決定版 V字回復の経営　2年で会社を変えられますか？　「戦略プロフェッショナル・シリーズ」第2巻

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最高にしびれる本だった。
これは2年で回復できなかったら撤退すると言われた事業を組織変革を元に変えていくという話。

通勤時に読んでモチベーションをあげていた。
マジで頑張ろうってなるし、黒岩さんカッコイイし、ああいうプロ経営者になりたいなと思うようになってきました

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備忘録:
③改革フレームの共有
観点は、
・経常業務
・戦略
・組織

勝ち戦の循環
・マーケットの変化に合わせて顧客のニーズも変わってくる。顧客のニーズは何で、将来どう変わるのか
・誰が本当の競争相手なのか？
・我々は常に成長分野に参入してる？
・他社の後追いではなく先人切ってやってる？
・勝ちを収めるまで執拗かつ集中的な勝負をしかけてきた？
・成功企業は上記の攻めの戦略で成功し、トップシェア獲得によりメリットを享受する？
・しかしそれに甘んじていると事業や商品は陳腐になる
・鼻の差でもいいから商品や事業開発を行うようにする

⑥改革の成功9つのステップ
期待のシナリオ→具体性不足
成り行きのシナリオ→現実直視不足
↓
切迫感→危機感不足
↓
原因分析→ロジック不足
↓
シナリオ作り→決断力不足
↓
決断
↓
現場への落とし込み→具体化力不足
↓
実行→継続力不足
↓
成果の認知

エピローグ
成功の要因とステップ
1.改革コンセプトへのこだわり
2.存在価値のない事業を捨てる覚悟
3.戦略思考
4.実行者による計画作り
5.実行フォローへの緻密な落とし込み
6.データ思考
7.ミドルの参画
8.時間軸の明示
9.オープンでわかりやすい説明
10.聞く側の心理分布の移動
11.気骨の人事
12.しっかり叱る
13.ハンズオンによる実行

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文句なく素晴らしい本。

他の方の書評に大企業あるあるがたくさん書いてあると書かれているが、かつて本書を初めて手に取った時、まるで自社のことをのぞかれているのではないかと感じるほど、リアルな記述がたくさんあり、びっくりしたものだった。

とても嬉しいのは、数年ぶりに再読してみたところ、かつてほどこの本に書かれている事が、自社に状況に当てはまらなくなっていることを感じたことだ。もしかすると、自分が勤める会社はよくなってるのかもしれない、そう思えた。

ある意味この本は、自分が所属する組織のリトマス試験紙のようなものになっているもしれない。

将来、もしかすると自分は経営の一翼を担っているかもしれない。その時には、この本で指摘されている課題が自分の会社にどの程度当てはまっているか、どれくらいその課題を克服できているのかをチェックする事が有用であろうと思う。

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日本最初のターンアラウンド専門コンサルタントと言って良い三枝さんの体験談をもとにした小説。出てくる人たちが、プロ意識や当事者意識が欠如した典型的な出来ない日本人サラリーマンと経営者ばかりで正直読んでいて、辟易としてくる。日本の経済が長ら変わらないまま失われた30年となってしまった事にも言及されているが、ここで描かれている事がその本質的な原因である事がよく分かる。こんな事が日本のそこら中で日常的に繰り返されているのだから、そりゃ国力も落ちるというもの。読んで虚しさを感じる。

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経営不振の会社もしくは事業を立て直すための経営改革とはすべて並大抵ではいかない。
自分の立場でできることはなにか深く考えさせられる1冊であり、もし上の立場となったとき重要な1冊になるだろう。

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人材抜擢、ストーリー設計、戦略立案、巻き込み、実行、モニタリングと詳細に記載されておりとても勉強になった。どれも小手先のテクニックではなく、顧客と競合を意識してその会社に今何が必要か徹底的に考えていた。経営手法は様々あるが、大事なことは意外とシンプルで、現場から顧客と競合を見つめ、必要とされていること•すべきことから一貫したストーリーをたてて現実とのギャップを埋めていくことなんだと思う。

また業績が悪い会社、良い会社の症状が事例をもとに語られており、自分の会社はどうか比較しながら読むと楽しい。わたしは転職しているので比較対象があるとなお興味深かった。

普段の仕事からも全体戦略、現場の動きは適切かなどの視点を持ち少しずつ視座を上げていきたい

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　産機事業の再建には、香川社長は就任してすぐに執行役員の春田を事業本部長に任命した。優秀だと見込んでいた。
　香川社長は彼にこう伝えた。
「産機事業は組織が古くさい。人減らしだけではダメだ。事業のやり方を前向きに、抜本的に再整理することを考えてくれ。そうしないともっと大きな赤字が出て、またリストラになる」
　言葉では激しく言ったが、社長が個々の事業の内部にまでこと細かく口を出すことはやらないという、社風にも似た不文律があった。また人材育成のためには、事業を任せた限りは、完全に任せるべきだという正論も社内にはあった。
　しかしその正論に従ったことの結果が、社内のあちこちで起きている改革の無様な遅れだった。香川社長が立て直しのために抜擢したつもりの人材たちが、ひと言でいえば長年のサラリーマン志向から抜け出せず、切れ味のいい改革に踏み込めていないのである。
　事業責任者を命じて、その人に完全に任せっぱなしにして改革が進まないと、簡単に二、三年が過ぎてしまう。「不振事業の再生」においては、トップによるハンズオフは絶対禁忌である。不振が深刻なら、トップは初めから改革リーダーと同体になってハンズオンの姿勢をとり、不振事業に必ず染みついている制約条件を排除してやり、恥も外聞もなく、蛮勇を振るうことが必要である。

