紙の本
メフィスト賞
2024/05/15 07:18
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
事故で死んだ高2の山田が、クラスのスピーカに憑依し、会話をする。ギャグとホラーが混ざったような突拍子もない設定を、男子校特有のノリが更に超えてくる。音を通して見えないモノを感じ取っていく、青春と成長の葛藤を描いた友情物語。
男子校や高校生男子特有の愉快な会話がテンポ良く続く中で、特別に誇張した表現がないにも拘らず、不思議な事にちゃんと長い孤独も襲ってくる。独りだけクラスに取り残されたままの山田と、どんどん時が流れていく周りとの隔たりを、残酷なまでに自然に刻んでいる所に圧倒された。
ぎゅっと凝縮された激情がどこへ向かうのか。正解のない人生の道標を、不器用に照らし合う、心揺さぶる物語。
コンセプト通り「メフィスト賞」はいつも突き抜けて、斜め上を独走している、と改めて感じさせられる唯一無二のラストも最高だった。
投稿元:
レビューを見る
この物語はいまだかつてない摩訶不思議なお話でした。交通事故で死んだ高2の山田が2年E組のスピーカーから声が聞こえるなんて面白い発想、夏休み後の席がえ、山田が考えた配置図を見ながら後のお話を読んだことの面白さバツグンでした。クラスの皆んなが卒業してからの山田の淋しさ、そして親友和久津との友情、ラストの死の真実はあっと驚きました。一人でやるファイア山田のオールナイトニッポンの面白さそして泣かずにはいられないラストの悲しさあなたも読んで感動して下さい。
投稿元:
レビューを見る
山田が死んで3日めの教室。
気分転換に席替えをしようと言う、
空気の読めない担任の提案に、
いたたまれなくなって声をかけたのは…山田!!!?
山田、お前、スピーカーになっちゃったのか?
死んだ山田の声がスピーカーから聞こえてくるって、こわっ…!
…いや、山田と話せてみんなけっこう楽しそう?
みんなの会話を聞いてると、山田を中心にクラスの雰囲気がめちゃめちゃいいし、馬鹿げたやりとりは青春そのもの。
話すことしかできない山田のために、あれこれ考えてくれるみんなの気持ちが嬉しすぎて、やばい、泣きそう…。
でも、いったいこれ、どうなって終わる物語なんだ??
できるだけ見ないふりしてたいけど、山田の孤独を思うと辛すぎて、まだ確かに存在している友情に縋りたくなる。
誰かに縋ったとして、その先は?
ちゃんと生きて、ちゃんと終わりにできますように。
そんな普通のことを、
普通でありながら普段は考えないようにしていることを、願いたくなる。
青春の無邪気な楽しさを味わえるけど、絶対に、面白かった〜では終われない作品!
投稿元:
レビューを見る
ぽっかり空いた穴に気付きませんでした。
山田とクラスメイトの日々が愛おしくて、気付いてはいけなかったラストの衝撃とどんなものにも終わりはあるのだという事実に読了後しばらく打ちのめされていました。
青春がどんなのだったか忘れてしまった大人にこそ読んでほしい。このバカバカしさと取り戻せない日々の眩しさ、はち切れんばかりのエネルギー、それらを忘れていくということと大人になるということと。
教室という特殊な空間に閉じ込められた青春という名のミステリを堪能しました!
投稿元:
レビューを見る
不慮の事故で亡くなった男子高校生が「声」だけの姿(?)になってクラスメイトと過ごすという、なかなか考え付かないような設定に引き込まれる。
偏差値はずば抜けて高いが、やることは結構アホっぽい今どきの?男子高校生たちが登場する。
男子校のわちゃわちゃした実情を覗き見たいという人には、望み通りの一冊と言えよう。
だが、首都圏に住む者ならおおよそこの高校のモデルがどこであるかは容易にわかるだろうし、書かれている内容も何というか...内輪ノリの世界のようにも捉えられる。
終わり方もなんかちょっと苦し紛れというか、そこまで引っ張る必要があったのかとも感じる。
この学校を卒業して系列大学へ進学した者たちの多くは大企業に勤め、国家公務員、政治家になる者もいるだろう。
それから考えると、我が国の企業風土、政界の有り様もこの内輪ノリの空気が漂っているといえるのではないだろうか?
