商品説明
《手紙には何度も(カッコ)を使いましたね》
ミュージシャンで、フェミニズムの同志。先行き不明のコロナ禍に交わされたイ・ランとスリークふたりの往復書簡。
猫と暮らすこと、妊娠する身体、憂鬱な心の話を分かち合い、ヴィーガニズムや反トランスジェンダー差別を語り合う。私的なことと社会的なこと、共感と対話のあいだを行き来しながら紡がれる優しくゆたかな言葉たちは、あたらしい距離を測りつづけている。
【目次】
こんなご時勢にお元気ですかと聞くのは失礼でしょうか?
もうひとり、名前が2文字のスリークへ
猫と話すことができたなら
ジュンイチが不快に思うのが“わたし”だったらどうしよう
ジュンイチとランイへ
“ヤバい、妊娠した?”って思うのは私ひとりじゃないみたいですね
もしも私が妊娠したらどうするかパートナーに聞いてみました
ランイみたいな物乞いの子がいるかと思って
廃墟が“夢の家”になるまで
アーティスト“イ・ラン”が何かを作る過程
いい音楽って何なのか何を考えるの、ただ作るだけ
ある種の痛みは決して忘れられません
ゆっくりと確実にくずおれつつあります
タトゥーを入れて温泉に行きたいです
タトゥーだらけの両腕で温泉に入る方法
健康ではないジュンイチと私がともに生きていく姿を見守ってください
私は今日も勉強しに行きます
この文章、次の文章を書けるだろうか
オープンにして生きる、隠して生きる
スリークとどんなふうに付き合えばいいのかまだ悩んでいます
胃薬そのもの
リョンファへ
【著者】
スリーク
京畿道九里市生まれのミュージシャン。本名はキム・リョンファ。アルバムに『COLOSSUS』、『LIFE MINUS F IS LIE』があり、2022年にはシングル『イッチャナ(あのね)』を発表した。オムニバスや同僚ミュージシャンの作品への参加も多い。2020年にMnetで放送された音楽リアリティショー「グッド・ガール」に“地獄から来たフェミニストラッパー”として登場して話題を集めた。誰も傷つけない歌を作りたいという。元野良猫のットドゥギとインセンイと暮らしている。
イ・ラン
ソウル生まれのアーティスト。イ・ランは本名。アルバムに『ヨンヨンスン』『神様ごっこ』『オオカミが現れた』。『悲しくてかっこいい人』(2018、リトルモア)、『アヒル命名会議』(2020、河出書房新社)、『何卒よろしくお願いいたします』(2022、タバブックス)ほか、多くのエッセイ、小説、書簡集が日本語訳されている。音楽、文学、イラスト、映像などマルチに活躍している。元野良猫のジュンイチと暮らしている。
吉良佳奈江
静岡生まれの翻訳家・韓国語講師。翻訳にチョン・ミョングァン「退社」「たべるのがおそい」vol.7(2019、書肆侃侃房)、ソン・アラム『大邱の夜、ソウルの夜』(2022、ころから)、チャン・ガンミョン『きわめて私的な超能力』(2022、早川書房)など。家族と植物と暮らしている。
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書店員レビュー
つかずはなれずの距離感
ジュンク堂書店福岡店スタッフさん
韓国の京畿道九里市生まれのラッパー、スリークと
韓国のソウル生まれのアーティスト、イ・ラン。
手紙を書くとどうしてもカッコが多くなってしまうのふたりの往復書簡。
銭湯でのタトゥーの話、同居している猫の話から、
フェミニズム、ジェンダー、ヴィーガン、創作についてなどなど、
交わされる話題は多岐に渡り、コロナ禍で寄る辺ない気持ちのなか
出会ったふたりのあかりを探すようなやりとりにこちらもはげまされる。
手紙に出てくる人物(猫も)たちは会ったこともないはずなのに
古くからの知り合いのような気持ちになるのは不思議。
どうかともに暮らす猫たちがしあわせでありますようにと
気づけば祈りながら読みすすめていた。
手紙の中でイ・ランも触れているスリークの曲「私のもの」はいろんな人にきいて欲しいです。
読み終わった頃にはきっと久しぶりに誰かに手紙をかきたくなっていることでしょう。(もちろんカッコの多い手紙を)