　この「戦略プロフェッショナルシリーズ」三部作には、第一巻から始まって、頻繁に「フレームワーク」という言葉が出てくる。
　私（著者）の言う経営フレームワークとは、経営者人材が自分の経営経験を「知恵」として頭のなかに蓄積しておき、将来の経営者行動でより良い経営判断を下せるようにするための道具である。フレームワークを蓄積し、使いこなすことは、優れた経営者人材になるための必須の条件である。
　われわれが新たな学びを得て記憶するときは、複雑な事件を丸ごと、微細なことまで覚えようとしても覚えきれるものではない。現実は混沌としていて、グチャグチャデあり、一つの原因から他の事象が生まれ、それがまた次の事象を生み出すという「因果関係」の連鎖が、まるで毛玉のように、こんがらがっているのが普通だ。そこに含まれている一つひとつの因果関係のことを私は「因果律」と呼んでいる。律というのは音楽の旋律（メロディー）のように、目の前の状況が時間とともに移り変わっていく姿を意味している。
　どんな問題でも、いろいろな因果律が作動しているが、よくよく見ると、その状況で主役を演じている重要な因果律と、ただ付随的に動いているだけのマイナーな因果律がある。
　あなたがその状況に対して行動して変化を起こそうとするなら、あなたはまず、そこで作動している因果律の中で、どれが主役の働きをしているかを見分けようとするだろう。
　脇役でしかないマイナーな因果律をいくら追いかけても、あなたの行動による全体への影響はたかが知れている。だから主役因果律を見極めて、あなたの行動力をそこに集中しなければならない。その主役因果律が分かったら（一つだけのこともあるし、複数のことも多い）、あ���たは「問題の押さえどころが見えた」と感じるはずだ。それが問題解決のための押しボタンになるはずだ。
　ここまでの思考プロセスを、私は状況の「単純化」と呼ぶ。主役因果律だけを取り出して、他の要素はマイナーだと、一旦横にどけてしまうのだから、問題はかなりシンプルになっている。だから自分だけでなく、あなたが周囲の人々に「これって、こういうことじゃないの？」と説明すると、理解されやすくなっている。
　そうやっていじり回した因果律の中には、今後も覚えておけばまた似たようなことに出会った時に、経営者としての判断能力を高めてくれると感じるものがある。そのような因果律に簡単な名前を付けて覚えておくと、周囲の人も記憶しやすくなり、組織内での共有も進みやすくなる。
　これまでフレームワークと言えば、学者やコンサルタントが出してくる難しい概念とかコンセプトのことだと思っている人は多い。だが私のフレームワークは、ちょっとした言葉や考え方であっても、それが経営者人材として大切な意味があると思えば、それらをすべて経営フレームワークと呼ぶ。「これって、こういうことじゃないの？」という言葉自体も、私にとっては覚えておいてもまた使いた大切なフレームワークなのである。
　あなたの能力が高まれば、重要な因果律が複数互いに関係していて「構図」と呼べるような、少々複雑なフレームワークも扱えるようになる。それが経営者として将来使えそうだと思うなら、それにも単純な名前を付けて、冷凍庫にしまっておく。智的格闘ではシンプルな言葉を使うことが勝負である。
　人間の頭の中には、そうした「智」を貯めておくための冷凍庫がある。ところがその容量はあまり大きくない。そこに入れたフレームワークが古くなれば、自分が何を入れたか忘れてしまったり、霜がついてラベルが見えなくなったり、賞味期限が切れたりする。
　あなたが将来何か新しい状況に直面して、どう判断していいか分からなくてウロウロしていると、ある瞬間、「これはひょっとして、あのことが関係しているんじゃないか」と、以前に冷凍保存した言葉を思い出すことがある。
　そうなれば、あなたは冷凍庫からそれを取り出し、解凍（デイフリーズ）して、以前に得た知恵がいま自分の直面している状況に当てはまるかどうか、自分がより賢い行動をとるのに役立つかどうかを試してみる。
　もしそのフレームワークが使えるなら、あなたは、他の関係者が白紙状態から考えているのに比べて、ずっと「気づき」が早くなる。あなたは彼らよりも早く「これって、こういうことじゃないの？」と言うことができる。皆が納得すれば、それだけ組織の動きは速くなり、事業の問題解決は加速される。
　もう読者はお分かりだろう。あなたが他の人よりも早く、「これって、こういうことなんじゃないの？」と言えることが、リーダーシップと呼ばれるものの本質なのだ。
　いくら会社の中で肩書が偉くなった人でも、部下や周囲の人が「これって、こういうことじゃないの？」と言ったとき、「その通りだ」と同調するだけなら、その上司は問題解決をリードしていない。部下や周囲の人の判断に賛同するだけの上司は、いくら偉そうな顔をしていても、しょせんはフォロワーに過ぎない��である。
　冷凍保存してあるフレームワークは（すなわち単語とか構図）は、あなたの過去経験ばかりではなく、昔の読んだ学者の理論だとか、人の話を聞いて感動した言葉かもしれない。人から学んで取得したフレームワークのことを、私は《借りフレームワーク》と呼ぶ。《仮フレームワーク》と書いてもいい。
　他人のフレームワークであっても、最初は大いにパクっておけと私はいつも言っている。だから私のフレームワークも、著作権の明記を忘れない限り（笑）大いにパクっていい。
　人生で、以前経験したのと何もかも同じ事件が起きることはない。似ていても、何かが違う。ということは、冷凍保存していた《借りフレームワーク》を引っ張り出してきても、今回の状況にそのまま当てはまることはない。そのフレームワークを眼前の問題に当てはめるために、あなたはちょっと修正したり、新しい要素を加えたりする必要がある。
　それがうまくいって使えるものになれば、たとえその習性がわずかであっても、そのフレームワークはもはやパクったものではない。新たな自分の理屈になっている。私はそれを《自論フレームワーク》と呼ぶ。辞書に出てくる「持論」ではない。「自論」というのは私の造語である。たった二字のこの言葉でさえ、私にとってはとても重要な自論フレームワークなのである。
　こうして人は、借りフレームワークや自論フレームワークの頭の中に蓄積していくことで、経営者人材としての独自の知識ベースを増やしていく。それで経営者人材として判断能力を高めていくのである。
　何かの知恵を冷凍庫に保存するときは、その内容がどんなに複雑でも、あるいは自分にとって腹が立ったり悔しかったり感情を伴うものであっても、それはそれとして、重要な言葉だけを抜き出して、冷凍庫に入れることが重要だ。
　それを「単純化」と呼ぶことはすでに述べた。自分の経験した出来事を面白おかしく、あれこれ些末な話までくっつけて、のびたうどんみたいな状態でそのまま冷凍庫に入れないことだ。人間の冷凍庫は大きくないから、それだけですぐに一杯になってしまう。
　その単純化を図るためには、実はもう一つ、その手前でやらなければならないことがある。あなたの話を単純化するには、まず話を「抽象化」することが肝心なのだ。
　抽象化とは何か。私なりに簡単に言ってしまうと、話の中の固有名詞（関係した人の名前だとか、商品名、企業名など）を消し去って、話を一般名詞だけにするのである。そうすれば、その話はその場特有の話ではなくなる。どこでも話せる「汎用性」が高まる。それによって、将来、似て非なる状況に出くわしたときに、そのフレームワークを適用しやすくなるのである。
　さて、ここで私のフレームワークの一つを例として取り上げ、それがどのように生まれ、論理として展開してきたか、またこの論理が世界の経営の潮流にまで関係が出てきた経緯を紹介したい。不振企業の再生に挑んできた私にとって、フレームワークは重要な生身の役割を果たしてきたのである。
　私が三〇代の初めに若い戦略経営者として初めての事業改革に挑んでいたある日、初めは何の認識もないゼロの状態で、一つの現象に気づいて、ハッとした。私はその気づきを経営者のものの見方として膨らませ、論理づけを行い、最後には事業改革の武器として使うところまで「敷衍化」してきた。学者レベルの高踏な理屈ではない。経営現場での勝負に関係している。一兆円企業の事業再生で私が生き残りをかけた戦いを眺めたのは、私がこのフレームワークをあちこちで試し切りして、切れ味を進化させてきたからだ。
　この話を続ける前書きとして、私がここまで辿ってきた人生のことに簡単に触れる。黒岩莞太ならぬ私が二〇代と三〇代をいかに生きてきたかは、本シリーズ第一巻『決定版　戦略プロフェッショナル』に詳しく書いた。一介のサラリーマンだった私は、日本で転職が社会の外れ者の行動とされていた六〇年代末、二五歳の時に、三井系の優良会社を飛び出し、当時は無名の会社、ボストン・コンサルティング・グループ（ＢＣＧ）の日本採用第一号になった。
　客観的に見れば、危ない転職だった。その経験が、高リスクでもあえて挑戦していく私の生き様を決定づけたと思う。
　七〇年代中頃、私は二〇代最後に自費でスタンフォード大学に留学し、そこで将来、戦略経営者を目ざすことを決心した。
　日本のサラリーマン出身者が簡単に叶えられる話ではなかった。ところが私は普通なら巡り合わない奇遇を辿り、わずか三二歳で、大阪の日米合弁企業に常務取締役として舞い降り、翌年に社長になった。それが私の戦略経営者を目ざす初陣になった。すべて実話である。
　さて、ここからがフレームワークの話だ。その仕事で、私はある日、社長として一つのことに気づいた（この話は『決定版　戦略プロフェッショナル』では触れていない）
　私の部下は、財閥系親会社から出向してきた。親子ほども年が上の定年前後の人だった。社内のそれぞれの部署で完結する仕事は、それぞれの部長がある程度きちんと動かしていた。彼らはそれで自分の責任を果たしていると思っているが、私の立場から見ると、会社が競争能力を高めるための改革や改善について、彼らは熱心ではない。そのための意思決定や行動が部門と部門の「境目」で途切れ、滞留して懸案事項になっている。
　私はその観察から、一つの閃きを得た。それは私のその後の経営者人生で重要な柱になっていく考え方の出発点だった。
　読者の中には、部署と部署の境目で問題解決が停滞することなどよくある話で、別にどうということはないと思う人もいるだろう。しかしそう思う人が多い会社ほど、この病気に侵されており、会社の競争性が脅かされている。
　事業の原点は「売ってなんぼ」の世界、つまり「商売」が成り立ってこそ、おまんまが食える。
　そこで会社は、開発→生産→販売→顧客のサイクル（市場に向けた行きのサイクル）を回して顧客に商品やサービスを届けている。競争相手も同じことをしている。
　競争企業のそれぞれの「創る、作る、売る」は顧客のところでぶつかり合い、そのせめぎ合いの中で、顧客はいずれかの企業を取引相手として選び、商品やサービスを購入する。
　その一連の行動の中で、顧客は「値段を下げろ」「サービスを上げろ」「品質がおかしい」などと多くの要求を営業担当に突きつけてくる。
　起業競争のカギは、そうした顧客のさまざまな要求に、組織としてどう迅速に���えるかだ。顧客の要求を、社内の担当部署にいかに迅速に戻し、その結果をいかに迅速に顧客に返すことができるのか（戻しのサイクル）。
　行きと戻しのサイクルを合わせると、それがトータルサイクルだ。企業はそれで競合と戦っている。社内が緊密に連携し、そのぐるぐる回しが競合企業より高速で回っていれば、その事業や商品は市場で次第に勝っていく。遅ければ負けていく。
　よほど強い特許で守られた技術や、公的規制で守られた権益などがあれば、殿様商売も可能だろう。だが私は気づいた。どんな大企業であれ、競争の原点はこれだと。
　私はこの回しに「商売の基本サイクル」という名前を付けた。あたかも商店街の店主が「商売、商売！」と言うように、大会社といえども営業担当ばかりでなく、開発者も、工場従業員も、人事や経理の社員も、「商売、商売！」と言いながらこのサイクルを競合企業よりも早く回せば、顧客は間違いなく喜んでくれる。
　けれども、スピードは相対的なものだから、誰かが早ければ、誰かが遅くなる。
　企業が大企業病に陥ると、社内のサイクルのスピードが低下する。競争や顧客のことを「商売」として身近に感じていない人は、問題の対応を停滞させても痛みを感じない。
　理由のいかんを問わず、それが競争上のハンディを自ら生み出すことになる。
　とりわけ「商売の基本サイクル」の左方向に行けば行くほど、つまり顧客との接点から遠くなるほど、「商売」を意識していない社員が増えるのが会社組織の宿命なのだ。
　私が舞い降りたこの合弁会社が一〇年間敗退を続けてきたのも、つまるところ最大の理由はこれだ。はっきり言って、定年に近い大会社のサラリーマンが出向してきて緩慢なゲームを続けていたら、先端企業に勝てるわけがない。私は多少の皮肉も込めて、「商売」という言葉を使って、事業の原点に回帰することを求めたのである。
　組織全体が遅いスピードで動くことに慣れてしまうと、会社のカルチャーはそのスピード感を前提にして形成される。
　そのスピードを緩めるような組織変化は、今までよりノンビリすればいいのだから簡単だ。けれども戦略的にそれを早めようとする経営のギアチェンジは、いかなる経営者にとっても想像以上に大変な改革になる。新聞社は時間のサイクルとして週刊誌を出せるが、週刊誌の出版社は日刊紙を出せないのである。
　事業の回しのスピードの差が及ぼす競争上の影響は、一年経ったくらいなら分かりにくいが、一〇年もすれば市場での勝ち負けが歴然としてくる。そうなっても「うちの会社は体質が古い」といった嘆きの言葉だけで終わらせている会社は多く、年を重ねると、やがて死の谷に近づく。
　私はこのフレームワークに初めて気づいたとき、この概念の奥は深い気がしていた。「早く回す」とは、すなわち「時間を短くする」ことである。それは「時間の価値」に着目していることになる。
　やがて、このフレームワークを経営改革の重要概念として使うようになった。
　私は三〇代の後半、時代は一九八〇年代に入っていたが、大塚製薬の故大塚明彦社長に誘われ、大塚製薬が救済した倒産ベンチャーの再生を引き受けた。そこで再建の切り口を見つけてくれたのが「創る、作る、��る」だった。
　こうした経営者経験を経て、私は四〇歳に到達した時点で、戦略コンサルタント、事業会社二社の社長、ベンチャーキャピタル会社社長という経歴を積んでいた。当時はもちろん、いまの時代でもめずらしい組み合わせのキャリアだろう。
　それを基礎にして四一才で、自立を決意して個人事務所を設立した。異端の会社だった。それは日本が華やかなバブル景気に向かっていた八〇年代半ばのことで、世間ではカネ余りの派手な話が飛び交っていた。それを尻目に、私は逆に、業績の追い込まれた不振企業の元気を取り戻すための支援を受け負い始めた。当時、日本でそのような仕事を専門にする会社はなかった。
　そして一九九一年、とうとう日本はバブルの崖からころげ落ちた。
　多くの日本企業が追い込まれ、海外での競争性も大きく毀損して撤退が相次いだ。日本中がまるで業績不振企業だらけになり、私は上場企業クラスの大企業から、不振事業の再生を頼まれるようになった。
　その再生プロジェクトの第一号はＤ社で、私はそこでトヨタ生産方式の思想を導入した。それが大きな出会いになった。
　三〇代前半に日米合弁会社で見た「創る、作る、売る」の現象は、重要な経営課題が社内の「部門と部門の境目で滞留する」という症状だった。そのころ私はトヨタのカンバン方式について、その呼び名は聞いていたが、本質は知らなかった。
　ところがＤ社の中で出会ったカンバン方式の考え方は、効率の悪い工場で、仕掛け品在庫が「工程と工程の間で溜まっていく」という症状に対する改善手法だったのだ。
　私はハッとした。自分の「創る、作る、売る」の見方とメカニズムは同じではないか。私の頭の中で二つの原理が、完全に重なって見えた。
　ターンアラウンド・スペシャリスト（事業再生専門家）の仕事を始めてみると、D社のみならず、「商売の基本サイクル」はますます有力な改革の武器になって行った。
　不振企業の中をみると、業種や商品がまったく違うのに、日米合弁会社で見た「創る、作る、売る」が回っていない大企業病が、遥かに深刻な病気として、蔓延していたからである。
　ところが、この論理は、私一人の経験よりも、はるかに巨大な歴史的事件に発展していく。ちょうどその頃、米国で驚くべきことが起き始めていたのだ。
　米国は長い年月、日本に叩かれ続けてすっかり元気を失っていたが、一九九〇年前後を境にして新しい経営革新のセオリーを生み出し、元気復活への道を歩き始めた。その革新セオリーとは何だったか。それは私の「創る、作る、売る」を早く回す概念と完全に重なるものだった。
　それぞれの歴史的起源は違う。私の論理は三〇代で日米合弁企業の社長として見た社内の症状から始まっていた。一方、米国の革新セオリーは、気鋭のコンサルタントや学者たちが、米国の強さ復活を願いつつ、七〇年代の戦略論を含めて新しい経営論理を探し続けてきた結果だった。そこまでに、米国は約三〇年を費やした。
　実は、米国人が生み出した新しい改革論は、日本から学んだことから始まっていた。八〇年代末、米国人の戦略コンサルタント二人が日本に来てトヨタ生産方式を解析した。その結果、カンバン方式には「時間の戦略」という原理��含まれていると喝破した。従来言われていたヒト、モノ、カネ、情報に加えて、時間が企業競争力の新しい武器になると言ったのだ。彼らが書いた本は米国でベストセラーになった。
　さらにその二年後、米マサチューセッツ工科大学のマイケル・ハマー教授が『リエンジニアリング』の概念を提唱した。米国企業は「個別最適」の考え方ではもう日本に勝てない。会社全体のビジネスプロセスを捉え、「全社最適」の観点から「劇的」な改革を狙うべきだと提唱した。
　日本人が汗水垂らして生み出した経営ノウハウなのに、それが米国に行って、こうした理論展開が行われ、米国で凄まじい勢いで飛躍を始めた。それはITを活用したEC（電子取引）企業の躍進に結びついた。その代表的企業は言わずと知れたアマゾンだ。本一冊でも一日で顧客に届ける。究極の「創る、作る、売る」の「時間戦略」を追求したその手法は、日本から学んだものだった（日米競争の六〇年間の歴史的変換の詳細は、本シリーズ第一巻の『決定版　戦略プロフェッショナル』に収録した論考「世界の事業革新のメガトレンド」を参照してほしい）。
　ここまで、私のフレームワークの一つが辿った進化の歴史をご紹介した。私はフレームワークを考え出すと、その考え方を敷衍化して、経営革新の武器として充実させていった。本書のアスター事業の改革でも第三、四章で「創る、作る、売る」のフレームワークが実務的に適用されているシーンが出てくる。
　私がこれまでに蓄積し、冷凍庫にしまってあるフレームワークは、いま五〇タイトルを超える。それを説明するパワーポイントは合計で約八〇〇頁を超えている。
　私は知識の中から、新しいプロジェクトに必要なものを取り出し、それをベースに改革シナリオを組んだり、再生企業の幹部や社員に解説したり、大学のMBA講義や自分が主宰している「『戦略と志』講座」などで、紙芝居のように見せながら講義したりする。本書第三章に出てくるタスクフォースの合宿もそのシーンの一つだ。
　私の経営者人生で、自分のナマの成功・失敗体験から得たフレームワークが、経営者論理に転化し、自分の経営者キャリアを支えてきたと思う。つまり、私の経営改革論理の多くは「自給自足」だったのであり、その努力を積み重ねることで、私は大きな力を得てきたと思う。

