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知らない単語、とくに形容詞、副詞、がたくさん出てきて、調べながら読んだ。
こんなふうに日常を言葉で表現できたら、同じ日常でも違って感じられるだろうと思う。
この著者の方と一緒に生活してみたい。
ここ最近のベストワン。
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「棕櫚を燃やす」
「これからの一年をあまさず暮らそう」と、春野が澄香に言ったように、日常の情景や言葉が丁寧に描かれていた。父親の状況を、きっとそうなんだろうなと思わせる描写で著し、あまさず暮らしていこうとする日々がつづられていく。
自分の父と重ねられる場面が多く、むるむるの感じも何となくわかるような気がした。父の言葉が、ごめんねよりもありがとうが増えてくることとか、悲しみは自分達だけのもので他の誰かにわかってもらいたいとか共有したいとは思わないとか、嬉しいときも悲しいとか、おやすみまた明日と言うことが難しいことのように感じるとか。自分のなかにしまっていたものをなぞるようだった。
静かにあますことなく暮らす父娘が、巡り巡ってまた棕櫚を燃やしたあの日に逢えると私も信じたい。
「らくだの掌」
「お茶漬けさらさら、気負わないでこの仕事をやっていけばいいよ。」といってくれた並木さんとのことが描かれている。人に触れることに恐怖を感じていた中林さんに、手渡されたはるまき。そのあたたかさが掌に伝わったときのことを思い、変わってしまったことを再認識する。最後は、中林さん、頑張れと応援したくなる短編。
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ん〜なんだろう??このいつもと違う読後感。静謐な言葉の礫が心にたくさんひっかかり、静かに染み込んでいくような初めての経験。忘れられない1冊
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人を失うということを柔らかに描く。なんかこういう風に受け止める人もいるんだと思ったらそれだけでずいぶん楽になる。
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賞を取った表題作の父と娘2人に通い合う情愛はしみじみと温かく1年と時間をくぎられた中で壊れゆくものをぞっと守っているような緊張感に満ちていた。
もう1篇の「らくだの掌」のひょうひょうとした並木さんのありように心が締めつけられた。とても好きな作品です。
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「あまさず暮らす」この言葉に出会っただけでもこの本をよむ価値があるかも。
よいこともわるいこともあまさず暮らしの中にはある。その家族の中で起こる現象の全てが愛おしく感じさせてくれる。
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ひとつひとつの言葉を飲み込みながら、読みました、ヒリヒリしながら。
「棕櫚を燃やす」も「らくだの掌」もです。
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決して方言や訛りがあるわけでもないのに、なんとも読みにくいセリフが多かったのですが、それは日常会話で喋る言葉をそのまんま綴られていたので、読みにくいのは当たり前だと思い、むしろ、よりリアルな会話が伝わってきました。
「思ったことをそのまま言える相手」と言うことはよく聞きましたが、
「目にしたものをそのまま言える相手がいる」と言うコメントがあり、自分以外の人と心の中で共有しているような気持ちになります。
家族愛と言ったらそれまでなんですが、
「あまさず暮らす」とはどんな暮らしなのか。
段々とした一見なんの変哲もない家族3人のように始まり、それぞれの想いが、「しろい手」によって、少しずつ姉妹と父は何かに向かっていく世界に、読者も吸い込まれていきます。
今いるこの世界から考えると、遠い宇宙の片隅にいる家族を観ている感じでした。
なんか寂しいとか切ないとか孤立感があるように見えたのに、どこか、他の何よりも暖かく、愛があり、本当の人間を味わっていたのかもしれませんね。
「らくだの掌」では、後半に差し掛かると、前半に戻ったり、中盤に戻ったりしながら読むこととなり、しまいには初めからもう一度読んでしまい、最後のオチを知ってから、もう一度読むとまったく違った印象にも感じました。
中身ですが、中林さんの視線に癖があり、並木さんの言葉や応え方も癖があるのに、どこかで会ったことのある不思議な親近感がありました。
社会の中で置いてけぼりの弱者やそのサポートする方たちのストーリーなのに、嫌味なくその人たちの心をのぞかせていただいた気がします。
メディアやSNSではなかなか知ることのできない内容だったので勉強にもなりました。
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表題作は、闇に息吹く、鮎の匂い、地平線の場所、雪の音 の四部構成になっていたが、春野と澄香が父と暮らす何気ない日常の話が淡々と続く.あまさず暮らそう という目標のようなフレーズが気になった.むるむるという字句も頻出する.亡くなった母を しろい手 で表現しているのも深い意味を見たような感じだ.後半の「らくだの掌」では、たなごころが読めなかった.なかちゃんこと中林と並木さんが栗原さんを支援する話だが、茫洋とした感じで淡々と話が進むが、捉えどころのないままに話が終わった感じだ.はるまきが何度も出てくるのが気になった.
