紙の本
記録小説
2023/09/02 07:14
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投稿者:みずたまり - この投稿者のレビュー一覧を見る
津村記久子さんの「やりなおし世界文学」を読んで、読みたいと思ったけれど絶版で、なので映画を見たらとてもよく、やっぱり読みたいなと思っていたところへ、新訳が出ました。読むしかないでしょう。そして、読んだ感想。とってもよかった。
1930年代のアメリカ南部で起こったできごとが、小学校低学年の女の子の目線で書かれている。差別や貧困、ちいさな町で起こるさまざまなことが、つぶさに、くもりなく、描写される。いまだにアメリカでの黒人に対する差別は、かつてのようなものではないにしてもあるらしく、本当になくなるべきだとは思うけれど、あったのは事実で、そういう意味でこれはかつてそうであったという記録として読み継がれて欲しい。
映画でも思ったけど、お父さんのアティカスが本当にいいね。正しく生きるということがどういうことなのか考えさせられた。
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ハーパー・リーが自分自身が生まれ育ったアメリカ南部、1930年代のアラバマ州の架空の町メイコンを舞台に描いた自伝的小説。
世界恐慌以来貧困に苦しむ農村、そしてさらにその貧困の底辺にある黒人たち。
主人公のスカウトはまだ小学生になったばかりの少女だが、いつも男の子のようにオーバーオールを着て、兄のジェムと一緒に遊ぶ。そして、二人には夏休みの間だけ、メイコンに来て過ごすディルという友人がいる。
物語はスカウトと二人の少年を中心に、子どもたちの目線で見た当時の南部の社会を描く。
前半は学校には年に1日だけ来て、毎年落第する貧困家庭の子どもたちや、黒人と白人という明確な差別が残る社会、そして、白人の中にも格差があることなど、当時の南部の暮らしを描いている。
後半は白人の娘(但し、白人の中でも底辺の暮らしをしている家庭の娘)を黒人の青年が襲い、レイプしたとされる事件が起き、スカウトの父で、弁護士であるアティカスが容疑者とされる黒人男性の弁護に立つことになる顛末と、黒人を弁護したアティカスに対する社会の反応が描かれる。
この小説が発表されたのは1960年。61年にはピューリッツァ賞を受賞し、ベストセラーとなる。
作家のハーパー・リーは同時代の売れっ子作家トルーマン・カポーティとは旧知の仲で、物語の中に出てくるディルはカポーティがモデルだとされている。
カポーティが「冷血」というノンフィクション小説を書くための取材活動をしていたときには、彼の助手のような役割をしていた。映画「カポーティ」はその「冷血」を書こうとしていたカポーティの葛藤を描いた作品でハーパー・リーも出てくるが、彼のアシスタントの様な立場であった彼女が本作を書いて、ピューリッツァ賞まで取ってしまうのを見て、スランプに陥っていたカポーティが焦りの様なものを感じている姿を描いていた。
その時にハーパー・リーとはどんな人なのか、「アラバマ物語」(この新訳が出るまでの本作の日本訳タイトル)がどんな物語なのか気になっていた。
読んでみて、なるほど、カポーティが焦りを感じるのもわかる気がする作品だった。
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色々突っ込みたいところはあるのだけれど、星5つ。
人種問題とか、簡単に矮小化されるテーマで括ってしまうと見えなくなるものがたくさんあるよね。
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『アラバマ物語』といえばグレゴリー・ペックの顔ばかり思い浮かぶ。ちゃんと読んでなかったかもなあ。
途中までたらたら読んでいたが、後半の法廷シーンから俄然面白くなり、あとは一気。
1960年のこの作品発表から63年経っているわけだけれど、進んだところ、強固に変わらないところ、更に表面化したところ…読んでいて、二重三重にいろいろ
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こんな長かったかな、3年間?本も期間も。主婦の友版と対照したし。まあ、映画の印象が強いが、DVD特典映像見てないなー。さて、続編をどうしたものか。
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あなたは、『アメリカの映画俳優グレゴリー•ペック(1916〜2003)の代表作と言ったら何だと思いますか』と聞かれたら何と答えますか?