　危機だ、危機だと言われてますが、会社の中は大して変わっていないですね。人は減りましたけど、ただそれだけのことで……。
　黒岩統括はこの二日間、名古屋と関西地区でユーザー八カ所を回ったということです。
　応接室に呼ばれてソファーに座ったら、すぐに一つの表を見せられました。二〇の新商品の市場導入結果を〇△×で採点した勝敗表でした。この五年間に成功が一つもないという表です。
「この『惨敗』の原因は何だと思う？」
　私は日頃から開発や工場に問題があると言ってきました。ただ、それを役員に言うのは勇気がいります。しかし、あれこれ話しているうちに、黒岩統括はきちんと聞いてくれそうだったので、途中から私も、いいや、言ってしまえ、という気分で日頃の不満を口にしました。
「開発技術者が個人の趣味で開発した商品を、われわれに売らせていると思うことが多いんです。工場についても、彼らに『ユーザー』『お客様』の発想があるとは思えないですね」
　世にプロダクト・アウトとかいう言い方がありますが、アスターの開発事業者は自分たちの商品が世の中で一番いいと思っているのです。
「悪いのは自分たちじゃない、客がおかしい、営業が悪い、という態度です。それで毎月の給料がもらえるのだから……赤字でもさすが大会社ですよ」
　黒岩統括はちょっと呆れたような顔で私の顔を見ました。そこまで言う私に呆れたのか、話の中身に呆れたのか……おそらく両方でしょう。黒岩統括が質問を挟みました。
「支店の要望を、開発に伝える機会はないの？」
「さあ、われわれ営業の者には、本社の中で何を議論しているのか、サッパリ分からないのです。つまり支店が『こっち側』で、アスター工販の本社は『あっち側』なのです。地方から見た中央官庁みたいなものです。その先の親会社の事業本部なんて、神の国ですよ。支店にいた人が本社に転勤して、しばらくすると、言うことが変わってしまうのです。私などには見えない力が本社の中で働いているのでしょう。何を考えて方針を立てたのか…話がコロコロ変わりますしね」
　こう言ってるうちに、私も話が止まらなくなってしまって、本社に対する意見を正直に言いました。
「事業本部長やアスター工販の社長が次から次とよく入れ替わるんです。社内のご都合人事でコロコロと。新しい本部長が来ると『こんなやり方じゃダメだ』と方針を変え、実態が分かってきたころには転出。次に違う人が来てまた同じことの繰り返し。こちらは植民地みたいなものです」
　私の意見ですけど、競合企業の場合は同じ経営者がずっと一貫した考えで攻めているのに対して、アスターの営業政策の継続性がぶつぶつ切れているのは相当のハンディに感じます。だからここまで差をつけられたのは当たり前だと思うのです。
「本社のご都合人事のしわ寄せが、全部、現場の営業担当ばかりにきて……われわれ営業は理不尽な戦いを強いられて……若手なんか、かわいそうですよ」

