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雪と氷にすむ生きものたち
冷たい雪や氷の世界にも、実は多様な生物が生きる知られざる生態系があった。極地や高山を中心に地球の陸地の約22%を覆う積雪や氷河は、低温・不毛の極限環境である。そのような雪...
雪と氷にすむ生きものたち
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雪と氷にすむ生きものたち 雪氷生態学への招待
商品説明
冷たい雪や氷の世界にも、実は多様な生物が生きる知られざる生態系があった。極地や高山を中心に地球の陸地の約22%を覆う積雪や氷河は、低温・不毛の極限環境である。そのような雪氷の世界で、彼らはなぜ生きていけるのか、そして、どのように生活しているのだろうか。日本の雪の上で暮らす小さな虫の研究から始まった「雪氷生態学」は、ヒマラヤでの氷河生態系の発見をへて、雪氷生態系が地球規模の環境変動におよぼす影響の研究や、過去の気候変動や生命進化の研究、さらに地球外生命の生息環境としての可能性の研究にまで広がった。本書では新しい学問分野である「雪氷生態学」というトピックを、まさに身近な雪の上から宇宙へ、その発展を追うような構成で追いかけていく。
目次
- 第1章 「雪氷生物研究の始まり」ユキムシから氷河生態系へ/第2章 日本のユキムシと雪氷生物/第3章 ヒマラヤの氷河昆虫と氷河生態系の発見/第4章 雪氷生物と氷河生態系/第5章 世界の雪氷生物と氷河生態系/第6章 雪氷生物と地球環境,地球外生命探査/索引/引用参照文献
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紙の本
氷河から宇宙へ
2024/01/05 21:57
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投稿者:DB - この投稿者のレビュー一覧を見る
「雪と氷にすむ生きものたち」というタイトルだけ見て「シロクマ? クジラ?」と思ったが、まえがきでペンギンやシロクマの話ではなく雪と氷を直接の棲みかとする生物のことだと書いてあった。
大きくて数センチの昆虫から、藻類、微生物といった生きものの話です。
これらの雪と氷に棲む生きものをまとめて雪氷生物と呼んでいるが、実は日本は世界有数の豪雪地帯だそうで、世界にもまれにみる多様な雪氷生物の生息地でもあるそうだ。
京都大学で雪氷生物の研究をしている幸島教授が雪の上で動く昆虫を発見したのは、山岳部員として立山連峰の劒沢雪渓の上を歩いていた時だそうです。
雪の上を歩きまわる1センチくらいの黒い虫が何匹もいて、持ち帰った虫の標本がセッケイカワゲラという虫でどんな生活史を送っているのかほとんどわかっていない昆虫だということを知り研究対象にすることを決めたとか。
また比良山地では厳冬期にだけ出現するクモガタガガンボという昆虫もいて、調べてみるとこのクモガタガガンボは夜行性だということがわかったそう。
一般の昆虫は夏に活動が活発になり、正常に活動するためには気温が10℃以上は必要になるが、これらの雪の上で活動するユキムシたちは体温も外気温とほぼ同じで、-5℃から+5℃くらいが一番活発に活動し、20℃以上に温めると痙攣を起こして動けなくなるという低温に適応した昆虫だった。
さらに細かく見ていくと、トビムシやクマムシ、ワムシといった微小無脊椎動物や雪の中で増殖して光合成をする雪氷藻類、菌類、バクテリア、ウイルスと多種多様な雪氷生物が出てきます。
藻類は増殖して雪が赤や緑、黄色に着色して見えるほど繁殖することがあり、独立栄養生物として動物群集を支えるエネルギー源となる。
何もない氷と雪の世界と思われがちな白一色の世界に、多様な雪氷生物たちが独自の生態系を作り上げているということがよくわかる。
氷河に藻類が繁殖したりシアノバクテリアが表面に繁殖した黒いクリオコナイトができると、太陽のエネルギーを吸収しやすくなって氷が溶けやすくなるのをバイオアルベド効果というそうですが、氷河の融解が地球温暖化だけでなく微生物活動にも影響されているというのは興味深い。
雪氷生物に焦点をあてて、ヒマラヤの氷河生態系やパタゴニア、アラスカ、北極、南極と世界各地の雪氷エリアを見ていきます。
アイスコアを掘り出して氷河とその生態系の歴史を調べたり、北米の氷河に点在するコオリミミズを研究して2万年前に存在したローレンタイド氷床との関係を考察したり、ボストーク湖のように氷河の底に存在する隔絶した世界を研究したりと雪氷の世界を様々に紹介してあった。
そして火星の氷河やエウロパの氷の下にあると思われる湖に存在するかもしれない生物の可能性についても論じていてスケールが大きい研究でした。
専門的な内容を分かりやすく書いてあって面白かった。