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・あらすじ
アメリカ ジョージア州が舞台。
ジョージア州ユニオン郡で保安官をしているヴィクター。
20年以上絶縁状態の弟が車に何度も轢かれて殺されたという報せを受ける。
デイド郡の保安官をしていた弟は何かの事件に巻き込まれたのか?
また同時期に薬漬けにされ縛られ殺害された10代女性の死体が複数発見される。
類似性から同一犯である事が判明し、群を超えた捜査を取りまとめることになったヴィクター。
二つの事件を捜査していく内にジョージア州内での陰謀が発覚していく。
・感想
600ページほどあったけど展開はゆっくりめ。
登場人物たちも直接的で決定的な情報は言わず(脅されてたり捜査を邪魔するために)、煙に巻くようなセリフが多かったから読者の自分もちょっとイライラした。
ヴィクターは人付き合いしてこなかったからジョージア州での陰謀について知らずに生きていけてたのかな?
ちょいちょい関係者に「おいおいまじかよ、知らないのかよ」みたいに世間知らずな感じで反応されてるのが面白かった。
最後の決着はわりと好みだった。
そして南部の人とのつながりの強さはやはり個人的には苦手だなーとアメリカ南部が舞台の作品を読むたびに思ったり。
登場人物が30人くらいいたし、舞台も3州7群に渡って展開されるのでお手製の地図に人物などを書き込んで相関図を整理する必要があった。
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めっちゃ、名作。
雑なものが何もなく、足す必要があるものもない。
文章も美しい。
序盤ではハードボイルドな文体が、
徐々に変化して、エモーショナルが垣間見られようになっていくのも素晴らしい。
主人公がどう変わっていくのか、文体でみせていく。
長らく日本での紹介がなく、今回16年ぶりで2作目らしいが、是非、他の作品も読みたい。
イギリスの作家がアメリカを書く、それが絶妙なのだろう。
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アメリカ南東部、1992年を舞台に保安官が殺人事件を捜査する。
分厚いですが展開が早くて読みやすいです。
会話が多くやり取りがウィットに富んでいてずっと読んでられる。
主人公の1人視点で、これまでの人生で起きたことのせいか、他人と距離を置いて生きており、終盤まで心の中ではウジウジしてる感じがちょくちょくあって可笑しい。
殺人事件が2つ同時進行し、少女の殺人事件を調べつつ、弟の方は管轄外だし家族だから捜査は出来ないがそこに弟の娘が出てきて主人公に涙ながらに頼み、断れずにちょくちょく調べていくともう片方の事件と繋がっていて…?
92年の設定もあり、今の便利なツールがひとつも無いから移動に次ぐ移動と聞き込みをひたすら行う感じがいいです。渋い!
この小説を読んで一番良いなと思ったのは会話で、事件に関わってる人と会話しても内容が何かを仄めかしたり、示唆したりが多いです。
それの理由は後々わかるようになってる。
ラストの展開はビヨンドへ突き進むとんでもない血と暴力の描写がきて、このままハッピーエンドになるわけないと思ったらハッピーでした。
こういう海外小説でもハッピーエンドものって久しぶりで、この物語ならこの終わりが良いです。
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弟の訃報が届いたのは朝食後すぐのことだった
車で何度も轢かれて殺されていたという…
ジョージア州の保安官ヴィクターは、弟とは憎しみ合った末に疎遠になっていた
悲しみは湧かなかったが、唯一の肉親となった弟の10歳の娘・ジェニファーから事件の真相を探って欲しいと懇願される!
と同時に少女殺人事件もおき、ヴィクターは弟の死の謎、少女たちの殺人事件との関連を調査していくのだが…
登場人物が多く整理は必要だが、ヴィクター目線で話が進むためとても読みやすかった…
また登場人物のキャラクターがいい!
特に弟の娘のジェニファー!
聡明で人懐っこいかわいい彼女との出合いが、孤独なヴィクターの心を癒やしていく…
また彼女の存在がなければ、事件の解決もなかった
さらにヴィクターの職場で働くバーバラは、いつも姉のような存在で彼を精神的に支えている
ヴィクターは事件を通して否応なしに過去に向き合うことになるが…
それを通して自分の気持ちの変化に気づき、再生していく!