　黒岩莞太は幹部面談の合間を縫って、社内で行われているさまざまな会議に出てみた。本社ばかりでなく、アスター工販の本社会議や、大阪、名古屋でその支店会議にも出た。
　ある日、黒岩は変なことに気づいた。
　黒岩がアスター工販本社の営業会議に行ってみると、会議の招集者である営業部長が自ら喋ったのは冒頭と終了の挨拶だけだった。
　議事はすべてスタッフである営業推進課長が代理として進め、営業部長は最後まで黙って座ったままだった。
「この営業部長は何のために、今日一日、ここに座っているのだろう？　つまらん男だな」
　そう考えたとき、黒岩莞太はハッと気づいた。「あの症状だ！」
　そう気づいた後、支店の営業会議に行ってみた。すると支店長はやはり冒頭の挨拶だけ、あとは貫録を見せて、よほどのことがない限り発言しない。
　会議の進行は支店の管理課長が行い、司会役というならまだしも、出席している営業所長に対する新たな指示までも、課長の彼が出していた。
　アスター事業の本社会議に行けば、開発管理室長が会議を仕切り、上司の開発部長は黙って座っていた。
　工場の生産会議に行���ば工場長のスタッフが議事を進め、工場長はやはり黙っていた。
　思い出してみると、黒岩が最初に出た経営会議からして、そうだった。
　事業企画室長の山岡が、進行役の役割を超えて、部長クラスにかなり辛辣な質問を投げかける。時には目上の工場長や営業部長が、山岡にやり込められる場面が見られた。
　本社事業企画室は事業本部の管理システムの中心であり、しかしそうなると、会議の本来の招集者である事業本部長は何をするというのか。
　黒岩は、春田本部長が議事を山岡に任せたまま、まるで天皇の御前会議のようにそのやりとりを聞いているだけだという事実を見抜いた。
　黒岩自身が経営トップとしてそのようなやり方をすれば、これほど気楽な仕事はないだろう。
　会社の中に「代理症候群」と呼ぶべき症状が蔓延している。ラインの推進力が弱いと、その分、スタッフが強くなる。
　代理症候群とは、黒岩がこれまでの事業再生の経験で思いついた言葉だった。一つのフレームワークだ。欧米企業にはほとんど見られない、日本企業特有の組織の官僚化現象ではないかと思われた。
　攻めの成長会社では、ラインの責任者が自ら議事を組み立て、自ら進行を取り仕切り、自ら問題点を指摘し、自ら部下を叱り、自ら褒めることをしている。
　太陽産業の他の事業部ではどうなっているのか黒岩には変わらなかったが、少なくともこの事業本部では、会議の招集者であるライン管理職が自分の果たすべき役割をスタッフに「代理」させ、自分はお山の大将を演じているのだった。
　会議の主宰者だけでなく、出席者の上位管理職にも代理行為が蔓延していた。
　部長クラスが何かを説明するときには、自分はまくら言葉だけを喋って、あとの詳細は連れてきた部下に話させるという情景だ。
　その慣習を、若手に責任感をもたせ、人材育成をするための仕組みだと説明した役員がいた。黒岩はウソだと思った。事業が大赤字の時には、上位者が自ら陣頭に立って社内調整を行い、改善の時間軸を早めようと努力するのが当然だ。そうではなく、改革責任を負った上位者が自ら陣頭に立って社内調整を行い、改善の時間軸を早めようと努力するのが当然だ。そうではなく、改革責任を負った上位者が、まるで自分の権益のように、偉そうに坐っているだけに見えた。

