世界の教育はどこへ向かうか　能力・探究・ウェルビーイング

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「教育の未来」に対する漠然としたイメージや、「学校は今後どうなっていくのか」といった不安について、世界の動向や具体的なデータを元に書かれている。

●躍進するシンガポール
→「教育活動におけるゆとり」と「厳しい競争原理」によって効果を上げている。日本も参考とすべきポイントが多い。
●「教師」から「教育者」へ
→「教育」は、より広く開放的なものとなる。学校教育に携わるのは教師だけではないし、教師のキャリアも多様化して然るべき。
●「個人の尊厳」に向き合う
→教育大国シンガポールは、意外にも日本より「いじめ」が多い。「個人の尊厳」が大切にされた素晴らしい教育と断言できるか。
●主体性とエージェンシー
→「変化を起こすために、自分で目標を設定し、振り返り、責任を持って行動する能力」「エージェンシーは他者との関係性の中で育つ」
●認知能力と非認知能力
→能力を発揮すれば良いわけではなく、文脈に応じて、能力をどの程度発揮するかという「加減」「塩梅」こそが重要
●「探究」の再検討
→「方法論」を重視しながら、各教科でも積み上げていくべき。教師の役割はあくまでもコーディネーター。

学校は、時代が移り変わろうとも、教育の場として絶対に必要なものである。

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文科省だけでなくOECDでも勤務経験のある著者。
最近のウェルビーイングとか探求とか、うーんと思っていたこともOECDまで遡ると経緯や理念にも納得。官僚まではこの目線を共有してるので、問題はそこから先の組織への伝わり方なのか勉強不足なのか…。

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文科省やOECDで勤務経験がある筆者は、各所で得た知見をもとに、「主体性」や「探究」など、現代の教育におけるテーマについて冷静に分析している。

分析だけでなくそれぞれに関してどんな方向が望ましいか、筆者なりの考えも述べてあるので参考になる。

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国連、OECD、コンピテンシー、探究、ウェルビーイング… 昨今の教育のキーワードを国内、国外の両観点から検討する。このあたりの知識が不足していたので、補うために読んだ。現場ではこのような言葉を推進する立場にあるので、活かしていきたい。

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内容的に少々退屈だった。
カナダやニュージーランドで行われている”ビッグ・アイディア”や”キー・コンセプト”と呼ばれている各学問分野の重要な概念や考え方､思考パターンに焦点を当てるアプローチは興味を持った。

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序章　変わる世界の教育
　1.デジタル化の影響
　2.｢学力世界一｣の交替
　3･教師を取り巻く環境の変化
第一章　教育は何を目指すべきか
　1.世界のパラダイム転換
　2.国連が採択したSDGｓ
　3.ウェルビーイングへの注目
　4.人間重視に立ち返る
第ニ章　「主体性｣を捉え直す
　1.理想と現実のギャップ
　2.そもそも共通理解はあるのか
　3.国際的な視点から問い直す
第三章
　1.能力とは何か
　2.｢非認知能力｣　の重要性と落とし穴　
　3.能力を発揮する方向
第四章
　1.「総合的な学習の時間」の導入
　2.前提としての方法論
　3.成功するための条件
第五章　何をどこまで学ぶべきか
　1.「広さ」と「深さ」のトレードオフ
　2.問題の背景
　3.見えてきた解決策
終章　これからの教育はどこへ向かうか
　1.ニュー・ノーマルの教育像
　2.未来の学校はどうなるか
　

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配架場所・貸出状況はこちらからご確認ください。
https://www.cku.ac.jp/CARIN/CARINOPACLINK.HTM?AL=01437110

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1. パラダイムシフト: 経済成長から人間重視へ

従来の経済成長中心の社会観から、SDGs（持続可能な開発目標）やOECDの提唱するウェルビーイングといった、人間を中心とした価値観への転換が世界的な潮流となっている。
「経済成長中心の世界観から人間重視の世界観に転換する過程で登場した概念」（p. 未特定）
学校教育においては、「子供たち一人ひとりに向き合い、『個人の尊厳』を大切にしていくこと」が重要となる。
2. 主体性の再考

日本でも主体性の重要性は繰り返し語られてきたが、国際比較データからは、日本の生徒の主体性が十分に育まれていない可能性が示唆されている。
「日本の教育では主体性が大切ということは繰り返し唱えられてきた。しかし、各種の国際比較データを見る限り、...不足していると指摘されている。」（p. 未特定）
主体性は、表面的に知識を身につけることよりも、批判的思考力を養うことと深く関連している。
国際的な視点から主体性を捉え直す必要があり、OECDのLearning Compass 2030では、主体性を持つとは「自ら目標を設定し、周りの人々と協働しながら目標達成に向けて行動する能力」と定義されている。
「OECDのLearning Compass（学びの羅針盤）においても、学ぶことの究極的な目標として位置付けられている。」（p. 未特定）
主体性にはレベルがあり、教師の指示に従うだけの参加は低いレベルに留まる。生徒が自らの意思で活動に関与し、影響を与えられるような、より高いレベルの主体性を育むことが重要である（ハートの梯子モデルを参照）。
3. 非認知能力の重要性と課題

