紙の本
平安時代、少年小野篁を主人公とした物語。
2022/03/04 18:52
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
小野篁が幼少の頃。女の子と鬼と篁の絆の物語。優しい人と一緒にいるとね、鬼も優しくなるんです。妹を亡くした古井戸から冥界の入口へと迷い込んだ篁は死んだはずの坂上田村麻呂と出会う。はじめ篁がいけ好かないというか感情移入しにくいなと思っていたら、彼の成長と共に心安くなる巧さ。歴史ファンタジーの魅力を堪能した。加えて鬼の悲しみとか、生殺与奪の権とか出てきて、これは鬼滅の元ネタ?とか思ってしまった。いずれにしろ、鬼滅好きな人に、と勧めたら子どもたちがぐっと食いついてた。
紙の本
読むたびに味わいが深まる歴史ファンタジー
2021/02/07 19:17
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まざあぐうす - この投稿者のレビュー一覧を見る
『鬼の橋』は第3回児童文学ファンタジー大賞の大賞受賞作品である。1997年度に大賞受賞後、翌年10月に福音館書店から初版が出版されている。物語の舞台は平安時代の京都、主人公は、妹を亡くし失意の日々を送る少年篁である。ある日妹が落ちた古井戸から冥界の入り口へと迷い込む。そこでは、すでに死んだはずの征夷大将軍坂上田村麻呂が、いまだあの世への橋を渡れないまま、鬼から都を護っていた。
妹の死への負い目を背負い、大人になれない篁、両親に死に別れ、深い孤独を抱えて生きている阿子那、人を無惨に食い殺すという悪行を重ねてきた鬼の非天丸、三人が平安の世で、ある橋を通して出会い、それぞれの負い目や過去の罪や孤独感を乗り越えて生きていく。小野篁を中心とした物語であるが、阿子那と非天丸の関係抜きには語れない物語である。
小野篁や坂上田村麻呂という実在の人物を登場させることを通して、読者は平安時代にまつわる様々なイメージを喚起しながら、物語世界に入ることができる。確固たる時代考証に裏付けられており、平安時代の精神を巧みに描き出している。篁、阿子那、非天丸の三者がそれぞれの物語を生きている。それぞれの物語が、作者の心の闇のフィルターを通して描かれているため、読者の心に響く。
橋について考えさせられる作品でもある。非天丸が「橋はあると思えばある、ないと思えばない。」という。橋は本来つながっていない場所をつなぐものであり、境界線上にある。篁が蹴り飛ばした橋は、父である岑守を象徴しているのではないか。自分に元服を強い、妹の存在を忘れるように言い、篁の抱える心の負い目に寄り添おうとはしない冷徹な父、そんな父を篁は敬いつつ、疎ましく思っていた。篁も父の心に寄り添えなかった。しかし、橋を通して、阿子那や非天丸と出会い、あの世の橋を通して、坂上田村麻呂と出会い、この世の橋の大切さを理解するようになり、父の心に寄り添ってゆく。阿子那にとって、また、非天丸にとっての橋は…。
かつての友を追い切れず、あの世の橋の手前で泣いている坂上田村麻呂の姿が印象に残る。田村麻呂は、日本初の征夷大将軍であり、蝦夷の英雄、阿弓流為との対決や鬼退治の英雄として語り継がれている。歴史上の英雄である田村麻呂が物語の中で一人寂しく泣く姿に、人間誰もが抱えている潜在的な不安感や疎外感や孤独感が象徴されているのではないか。そんな弱さを抱えて生きているのが人間なのだ。『鬼の橋』は読むたびに味わいが深まる作品だ。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ハム - この投稿者のレビュー一覧を見る
子供が読んでいました。ホラーものなのかなと思っていましたが子供の話を聞いたら、けっこうぶっとんだお話でおもしろそうでした。
投稿元:
レビューを見る
こういう児童書を最近は見かけないので、一文一文を噛みしめながら読ませていただきました。 こういう児童書が読みたいんだよ!