正直、ストーリーはありがちかな…と思ったけど重厚な人間ドラマを味わうことができた
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弟の訃報が届いたのは朝食後すぐのことだった。車で何度も轢(ひ)かれて殺されたのだという。保安官のヴィクターは、弟とは憎しみ合った末に疎遠になっており、悲しみは湧かなかった。だが弟の10歳の娘から、真相を調べてほしいと頼まれて……。姪(めい)との交流と真実を追い求める旅路が、ヴィクターの灰色の人生を切なくも鮮やかに彩っていく。一人の男の再生を描く、心震えるミステリ。
引用したくなる台詞の宝庫。
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アメリカ合衆国のそれぞれの州や郡の
地理、歴史、風土、制度などを知っていたら
より深く楽しめたのかもしれない。
複数の殺人事件が
いくつもの郡にまたがって発生し
多くの保安官や保安官補、警察、被害者、被疑者
そしてその家族たちが入り乱れ
さらにカタカナの地名であふれていて
誰と誰がどんな関係だったかを思い出すために
度々立ち止まらなければならず
話の流れに乗り切れなかった…
それでも保安官というもののプライドと
家族の重さについて否応なく思い知らされた。
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舞台は90年代の米ジョージア州。ある朝保安官ヴィクターの元に、同じく保安官である弟フランクの訃報が届く。弟さんは、何者かによって無惨にも車で何度も轢かれ殺された、と。兄弟は過去の確執から絶縁状態となり10数年会うことなく別の町で暮らしていた。父を亡くし残された10歳の娘から、死の真相を調べてほしいと頼まれる。過去から目を背け孤独に生きるヴィクターは、事件の真相を暴く調査を開始する。
妻を亡くし孤独そのものの空虚な人生を生きる主人公が、残された姪と心を通わせるうちに事件の究明へと突き動かされていく。ある男の私的な再生の物語と保安官としての犯罪捜査が見事に合わさっていて、とても読み応えがあった。登場人物は多いが、物語はわりと一直線に進んでいく印象で、混乱はなかった。終盤の展開はハラハラし、一気読み。
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イギリスの作家、R・J・エロリーの邦訳2作目。一作目はかなり以前に集英社文庫から。
十数年も昔に喧嘩別れした弟が、何度も車に轢かれて殺された。妻にも先立たれ、無味乾燥の日々を過ごすヴィクターは、弟の葬儀で初めて弟の元妻、そして姪の存在を知る。姪から弟の死の真相を探ってほしいと頼まれるが、自分の郡区域で少女の死体が発見され。。。
孤独な男が、弟の死の真相を探りながら自分を見つめ直し、再生していく。ありがちではあるが、非常に良い作品。
特に筆致が素晴らしすぎる。
後で振り返りたくなる味わい深い文章。それでいて読みやすいため、厚さの割にすぐに読めてしまう。
終わり方が若干強引かもしれないが、個人的には今年どころか、今まで読んだ作品の中でもかなりの上位にくるほど好みな作品。大収穫でした。
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吉野氏の訳が読み易いのかもしれないが、600ページ弱の作品も一気によめた。
世間との交流を避ける保安官が10年以上も音信を絶っていた弟の轢死を知らされる所から物語は始まる。真面目で孤独なヴィクターが連続少女殺人事件と弟の死の関連性に着目し、、、と言う展開。読み進める内に、弟との絶縁の理由が明らかにされたりと、ミステリーもだが、中年男性の再生の小説のよう。しみじみ読ませて頂いた。
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不仲だった弟の変死と、ティーンエイジャーの少女たちを狙った連続殺害事件。一見、無関係の事件が実は深く関係している。ありがちな話だけど、ヴィクターの淡々とした語りが重厚感を与えていて飽きずに読めた。起きていることはグロテスクだけど、つくづく周囲に恵まれているな、というのが第一の感想。同僚、親戚、各州の保安官、誰も彼も協力的。さすがアメリカ。
終盤は容疑者への拷問が続く。ここはかなり過激。さすがアメリカ。
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疎遠だった弟が謎の死を遂げ、さらに凶悪な事件にも関連し… 人間の絆を描いたミステリ #弟去りし日に
■あらすじ
90年代のアメリカ、ジョージア州。ユニオン郡の保安官であるヴィクターのもとに、弟が亡くなったとの連絡が入った。弟フランクもまたデイト郡の保安官であり、誰かに殺されたようだった。
彼らは憎しみあっており、長い間疎遠だったため、ヴィクターにとってこの知らせは煩わしいだけ。ただフランクには可愛い娘がおり、彼にとっては唯一の血のつながった親族であった。ヴィクターは彼女から、父が殺された真相を調べてほしいと依頼され…