日本で多いのは「ローマの休日」でしょうか。あとは「オーメン」。映画好きならば「ナバロンの要塞」「マッケンナの黄金」「渚にて」「アラベスク」等が出て来るかも。
しかし、本国アメリカで評価が高いのは、何と言ってもこの小説を映画化した「アラバマ物語」だそうです(アカデミー主演男優賞受賞)
1933年のアメリカ南部アラバマ州メイコムという架空の町。スカウトことジーン•ルイーズ•フィンチは母を早くに亡くし、弁護士の父アティカス、兄ジェムと暮らしている。純朴なスカウトの目を通して、大恐慌に喘ぐアメリカ南部の地方都市の実態が赤裸々に綴られていきます。生活に困窮し、満足に出席できずに毎年一年生を繰り返す子どもたち。肌の色が黒いという理由だけで偏見を持たれる人たち。そんな中、一人の黒人青年が白人女性をレイプした嫌疑で告発され、父アティカスが弁護を担当することになります。
本書のタイトルは、父親のアティカスが子どもたちを諭す言葉からとられています。『ものまね鳥は何も害を与えず、ただ楽しく歌っているだけ。無力な者を殺すのは、ものまね鳥を殺すのに等しい』と。
本書は1960年に出版され、翌年ピューリッツァー賞を受賞しました。"法廷の中だけは、この世の中で絶対に平等な場所である"というアメリカの矜持が感じられる作品の新訳です。ただ、残念なことに、"2023年の今、世界は本当に変わったのか?"という思いを持たざるを得ないのも事実です。
…一応、最初の質問に答えておくと、
『仔鹿物語』
です。理由は、"人が生きる意味を教えてくれるから"と言って、『アラバマ物語』も好きだった亡き母が、子どもだった私に見せてくれたからです。そう、スカウトと同じくらいの年齢の時に。
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1930年代の南部アメリカ、6歳の少女スカウトは4歳年上の兄ジェムと、弁護士の父アティカスと田舎町に暮らしている。母親はスカウトが小さいころになく亡くなっており、家の中のことは黒人女性のメイド・カルパーニアがやってくれている。その頃の南部の町では、まだまだ黒人の差別が厳しく、ニガーと公言してはばからない人が多くいる。黒人だけでなく、貧しい白人たちは学校にも行けず劣悪な生活から抜け出すことができずにいる。アティカスの偏見にとらわれない態度は、町の人々から信頼を持たれている。そんな町でおきた白人女性のレイプ事件。アティカスは被害者の白人女性が犯人だと名指しする黒人の弁護をすることになる。
ずいぶん前に暮しの手帖から出ていた「アラバマ物語」の新訳。あらすじはなんとなく知っていたが、ちゃんと読んだのは初めて。あらすじを聞いても「アラバマ物語」の表紙がオーバーオールの少女のアップなことが不思議だったのだが、今回読んでみて納得した。
時代を感じさせるストーリーだが、兄妹の生活ぶりなどが生き生きとしている。なんということのない出来事と思われていたことが、ラストの大きな出来事への伏線となっており、ちゃんと回収されてエンディングへとつながる。読んでみて良かった。
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本書も映画も素晴らしく、涙が出た。
父子の信頼関係、自分と違う人を理解しようとする姿勢、無償の愛など心に沁みた。
間違いなく、今まで読んだ本の中で、ベスト3に入る。
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1960年にアメリカで発行され、映画も有名な本書。1930年代のアメリカ南部が舞台。主人公のジーン・ルイーズ・フィンチ(スカウト)が6歳(小1)から3年生のハロウィンまでが描かれる。父は州議会議員で弁護士のアティカス。母はスカウトが2歳の頃死亡、兄のジェムは4つ上。カルパーニアという黒人女性が家政婦に来ている。スカウト6歳の夏に一つ年上のディルが夏の間だけその地の叔母のところに来ているのに出会い、3人で夏を過ごすようになる。近所には仲良しのミス・モーディーの家もあるが、嫌みたらしいミセス・ドゥボーズの家と三軒先にラドリー家がある。ラドリー家はその地域全体で不可侵のような場所になっていて(引きこもっているブー・ラドリーがいるらしい)ジェム、ディル、スカウトはその家にちょっかいを出す遊びを始める。・・・このへんまでがすごく読むのが大変。その後、黒人が白人女性をレイプしたとして訴えられる裁判の弁護をアティカスが指名されて引き受けることになり、裁判の様子は迫真の描写で引き込まれる。後半以降は最後の驚きの出来事まで一気に読める感じです。