文庫にするなら講談社文庫かしら?文春文庫かしら?
ともかく、もっとたくさんの人に読んでもらいたいです。
投稿元:
レビューを見る
20140212読了
1998年出版。平安期に実在する人物、小野篁を主人公にしたフィクション。昔の人びとや風土に伝わる伝承、史実をもとにした物語っていいなぁと思う。●著者は京都出身、物語の舞台も京都。鴨川にかかる五条橋、あの世に向けてかかる橋、ふたつの橋をめぐるはなし。子ども向けでルビがふってあり、字幅、行間が広い。読みやすい。10代前半の男の子が主人公で、その複雑な心情の変化が丁寧に描かれている。主人公と同年代の読者はもちろん、おとなが読んでも心に響くものがあると思う。
投稿元:
レビューを見る
舞台は平安時代、12歳の少年・小野篁のイニシエーションストーリー。若い人達には美しいお話が必要だから、こんなに美しくてもいいと思った。
挿絵は「やまなしもぎ」の太田大八。これ以上はないくらいお話に合っている。
ゲド戦記と比べるととても日本的で(題材ではなくて、””自分”と世界との関わり方が)、ちゃんと考えると面白いだろうな。ちゃんと考えられない自分が残念。
投稿元:
レビューを見る
地獄と現世を行き交いしながら大人になっていく小野篁とその周りの人々の成長を描く物語。最初は妹の死に囚われていた弱々しい篁が坂野上田村麻呂の導きや、浮浪児、元鬼などと触れ合うことで強さを身につけていく。個性のある登場人物が魅力的で割と厚めの本だけど一気に読ませる。
投稿元:
レビューを見る
ストーリーは全くのファンタジーで少年の成長物語だが、主人公は実在した小野篁。妹を死なせた罪悪感から立ち直り、鬼と少女に鍛えられ、死後も都の守護を仰せつかって「橋」を彷徨う坂上田村麻呂に何度も助けられながら、元服し父を助ける。
敢えて小野篁を主人公にする必要はない気もしたが、元服した後、今度は篁が、田村麻呂を眠りにつかせてやる。このためだったんだね。児童書にしておくには勿体ないな。
投稿元:
レビューを見る
今昔物語や百人一首などに出てくる小野篁の少年期を主人公とし、少年の成長、人が悲しみや後悔を飲み込んで前に進む様子、人の情により鬼が人になる様相を書いた児童文学。
小野篁は自分の不注意で異母妹を死なせてしまった後悔と慕情と悲しさ寂しさで生きる気力を失いかけています。
異母妹の死んだ井戸を覗き込んでいた篁は、あの世との境である河原に降り立ちます。
そこで人を食う鬼の存在や、死んでなお都を守ることを使命とされた征夷大将軍坂上田村麻呂を知ります。
この世に戻ってきた篁は、家も家族も失って父が人夫として工事に携わった五条の橋の下に住み着く少女の阿古那(あこな)、以前はあの世の川辺にいて残虐行為を繰り返していたがこの世に紛れ込んできた鬼の非天丸(ひてんまる)と出会います。
篁の心の傷や思春期の心の澱はなかなか晴れずに、あの世からの誘惑を振り切れずにいます。
さらに、また堅物の父の小野岑守(みねもり)とも意思の疎通ができなくなっています。
少女阿古那は、最初は父の作った橋を守ることに、そして後半では元鬼の非天丸と共にいることにただただひたむきです。
元鬼の非天丸は、田村麻呂に片方の角を折られて鬼の力とともにそれまでの力の根源だった人を憎む力も失っています。そして阿古那との間に親子のような繋がりができ、お互いに相手のゆく場所ならどこへでも行き共に行きたいと思うようになっています。
田村麻呂は、武人としての強さとユーモラスさを持ちますが、死んでも縛り付けられる使命、生きていた頃の罪を常に目の当たりにしている苦しみも持ちます。
