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神々の宴 オーリエラントの魔道師たち
著者 乾石智子(著)
本の魔道師ケルシュが町で拾った少年は狐に似た獣を連れていた――「ジャッカル」、瀕死の者を助ける生命の魔道師が向き合うことになった過去の亡霊とは――「ただ一滴の鮮緑」など、...
神々の宴 オーリエラントの魔道師たち
神々の宴 オーリエラントの魔道師たち (創元推理文庫)
商品説明
本の魔道師ケルシュが町で拾った少年は狐に似た獣を連れていた――「ジャッカル」、瀕死の者を助ける生命の魔道師が向き合うことになった過去の亡霊とは――「ただ一滴の鮮緑」など、全5編の短編を収録。自らのうちに闇を抱え、人々の欲望の澱を引き受け、黒い運命を呼吸する魔道師たち。ときに迫害を受け、ときに体制に反抗する人々に手を貸し、栄光に包まれることもなく、賞賛を浴びることもない、そんな市井に生きる魔道師たちの姿を描く短編集。巻末にこれまではっきりとは描かれてこなかった、オーリエラントの神々についての資料を付す。/【目次】セリアス/運命女神(リトン)の指/ジャッカル/ただ一滴の鮮緑/神々の宴/あとがき――神々の存在
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紙の本
神々の定める運命
2024/03/17 20:39
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投稿者:DB - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公も時代もどんどん変わっていくオーリエラントシリーズですが、今回は短編集だった。
最初の「セリアス」はセリアスという名の全天で最も青い星を守護星とするイザベリウスと妻のロルリアの物語です。
修復の魔道を使うことができるイザベリウスは、壊れた鍋を直したり枯れそうになった水源を元通りにしたりと村人たちに頼りにされていた。
だが新しい領主がやってきてから風向きが変わる。
人間の集団心理がうまく描かれた話だった。
「運命女神の指」はタペストリーの工房を共同で持つ三人の女の話だった。
糸を紡ぐエディア、運命を織り込んでタペストリーにするユーディット、鋏で糸を切るマレイナだ。
運命の三女神そのままの設定だが、それぞれ元奴隷、元商家の嫁、そして元女剣闘士という出自も育ちもバラバラな三人が仲良く暮らしていた。
タペストリーも健康を祈るものや幸せを願うようなおまじないのようなものもあり、脱走した剣闘士奴隷の姿をくらませてしまうような便利なものもあり。
剣闘士奴隷の話はそのままスパルタクスだったが、タペストリーとの絡みが面白い。
「ジャッカル」では以前にも登場した本の魔道師ケルシュが、怪我をした少年を拾ったことで話は始まります。
ミルドを守る忠犬のようにジャッカルが一頭ついてきて、そのままケルシュの家の居候になる。
ミルドという名の少年の親は瓦製造をしていて裕福な家庭だったが、奴隷にそそのかされて跡取息子を長男のミルドから弟に変えようとしていた。
だが自分が引き起こしたトラブルが予想以上に大きくなり、瓦製造の工場は乗っ取られて落ちぶれてしまう。
ジャッカルの正体と石像造りの道に進んだミルドの将来が垣間見えて終わる。
「ただ一滴の鮮緑」の主人公は生命をよみがえらせる力を持つ魔道師チャファです。
死の淵にいる人を引き戻す力を持っていたが、それは同時に自分の生命を削っていく力でもあった。
チャファに命を救われた青年モールモーと一緒に暮らしていたが、出会ったときは緑の瞳が印象的な若い女性だったチャファは数年後にはすでに老婆の姿になっていた。
死を司る女神に忠告されながらも助けを求められれば拒めない性格が、自分の生命をすり減らすことになったようです。
度を越した吝嗇家の両親とは絶縁状態だったが、母親が危篤だという知らせに自らの闇と向き合うことに。
かつて命を救った少年の贈りものが素敵だった。
最後の「神々の宴」では、拡張を続けるコンスル帝国の第四皇子テリオスの物語だ。
隣国ヴィテス王国を攻略する軍隊の大将としての出陣だったが、十四歳の皇子の言葉には誰も耳も傾けずにヴィテス侵略が進められていく。
テリオスが神々の宴に同席したことで得た者は何だったか、ヴィテスの運命と共に語られます。
それぞれ時代も趣も違う短編でしたがオーリエラントの世界を楽しめました。