認知能力だけでなく、意欲、忍耐力、協調性、自己肯定感などの非認知能力が、学力や社会適応において重要な役割を果たすことが認識されている。
「認知能力と非認知能力」という対比でその重要性が強調されている。
ただし、「非認知能力」という言葉の定義は曖昧であり、何を指すのか共通理解が必要である。
「『非認知能力』が『非認知することに関する能力』といわれても、意味がわからない。それもそのはずで、認知能力が"cognitive skills"であるのに対して、『非認知能力』の原語である英語は"non-cognitive skills"であり、『認知以外の能力』という意味なのである。」（p. 未特定）
各国で重視する非認知能力の要素には共通点も見られる（例: シンガポールのrespect, resilience, responsibility, integrity, care, harmony; オーストラリアのhonesty, empathy, integrity, responsibility, respect）。
4. 探究学習の導入と課題

日本でも「総合的な学習の時間」を中心に探究学習が導入されているが、「探究ブーム」とも言える状況に対し、その理解や実践には課題がある。
「『探究ブーム』の現状」が指摘されている。
海外における探究学習（IBL: Inquiry-Based Learning）は、必ずしも教科横断的ではなく、むしろ教科の中で行われるものと理解されていることが多い。
「外国における『探究』の理解」（p. 未特定）として、日本の理解との違いが示唆されている。
探究のレベルには段階があり（例: 構造化された探究、ガイド付き探究、オープンな探究��、基礎的な知識・技能の習得も探究の重要なプロセスである。
バンチとベルによる探究の4つのレベル（確認、構造化、ガイド付き、オープン）が紹介されている。
探究学習の評価方法や、倫理的配慮（個人情報、プライバシーなど）も重要な検討事項である。
5. カリキュラム・オーバーロード

現代社会で学ぶべき内容が増加する中で、カリキュラムが過度に詰め込まれ、教師や生徒に負担がかかる「カリキュラム・オーバーロード」が多くの国で問題となっている。
「各国が直面するカリキュラム・オーバーロード（教育課程の過負荷状態）に陥らないためにどうすべきか、この問題への対応について検討する。」（p. 未特定）
新しいコンテンツ（環境、情報、統計、外国語など）の追加に対し、既存のコンテンツの削減が進まないことが原因の一つ。
ノルウェー教育研究省の報告書を引用し、この点が指摘されている。
「広さ」と「深さ」のトレードオフの関係があり、両方を同時に追求することは難しい。カリキュラムのスリム化と重点化が求められる。
6. ニュー・ノーマル時代の教育像

社会の変化やテクノロジーの進化を踏まえ、従来の教育システムからの脱却が求められている。
「『ニュー・ノーマル』の教育像が示す今後の可能性に触れるとともに、未来の学校がどのような形になっていくか、OECDやユネスコが示しているレポートを踏まえながら考察する。」
教育システムは、孤立・分断された状態から、多様な関係者と連携するエコシステムへと変化していく。
学習成果だけでなく、学習プロセスも重視され、評価もテスト中心から、学習のための評価（formative assessment）や学習としての評価（assessment as learning）へと多様化する。
教師の役割は、教えるだけでなく、生徒の学習を促進するファシリテーター、モチベーター、カウンセラー、コーディネーターへと変化する。
「教師も、子供たちを『手助けする (facilitate)』ことはもちろん、学習に対して『動機付ける (motivate)』ことも考えながら授業に臨んでいるはずだ。」（p. 未特定）
学校は、包摂性、公共性、協働性を育む場として、より多様な人々と繋がり、持続可能な未来を創造するモデルとなることが期待される（ユネスコの報告書「私たちの未来を共に描く」を参照）。

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教育に求められるもの、あるべき教育、学校の未来を考察する。「ご説」ごもっともではある。けど、ここでとりあげた「非認知能力」が一番必要なのって、著者自身というか文科省をはじめとする官僚たちのほうだろう。
この半世紀の文科省の失敗を一顧だにすることもなく、よく言えるもんだ。恥知らずでなければ、無責任極まりないということだろう。

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世界の経済の変化から教育に求められるものがどのように変容してきているか、それをふまえて何が求められているかを述べた本。

メモとしては
教育の世界で注目を浴びているのは4つのC critical thinking, creativity, communication, collaborationである。
社会に出た後で、必要となる能力にも2つあり、abilityとcompetencyである。competencyは成果につながる能力とも考えられ、正しい文脈の中で知識を組み合わせて相手を説得したり、解決策を見出す能力であり、注目される。
近年、これまでの教育が認知能力重視だったこともあり、非認知能力(non cognitive)に期待がよせられている。