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DBさんのレビュー一覧

投稿者:DB

167 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

紙の本変身物語 上

2024/01/15 21:40

政治のための神話

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

アウグストゥスに関する本を読んで、彼が自分を神格化するために伝説を作り上げて宣伝したという話が出てきました。
それまでオウィディウスの本書はただローマ神話をまとめただけだと思っていたが、そういわれて読み直してみるとなるほどと思わされる。

まずは天地創造の神話からはじまります。
混沌の大地から創造主により世界が生み出され、天には星が輝き海には魚が、陸には獣を、そして大気には鳥が住むようになった。
さらに高度な知的能力を持つものとして人間が誕生したが、常春の季節が続き自然になった木の実や果実を食べて過ごす黄金の時代、ユピテルが支配権を握り四季が生まれて人間が家に住むようになった銀の時代、人間が武器を手に取るようになった銅の時代、そして悪行と暴力にあふれた鉄の時代と変化していく。

巨人族の血から生まれた人間は残虐で暴力的だった。
それゆえ神々は洪水を引き起こしてこれを滅ぼし、生き残ったひと組の夫婦が投げた石から新たな人類が誕生する。
聖書の神話と似通っていますが、洪水伝説の起源とバリエーションをたどっていくのも面白そうだ。

洪水の話の次はアポロンとダプネの恋が語られます。
アポロンの求愛を受け入れられなかったダプネが月桂樹へと姿を変える。
人の死を悼んで記念として変身させるには樹木や花に、罰として人の姿を奪った時には獣や鳥にかわるらしい。
もちろん神々も自らの姿を変えることができるのだけど、自らが変身するシーンが一番多いのはユピテルです。
ユノーの目から隠れて他の女に言い寄るために次々変身していくのは神々の頂点にあるものとしてどうなのかとも思うけれど、神の血筋である人間という神性を得させるために話が作られていったという事情もあったようだし。

オリンポスの神々の話や英雄ヘラクレスの話、トロイの戦いと神々の系譜に沿って話が進んでいく。
どのシーンも絵画のモチーフとして魅力的です。
もちろんメデイアとイアソンの話も出てきます。
メデイアは我が子を刺し殺そうとするシーンを描いた絵画が印象的だった。

トロイアの戦争が終わり、アイネイアスが海を渡って新天地へと赴く話となる。
デロスとクレタに立ち寄り、キルケの魔術で怪物に変えられてしまったスキュラをうまく避け、カルタゴで契りを結んだ女王ディドを後に残しイタリアへやってくる。
巫女シュビラの導きで亡き父の霊に予言されてラティウムへとたどり着きます。
アイネイアスが神となって、最後にようやくローマ建国の父ロムルスやヌマ、カエサル、アウグストゥスが登場して終わる。
ウェヌス女神の子孫だというユリウス氏族、神となったカエサルの威光をアウグストゥスに集めたような話だった。

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紙の本

紙の本いつも旅のなか

2024/01/10 20:37

旅のなかで思うこと

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作家が訪れた国々で思ったままを綴る海外旅行エッセイです。
最初はモロッコだったが、そこでバスに乗っていると隣に座った若い男の子が「日本人ですか」と話しかけてきた。
おそらくは客引きだろうと相手をしていると、バヒールと名乗る男の子は旅行者の日本人たちが書き残したメッセージで埋まったスケッチブックを見せてなにかと世話を焼きたがる。
宿のスタッフで客引きをしているのは間違いないが、その町には泊まらないと宣言されてもバヒールは笑顔でついてくる。
そして「ぼくはすべての人がシアワセになればいいと思っているんだ」という台詞を口にされ、筆者はそこに日本人的な商売人の姿を見た。
粘り強く奥ゆかしく、商売と親切を両手に客をいい気分にさせて物を売り感謝されるような商売人だ。
これだから海外旅行は面白い。

そんな感じでロシア、ギリシャ、オーストラリア、スリランカ、バリ、ラオス、ハワイ、スリランカなどなど世界各地で出会った人やそこで感じたことを短く綴っていきます。
同じ場所を旅行したことがある話では共感する部分もあり、「メテオラをヒールで登った」という話には「あんな場所を…」と絶句したりと楽しめる。
日本人の女性が好みのドストライクというオーストラリア人の男性が登場する話には苦笑するしかない。
バリではマジックマッシュルームを試してみて幻覚を見たそうですが、本当に怖いのは狂うことではなく狂っていると気づかないことだそうだ。
旅でそんなことに気づきたくない。

印象に残ったのはスリランカの聖地であるスリーバーダという山の話だ。
山の頂にある鐘を鳴らすと願い事が叶うというのはともかく、聖なる山からみるご来光は素晴らしいだろう。
筆者はそこで太陽と向き合って自分の中にある空洞の存在を強く感じたそうですが、わたしは同じ風景を目にして何を感じるのだろう。
ちなみに「恋人がほしい」と「文学賞がほしい」という願い事はかなわなかったそうです。