まあ、とにかく主人公スカウトが素直で賢くて感心します。そしてアティカスの驚異的な正義感。かっこいい。スカウトは女の子として当時必要だったことが嫌いでいつもオーバーオールを着ています。話の中には最貧民の白人たち(カニングハム家等)や黒人と家族でいたいために愚か者の擬態をしているミスター・レイモンド、黒人への判決を憂うテイラー判事など魅力的な人物が多く出てきます。前半の無駄っぽかったラドリー家へのいたずらも最後に活きます。
目線が低学年のスカウトなので、一応小学生でも大丈夫な表現です。レイプがわからないスカウトがお父さんに聞いたりとか。でも、これを小学生で読んで感銘を受けられたら天才やね。映画を見ていたら楽しめるかも(私は見ていません)。
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2023/12/25~2024/2/2読了
前半はジェムとスカウトと時々遊びに来るディムとのアメリカ南部の子供たちの生活が描かれる。
後半は父親で弁護士のアティカスは黒人のトム・ロビンソンを弁護することになるが、そのことから彼はニガー好きと村人から揶揄される。
無罪となる証拠か幾多と上がりながらもトムはマイエラ・ユーウェルの強姦の罪で有罪となってしまう。トムは絶望して護送中に逃亡を企て射殺されてしまう。
一方原告のユーウェルは黒人の弁護を引き受けたアティカスを憎みジェムとスカウトを殺害しようと企むがブー・ラドリーが現れユーウェルを殺してしまう、たがこれは事故だとして片付けられてしまう。
ものまね鳥は人々に歌を聞かせるだけで何もしていない、罪のない人を殺してはいけないという意味が込められている。
ものまね鳥はトムやラドリーを象徴している。
アメリカ南部の黒人差別を描いた作品。
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改訳版ですが原本の自体の癖か、読みづらいです。
が、2024年の正月現在、戦争をしている地域が複数あり、侵略のチャンスを狙っている政治家もいるような時、全ての人に読んで欲しい本。
映画版もあるので、そちらでグレゴリーペッグに感動するのも悪く無いと思います。
古い時代の話と思わず、人間の性だと受け止めるべきお話
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スカウトは勝ち気で好奇心旺盛で赤毛のアンのアン・シャーリーっぽいなと感じました。また、噂話好き偏見差別があるの町の雰囲気は「ザリガニの鳴くところ」っぽい感じがした。
スカウトを取り巻く人物たちが素晴らしい。ブー・ラドリーには泣かされたよ。
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「でもね、ディル、トムはしょせん黒人なのよ」
スカウトでさえ、黒人には父親同様礼儀正しく接していながらも、どこか下に見ている。それをこんなにも分かりやすく表した一文は無い気がする。ディルが泣いてしまった理由に理解と共感をすることが出来たのは、ミスターレイモンドだけだ。彼もまた混血児を持ち、どこか距離を置いて皆と接している。その彼の、町の人に理由が必要なんだ、だからそれを与えていると、袋に隠したコカコーラをディルにあげるシーンが強く心に残る。裁判の場面も確かに印象的だが、父親が子供に対して誠実に振る舞う場面や、階層意識に囚われまくりのご婦人達との会食など、その他の何気ない日常的な場面でさえも、考えさせられる所が多々ある。混血故にどちらのグループにも属せない子供達、白人でありながら白人と見なされない子供達、色々な人間が居るが、今よりこの時代は差別が露骨で、読んでいるこちらが辛くなる。黒人に罪を被せることを思いついたユーウェル家の人間も、考えれば貧困と差別の犠牲者側の人間なのだ。一方でまた、自分達より下の人間が居ることに安心して、平気で罪をなすりつけることに抵抗を覚えない。これはこれで、恐ろしい発想だ。黒人のトム、白人貧困層のユーウェル家、謎に満ちたラドリー家と、不幸には本当に様々な形ものが世の中には存在している。差別や偏見を無くすのは、それを生み出すより余程難しい。