　アスター工販の社長や営業部長は、現場回りで忙しい、忙しいと言うわけです。
　とにかく毎月の数字を固めようと、営業所や個々の得意先を訪問して、売り上げ促進をやっている。その意味では彼らは確かに現場主義をとっているつもりなのです。
　けれども総指揮官のくせに、マクロの戦略感覚が足りません。つまりマーケティングや全体戦略の感覚が足りないのです。
　企画や戦略のことなんか、若いスタッフにでも考えさせていけばいい、むしろ営業部長は営業担当と一緒に、竹槍持って野原を駆けずり回るべきだ。それがこの会社の伝統的な考え方でした。
　さらにこの会社では、人間関係重視型の営業スタイルで、成績優秀だった者が年功で昇進し、最後に総大将になるというシステムでした。その昇進する人材が、途中でマーケティング思考や戦略的なものの見方を磨く仕組みは、この会社にはなかったの��す。
　そういう知識や技法が、学んだことを自分の現場で試してみて、向上していきます。ちゃんと勉強させないと身につくわけがないのです。
　会社全体で戦略に関する知識技量が低い。幹部の経営リテラシー（読み書き能力）が不足している。社内の政治力学に流されやすいのはこのためでもある。戦略の創造性が勝負を分ける時代だというのに。

　黒岩はざっと読み上げてから、問題を一言に要約した。
「今のアスター事業では、会社が何をやろうとしているのか、皆に戦略ストーリーが見えていないと思う。だから行動がバラバラになる」
　そして彼は、この現象を二つの原因に分けて考えたいと言った。
「社員に戦略が見えないというときに考えられる第一原因は、戦略が『組織末端まで伝わっていない』という場合だね」
　経営の意思が伝わらず、末端で社員が実行していないという状況である。
　これを黒岩莞太は「『戦略連鎖』が崩れている」と呼んだ。
　昨日出て来た「価値連鎖」「時間連載」に次ぐ三つ目の造語だった。「ビジネスユニットの中で戦略連鎖がつながれば、全体戦略、開発戦略、営業活動などが、矛盾や切れ目なくつながりはじめる」
　そして黒岩は皆の顔を見わたし、ニヤッと笑ってから言った。「その『戦略連載』を具体的に設計するのもタスクフォースの仕事だよ」
　タスクフォースの仕事がまた増えた。星鉄也は気づいた。この合宿の進行とともにこれから何をするのかという疑問が減っていく。それに応じて、自分たちの仕事が増えていく。
　次いで、黒岩統括は戦略欠如の第二原因を取り上げた。
「戦略が組織の末端にまで正確に伝わるようになったとして……その戦略の内容が間違っていたらどうなる？　社内にごみを垂れ流すようなものでしょう」
　黒岩莞太は、第二原因の「戦略の内容がお粗末」を、さらに二つの原因に分けた。
・トップの「戦略志向」が弱くて、戦略立案が放ったらかしとか、手抜きをされる場合。
・戦略の「立案スキル」が不足している。戦略を編み出す技量や知識が足りなければ、陳腐な戦略しか出てこないのは当たり前だ。
　星鉄也は聞きながら、アスター事業ではこれまで、この両方ともがお粗末だったと思った。
　そこで黒岩は改革の第２フレームワークを映し出した。
「さて、競合を上回る成長を続けている企業では『勝ち戦の循環』が回っている。ダメな会社はこの循環のどこかが切れているんだ。
・戦略ニーズは時代の変化とともに変わっていき、それに伴って構想のカギ（ＫＳＦ、キーサクセス・ファクター）もシフトしていく。現在、われわれの事業は、顧客ニーズの何を満たすものなのだろうか？　将来はどう変わるのだろうか？
・誰が本当の競争相手なのだろうか？　最近は業界の境が曖昧になっているから、思わぬところに潜在的競争相手が潜んでいるかもしれない。
・そうして定義された市場の中で、われわれは常に成長分野に参入してきたのだろうか。
・それも他社の後追いではなく、リスクを背負い、常に先陣を切って参入してきただろうか。
・そしてその市場で、勝ちを収めるまで執拗かつ集中的な勝負をかけてきただろうか。そのためには優先度の低い事業から、経営資源を移動させることが必要だ。
・成長企業はこうした攻めの戦略で成功し、その分野でのトップシェアを勝ち取り、ナンバーワン企業だけが手にするメリット（コストや情報の優位性など）を享受する。
・しかし、長期間それに甘んじていると、やがて事業や商品は「陳腐化」して競争性を失いはじめる。あるいは業界そのものが経済の中で相対的にマイナーなものになっていく。
・そこで「鼻の差」でいいから常に先行する商品・事業開発を行うように、組織内の資源移動を図り、いつも次の成長分野に参入する努力が続けられなければならない。
・以上の循環が回っている企業では常に組織の緊張が保たれ、皆が目標を共有し、社員の力量が押し上げられていく。
　・逆に負けている企業は、この循環のどこかで行き詰まっている。
　この合宿で新しいフレームワークが提示されるたびに、改革タスクフォースのメンバーは心中穏やかではなかった。自分の会社がいかにお粗末か、その理由が次々に見えてくるからである。
「頭に来た。アスター事業はろくでもない。俺は人生をこんな職場で過ごしてきたのか」
　タスクフォースのメンバー全員がそんな感情に支配されていた。一〇年近い歳月を経て、今ようやく彼らの自尊心が根本から揺らぎ始めていた。フレームワーク（セオリーや原則論）を外部から学んで、初めてようやく内部の問題が見えるようになってきたのである。
　国民の知的レベルが上がって政治的に目覚めれば、その国の為政者が批判されやすくなるのと同じように。社員の経営リテラシーが上がってくれば、トップのとっている方針や戦略に対する社員の目も肥えてくる。
　国民の知的レベルの低い方が統治しやすいとする、いわゆる愚民政治を行えば、為政者は君臨し続けることはできるかもしれないが、国の長期の発展は起きず、国民は貧困なままである。
　会社の経営にも同じことが言える。
　内向きの経験則や硬直した序列が幅をきかせ、若手が頭をおさえられ、会社の変身が抑制されている企業で、何かをきっかけにしてその抑圧の構図を読み取った社員が怒りを感じるのは当然だった。
　その最たる思いは「自分が世間的に劣った人材に押し込められていく」という恐怖感だろう。
　この合宿を境に、タスクフォースのメンバーにとって、感情を無理に抑え込むことは無用になりはじめていた。腹立たしければ、それを語ることが許されはじめていた。
　そのまっすぐな気持ちこそが、過去への「強烈な反省論」を組織に迫り、皆が「良い会社づくり」に向かっていくための、原動力になるのである。