友人が今月モンゴル旅行するという話を聞いて、草原とゲル以外何も思い浮かばなかったのですが、筆者がモンゴルを旅した時も「なんにもない」という言葉しか出てこなかったようだ。
見渡す限りの草原に道があり、遠くにゲルが点在するだけだったらしい。
そして町に行ってもゲルとトタン小屋が密集しているだけで食堂も土産物屋もバス停もないのだとか。
友人に次に会ったらモンゴルに何かあったか聞いてみよう。
観光案内とは違うが、旅から生まれたエッセイを楽しみました。

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紙の本

カラス博士の豆知識

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カラスに関する豆知識がつまった本です。
これまでの著作と重複する部分がほとんどですが、カラスのかわいいイラストと一緒に見開きで一つのトピックをまとめてわかりやすく書かれていた。
最初に出てくるのはカラスの基本の「キ」、ハシブトとハシボソの見分け方です。
生息域が森林と見晴らしの良い開けたところという違いがあり、横から見ると羽毛が膨らんだ丸いおでこかすらっとした頭かという違いもあり。
わかりやすい違いは鳴き声で、「カー」と鳴くのがハシブト、「ガー」と嗄れ声なのがハシボソ。
通勤路に毎日のようにいるカラスをよく見てみよう。

カラスは世界に四十種類ほどいて、日本で通常みられるのはハシブトとハシボソに加えてワタリガラス、ミヤマガラス、コクマルガラスの五種類。
日本で繁殖するのはハシブトとハシボソで、他の三種類は日本に渡ってくる冬鳥だ。
ちなみに真っ黒なカラスに極めて近縁な鳥がゴクラクチョウだそうです。

カラスといえばゴミあさり、ゴミ問題といえばカラス対策と連想するように、都会のカラスの餌場はもっぱらゴミ捨て場だ。
カラスが一日に必要とするエサの量は100~200gで、人間に換算すると10キロもエサを食べているそうです。
40度近い体温を維持して空を飛ぶためには多くのエネルギーが必要になるんだとか。
なので高カロリーのフライドチキンやマヨネーズが大好きで、低カロリーの葉物野菜なんかは食べないそうです。
果物も大好きだそうで、ウルシやナンキンハゼのように甘くない果実もワックス状の油脂を栄養にできる。
もちろん果実の方もカラスに食べられて種をまいてもらう戦略なのでここはウィンウィンなんだろう。

エサを手に入れるとヒナやヒナを育てているメスに持って帰ったり、貯食をしたりと忙しい。
この貯食の延長線上に「線路置き石事件」があったり、巣作りのための「ハンガー泥棒」がいたりとカラスと人間の生活が密接しているのがよくわかる。
それでも営巣場所には神経質なようで、なるべく常緑樹で人目につかないような場所に巣を作ったりねぐらにしているそうです。

春から夏にかけての子育て中に人間が巣やヒナに近寄ると襲ってくることもあるが、この時に「鳴きながら近づいてくる」「枝を叩いたり葉っぱや枝を投げる」「頭をかすめるように飛ぶ」「後ろから蹴り飛ばす」ときちんと段階を踏んでくるので、人間としては早めに気づいて立ち去るべし。
他にもカラスの習性や生態、神話のカラスの話も詰め込まれていて楽しく読みました。

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紙の本

紙の本ゴーレム 新装版

2024/03/17 20:50

プラハの夜をさまよう影

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ゴーレムといえばカバラ秘術か何かで作り上げられた土人形が夜な夜な人々を襲うようなイメージでしたが、マイリンクが作者だということに気づいて読んでみました。
怪奇小説であり幻想小説なんだろうが、マイリンクらしい幻想的な世界観を楽しめた。

主人公のペルナートは、プラハゲットーで古道具屋の向かいの建物の一室に住んでいた。
細工師としてカメオを彫ったり金細工をするペルナートのもとへ一冊の本が持ち込まれる。
その本を持ち込んだ男は『イップール』という羊皮紙でできた本に取り付けられた飾り文字の金の薄い板の縁が破損していたのでそれを修理してほしかったようだが、ペルナートはその本の内容に魅入られ頁をめくると文章から次々に幻想的なシーンが溢れ出してきた。
多彩な色彩の衣装を着けた女奴隷たちが、孔雀のようにきらびやかな女たちが、女王のような女たち、そして螺鈿の玉座に座るヘルマフロディートとピエロが通り過ぎていく。

本を宝石箱にしまって外に出てみると、近所に住む大学生のカルーゼクが寒さに凍えながら立っていた。
カルーゼクから古道具屋の主人ヴァッサートゥルムの息子で眼科医だったドクター・ヴァッソリの破滅の話を聞かされます。
ドクター・ヴァッソリが破滅したのは本人の詐欺のような商売方法が原因だったが、それを暴いて自殺に追い込んだのは自分だとカルーゼクは語る。
何がそこまでカルーゼクを駆り立てるのか、カルーゼクは息子の次に父親も破滅させようと熱に浮かされたかのように計画を立て、ドクター・ヴァッソリを追い込む手助けをしたドクター・サヴィオリが今度はヴァッサートゥルムに狙われることになる。
サヴィオリがペルナートの隣人であり、その恋人がペルナートがかつて恋をした女性だったこともあって、ペルナートもまたカルーゼクの計画に関わることになった。