著者は、それを読む者に問いかけているのかもしれない...?
投稿元:
レビューを見る
死んだ山田が、教室のスピーカーに憑依した!?
そんなぶっとんだ設定とは裏腹に、前半は山田と同級生たちのくだらない話が延々と続いて、そのくだらなさにクスッと笑えてしまう。かつて高校生だった男子たちは、より楽しめるのではないだろうか。
「もっと2Eのみんなと一緒にいたかった」という山田の願いが、山田の魂をスピーカーに憑依させたのでは、という推測でみんな納得するのだが、後半は予想に反する出来事が起こり、「これはいったいどんな形で収束するんだろう…」と気になりすぎて、ページを繰る手が止まらなかった。
青春小説のようなノリの前半から、後半にかけて一気にミステリ風味が増してくる、そのギャップが快感!
ぜひかつて男子高校生だった人たちに読んでほしい。
投稿元:
レビューを見る
クラスの人気者だった山田が交通事故で死んで、ある日教室のスピーカーになって復活する話。
最初は復活を喜んで山田を含めみんなで楽しく過ごすけど、進級して、みんながクラスバラバラになって、だんだんと山田から離れていくのが切なかった。
みんなが大人になっても、山田だけずっと時間が止まったまま。
和久津だけはずっと山田の味方でいてくれてよかった。
投稿元:
レビューを見る
ありえない設定に今時の高校生男子のやり取り。
意外と生きることを考えさせられた。
死んでなお傷つく山田、いっそのことちゃんと死んでた方が良かったんじゃないか…
山田との友情って…
人は大人になれば少しずつ変わっていくもの。
変わらないことが時にはいいけど、変われないことも実は不安なんだよね。
ある意味でファンタジー…面白かった。
投稿元:
レビューを見る
青春が「生」なら、「死」はなんだろう。
蘇った山田と、いつまでもバカ話をしよう。
終わりのない青春の日々を想って。
投稿元:
レビューを見る
もう設定で優勝!
最後どうなんの?
止まらん、まんまと引き込まれ最強〜
待ち受けてたラスト最高!
好きー!ってなりました。
仲間とバカなことばっかして
くだらないことで笑い合って
でも胸の内では色々あって
やたら夜が長過ぎたりして
そんなくり返しのような日々も
いつかは巡り、過ぎていく。
眩しい青春。
この物語は、
死んだクラスメイトが
教室のスピーカーに憑依して!?という
一見とんでもないストーリーだけれど
男子校のしょーもないノリ、愛しい青春と
一体どうなる!?のミステリアスな展開
おちゃらけた面白さだけでは終わらない
想いが重なり出して心の深いところにズンとくる。
青春時代を駆け抜けてきた人たちも皆、
あの頃過ごした教室を、
思い出や記憶でいっぱいにして、
まるで青春の箱のようにいつまでも抱えているのかも……なんて思ったり。
生きるということ、死ぬということ。
変わっていくこと、変わらないこと。
青い春がうつろいの風に吹かれて、
眩しく、切なく心をかき乱す。
抱きしめたくなる声の、
抱きしめ方もわからずに、
ただ胸に響くその声を、
せめて他の誰かに聴いてほしくて
「ねぇこの本を読んでみて」と手渡したくなる。
著者の金子玲介さん、
純文学の土壌から生えたエンタメみたいな美味しいとこ取りの旨みがたまらない。
ジャンルにこだわることなく、新たなフィールドで、根も葉も自由に伸び伸びと書いていってほしい。
これからもとても楽しみな作家さんです。
既に続編の刊行予定もあるので楽しみ♪
公式ホームページもすごく凝っていて楽しいので必見です!