　黒岩の話に最後の熱が入った。
「企業が何をするにせよ、社員のエネルギーが結集しない限りは何もできない。経営者は誰しも、朝から晩まで、そのことに最大のエネルギーを使っている」
　不振企業の場合、社員のマインド・行動を変えさせるために、いくら「経営意識を持て」「危機感が足りない」と叫んでもその効果は長続きしない。そんな言葉では組織を構造的に強くできないのである。
　経営風土を変えるために「風土改革をしよう」とか、意識を変えるために「意識改革をしよう」などと、それ自体を目的化したところで、���績向上に辿り着くことは難しい。
　社員の多くはそうした抽象的なお題目に反応しない。彼らの心は燃えないのである。翌日になったら忘れている。
　組織はその構成メンバーの大多数が、実際の自分の仕事のうえで、「目的」と「意味」を鮮明に意識し共有しない限り、組織エネルギーを発揮できないのだ。
「社員のマインド。行動を束にするには、①明確な『戦略』が示されること、②社員が最速で効率よく戦えるビジネスプロセスが組まれていること、この二つがカギだ」
「しかし、その二つが整理できたら、それだけで会社がよくなる？　それも違うね。何か肝心なものが足りない」
　われわれは何のために、「戦略」を立てるのだろうか。頭のよさそうな人たちが集まって素晴らしい経営戦略を立てたら、それで会社は強くなれるのだろうか。新しい「ビジネスプロセス」をデザインして新組織を発令したら、会社は自動的に俊敏になれるのだろうか。
「経営戦略なんてただの道具……それを書き上げただけで何かが解決するわけではない。その証拠に……膨大な時間をかけたのに実行されない計画がたくさんあるじゃないか。コンサルタントにどれほどお金を払ったって、無駄になるケースなんて、イヤほどある」
　黒岩が言いたいことは、「社員の心に響くストーリー」を作り上げようということだった。
「われわれが『戦略』や『商売の基本サイクル』をいじくりまわす目的はただ一つ……今そこにいる幹部や社員のマインドを一つにすること」
　皆が目的と意味を共有すれば、組織の行動が束になり、すごいエネルギーが出るという意味だった。
　ここで黒岩莞太は組織をつなぐ「情報連鎖」を加え、それで「四つの連鎖」となった。
　黒岩は最後に、新たな造語を持ち出してきた。
　タスクフォースの打ち出す戦略は、組織に新たな共通造語になり、「社員の気持ち」を束ねる接着剤の役割を果たすものにならなければならない。
「つまりわれわれは、組織の『マインド連鎖』を生み出さなければならない」
　その言葉は、「熱き心の連鎖」「燃える集団の連鎖」と言い換えることのできるものだった。

　タスクフォースの面々は、黒岩莞太からたびたび厳しい指摘を受け、ショックを受けた。仕事の内容だけでなく「現実と向き合う姿勢」や「人生の生き様」まで問われた。
　共通した最初の反応は、「外から来た人にいきなり言われて不愉快」というものだった。それなら社内の人から厳しく言われたことがあったのかと聞かれれば、それもなかった。
　つまり彼らのほとんどは、誰からも厳しく叱られたことがなかったのである。
　先輩や上司が何かを成し遂げようと熱くなれば、部下を糾合し、指導し、時にはきつい言葉も出るはずだ。
　だが沈滞企業の内部では、そんなぶつかり合いはほとんど起きなくなっている。怒ったり厳しく叱ったりすることは、大人げない行為だとみられることが多い。
　そのくせ、上の者は、口先で部下に「切磋琢磨」などと言う。
　米国企業は、役に立たない社員はさっさと辞めさせて、有能な物を外から雇う。日本企業がそれをしないなら、代わりに、企業内部で社員を鍛える手法を持たなければならない。
　日��の沈滞企業では、上に立つ者が自分を成長させる挑戦機会に手を挙げず、肩書なりに偉そうにしているだけで、実は部下を鍛えるには経験も知識も足りない。ぬるま湯的な組織とは、そうして上と下とが互いに遠慮している環境から生まれる。部下は鍛えられないので、成長が遅く、世間的に劣った人材になって行くことを、ぬるま湯の特徴として、自覚できない。
　改革先導者に加わった者は企業変革を前にして、会社の変化の壁だけでなく、同時に自分の実力の壁に行き当たり、その現実に苦しむ。会社と個人の二つの変革がワンセットで求められるので苦しいが、この試練をうまく越えれば、人材として「一皮むける」機会になる。これを人生のチャンスととらえ、ひたすら足を前に出す。