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イライラむずむずする焦燥や異空間にいるような孤独感、自分は存在しないような浮遊感とか、よくあの感情を表現したなぁ、という感動。マインドフルネスをしているような、その時の呼吸だけに集中するような、研ぎ澄まされた感覚で音や温度や質感や空気感をとらえてる感じ。過ぎていく時間と、逆行する切望の静かな摩擦が丁寧だった。
2作目は、普通。
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主人公はここで、きっと泣いたんだろうな、と思える場面があったが、泣くとか、涙と言う単語を使わずしてそれを見せてくれた。その様子が私自身にも覚えがあり、ビビッと来て泣きそうになりました。
優しい場面、ささいなことの表現が魅力的な作家さんだと思います。
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ほとんど筋というものがない。淡々と過ぎゆく父と娘二人の日々と会話が繰り返されるだけ。そんななかで時折3人それぞれの世界観をじわっと感じさせる。穏やかに。
まるで詩のような春野のひとりごとが続いていく。柔らかに。
フランスの作曲家の室内楽を連想した。ドビュッシーかな。
ただ耳を任せていて心地よい。
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日々の暮らしの中で、ふと「ん?」とか「そうそう」とか思いながらも、特に心に留め置くでもなく通り過ぎている感情や感覚を丁寧にことばに紡いでいて、作品の内容と私の体験はリンクしないのだけど、その感じ、私、知ってる、と思えるという意味で、私の物語でもあった。透明感のある文体は消え入りそうに淡くてやさしくて、詩を読んでいるみたいだった。併録の『らくだの掌』の終わりは不覚にも泣きそうになった。
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読書備忘録859号。
★★★。
これは読者に作品が言わんとすることを読み取らせようとする種類の小説です。
嫌いではないですが、好物でもない。
読み取ろうとする努力をしなければ、何だこりゃ?で終わってしまう系。
第38回太宰治賞を受賞した表題作「棕櫚を燃やす」と書下ろしの「らくだの掌」の2編。単行本にするために、書き下した作品も頑張って読み取った結果、言わんとすることは命でした。
命以外はすべてどうでも良いことなんだよね、という作者のメッセージが伝わってきました。なので作品の舞台を構成するディテールがテキトーすぎる作品。
【棕櫚を燃やす】
姉妹と父が一緒に暮らしている。細かいディテールは不要。どうでも良いこと。
どうやら父は余命1年の病魔に侵されている。病名ははっきりしないし、どんな医者に診てもらっているのかも不明瞭。どうでも良いことだから。
白い手をした母は自殺で死んでいるようだ。まあ、どうでも良いことだ。
肝心なのは、姉妹と父が共にするこれからの1年。父の1年の命をどうしたいのか?どうしなければいけないのか?
一瞬一瞬の時間を切り取って貼り付けて永遠にしたい。
移ろいゆく空気。そこはかとない世界の連続。誰もが感じる感覚。かけがえなのない思い。そして白い手の母の思い出も。
一瞬も逃さず「あまさず暮らす・・・」。
う~ん。
【らくだの掌】
社会からなにかしらの支援を受けなければ命が消えるかも知れない高齢者。ハンディキャップを抱えている人々。生活困窮者・・・。
それを支援する施設?団体?作品では「舎」としか表現されていない。どうでも良いことだな、これは。
舎の職員?なかちゃんこと中林さん。本人も何かしらの精神的なハンデを抱えているみたい。
施設の先輩並木さん。こちらもなにかしら抱えている。明確なのは斜視。でお酒が好き。
並木さんとなかちゃん。河川敷で雑草を茹でる栗原さんや、独居老女の森さんをケアする。彼らは死と隣り合わせ。命を守る・・・。
ただ、並木さんたち自身もかけがえのない命。命を削って、命を助ける・・・。
現実を受け入れられないなかちゃんが、ちょっと悲しい。
でも、やっぱり、う~ん。
なんで借りたんやろ。この作品。
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健全なメンタルの状態なら好きなタイプの本。
ただ、今著しく不調のため辛い本となった。
死の匂いが揺蕩う内容でした。調子の悪い人はお避けになった方がよろしいかと。