだ。量子コンピューターで「解析世界」という新しい世界を作り出し、その世界に「解析神」を光臨させ、その世界でシミュレーションをする事で、人々の占いを行ったり希望や願望を叶えるコンサルティングをしようと言う。しかし技術的な事は元より、倫理的・哲学的に「神」の創造は赦されるのか、有り得るのか・・・。関係者の苦悩・苦闘の中、巻末にとうとう「神」が、産声を上げるのであるが・・・。*下巻に続く。