　戦略とはまだ実行していないことを決めるのだから「仮説」である。ということは、考えた戦略が優れているかどうかは、仮説として良いか悪いかで決まる。だったら仮説として良いか悪いかは何で決まるのか。それは仮説の論理を貫いている「ロジック」が明快かどうかに尽きる。

　著者の経験では、戦略の切れ味は内容の善し悪しを考え抜いたかどうかもさることながら、上司が組織末端での実行活動をしつこくフォローしているかどうかのほうが結果に大きな影響がある。皆が「自分は見られている」と感じることが重要なのだ。戦略を決定したらそれで自分の役割が済んだつもりのトップは多いが、それは間違いである。

　私（著者）は、自分が関与してきた改革ケースを分析してその進め方の共通パターンに気づき、それを「成功９つのステップ」と名づけた。会社の改革がうまく進むときには、業種や状況の違いがあっても、必ずこのステップがきちんと踏まれている。停滞や失敗が起きる時は、そのステップのどこかで改革の勢いを殺す障害が発生している。
　黒岩莞太らの改革チームは「成功９つのステップ」を正確に踏んできている。そのお陰で、「死の谷」に転げ落ちることなくここまで前進を続けてきた。
　第１ステップ「期待のシナリオ」と「具体性不足の壁」
　強いリーダーや組織は、自分たちの改革がうまくいっているかどうかを判断する「基準」を持っている。それは予算とか計画のような形で文書化や数値化が行われていることもあれば、改革リーダーが心の中に抱いている「思い入れ」や「願望」の場合もある。
　そのような基準のことを、私は「期待のシナリオ」と呼ぶ。その内容は改革の行動ステップ、スケジュール、あるいは最終的に目指す「できあがりの姿」などが、できるだけ明確に示されていなければならない。
　それを基準にして、いま改革がどう進んでいるかを見たとき、「このままではまずい」と気づけば、改革者は何らかの是正行動を起こす。もし「期待のシナリオ」が曖昧で、現実の改革実行がうまくいっているかどうかの判断ができないものであれば、「これはまずい」と気づくことはできない。そうなれば行動の是正は行われず、そのまま進んで改革の停滞や行き詰まりに至りかねない。だから改革の成功を危うくする最初の障壁を、私は期待のシナリオの「具体性不足の壁」と呼ぶ。
　期待のシナリオを書くのは容易ではないが、闇雲に改革を始めて停滞や失敗を起こすよりは、冒頭でしっかり考え抜いて立案し、それを幹部・社員がきちんと共有することが重要である。
　第２ステップ「成り行きのシナリオ」と「現実直視不足の壁」
　優秀な改革リーダーは、いつも「このままいけばどうなるか」の絵を正確に把握することに努めている。船の船長が双眼鏡やレーダーを頻繁に見るとの同じである。手ずから（ハンズオン）の行動で自ら「問題のボトム」を確かめ、この先、事態がどう推移するかを読もうとする。それによって得られる見通しのことを「成り行きのシナリオ」と呼ぶ。それが第２ステップだ。
　そして、それを第１ステップの「期待のシナリオ」と照らし合わせながら、改革がうまく進んでいるかどうかをチェックする。
　この先の「成り行きのシナリオ」を正確に描くことは、「いま、どこにいる」という現状把握を正確に行うことから始まる。それがうまくできない会社は「現実直視不足の壁」に行き当たっている。そうなれば、このまま進んでどうなるかの成り行きのシナリオを正確に描くことができない。考えられる原因としては
① リーダーが「現実直視」を行う能力に不足がある（たとえば、経営リテラシーが低い）
② 情報不足（悪い話が上に伝わらないとか、情報解釈が浅くて深刻さに気付かない、など）
③ 幹部の時間軸認識が甘い（とりあえず放っておいても構わないと思っている）
④ 目標への執着心が薄い（怠惰か無責任か、いずれにしても必死に取り組む気がない）
⑤ そもそも何を目ざしているのか「あるべき姿」が初めから曖昧
などがある。
　これらの原因は、第１ステップ「期待のシナリオ」での「具体性不足の壁」が強く作用している。前のステップをいい加減にしたまま改革を進めると、次のステップで行き詰まりの原因を増幅させてしまうのである。
　過去アスター事業部の「成り行きの認識」は非常に甘かった。予算がはずれても平気、大赤字でも危機感は薄かった。彼らの「成り行きのシナリオ」は、基本的にいつも「このままで大丈夫」「切り抜けられる」という楽観論だった。香川社長に正確な情報は届いていなかった。香川社長を登場させたことで初めて明快な「期待のシナリオ」が立案され、「現実直視」「成り行きのシナリオ（このままでは事業を救えない）」の認識プロセスが始まった。
　第３ステップ「切迫感」と「危機感不足の壁」
　第１ステップ「期待のシナリオ」と第２ステップ「成り行きのシナリオ」の説明で述べたが、第３ステップでは、両者の照合を行うことで現状がうまくいっているかどうかの判断を下す。「このまま進めていけば成功に至る」と思えば、是正アクションは必要ないから、いまの改革鼓動を進めていけばいい。しかし「このままではまずい」と思えば、あなたは「切迫感」を抱く。それが、第４ステップ以降の作業をきちんと進めるための原動力になる。
　現実には二つのシナリオを比べても、現状が良いのか悪いのか判断できないことが起きる。その最大の原因は、もともと二つのシナリオの片方ないし両方ともがいい加減に作られていることだ。そうなれば切迫感は生まれず、第４ステップ以降の行動は先延ばしになる。それが、組織の「危機感不足の壁」である。現実���「まずい」のだから、いずれ改革は的外れの状態に陥って、停滞を引き起こす可能性が高い。
　業績不振で停滞している会社で社内の危機感が低いというのは、このステップで「切迫感」が生まれていないからだ。その状態が長く続けば、その会社はこのステップで死の谷に近づいていく。
第４ステップ「原因分析」と「分析力不足の壁」
　現状に危機感を抱いた人は必ず、「どんな手を打てばいいのか？」と自問し、自然に「そもそも、なぜこんなことになったのか？」という疑問に行く。つまり、原因分析が必要になる。
　それまで社内で語られてきた原因が、不振の本当の病原とは限らない。真の原因を明らかにできなければ、どこから改革に手をつけるかの判断がズレる。そうなれば、問題の核心を正確に見つけなければならない。そこに「分析力不足の壁」がある。この壁を越えられるかどうかは二つの要素に依存する。
① 十分な分析スキルがあるのか
② 原因分析に対する「こだわり（執拗さ）が十分にあるのか
　慢性的な不振事業は第３ステップで止まっているのだから、日ごろからものごとを論理的に議論し、数字を重視する気風が弱く、分析スキルを身につけた社員が少ないのが一般的である。
　問題は分析能力だけではない。そもそも本質を突く情報やデータは簡単に手に入らないのだから、あきらめずに探し続ける「こだわり（執拗さ）」が重要だ。データがないと言って、あっさり諦めてはいけないのである。
　分析が進み、これが問題の核心だと思えるものが見えてきたら、次にそれを人々にわかりやすく説明するために、問題をできるだけ単純化して、「原因のロジック」と呼ぶものを描く必要がある。指摘された人々がグウの音が出ない形で現実を示すのである。
　改革の入り方や進め方を正しく設定できるかどうかは、この作業で決まる。原因ロジックが複雑なまま改革に進むと、組織は無駄な動きが増え、勢いを失いかねない。
　アスター工販の改革では「商売の基本サイクル」のフレームワークが大黒柱になっていた。基軸論理を明確にすると、一貫したストーリー性が出てくる。それは第５ステップのシナリオ作りに行ってから考えるものではない。読者の皆さんは、タスクフォースの合宿のわずか三日間で、彼らの認識と意欲に大きな変化が起きたことをご記憶だろう。最初から核になる改革フレームワークが共有されていれば、第１～４ステップがワンセットで一気に進むのである。
　黒岩たちは合宿のあと、本社に戻って原因分析をさらに具体化させる作業に入った。苦労に苦労を重ねてグウの音を言わせない事実関係を集めて、不振事業の真の「原因ロジック」を組み立てていった。その結果、出来上がってきたのが「強烈な反省論」だった。
　そこでは、社員全員が「自分もまずかった」と強烈な自省の念に駆られるものが提示された。会社の痛みが個人レベルにまで分解され、両者を繋ぐ「赤い糸」が見えてきた。自分の痛みをもって危機感を覚えた人々は、解決に向けた行動に協力的になる。経営ノート④で開設した１－２－３枚目ロジックのうちの「１枚目（強烈な反省論）」は、ここでは第１～４ステップに当たる。
　第５ステップ「シナリオ作り」と「説得性不足��壁」
「強烈な反省論」ないし「原因ロジック」が見えたら、それに基づいて「改革シナリオ」を組み立てることになる。重要な認識として、前者を反転させたものが後者になる。
　成功する戦略は常に話が単純にできている。長い時間をかけなければ説明しきれない戦略（つまり複雑な戦略）は、劣った戦略である可能性が高い。劣っているというのは、そのまま実行しても大した成果が得られないという意味である。
　劣ったシナリオは社員の「マインド・行動」にインパクトを与えることができない。それが、「説得性不足の壁」である。その壁を乗り越えるためには、シンプルで強力なシナリオが提示されなければならない。しかし皮肉なことに、それが鋭く書かれていれば、逆に社員の心に猜疑心や不安を呼び起こす面もあるのが現実だ。そこで大切なことは、
① シナリオが論理的権威性に裏付けられていること
② 分かりやすいストーリー性を持っていること
③ 改革リーダーが「熱い語り」をもって不退転の姿勢を示すこと
　読者は、黒岩莞太やタスクフォースの面々が社長や幹部に対して行った改革プレゼンに、これら三つの要素が含まれていたことに気づいただろう。