プラハの夜をさまようゴーレムの幻影はいかにもプラハらしいが、精神病が産んだ幻影、肺病にとりつかれた男が吐き出す血、赤毛の淫売娘、タロットカード、メノラー型の燭台と蝋燭の炎が映し出す部屋が渦巻くように現れては消えていく。
カルーゼクの復讐劇は成功するがペルナートは殺人犯として牢獄へつながれることになった。
精神の牢獄と肉体の牢獄、そしてゴーレムの姿が印象的だ。
容疑が晴れて外に出ることができたペルナートを待っていたのは、廃墟となったゲットーだった。
最後の最後までマイリンクらしい世界でした。

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紙の本

分割された帝国

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軍人皇帝時代とも呼ばれる皇帝が乱立し内乱だけでなく外敵の脅威にもさらされたローマ帝国の「三世紀の危機」の時代、それでもガリエヌス帝やアウレリアヌス帝の努力で帝国は立て直っていった。
軍隊を再建して侵略者を押し返すことで帝国の統一を再確立し、貨幣を建て直していたが未だ安定は遠かった。
この課題に取り組んだのが、ダルマティア属州サロマ出身の一兵卒から近衛隊長官にまでなっていたディオクレティアヌス帝である。

たたきあげの軍人でもあるディオクレティアヌス帝ですが、正式な名称をインペラトル・カエサル・ガイウス・アウレリウス・ウァレリウス・ディオクレティアヌスという。
元の名であったガイウス・ウァレリウス・ディオクレスの添え名をラテン風に変え、マルクス・アウレリウス帝の名をもらい帝位についたときは三十九歳くらい。
出自も皇帝となる前の来歴もはっきりとはわかっていないが、二十年間にわたってローマを統治していくことになる。

ディオクレティアヌス帝が帝位についたときのローマは蛮族が辺境を脅かし、インフレは高水準にとどまり、皇帝の地位は低かった。
これに対処するためにまず軍略の才能に秀でていたマクシミアヌスを養子として副帝とし、それぞれが軍を率いてディオクレティアヌスは東方を、マクシミアヌスは西方を守ることにした。
これが功を奏してマクシミアヌスは正帝に格上げされ、西方にコンスタンティウス・クロルス、東方にガレリウスを副帝としておくことで複雑化したローマの対外軍事活動を行うこととなる。
歴史の教科書でも習った四帝統治ですが、実際にはディオクレティアヌスが決定権を持ち他の三人の皇帝は軍事活動のための将軍のようなものだった。
だが権力に固執することなく帝位を分割してでもローマを守るというディオクレティアヌスの気概は伝わってくる気がする。

皇帝の権力を高めるためには、伝統に回帰してローマの最高神ユピテルによって自分の正当性を主張する。
このため帝国に広がっていたキリスト教徒は弾圧を受けることとなり、これが後の世にディオクレティアヌス帝が暴君とされる原因でもあったが当時はそれも必然だったのだろう。
貨幣を鋳造し、税制を見直し、属州と中央の行政改革を行ってローマを建て直していくディオクレティアヌス帝の政治的な活動が詳しく書かれていました。
個人的なエピソードがないので人物像が描きにくいが、ローマ帝国のために尽くした人物だったのはよくわかる。
しかし要を失った四帝統治が瓦解するのは防げなかったのだろう。
真にローマ的なローマ帝国はディオクレティアヌス帝の時代をもって終わる。

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紙の本

カルトが世界宗教になるまで

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学生時代に西洋史の小論文で「古代ローマ帝国にキリスト教が果たした役割について論ぜよ」という課題があって四苦八苦した記憶があります。
そのおかげで今でも古代ローマ関係の本を読むのが好きになったからどう転ぶかわからない。
本書では宗教社会学者である著者がカルトだったキリスト教がなぜローマ帝国の中で広がっていき、世界宗教にまでなりえたかについて論じています。

もともとはユダヤ教の異端として発生したキリスト教ですが、ローマ人の間で徐々に広がっていき時には迫害を受けながらもいつしか勢力を拡大して国教となったのは世界史の教科書に載っていたと思う。
信者の増加を成功した理由について、著者はキリスト教徒が多産で子宝に恵まれたことと女性の方が多かったことがその興隆に役立ったという。
そして帝国で何度も流行した疫病も信者が増えるチャンスとなった。

この初期キリスト教が信者を獲得したであろう方法について、サンフランシスコに来たばかりの宗教集団ムーニー、統一教会を観察して得た知見から推測しています。
十二人の集団で始まったムーニーは、グループのメンバーと友人になることで信者となっていった。
またグループのメンバーと友情や親族としての関係が先にあり、それが改宗のきっかけとなっている。
このことから著者は「メンバーへの個人的愛着が非メンバーへの愛着を上回っている人だけが加入する」と結論づける。
そして入信する人はそれまで宗教と関係のない生活をしていた人が圧倒的に多かったそうです。