https://fireyamada.kodansha.co.jp
読後のお楽しみもアリ♪
合言葉はもちろん、読んだ人にはわかるよね笑
投稿元:
レビューを見る
青春ストーリーな気がする。
男子校のクラスでいちばんの人気者だった山田が死んだ。でも教室内のスピーカーとして転生した。
クラスは活気を取り戻し運営されたが、山田の校外活動のバンドメンバーが文化祭に来てインキャな一面を暴露したり、中学時代は痛いヤツだと思われてたのがわかったけど、まあ関係なくいい感じだった。
3年生になって、クラスメイトはあまり尋ねてこなくなった。卒業して、孤独になった。
その後、いちばん仲が良かった友達が教師として戻ってくる。しかし、同級生はもはや全く見向きもしない。最終的に殺して欲しいと願い、スピーカーを壊すが、消えずに教室自体になっていた。教室を破壊していくシーンで終わる。
投稿元:
レビューを見る
死んだ山田とクラスのみんながひたすら会話する話。
最初はこんなの男子学生みんなが受け入れるか?と思ったけど、1年経ち、卒業したらもうほとんど会いにも来ないからやっぱりそうやよねと思った。一種の墓参りなのかもと考えたら最後まで読めた。
読む前はかなりエモい感じを期待したし、山田とクラスメイトがどう絡むか楽しみにしていた。
蓋を開けてみるとかなり地味で、生前の山田への印象をみんながちょっとずつカミングアウトしていくけど、それも地味。
だから読んでる間ほとんどつまんなかった。
これを読んで自分の人生を一生懸命生きようってならないかな、そんなメッセージはなさそうだけど。オチがあれなのもなんかな、読み終わって脱力した。時代設定もよく分からんかった、いつの設定なんやろか。
宣伝広告もめちゃくちゃやってて、表紙の兄ちゃんのボイスドラマとかまでやってるし、続編もこの夏には出るし(笑)すごい!講談社肝いりの本なのが伝わってきて、ワクワクしてすぐに読んだのになあ…ここはすべての夜明けまえといい、コレ系がハマらなくて悲しい。
メフィスト賞が舞城王太郎や西尾維新とか辻村深月を輩出していた頃のイメージで買ったけど、もうそんな賞じゃなくなったのかな。
投稿元:
レビューを見る
男子校を舞台に、クラスで人気者だった山田が事故で亡くなり、教室のスピーカーに魂が宿り声だけ復活するという物語。
山田が復活したことでクラスメイトは喜び、馬鹿馬鹿しくも愛おしい会話を楽しむ姿にクスクス笑いながら読みました。この楽しい雰囲気の中に、時折感じる違和感が自然に描かれており、面白いと思った後に急に切なくなる瞬間がありました。
話しが進むに連れて、クラスメイト達はバラバラになり、歳を取っていく中で、山田だけ時間が止まったままで、段々距離を感じるようになります。この時間の経過が、リアルに生きている者との違いを感じ、なぜちゃんと死ねなかったのか、その理由と向き合うことになるラストの展開はとても良かったです。青春の刹那を感じられる良い作品でした。
投稿元:
レビューを見る
「山田、どうにかして生き返らないですかね?」
メフィスト賞受賞の話題作だったので読んでみました。
読んでいると、色んな感情が湧きましたが、そのなかで一番強く感じたのは「子供から大人へ変わっていく時に感じる切なさ」でした。
序盤は笑えるシーンが多かったけど、徐々に雲行きが怪しくなっていき…
みんながだんだん山田を忘れて自分達の人生を歩んでいくのは当たり前だと分かっていてもやっぱり辛かった…
そんな中で和久津の山田への執着はすごい笑
何が和久津をそこまで突き動かしたのか…ちょっと疑問も残ります…
ラストも思っていたよりスピード感があってびっくりしました。
でも、和久津にとっても、何より山田にとってもあれが一番良い最後だったのではないかなと思います。
投稿元:
レビューを見る
設定の面白さが出オチで終わることなく最後の1文まで継続している。すなわち、ずっと面白い。青春時代特有の甘美なダベり感に決して甘えることなく、永遠に続かない故の怠惰感や焦燥感までも非常に高い解像度で描き切っていて、信頼できる青春小説だと思います。