- 販売開始日: 2023/01/24
- 出版社: 早川書房
- ISBN:978-4-15-001759-0
赤い霧
“フランスのディクスン・カー”と評され、日本でも二年連続ベスト1に輝いた著者が、十九世紀末の英国を舞台に、十年前の密室殺人とロンドンの連続娼婦殺人事件を融合させた冒険小説...
赤い霧
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商品説明
“フランスのディクスン・カー”と評され、日本でも二年連続ベスト1に輝いた著者が、十九世紀末の英国を舞台に、十年前の密室殺人とロンドンの連続娼婦殺人事件を融合させた冒険小説大賞受賞作。
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フランス風機知が書かせた枠構造の娯楽小説のようであり、「信頼できない語り手」の告白スタイルを取り狂者の論理にマジで迫ったようでもあり……。
2005/06/22 19:24
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る
サービスの良い面白い小説だなと思った。
全体の3分の2強を占める第一部では、英国の田園地帯での密室殺人のからくりが解かれていく。実際に犯罪が起こっているのだから「不可能犯罪」っていう言葉はまぎらわしいよね…と瑣末な表現に舌打ちしながらも読み進めていく。地域の名士が殺された9年前の密室事件は迷宮入りとなっている。だが、この土地の出身者たるシドニー・マイルズが、謎を解きたいのだと乗り込んでくる。
乗り込んできたと同時に、宿屋の娘コーラに大いにそそられる。恋愛が進展していきながら、絵や図を差し挟んで事件の概要が明らかになっていく。語り手たるシドニー・マイルズの取材のため事件関係者が一堂に会すると、どうもそのメンバーのなかに犯人がいる風で「この人が怪しい」「いや、こちらの人物だって、そこそこ」と思わせられるが、姿なき殺人者はなかなかしっぽを出さない。
笑いがいささかこみ上げてくるようでもあるトリックが遂には解き明かされ、そこに至るまでに新たに酷い殺人事件が複数起こったりする。姿なき殺人者が、9年ののち証拠隠匿のために動き始めるのである。「へえ、それが犯人」という落着を与えられいったんは得心するものの、どうも一筋縄ではいかないのがこの作品の最大の特徴。「実はこちらが真の犯人」という流れが出てくる。
最大の特徴に関する絶大なる自信は、好ましい筆致で作家あとがきに宣言されている。ミステリ小説は「謎」と「血」という言葉で定義できるので、英国人ならぬフランス人ポール・アルテはこれらを称揚する創作を試みたというのだ。
——“謎”について、わたしは全篇にそれをちりばめ、読者の理性がどこにも確固たるよりどころを持ち得ないようにしました。(254P)
というわけで、裏を返せばこれは「論理的思考を働かせて読もうというのはムダだよ」という挑戦状の意味に取れる。ムキになってトリックの不自然を指摘したり、ディクソン・カーとの優劣を問うものではないということにもなろうか。
密室殺人の部では、犯人のどんでん返しに加え、シドニー・マイルズなる語り手の正体についても「これと思っていたらあっち」という意外性が用意されている。
ポケミスというのは紳士が背広のふところに収めるのであれば、また淑女が小さなポーチに収めるのであれば、この第一部の密室物で完結としてちょうど良い重量だ。サービス的にも結構網羅されていたし…と思う頃合い、密室の奥に実はもうひとつの密室があったという具合に第二部が開幕する。もうひとつの密室は、1880年代のロンドン下町であり、そこには現実に存在したが伝説化している犯罪者が跋扈し、探偵物語史上あまりにも有名な2人組もページをよぎる。
密室殺人のトリックを解き明かしていくのが好きという趣味の人には、あるいはこの全体の3分の1弱のページは不要の長物だろう。しかし、この第二部をもってして、ミステリは第一部を枠のなかに収める構造を持つ小説として、その本来的性格を露わにする。それは、世界の文学潮流のなか、1988年という時期に、本格ミステリの土壌なきフランスで誕生した本作の野心の発露でもある。それを支えるのが、第一部では信念と愛の人であったシドニー・マイルズの語り。これはマグラア『スパイダー』の紹介文でも触れた「信頼できない語り手」の技法で、アルテが何を描きたかったかということに結びついていく。
血と肉片が飛び散るキモい空間も出てくるが、横溝正史のようにおどろおどろしく怖くない。「信頼できなさ」の元凶を、過去の重層的な打撃に求めた点が意外に本気なのよね、この人。
密室殺人、連続殺人、娼婦連続殺人
2005/10/18 18:17
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
新聞記者のシドニー・マイルズが、なにやらありげな、
英国の片田舎を訪れるところから、話は、始まります。
9年前の密室殺人、その捜査の過程で起きる、謎の連続殺人
を、描いていきます。
密室といっても、田舎の人を集めての
手品披露の会の途中の事件なので、
カーテン一枚なんですね、、しかも、部屋のすぐ外には、
子供が遊んでいた、謎の矢が、、。
本書は、一部二部構成になっており、
釈然としないまま一部は、終わります。
その後、切り裂きジャックでお馴染みのロンドンの娼婦連続殺人事件
へと、展開していきます。
本書の怖いところは、矢張り第二部にあり、
兎に角、連続して惨殺される、娼婦の多さに
犯人といっしょにこちらの感覚も麻痺していく
怖さがあります。
このポール・アルテは欧米では、希となった、
トリックと謎解きにメインを置いた、本格派だとか、
で、解説には、芦辺拓さんがアルテさんへの書簡という形で、
書いています。
ネットの書き込みには、ポール・アルテの紹介で、
フランスの芦辺拓と、あったとか、、、。
その関係というわけでは、ありませんが、
どことなく、二人の作風が似ている気もします。
密室のトリックは兎も角、本書は濃厚に伏線を匂わせていますので
皆さん大丈夫では、!?。
併し、この密室のトリックは、解けるかなぁ??
皆さんに挑戦状ですよ。