紙の本
今だから
2024/04/24 23:27
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投稿者:イシカミハサミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
森類。
森林太郎(鴎外)家はキラキラネーム、
というのはまずまず有名な話。
平成になるまで存命だったとは知らなかった。
「あなたのような方が生きていける世の中ではなくなったんですよ」
自分に言われたかのような言葉だった。
戦争、戦火がもたらしたものというのは
有形の物よりも無形の物の方が大きいのかもしれない。
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ああ、読み終わってしまった
残りが少なくなるのを感じる度にあともう少しで終わってしまうと寂しくなった
私は不勉強で、森鴎外氏も森類氏も詳しく知らない
何となく、「椿姫」の人だったよなぁ位の知識だったため
どんな人生だったのか、ネタバレもなく話しに入り込んでいった
庭の描写では花が浮かび、食事の描写では色が浮かび
パリの場面では一緒に歩いているような気さえした
1人の青年の人生を読むというよりは
近所で見ていた位の気持ち
じっくりしっかりしみじみ読める一冊
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森鴎外のことなんて何も知らなかったから凄く面白かった。
類ちゃんの気持ち凄くよく分かる。
お茉莉さんとは仲が戻って良かった。
2人の書いた本読みたいな。
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森鴎外の末子 類 を中心に、両親や兄姉が描かれる。雲の上の家族が少し近づいた感じ。
今より”家”が重い時代、同じ家に生まれたいとは思わないなぁ私は。
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舞姫のエリスとは結ばれなかったが、子供達にドイツ風の名前をつけた森鴎外。於菟(おと)、茉莉(まり)、杏奴(あんぬ)、類(るい)。偉大なる父鴎外亡き後の森家の様子が、不肖の薬子を自覚する類の目を通して描かれる。。類と茉莉、杏奴との葛藤の中で小説とは何かについて考えさせられる。
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森鴎外の末子、森類が大正から昭和、平成を生き抜く物語。
偉人の息子として生まれた森類の煌びやかな少年時代と、偉大すぎる親を持った故の懊悩を描いている。
類は森鴎外の事をパッパと呼ぶ。
それだけで、当時の森類の生活レベルが分かるようだ。
大正時代に海外文化を生活に積極的に取り入れ、食事や芸術を楽しんでいる森家の雰囲気がなんともモダンで、読んでいるとなんだか羨ましくなる。
現代のように日本の生活と海外の文化が混ざり合っておらず、それぞれを大事にし、意識を持って向き合い大切にしている森家の姿勢がこの時代特有の豊かさを表しているように感じた。
誰もが名前を知っている森鴎外という作家の人間像も温かく描かれる。
妻と子供達を愛し、死の間際までプライドをもって仕事に励む森鴎外の生き様を触れ、物語序盤に関わらず明治の男の生き様をみた。
独特な感性と文章力を持ち、自分のペースで人生を謳歌する長女、森茉莉。
一家を支える精神的な強さと優しさに溢れ、絵や文学にも才能を発揮する、森杏奴。
二人の姉も個性豊かに描かれており、長編の小説にも関わらず、飽きずに読めた。
作品を通して、実在する人の一生を追体験すると、いつも言葉にできない感慨を覚える。
朝井まかて作品の中では、1、2を争うレベルで好きだった。
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この作家さん、
以前は他の作品を読み進められなかったのにこれは面白かった。
昔森茉莉教みたいになってたことがあり、
彼女から見た他の兄弟は知っていたものの
視点が変わるとこうも違うのか。
母親の志げさんは
前妻さんが産んだ長男との確執もあり、
自分が産んだ男の子こそ長男のようであり、
可愛い末っ子であり、で
うーん、親御さんの教育が?だったのかな‥?
