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息
著者 小池水音
喘息の一息一息の、生と死のあわいのような苦しさ。その時間をともに生きた幼い日の姉と弟。弟が若くして死を選んだあと、姉は、父と母は、どう生きたか。喪失を抱えた家族の再生を、...
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商品説明
喘息の一息一息の、生と死のあわいのような苦しさ。その時間をともに生きた幼い日の姉と弟。弟が若くして死を選んだあと、姉は、父と母は、どう生きたか。喪失を抱えた家族の再生を、息を繋ぐようにして描きだす、各紙文芸時評絶賛の胸を打つ長篇小説。新潮新人賞受賞作「わからないままで」を併録。注目の新人、初めての本。
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書店員レビュー
意識してすること
ジュンク堂書店福岡店スタッフさん
主人公が十五年ぶりに発症する喘息、主人公の弟の死因、父の酩酊…。すべてに「息をする動作」が関わってきます。私も深刻な喘息の持病があるので、発作時に天井を見つめる主人公の気持ちは手に取るようにわかります。とにかく目の前にあるもの、布団の柄だったり薬のパッケージだったり家族の洋服の柄だったり、そういうものを見ることしかできなくなる時間があるのです。他になにか考えたり、別の動作をすることは、とてもできません。それは、とても苦しい時間です。主人公も、そして弟も、喘息を患っていました。じかし弟は首を吊ることによって他界し、主人公はひとり喘息の発作と戦いながら仕事をし、ものを食べ、生きてゆきます。彼女は、事あるごとに弟の夢を見ます。体温を持って生きている弟の夢です。「おとなになっても苦しいままだったら、どうする?」小さい頃に弟が言った言葉。息をしなくなった弟、息をしなくてはならないがそれが地獄のような自分、野良猫を飼っても名前をつけられない母、脱法ハーブをしなければ生きることができなくなった父。話の中に、「ガネット」という鳥が登場します。大きい鳥。魚を獲って生きる鳥。しかし水に飛び込むときの衝撃で失明し、溺れて死ぬことのある鳥です。馬鹿みたいかもしれません。しかし、私達が普段置かれている環境と、何が違うのでしょう?主人公は喘息を発症することで、首を吊ったあとも父に息を吹き込まれ、体温を持っていた弟について、意識を巡らせることができるようになりました。弟の体温は生きている主人公に伝わり、そうして彼がいなくなったあとも、主人公の心の中に残ります。普段息をすることを意識することはなかなか、ありません。意識するとしたら、いつもと自分が違う状況になるとき。苦しさが去ったとしても、また苦しさが来ることを無意識に知っています。その状況になったとき、自分に何ができるのか、考えておかなくてはならないと思いました。