キリスト教徒が多産だったというのには、当時のローマ帝国では間引きや中絶が当然の行為として行われていたという背景がある。
特に女子は生まれてすぐに捨てられることが多く、下水の遺跡から生まれて間もない乳児の骨が大量に出てきたそうだ。
また中絶も多かったがそれに伴って不妊になったり母親が死亡するケースも多かった。

また、疫病が流行した時に異教徒は病人を放り出して逃げるために死者が多かったが、キリスト教徒は手厚い看病をしたため生存率が高かった。
もちろん知人や隣人のキリスト教徒に看病してもらって病を克服したら改宗の大きな動機となっただろうし、生き残る人が多いという事実は当時の人の目にも奇跡のように映っただろう。

ローマ社会では女性の数が少なかったが、キリスト教徒の間では女性の数が多いという不均等な社会だった。
そのためキリスト教徒の女性が異教徒と結婚し、夫やその家族も改宗させる要因ともなっていたそうです。
他にも様々な角度からキリスト教の信者の拡大について検討していて興味深かった。

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紙の本

紙の本おいしい旅 しあわせ編

2024/03/17 20:47

旅の目的

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七つの旅のアンソロジーです。
最初の旅は小学五年生のモトという男の子が伊勢参りをする話だった。
一緒に行くはずだった祖母がどうしても待ち合わせ場所の名古屋駅に来れなくなってしまい、「じゃあひとりでお参りしてくる」と快速みえに飛び乗った。
伊勢まで来ると同い年のイズミ君と知り合って一緒に伊勢神宮のお参りをしたり食べ歩きをしたりで楽しそうだ。
伊勢うどんはあまり美味しくはないというのは覚えていて損はないが、それでも初めて行ったら一度は食べてみるだろう。
子供の頃の冒険のような旅だった。

印象に残った話は「夕日と奥さんのお話」だ。
四十八歳の主人公は子育てを終えた主婦、できちゃった結婚した夫とは特に大きな波風もない結婚生活だったが、離婚問題が持ち上がっていた。
傷心旅行というわけでもないが、前から行って見たかった石垣島へひとり旅をして自分自身と夫婦の関係を見つめ直します。
石垣島ってきれいな海の南の島というイメージですが、下手に石垣島に行くより海外ビーチの方が安いので行こうと思ったことはない。
だが底地ビーチの夕日と地元の高級魚だという「浜崎の奥さんのマース煮」の話を読んで、石垣島に行きたくなった。

あのビブリア古書堂シリーズの作者の作品もありました。
「美味しいということは」というタイトルですが、五十過ぎの主人公がまだ十五歳だったころの祖母との思い出だ。
高校受験が終わってゲームソフトを買いに新宿に行きたいと少年だった主人公が言い出した時、最近家の近くに引っ越してきた祖母が付き添うと言ってくれた。
母親と祖母は実の親子だったが目も合わさないくらい仲が悪かったおかげで主人公と祖母もまともに会話したことはない。
それでもゲーム欲しさに祖母と小田原から新宿へ向かい、祖母の行きたかったお店を食べ歩くという話だ。
新宿のロールキャベツが名物の洋食屋は「アカシア」だなとか、銀座のビアホールはきっと「ライオン」だろうなと思いながら読めたので楽しかった。
おいしい旅というテーマに沿いつつ親子の葛藤という永遠のテーマを仄めかすような話だった。

他にもアイスランドへの旅やヴェネツィアへの旅、そして信州松本や三沢の漁港での話と盛りだくさんだ。
どんな旅にも発見があり目的がある。
たとえ「ホッキ貝が食べたい」と思うのだって立派な理由だが、次はどこに旅しようと計画を練りたくなる話だった。

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紙の本

紙の本フロスト始末 上

2024/03/17 20:46

崖っぷちの警部

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フロストシリーズの最終作です。
あいかわらず人手不足のデントン警察署ですが、真面目で几帳面だったアレン警部はこれまでも病欠だったり出向だったりでいなかったが今回は名前も出てこない。
かわりに主任警部として登場するのは、フロストをデントンから追い出したいと前々から狙っていたマレット署長が特別に呼び寄せたスキナー警部だ。
地道な捜査や汚れ仕事はすべて部下に任せ、最後の仕上げと記者会見だけは自分がやって自分の手柄にする男だった。
ミスをフロストに押し付けるだけでなく、まだ十九歳の女性巡査ケイトをいびることも忘れない。
当然デントン警察署の制服組からの評価は「嫌な奴」となり、マレット署長からの評価は「頼もしい奴」となっていた。

上司がそんな様子なので、デントンで起こる犯罪はとりあえずフロスト警部に回ってくる。
行方不明になった少女、スーパーマーケットの商品に毒を入れたと大金を要求する強請り、連続強姦事件、妻を殺してしまったと自首してくる精神病らしい男、散歩中の犬が見つけた腐った足。
行方不明になった子供の両親は叫びまくり、スーパーのオーナーは金を取り返せと喚き散らし、マレットやスキナーも命令だと怒鳴りまくり、そんな騒音でも平常運転できるフロスト警部のスルー能力はかなり高い。
それでも子供を心配して泣く母親にだけは弱いらしく、睡眠時間を削って駆けずり回る。