■きっと読みたくなるレビュー
法執行官の保安官が、仲が悪かった弟の殺害をきっかけに、自身の生き方に向き合う物語です。捜査を進めるうちに、さらに凶悪な事件にも関わることになっていく。
家族愛、仲間との絆をしみじみと描いた一冊で、これは日本人好みの作品ですね。展開自体はかなり地味ですが、関係者ひとりずつ聞き込みをしていく捜査は読みごたえがありました。
イチ推しポイントは、登場人物ひとりひとりの生活やコミュニティがリアルに見えてくるところ。仕事場の同僚、別の管轄の保安官、市警、被害者など、それぞれに家族があって暮らしがある。特別な権力や財産もない普通の人たちですが、事件をきっかけに何よりも大切なものを傷つけられてくのです。
そして独り者でいつも寂し気な主人公ヴィクターとの対比も痛々しく、ただ寄り添って生きるってことが何故こんなにも難しいんでしょうか…
特に惹かれたキャラクターは、保安官事務所の受付バーバラ。信頼できる同僚というだけでなく、寂しいときには優しく、弱ってるときには奮い立たせてくれる女性。上司と部下でありながら、姉と弟、先輩と後輩のような関係性でもあり、仕事場での人間関係の大切さ、温かさを教えてくれましたね。
もうひとり、トレントン市警のマイク・フレデリクセン。物語の前半は何じゃコイツって思ってましたが、なかなかどうして、そういうことですか… 熱く語られる背景や心情はものすごく理解できたし、彼の葛藤と熱意にジンジン痺れてしまいました。
さて本作のミステリー要素もかなり濃い、フランクはなぜ殺害されなくてはならなかったのか。生前どういう生活を送り、どんな交流関係があったのか。そもそもこの兄弟は、なぜ仲が悪いのか…
事件をとおしてヴィクターは過去と向き合っていく。たとえどんな辛い現実が突きつけられるとしても、引かなくてはいけないカードは引かなければならない。その勇気を振り絞るためにはどうすればいいのか… しっかりと感じ取ることができたのです。
■私とこの物語の対話
この物語は人との絆に関する名言がたくさん書かれていて、思わず言葉を失ってしまうんです。
本書引用-----------
子どもは命であり、血であり、すべてだ。子どもが生まれると世界は一変する。自分の人生をもう一度やり直すチャンスを与えられたようなものだ。行いを改め、正しいことをし、平和を見いだすことができる。家に帰って子どもに会えば、たとえ最悪なことがあっても、そんなにも悪くないと感じられる。
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私も子どもが生まれてからは、すこし死ぬのが怖くなりました。確かにこれまでの失敗や後悔を帳消しにしてくれるし、きっと子どもたちなら周りのみんなを幸せになる世界を作ってくれると信じられる。勘違いかもしれないけど、未来ってものがずっーと続いていく気がするんですよね。
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英国人とは、また既訳ありとも知らなんだ。ちょっと話を大きくしすぎで、決着も乱暴だが、600ページ近く、章立てが極めて短いのでさくさく。
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弟の死とそれにまつわる事件の謎と1人の頑固な男の心が相関しながら両者が解れていく話。
独り身の自分には身につまされる言葉が何回も出てくるし、世界を変えるのではなくて自分自身や自分のものの見方を変えることの重要性を描いているのが印象的。
展開に少し強引さを感じたけれど楽しめた。
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法執行機関も巻き込んだ事件の余りのひどさに呆然。こんなことある?レベル。悪役の厚かましさもとんでもない。天涯孤独だった主人公が繋がりを持っていくところのみが救い。保安官大量登場で、どこの人だっけ?状態。そんな彼らが突き進む姿が垣間見えて、乾いた風が感じられスリリングでした。会話のたびにエッジの効いたたとえが出てくるのはよくあること?悪役ですらそんな会話してて、インテリジェンスを感じました。
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保安官兄弟の確執を主軸に、一人の男の再起を描く警察小説。悔恨と贖罪の念を原動力として突き進む主人公のキャラクターは物語の推進力として上手く機能しているし、彼を純然たる善人でなく(あまりに)不完全な人間として描いているのが良かった。バーバラをはじめとする登場人物達のワイズクラックも重苦しさ一辺倒になりがちな展開を程よく緩和してくれる。群を跨ぐ壮大な犯罪計画のスケール感に反し、物語が小さくまとまり過ぎてしまった感は否めないし、終盤は事が首尾よく運び過ぎて物足りない部分もあるが、骨太で読み応えのある小説だった。