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恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ
著者 川上 弘美
あ、また時間に捕まえられる、と思った。捕まえられるままに、しておいた。小説家のわたし、離婚と手術を経たアン、そして作詞家のカズ。カリフォルニアのアパートメンツで子ども時代...
恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ
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恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ
商品説明
あ、また時間に捕まえられる、と思った。
捕まえられるままに、しておいた。
小説家のわたし、離婚と手術を経たアン、そして作詞家のカズ。
カリフォルニアのアパートメンツで子ども時代を過ごした友人たちは、
半世紀ほどの後、東京で再会した。
積み重なった時間、経験、恋の思い出。
それぞれの人生が、あらたに交わり、移ろっていく。
じわり、たゆたうように心に届く大人の愛の物語。
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紙の本
やっぱりよかった、川上弘美さんの世界
2023/11/14 16:14
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ』と、
なんとも意味不明な、それでいてなんだかほんわかするタイトルのこの本は、
長編小説なのかあるいはエッセイなのか、
はたまた私小説なのかまったくの創作なのか、
タイトルと合わさって、そんな曖昧さがすべて川上弘美さんの世界だと
読み終わったあと、とても頷けた。
それと、もしかしてこれは川上さんの代表作にもなる作品ではないかと思っていたら、
第76回野間文芸賞の受賞が先日発表された。
納得である。
この作品のすごさは、「今」がリアルに描かれていることだろう。
例えば、主人公である「八色朝見」という小説家は60歳も過ぎた女性であるが、
月並みのおばあさんではない。
「今」という時代で60歳や70歳であっても、老け込んでいる人はほとんどいない。
それが創作となると、まるで老人然として書かれるのは何故だろう。
川上さん自身がそういう年齢になったこともあるだろうが、
自身の年齢とちゃんと向き合っている。
まだまだ元気だけど、
知らない人と会う面倒さを「年齢相応の気持ちのありようなのか」と思ったりする。
以前「玄冬小説」と呼ばれることもあった作品もあったが、
そんなものをほっぽりだした、「今」を生きる等身大の高齢者を描いた作品。
彼女はこんなふうにも思うのだ。
「わたしたちは、いったいどこに行くのだろう。年若いころのように、とりとめなく思う。
生れてそして死ぬという時間に、いったいわたしたちはどれくらいたくさんのことを感じ、考え、忘れてゆくだろう。」
高齢者の私も、そう思うのだから。