シリーズも六作目になると脇を固める制服組もキャラがしっかりしてきて、受付のウェルズ巡査とは「今帰ったよ、ハニー」「夕食は冷めないようにオーブンに入れといたわよ、あなたってか?」と言いあう関係だ。
今回新たに検死官としてキャロルという四十代くらいの女性が赴任してきたが、最初からフロストといい雰囲気になっています。
だが約束していた最初のデートを見事にすっぽかして怒らせてしまっているが、物語中では描かれなかったが二人がうまくいくといいなと心から思う。
そしてフロストの身なりと健康に気を使ってくれるようになったらフロストのためにはなるだろうが、これまでのフロストとは違ってしまうわけでやはりシリーズ終了後のお楽しみということにしておこう。

ちょっとしたガソリン代のごまかしをスキナーに見つかってレクストンへ追い払われそうになったフロストでしたが、本当に追い出されてしまうのかどうかも事件の解決と同じくらい興味をひく。
いろんな伏線を回収して見事に「始末をつけた」サスペンスだった。

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紙の本

ローマ再統一を成し遂げた皇帝

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コンスタンティヌス帝といえば、「キリスト教の公認」と「コンスタンティノープルへの遷都」を世界史で習った記憶がある。
ディオクレティアヌスが四帝統治という手段で建て直したローマ帝国を、今度はキリスト教化することで支配を強化しようとしたイメージだった。
だが後のキリスト教国家が作り上げたイメージと実際は微妙に違ったんだなというのが本書を読んでわかりました。

コンスタンティヌス帝の父親コンスタンティウス帝がディオクレティアヌス帝によって西方の副帝に任命されたとき、コンスタンティヌス帝は二十歳くらい。
帝位の世襲を廃止しようとしていたディオクレティアヌス帝によって東方に留め置かれ、ディオクレティアヌス帝退位後に東方の正帝となったガレリウス帝によって戦闘に駆り出されていった。
だが戦争で死ぬこともなく脱出してブーローニュにいた父親のもとへ向かう。
その後西方の正帝であった父親亡き後その跡を継ぐ宣言をし、ガレリウス帝によって西方の正帝とされていたセウェルス二世、イタリア・アフリカ・ヒスパニアを手に入れていたマクセンティウス、マクセンティウスの父親でディオクレティアヌス帝と共に一度は退位したかつての正帝マクシミアヌス、ガレリウス帝により選ばれた西方の正帝リキニウスを倒して単独の皇帝となる。

息子のクリスプスの処刑と妻のファウスタの死は、コンスタンティヌスの母ヘレナが孫の死を悲しみその責任をファウスタに求めたためだというのが著者の見解だ。
だがその他の息子コンスタンティヌス二世、コンスタンティウス二世、コンスタンス一世に、甥のダルマティウスをあわせて四人の副帝を擁する帝位の世襲も視野にいれた体制を作り上げていく。

コンスタンティヌスとキリスト教ですが、当時は西方ではあまりキリスト教が浸透していなかったこともあり迫害をしないという消極的な公認だった。
それが東方を手に入れキリスト教の司教を政治体制の中に組み込んだのは、東方支配の足掛かりとしてちょうどいいという側面があったのかもしれない。
それでもキリスト教の方でも一枚板とは言い難く、後のカソリックとなるアタナシウス派とアリウス派、ドナトゥス派といった宗派に分かれて争っていたのをまとめようとしたのがアルルとニケーア公会議だった。
コンスタンティヌス帝としてはローマの神々やミトラと同列にキリスト教も置いて、親しい司教を何人か傍に置いただけだったのかもしれない。
だがキリスト教国となったローマではこのコンスタンティヌス帝が名君として崇められることとなる。

他にも通貨や税制、立法と軍事活動、それに重要なコンスタンティノープルへの遷都と様々な分野でコンスタンティヌス帝の治世を見ていきます。
活動的で自らの野心を隠すこともなく目標に向かって邁進し、三十年という安定した治世を布くことができたバランス感覚のよい人物像が浮かび上がってきました。

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紙の本

紙の本座敷童子の代理人 8

2024/03/17 20:45

荒神神社での大波乱

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前作から約一か月後、八月下旬で残暑厳しい遠野が今回のお話の舞台になっています。
昔は温泉につきものだった卓球台だが、時代の変遷で温泉旅館「迷家荘」でお蔵入りになっていたものを寄付するということで蔵から搬出作業をしているシーンで始まります。
河童と座敷童子の卓球対決でなごんでいると、夏らしく蔵の奥から古式ゆかしい女の幽霊が登場して女将である和紗に憑りついてしまった。
幽霊と一緒に蔵に置かれていた絵は供養絵額といって、死者を供養するために家族や友人達によって寺院に奉納された板絵で江戸時代から明治にかけて遠野地方を中心に制作されたそうです。
幸せな来世の姿を描いているそうでエジプトの死者の書のようなものかと思ったが、この供養絵額が本作のキーワードになっていた。

