紙の本
海外事情を含め、トランスジェンダーを広範にカバー
2023/09/11 15:59
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:巴里倫敦塔 - この投稿者のレビュー一覧を見る
トランスジェンダーという言葉の定義から、性別移行、差別、医療、法律など、海外事情を含め広範な領域をカバーした書。トランスジェンダーの現状と問題点、トランスジェンダーの人にどのように接したら良いのかを知ることができる入門書で、多くの方にお薦めできる。東京大学の生協でベストセラーの上位に食い込んでいるのは喜ばしい限りだ。
筆者は「よくある勘違い」をいくつか紹介しているが、評者自身に当てはまるケースも少なくない。トランスジェンダーについて分かったつもりだったが、いかにいい加減な知識だったかを痛感させられる。
本書は、「トランスジェンダーとは?」から始まり、性別移行、差別、医療と健康、法律、フェミニズムと男性学へと議論を進める。筆者は、トランスジェンダーとはどういった人たちで、性別を変えるためには何をしなければならないのか、どのような差別を受けているのかについて、具体例を挙げながら解説する。
データに基づいて日本社会や政治の問題点を鋭く突く。例えば性別移行については、精神的移行、社会的移行、医学的移行について紹介する。差別についても、家庭や学校教育、就労、貧困、メディア、メンタルヘルス、性暴力、戸籍をはじめとした法律の壁など多角的に問題を提起し、重たい課題を我々に突きつける。トランスジェンダーの権利の問題が、公衆浴場やスポーツといった局所的な場面の問題にすり替えられている状況に憤る。
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トランスジェンダーの人がどのように自覚をするのかという初歩の初歩から丁寧に説明をしてもらえるのがとてもありがたかった。
●誕生時の性別を引き受けること●誕生時の性別らしく生きること、という全ての人に課せられる課題のうち、前者に躓くのがトランスジェンダーという説明は、「女らしい格好をしたい男性としては生きられないのか?」という疑問のアンサーになっており、わかりやすかったと思う。
また、性別の変更に関する日本の要件を一つずつ説明していたのもありがたかった。日本の法律の何が問題なのか説明する文章としてこれ以上のものはなかなかないと思う。
性別分けを過剰に意識した制度や区別をなくさなければトランス差別は無くならないが、「性別分け」をなくすことはトランスの人だけではなく「性別らしさ」の押し付けと戦う全ての人に利益をもたらすという本書の結論は、トランスの問題が実は多くの人と関連のある問題なのだということを導く良い結論だと思った。
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基本という感じでよいのではないか。たしかにわかりやすくて重要で、いまどきのここらへんの話についていきたい人は読んでおくべきだと思う。
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いる人をいないことにしてしまうのは、「だれかを踏んでおいて居直るのと同じ。いっちゃん始末悪い」こと(引用はべつの、好きな漫画から)。
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肯定的なレビューが多くてビックリ。
言いたいことは分かる。トランスの人たちを取り巻く困難も分かる。でもだからといって、女性もいっしょくたにマジョリティにカテゴライズしてしまうトランス当事者の方たちの言い分が、一方的に通るのかといったら疑問が残る。
トランスの人がなんと言おうと体格や体調に性差があるのは事実だし、その性差を受け入れつつ自分の性別を受け入れている私には、いろいろと理解しかねることも多い。
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自分のように今まできちんと学んでこなかった人間にとっては、入門書として読みやすい内容であった。諸々の議論については他の文献をあたる必要があるが、その基礎固めにはなったと思う。後半に進むにつれて語気が強くなり、やや首を傾げる部分もあったが、著者らの熱意のあらわれと思いたい。
フェミニズムだけでなく、男性学に触れられていたのも興味深い。日頃から何気なく男性/女性でカテゴライズしている場面に遭遇することがあるが、それがいかに無意味な行為であり、その無意味な行為に苦しめられている人がいるということを考えさせられた。トランスジェンダーの同性婚・異性婚も個人的に興味を惹かれる内容であった。
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生まれた時に性別が「割り当てられる」という感覚への違和感や、LGBとTの違い、ノンバイナリーやAセクシャルの存在など、知らなかったことや理解不足がたくさんあった。性別は生きる上で大きな固定概念であり、縛りになってるんだなぁ。