篁は彼らとの交流でその想いを知り、またあの世から紛れ込んできた残虐な鬼たちと対峙してゆくうちに、徐々に異母妹への思いを胸にしたままで前を向くようになってゆきます。
終わりごろまでは篁の後悔&思春期&反抗期&中二病(失礼/笑)が重苦しく、本当にこの少年は立ち直れるのか?!などと心配になってしまいました。しかしラストは自分の目が自分だけではなく周りの人間を観ることができて、忘れるのではなく前に進むということができた少年の新しい旅立ちとなり、霧が晴れたような読後感を味わえます。
投稿元:
レビューを見る
小野篁という人物に興味が沸いた一冊だった。
今昔物語等でも篁についての逸話は、たくさん残っているらしく、本書もそれらの資料をもとに伊藤さんが物語に仕立てた作品だ。
自分に自信のない、弱い、軟弱な男子「小野篁」が、義理の妹を自分の不注意で亡くしてしまう。
その時よりあの世の入り口へ、何かと繋がるようになってしまった篁が、征夷大将軍であった坂上田村麻呂や半分鬼である非天丸、父を探して上京してきた阿子那らと関わり、彼らの生き方や考え方に触れる事で成長していく物語である。
篁の成長が、焦ったくも丁寧に書かれていて、父と共に陸奥へ行こうとする場面を素直に受け入れることができた。
六道の辻は、京都へ修学旅行へ行くたびに目にする地名。ここから鬼がくるとは、旅行生も思ってはいないだろう。
中学生でも十分に楽しめる物語。
むしろ、歴史や短歌などを学習している分、物語の世界観を理解する事が容易ではないかと思う。
投稿元:
レビューを見る
http://denki.txt-nifty.com/mitamond/2005/12/post_7cd3.html
投稿元:
レビューを見る
実在した貴族小野篁の少年期を描いた歴史ファンタジー。
篁は、自分のせいで井戸に落ちて亡くなったと思っている妹の事故から立ち直れないでいた。その井戸に吸い込まれ、生死を分ける鬼の橋にたどり着く。橋の番人坂上田村麻呂に、まだ死んではいけないと言われ再び生の世界へ戻る。が、井戸が生と死をつなぐルートとなってしまい、生の世界に鬼が現れる。
ある鬼との出会い、愛の深さ、強さによって、篁は次第に事故から立ち直り成長していく。
小学校高学年~
こういう物語を子ども達に読んでもらいたいと思いました。心に残ります。
投稿元:
レビューを見る
学校の図書室にある6年生の指定図書。
以前から気にはなっていたが、なかなか手が伸びず。
ところが読み始めたら止まらなくなってしまった。
鬼になった人間の哀しさ、身分が高い人間の驕り、
歴史上誰もが知っている人物も登場して・・・
正直6年生のこの本の面白さを伝える自信はない。
ただ、おとなにはお勧めする。
投稿元:
レビューを見る
小野篁は、遣隋使小野妹子の子孫であるとも絶世の美女、小野小町の祖先であるとも言われてます。少年の彼が冥界の入り口で鬼から都を守っている坂上田村麻呂と出会います。
子供が高校生の時、日本の歴史上の人物レポートに坂上田村麻呂を選び、岩手まで行き、
死んでまで都を守った。と書いたのは、
小学生の時この本を読んだから?
投稿元:
レビューを見る
子どもから一歩大人へと踏み出す少年期。妹を亡くして心を閉じ立ち止まっていた少年が、浮浪児の女の子や人間になろうとする元鬼、亡き武将の坂上田村麻呂と出会い、徐々に徐々に前を向き心を開き進み大人になる成長物語。それぞれの立場でそれぞれの生き方がある。狭いところに閉じこもっていては世界は見えない。人と出会い共にすることで見えてくるものがある。そうすることでしかわからないことがある。大事な人が見えると人は強くなるんだね。