わからないことは物知りに聞けという言葉通りに、兎耳の美青年の姿をした八幡権現に問い合わせるとさっそく温泉に入りがてら耳寄りな情報を持ってきてくれます。
どうやらその幽霊は「荒神権現」という神格を得た妖で、荒神神社で祀られているという。
田んぼの中に佇む茅葺き屋根の神社の風情が遠野らしいと作品の中で紹介されていたので調べてみたら、小さいながらも雰囲気ある神社だった。
だがこの荒神権現、先代が八幡様の片耳を食いちぎったことがあるとかで八幡様はなるべく関りあいたくない様子。
そして当代の荒神権現は「件」という妖怪で、「くだ子」と名乗っていた。

未来を予見する予知能力がある件は未来を変えると消滅するという運命でもあった。
くだ子は神社で漫画を描いたり過去に惚れた男の生まれ変わりだと信じる少年をストーカーしたりと腐女子っぷり全開です。
そんなくだ子の想い人が迷家荘を経営する白石家の親戚で、高校に通う都合で迷家荘で預かることになった「本宮くん」だ。
学校をさぼったり態度が悪かったりする本宮は幽霊を見ることができると信じている少年だ。
実際に「トイレの花子さん」のような幽霊を見かけて気になっていたが、座敷童子やくだ子のことは見えない様子に緒方は疑問を抱くのだった。
八幡権現と六角牛王がなぜか真っ向勝負をはじめたり、陰陽師の綾斗だけでなく安倍晴明も乱入しての大乱闘が起きたり、宇迦之御魂神という格の高い女神が降臨したりと波乱続きの遠野ですが楽しく読み終えました。

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紙の本

ローマ帝国の医師

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ローマ帝国関係の歴史書のみならず、中世から近代にかけて医学関係の話でよく名前が出るのがこのガレノスだ。
ペルガモン出身でマルクス・アウレリウスとその息子コモンドゥスの医師となったこともあり、その後1500年もの間医学界に名を遺した人物です。

序章で出てくる痛風の患者に腐ったチーズと酢漬けの豚足を混ぜ込んだ膏薬を塗るという治療法ですが、これがうまくいって皮膚に裂けめを作り結石がにじみ出てきたそうです。
レタスの汁で潰瘍を洗ったり、木の実と蜂蜜でうがいをしたりと水から様々な治療法を考案していたことがよくわかる。
標準的治療法なんてものがない時代、医者の数だけ治療法も存在し、弟子に受け継がれていったのだろう。
瀉血が中世に行われまくったのがガレノス起因だというのはよくわかった。
脈を診ることで熱の発作がいつ起こるかや、患者が嘘をついていたり恋をして精神を乱しているのまで察知できたというエピソードも語られる。

ガレノスはペルガモンの貴族層でローマ市民権も持っており、父から相続した土地財産で働かなくても暮らしていける身分だった。
なので医学に携わるのも金儲けのためではなく、知的好奇心の追求と名声を求めてのものだったようだ。
ペルガモンで少年の頃から哲学や医学を学び、スミュルナの医師ペロプスのもとで学びアレキサンドリアに遊学し、三十歳過ぎにローマへとやってくる。
当時の医学は激しく競い合う学問でもあったようで、公衆の前で手術や動物の解剖を行ったり見世物じみたところもあったようだ。

ローマでは元老院議員の治療に成功したことから有名になり、ローマの上流階級の人々はたしなみとして医学も学んでいたことでその一員となっていく。
マルクス・アウレリウスが服用していた解毒剤テリアカの調合もしていたようで、この薬には毒蛇の身の他にシナモンやアヘンが含まれていたそうです。
下痢や不眠に効果があるというのはよくわかるが、ヘビ毒への解毒剤になるのかどうかは不明だし試してみたくはない。

おそらくは天然痘と思われるローマ帝国を襲った疫病の時は患者の治療に科学者の目で挑む。
ガレノスが天然痘にかからなかったのは、それまでに解剖のために牛やサルを使っていたため牛痘のような軽症の感染症にかかっていたからではないかという著者の考察が興味深い。
ローマの大火では著作や貴重な薬、診療のための道具がすべて燃えてしまうという災難にあうが、それでも失われたものを取り戻すかのように多数の著作を書き残している。
医師という仕事に人生を捧げたガレノスの生涯を追った本だった。

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紙の本

怪奇小説から抜け出したヒロイン

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前作の『メアリ・ジキルとマッドサイエンティストの娘たち』がなかなか面白かったので、第二部となる本作も楽しみにしていました。
メアリ・ジキル、ダイアナ・ハイド、キャサリン・モロー、ジュスティーヌ・フランケンシュタイン、そしてベアトリーチェ・ラパチーニと名前を見れば原作がわかる十八世紀怪奇小説から選りすぐった登場人物の娘たちがアテナ・クラブを結成してロンドンで生活を共にしています。
豹娘のキャサリンが自分たちのことを小説にしているという設定で進んでいき、原稿を読んでいる皆の台詞が挿入されているのは前作通り。
メアリの勤め先はベーカー街221Bでホームズの秘書のような仕事をしているが、本作ではホームズは別の事件で行方不明になっているので脇役だった。
そのかわりアイリーン・アドラーがアテナ・クラブを助けてくれます。