　第６ステップ「決断」と「決断力不足の壁」
　第５ステップのシナリオ作りと並行して、第６ステップとして一連の「決断」が次々に下されていく。それで改革の切り口、リスク、実行順序、時間軸など全体ストーリーが固まっていく。
　ここには「決断力不足の壁」が隠れている。十分な情報が得られていない（すなわち第４、５ステップの作業が甘い）と感じるとき、人は決断に迷う。あるいは、その決断で自分の立場が危うくなる恐れがあるときにも、決断力は鈍る。また、時間軸感覚が甘いと、「まだ決めなくてもよいだろう」と先延ばしの態度になりやすい。
　改革案は最後に社長や取締役会に提出され、会社としての「決断」が下される。けれども、それは形式的な手順に過ぎない。改革の成否を決定づける実質的な決断のほとんどは、改革チームのプランニング段階で下される。
　つまり、シナリオ作りと決断は同時並行的に進むのである。トップが改革リーダーの真の決定者としての役割を果たすつもりなら、きれいに整理された案が上がってくるのを待っていてはまずい。プランニング段階から作業に入り込むことが不可欠なのである。私は、それを決定権限者による「生煮え状態での検討参加」と呼んでいる。黒岩莞太がタスクフォースの作業部屋に日夜出没し、並走しながら判断を示していくやり方を行っていたことをご記憶だろう。経営ノート④で開設した１－２－３枚目ロジックのうち「２枚目（改革シナリオ）」とは、ここでは第５～６ステップに当たる。
　第７ステップ「現場への落とし込み」と「具体化力不足の壁」
　第５ステップから「説得性不足の壁」を乗り越えることができた改革は、次に社内各部署それぞれのアクションプランに落とし込まれなければならない。
　ラインを巻き込んで、具体的行動計画が部署ごとに作成され、改革効果を測定する何らかの基準（KPI）が示される。それが明らかになれば、話は突然に「目標とその期限」の設定に向かう。
　改革シナリオに対して総論で賛成だった人々が、この段階まで来ると各論で反対に回ったり、実行案の細部を曖昧にして骨抜きにしたりするなど、政治性を帯びた行為が出てくる。ここに、改革の「具体化力不足の壁」がある。それを越えるには次の能力が必要である。
① 現場への緻密な落とし込み能力
② 燃えるリーダーシップ
③ 社内の政治的軋轢を処理する能力
　アスター工販の改革では、組織をすべて組み替えるという大胆な改革が行われた。新組織の経営陣は、実行者として自分でビジネスプランを固める作業を行った。改革リーダーたちが、この段階で遠慮や迷いを見せれば、改革は初速を失いかねないから、一度走り始めたら、何が何でも「具体化力不足の壁」を突破しなければならない。
　第８ステップ　「実行」と「継続力不足の壁」
　第８ステップは「実行」である。何と、ここまで七つものステップをクリアしてこないと、改革は実行段階に入れないのだ。ここから先は、愚直に行動、行動、行動の繰り返しだ。集中すべきと決めた範囲に限定して革新的手法を試行し、うまく行ったら対象を広げて水平展開するというやり方を繰り返す。見掛けは大きな改革でも、実行面では短い時間軸の局地戦を精力的に繰り返していくのである。
　日本企業の改革がなまくらになりやすい理由は、「突出部分」で「一気呵成の勝負」というアプローチから逃げたがるからだ。ここには「継続力不足の壁」がある。それを越えるには、
① もともとのシナリオや改革の意味を社員に繰り返し思い出させる
② Early Success（早期の成功、壊創改革の要諦42）が見えやすいように実行計画を組む
③ 熱

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大企業病からの復活劇、本当に?と思う内容ばかりでした。

結局は人のマインドなのかと思いつつも、どのように優秀な人たちのマインドをポジティブにし、動きやすい組織にしていくのか、経営の良し悪しによる影響を間近で見た気がします。

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リーダー研修で女性のVPがこの本を読んだきっかけで、戦略とかVPに興味を持ったって言うのを聞いて、早速読んでみた本。
このシリーズのオレンジのやつは既に読んだことあって面白かったから興味深くかったのと、ストーリー仕立てになってるから、分厚さの割にはスルスル読める。
三枝さんの話はストーリー仕立てになりつつ、エッセンスを抑えてくれてるからわかりやすい。

保存版にしようと思う。
こういう戦略自分でできたら楽しそう！

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大企業あるあるが書いていて面白い。
面白いだけでなく、自分の反省にもつながり、モチベーションがあがる。
前半の戦略論と組織論に関する教訓は参考になる。（後半はサクセスストーリー）

ノンフィクションをうたっているが、社員のインタビューの受け答えが都合良い感じがして少し気になった