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なんだか先が気になって、読み進めてしまった。
きっと、一人では生きてはいけないんじゃないかというくらい、頼りない主人公。
でも不思議とどこかから手が差し伸べられて、手を引かれながら、歩んでいく感じ。
類の考え方に「どうして〜」と歯痒く思いながらも、嫌な感じはなくついつい弟を見るような目で見守るように読んだ。
どこまで史実に忠実なのかわからないけど、類の一番の幸運は、奥様の美穂さんと結婚して子宝に恵まれたことだろうなぁ、と思う。美穂さんはまさしく良妻賢母。自分も生まれの良いお嬢様のはずなのに、あの状況で家計をやりくりし(そもそもまともな収入ないのに…お金に無頓着な夫なのに…)家族に美味しいものを食べさせる努力を惜しまず、子供達を育て上げ、さらには夫が一人で贅沢をしていることを過度に咎めないなんて(一度本気で怒ってたけど)同じ主婦として尊敬しかない。と同時にこれがほんの数十年前までは、嫁に行った女性の当たり前の姿だったのかなぁ、とせつなくなり、「森類!もうちょっと美穂さんを気遣って!頑張って!」と声をかけたい気持ちになった。
そして美穂さん亡き後は、子供達がかわりに父、森類を気にかけ、晩年まで支えている。
どこか放っておけない人だったのかなぁ。
あと、面白かったのは、そこかしこに出てくる草花の名前、昔ながらの色の呼び方、着物の柄など。
全然わからないからネットで調べながら読んだんだけど、とても色彩豊かで楽しかった。
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森鴎外の末っ子類さんの話。
何不自由ない上流の生まれながら、気の毒なほど甲斐性が無い。
しかし金銭的には苦労しながらも、余徳で何となくそのまま生きて行けたのはなかなか凄い事ではなかろうか。
何かで成功するとか、モノになる人生を人は目指しがちだが、類さんは全くその反対。
生まれ育ちが良いせいか、本人の気質のせいか不明だが。
歳をとってもデニムにレモンイエローの手編みのセーターを着こなして晴れやかに笑う。
何をもって良い生き方というのかよく分からないが、新たな視点を開かれたような気がした。
そして、森家の人々の文章を読みたくなった。
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タイトルの類とは森鷗外の末っ子、森類(1911~1991)を指す。偉大なる文豪を父に持つ子の、その人生は「波乱万丈」と言うまでにはいかないかもしれないが、何とも起伏に富んだ生きざまといってよく、幼いころに死に別れた父鷗外への思いに加え、独特の感性を持ち類に影響を与えたであろう母志げ、およびそれぞれとてもユニークで個性的で、かつ才能もあった姉茉莉および杏奴(あんぬ)、さらには伴侶として類と子どもを支え続けた妻美穂との、それぞれの関わりを通じての化学反応的な類への作用が描かれていく。
当初予想していた“偉大な父に対するプレッシャーに苦しむその息子”といったものはほとんどない。父の暖かさを思い出しながら、“自分は自分”として、類はマイペースに青年時代を謳歌していく。しかし年を経るにつれ、目指すところの画家あるいは作家としてなかなか芽が出ずにいる、その焦りが全編を包んでいく。ただそうした苦しみも、何かどん底でもがき苦しむ、といったところまではなく、上流階級の出身ゆえの“のんびりさ”のようなものが、通奏低音のように流れている。それが、この物語に現実性をもたらしているといってよい。
明治、大正、昭和そして平成と、時代や社会の価値観がめまぐるしく変わる中で、自分の人生を模索し、日々を生きていった類。何か大きなことを成し遂げなくとも、時に「どうして何もしないで、ただ風に吹かれて生きていてはいけないだろう」といった思いにとらわれながらも、しかし確実に“自分としての人生”を生き切ったその姿に、静かな感動を覚えずにはいられない。
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森鴎外の家族のことは全く知りませんでした。父親の死後もお金には不自由なく生活していたのに戦争後は一転食うに困る困窮生活。こんな人もいたのかと驚き
とともに晩年は苦労しながらも家族には恵まれてホッコリさせられる話でした。個性的な2人の姉の茉莉と杏奴の話も面白く、今度茉莉の本も読んでみたくなりました。
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中盤までなかなか読み進められず苦戦していましたが、類が困窮し、苦労し、人間味が増してからはスピードが急に加速。結論としてはとても面白かったです。
結婚後、妻が老けたり、痩せたり太ったりするのは、夫の甲斐性のせい・・・ってことは逆も然り・・・
いろいろ考えるところがありました。
志げさん、好きです。茉莉さんも。美穂さんも。
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充分に読み応えありました。長編多いけど飽きない恐るべし朝井まかてさん!ウイキペディアを開いて全部が実話で事細かに正確なのは驚くって事。晩年の千葉県移住もそうだし!森茉莉ではなく類なんだね、偉人伝でもない初めて知る人なので吸い込まれる程の夢中にならない ただ鴎外のパッパぶりやズバズバ言う茂げ、エッセイの森茉莉さん中でもアンナの行き方が好感触ですね。初めて就職した社長に言われたあなたのような人が生きるのが無理だと 自信がないけどここまで役に立たない人間だと思わなかったと自身を語る場面で好きになり好感が持てた。
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団子坂が徒歩圏内にあるので手に取った。
森類さんの生き方にかなりモヤモヤして、奥様が「働いてくれ」と懇願するシーンではよく言った!と思うくらいだったのだけど、森類さんがクビになった出版社の同僚が言っていた、生きる時代が違ったのだ、という趣旨の一言になるほどとなった。
明治時代は高等遊民と呼ばれる人がいたし、昭和の国民皆が貧しい時代に突入しなければ、森類さんはそのありのままの生き方で生計を立てることもできたのだろう。
森鴎外が日露戦争から凱旋して、志げさんの元に会いに行くシーンはとてもロマンティックで印象的だった。
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森鴎外の息子である類氏の生涯の物語である。
父鴎外をパッパと呼んで愛し、なに不自由なく少年期を過ごし、父を失ったあと、画家を志してパリへ進学した青年期。そして戦争に終戦の昭和と、明治から平成の日本を生きた物語。
類はずばぬけた画才も文才もないけれど、どちらの世界にも手を伸ばしたいと願い続けるけれども華々しい花が咲くことはない。けれどときどき原稿依頼などあるのであきらめきれずに生涯とりかかる。
彼の生きた明治から令和まで。その克明な描写が全体をかたどった作品だ。
キャラクターというより、その人が生きた背景を楽しむのに目がないかたにオススメです。