事件の始まりはメアリの子供の頃の家庭教師だったミス・マリーの手紙に同封されてきた、ルシンダ・ヴァン・ヘルシングからの手紙だった。
ルシンダの父親はもちろんブラム・ストーカーの小説の登場人物であるヴァン・ヘルシング博士だ。
父親の実験の被験者にされてウィーンの精神病院に監禁されているから助けてほしいと見ず知らずの女性から頼まれ、メアリとダイアナとジュスティーヌがウィーンへ向かう。
旅券を手配し荷造りをするだけで一週間、ドーバーから船に乗り列車を乗り継いでウィーンまで二週間の旅の予定だったところを、パリからウィーンまでオリエント急行に乗ることで日程を大幅に短縮してウィーンに到着します。

ウィーンでメアリたちを出迎えてくれたのが、ホームズが紹介したアイリーンだった。
未亡人となりスパイ活動をしているというアイリーンの助けもあって、精神病院に監禁されているルシンダを救出すべく動き出します。
ダイアナの暴れっぷりと、妹を心配しながらも冷静に行動しようとするメアリが見ていて面白い。

留守番の予定だったキャサリンとベアトリーチェも新たな事件に遭遇し、メアリたちと合流するべくヨーロッパへ向かいます。
しかもサーカスの一座に入り込んで、豹女と毒娘を出し物にして活動資金まで稼ぎながらの移動だった。
ウィーンについたキャサリンとベアトリーチェはアイリーンと出会うが、ブダペストへ向かったはずのメアリたちの姿が消えたと知らされブダペストを目指す。

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紙の本

マッドサイエンティスト

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誘拐されて廃墟となりかけた城へ連れてこられたメアリたちは、そこでハイドとなった父親の指示で自分たちが連れ去られたことを知る。
だがハイドの目的は娘たちとの再会ではなく、ヴァン・ヘルシングの研究のためにルシンダの血を取ることだった。
ヴァン・ヘルシングは吸血鬼病と呼ばれる血液を介して感染し強く敏捷で回復能力に優れた身体と強力な免疫、そして優れた五感を手に入れる代わりに血液を摂取しなければ生きられず狂気に犯されていく病気を研究していた。
狂気を押さえることができれば強靭で死ぬことのない超人を作り出せるという理論のもとに妻と娘を感染させたのだ。
だがルシンダはどんどん衰弱していき狂気に犯されつつあった。

メアリたちはカーミラと名乗る二百年前の肖像画から抜け出してきたかのような女性に救出されて、ブダペストへ向かいます。
そこで七年前に別れたメアリの元家庭教師ミス・マリーと再会を果たす。
ミス・マリーが結婚してミナ・ハーカーとなり、夫と決別して今はドラキュラ伯爵と生活しているという話を聞かされます。
メアリにとってそれよりも衝撃的だったのは、ミナが錬金術師協会に対抗する組織から派遣されてジキル博士の家へやってきていたという事実だった。

ドラキュラ伯爵とヴァン・ヘルシングの対決は、錬金術師協会も巻き込んで大がかりなものになっていきます。
もちろん吸血鬼対ハンターではなくて糾弾者対マッド・サイエンティストの構図となっているが、錬金術師協会もマッド・サイエンティストばかりの集団ではないようだ。
あくまでも科学者の集団で、その中にマッド・サイエンティストと呼ばれる異端者がいるという印象でしょうか。
異端者が多すぎる気もするけどね。
この錬金術師協会からも、スパイがジキル家に送り込まれていたことをメアリは知る。

かつてはエジプトのイシス女神の女司祭、今では錬金術師協会の女性会長であるアッシャもまた印象的な人物だ。
個性的すぎる女性たちばかりが登場するのに、ストーリーがうまくまとまっているのは作者の力量だろうか。
アテナ・クラブにも新規の会員が増えて結束力はより高まったようだが、ロンドンで家政婦のミセス・プールと一緒に留守番をしていたはずのアリスが消えたというニュースが飛び込んでくる。
第三部ではこのアリスを中心とした話になるのだろう。
続きが楽しみです。

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紙の本

健康のために

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昔からスーパーフードという言葉に弱く、流行り物はたいてい試してみて飽きて終わるというブームを繰り返しています。
キヌア、アマランサス、チアシード、タイガーナッツ、アサイー、ブロッコリースプラウト、カカオニブ、インカベリーなどなど。
一度買ってみてもういいやって思ったのもあれば、はまって毎日食べていた時期もあるけどブームが去って終わったものもあり。
結局続いているのはブロッコリースプラウトとキヌアだけだが、近所のスーパーで買えるから続いているのだろう。

本書では「珍しい食材」としてのスーパーフードではなく、「健康サポートできる食材」としてスーパーフードに光をあてている。
なかなか取りにくい栄養分をいかに手軽にとることができるかという話が興味深い。
特に病気や廊下によって食が細くなってしまったときに、少量で必要な栄養を取ることができるスーパーフードは魅力的だ。