「女性らしさ/男性らしさ」というこの「らしさ」に苦しめられる人が多いように、性別の問題に拘らず固定概念は厄介。いろんな物事の捉え方があるということを知るために、またさらに自由な生き方を促進し多様性を受け入れるためにも、本書は早い段階で教育現場に導入されてほしい。
誰もが自分を大切に、相手の自由も尊重した生きやすい世界になるといいなぁ。
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トランスジェンダーとはどのような人たちなのか、性別を変えるには何をしなければならないのか、トランスジェンダーの人たちはどのような差別に苦しめられているのかなど、トランスジェンダーについて、様々なデータを用いて現状を明らかにするとともに、医療や法律をはじめその全体像をつかむことのできる本邦初の入門書と謳われている。
LGBT理解増進法の制定等によりトランスジェンダー差別的な言論をよく目にするようになり、改めてトランスジェンダーについて知りたいと思い、本書を手に取った。そもそものトランスジェンダーの定義やトランスジェンダー差別の実態、トランス医療、性同一性障害特例法のことなど、トランスジェンダーについて理解が深まった。
ただ、著者の主張の部分が強いように感じ、また、なぜトランスジェンダーが生まれるのか(先天的なものなのか、後天的なものなのか、生物学的にはどのように捉えられているのかなど)といった知りたかったことに触れられていない部分もあり、入門書としてもう一つと思うところもあった。
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◆目次◆
第1章 トランスジェンダーとは?
第2章 性別移行
第3章 差別
第4章 医療と健康
第5章 法律
第6章 フェミニズムと男性学
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「身体の性」は、生物学的な特徴で外性器のような客観的な要素をイメージされやすいが、実際には外性器をもって他者の性別を理解することはまれで、背の高さや髪の長さなど「身体の性別特徴」によって判断される。よって、「身体の性」とは複合的な概念である。
男性の性的特徴がある人が女性ホルモンを投与し、睾丸を摘出しても、「男性でない状態」に近づきたいだけで、「女性化」したいとは限らない。
トランスの人々は厳しい社会的現実によって、メンタルヘルス不調に陥りやすい。
トランスジェンダーの法的な性別商人は権利の問題で、公衆浴場やスポーツなどの局所的な場面の話は別である。それらの話は、それぞれの事業者や団体が個別運用の次元で対応すべき。
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自分たちの声を「代表する」人たちが「少なすぎる」「過少代表」問題は、様々な差別解消の決定に関わっていないことによる状況改善の遅れになる。宗教、菜食、健康上の理由による特別機内食はなぜ運用出来ているのかなと。航空機で国を行き来する人は多様という想定を、学校、職場、各種サービスにも工夫してつなげないといけないと感じました。
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知ってるつもりで読み始めましたが、、、
知らない事だらけでした(>人<;)
多方面に簡単じゃないことだらけ。
何ができるかな?
考えさせられます。
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どっちにしても簡単じゃないよ、ということなのだろうけれど。そんなにリソースがない時どうするかではある。気持ちも。
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LGBTQについて、いかに自分が性的マイノリティ、特にトランスジェンダーについて無知であったか分かった。本書はトランスジェンダーについての分かりやすい入門書であり、彼らが、どのような社会的状況に置かれ、特に日本で彼らを取り巻く状況は世界の中でも最も遅れている状況であるかもわかった。国際的にも人権意識が遅れている我が国であるので、特に驚きはしないが。法的な問題については、明治以来の戸籍の問題がネックになっていること、またフェミニズムや男性学との関係、ノンバイナリーについて、分かりやすく整理されて書かれている。本書を通読して思うのは、世界の人権意識や差別問題は進歩している中、わが国だけが逆流している印象を受ける。トランスジェンダーの問題は、トランスジェンダーだけの問題だけではなく、すべての人にとっての問題あることが理解できた。すべての人が生きやすい世の中にしていくには共に運動をしていくことが重要であることが示唆された。
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私が当事者の方々とお付き合いを始めた、この20年の間にも変化や進化があったことを本書で知る。特に「ガイドライン」の功罪については驚きを持って学んだ。
最近、最高裁の判決で、特例法が違憲とされたので、そこの記述は変わってくるだろう。喜ばしいことだ。また、LGBT理解増進法も制定された。完全ではないが、ここから漸進させていけるはず。