「スピルリナ」はらせん状のシアノバクテリアで、8種の必須アミノ酸と18種のアミノ酸をすべて含む完全タンパク質だそう。
そして光合成色素であるフィコシアニンが活性酸素を防止して、肌のバリア機能を向上させる効果を持つ。
血中脂質を改善したり、抗アレルギー作用、抗炎症作用も持つまさにスーパーフードですね。
パウダーかタブレットしかないのでサプリっぽいが、そのうち試してみよう。

「カムカム」と「アセロラ」は共にビタミンCを豊富に含んでいて、合成ビタミンCと比べて抗酸化、抗炎症作用が強いそうです。
カムカムサワーって昔どっかの居酒屋で飲んだことあるし、アセロラは飴があって独特な味がしたのを覚えている。
間違いなく酸っぱいだろうから、スムージーとかに入っていたらいいかな。

「ゴジベリー」は杏仁豆腐の上にのっているイメージですが、時々大袋で買って干しブドウやナッツのように食べてます。
糖尿病の人にゴジベリーを三カ月投与した結果、血糖値が下がってインスリン分泌が改善したという研究があるそうだ。
免疫調整作用や抗酸化活性、目の疲労回復に美肌効果まであるということなのでまた買ってこよう。

「青パパイヤ」はベトナムやタイ料理でサラダになってるイメージだけど、ドレッシングが辛いのであまり食べたことはない。
消化と代謝に働きかけて免疫力を高める効果があるそうなので、これも興味あり。
腸内環境を整えるという「キクイモ」やサイレントエストロゲン作用を持つ「ハナビラタケ」も日常の食材として取り入れられたらと思う。

「高麗人参」や「マカ」、「ヒハツ」は食材としてというよりは健康サプリの材料のようなイメージですが、マカが更年期障害に効果があるというのは覚えておこう。
「カンナビジオール」は麻の茎からとったオイルで慢性疼痛や不眠、不安に効果があるそうです。
ここまでくると医薬品に近いが、ストレス社会の味方になってくれる成分かもしれない。
健康とバランスについて考えさせてくれる本でした。

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紙の本

信仰が破壊したもの

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ローマ帝国がキリスト教化していく中で起こった出来事の真実に迫ります。
コンスタンティヌス一世がキリスト教を公認したのが313年のこと、それまでも帝国中に広がっていたキリスト教が、迫害される側から迫害する側へ回った瞬間だ。
著者のギャスリーン・ニクシーは元修道士と元修道女の娘で、西洋古典学を学んだジャーナリストだ。
著者がクローズアップしたのはアテナイのアカデメイアが誇る歴史の系譜「黄金の鎖」の最後の輪となった哲学者ダマスキオスだ。
彼が旅した足跡を巡る紀行文を書くのはシリア情勢で不可能になってしまったので、ギリシア・ローマ文化の粋ともいえる哲学が破壊されつくされる様子を描いた本書を上梓したそうです。
なんなく仏教徒の人間には興味深い内容だが、キリスト教を今でも信奉する人には心が騒ぐ内容でもあるだろう。

キリスト教が公認され勢力を広げていった時代は、裕福だった暮らしを捨ててエジプトの砂漠で隠者となった聖アントニウスの生きていた時代に重なる。
ダリの絵にもある通り、砂漠にいるアントニウスのもとへ悪魔が様々な肉欲に訴える誘惑をしに訪れる。
誘惑となるのは古代ローマ帝国で異教徒と呼ばれる富裕層が享受していた楽しみであり、それに背を向ける生き方こそが真のキリスト教徒と呼ばれるという価値観の違いを端的に示している。

キリスト教徒が自分自身をそのような境遇に置く分には個人の自由を認める社会だっただけに、特に問題なかっただろう。
だが彼らはそれをすべての人がしなければならい義務だと信じ、神の名の元に他宗教の神殿や他人の家に入り込み、異教の神々の像や本、豪華な品物を破壊しつくしたのだ。
神へ祈りを捧げることを至上にして唯一の人間の行いだと信じる無学な群集にとって、哲学や文学、科学は異教の神々と同じく存在してはならないものだった。
テロリストと化したキリスト教徒たちは、それらの本を焼き、神像を焼き、人間を焼く。

アレクサンドリアでもアテナイでも、哲学の火はキリスト教徒によって消されようとしていた。
暴行され虐殺されたアレクサンドリアのヒュパティアの話は有名だが、529年ユスティニアヌスの法令により唯一神への信仰以外はすべて禁じられ、ダマスキオスもまたアテナイを追われ明日をも知れぬ放浪の旅へと追い立てられていく。
暗黒の時代がここに始まるのだが、その前から徐々に哲学や文学の輝かしさに陰りが差していく様子を綿密に描いた本だった。
もしもアテナイとアレクサンドリアの火が消されることがなかったら、科学はどれだけ進歩したのだろうかと虚しくも考えさせられた。

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