魚が存在しない理由　世界一空恐ろしい生物分類の話

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装丁がとても美しい
天・地・小口の面が絵になっています

内容は基本的には筆者の独白と
生涯をかけ魚類を収集分類してきた人物についての記録
魚に詳しくなくても全然読めるし読みやすい

心に傷を負った筆者が
なぜ、この人物に惹かれたのか
その記録や足跡を辿りながら、
次第に、この人物の光と闇が見えてきて
それはサスペンスのようでもあり、
今日の歴史やイデオロギーに少なからず影響を
与えてきた影の部分なども垣間見え、
時に熟考し、興奮し、恐怖して
読むのが止められなくなった

この本は、独白、人物伝、サスペンス、
歴史書、生物書、思想学、多様性と
あらゆるジャンルが含まれている
決して万人受けするとは言えないけど
読んだ後、魚類って存在しないって知ってた？
と誰かに言いたくなる衝動に駆られました

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冒頭からあまりにも高い文章力に圧倒される。これノーベル賞ものなのではという文章も含まれているのだが、ルポという性質もあるからか、途中で説明調の退屈な文章になることもあり、かと思えば大事なところが〈小説的な表現〉でぼやかされていたり。
展開も、予想しない方向にばかり転がっていて、え、こんな作品だったの、という驚きが途中でいくつもある。なんだか忙しない。
哲学的にはものすごい示唆的にメッセージをたくさん含んでいて、折に触れて読み返したくなりそうな一冊。
タイトル回収に関しては、個人的に魚類分類学を趣味としてすでに摂取していたので、「それはそう」と思っただけでインパクトはなかった。それより優生思想のくだりがすごい。

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面白かった！！！
これは一読の価値のある本。装丁の美しさにつられて手に取ったけど、私はわりと表紙買いを外したことがない。
デイヴィッド・スター・ジョーダンという分類学者の半生に絡めて、彼の強い生き様に惹かれる著者に感情移入しながら読み進める。
だんだんと雲行きが怪しくなり、優生学の話からタイトル回収までの畳みかけは気持ちよかった。
魚類の話は知識としてふんわりと知っていたことではあったけど、こうして優生思想の被害者たちの話や、分類学に生涯を捧げた学者の話を知った後にこの話に落とされると視界がふっと開けたようなカタルシスを感じた。良い読書体験だった。
ダーウィンの「このように見れば、生命とは壮麗である」も、最初と最後で感じ方が違う。
ダーウィンについても調べてみたくなった。

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分類学者デイヴィッド・スター・ジョーダンの伝記と、ジャーナリストでこの本の著者であるルル・ミラーの人生が交錯する構成。とても映画的。翻訳が非常に自然ですばらしい。上原裕美子さん

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良い読書体験となった。
デイビッド・スター・ジョーダンと作者の生き様を照らし合わせた内容がメインだが、その中で死生観、ものの存在、優生思想、分類、名前についてなど触れている内容は幅広く、展開に引き込まれた。
伏線回収が良い。また、哲学的な示唆も多く含んでおり、今回はさらっと読んだがじっくりと読むのも面白そう。
魚という分類が存在しないというのは既知だったので読むか迷ったが、デイビッド・スター・ジョーダンやその功績、また優生思想が生まれた経緯なども学ぶことができて、読後感もよく、非常に面白かった。

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伝記のような、自伝のような、論文のような不思議な本。スタンフォード大学初代学長デイビッド・スター・ジョーダンへの讃美と批判と破戒が、筆者の歴史とともに述べられている。本作品の題名の謎は最後の節にて回収されることになるのだが、実際に自分も思っていたことを実に上手く纏めてくれた、と感銘を受けた。
中途で登場する宗教的な梯子付と優生学の話は非常に興味深かった。まず、たった一世紀前までは「神による優劣付け」なんかが論文に記載できる記述であったことすら、自分の「論文はいつも正しい」、「科学はいつも正しい」という固定観念を破壊するには十分だった。またアメリカに蔓延る優生学を学ぶことは、日本における優生学思想による去勢問題を考える上でも大切だと思えた。
また科学において、信じることと疑うこと、どちらが正しいのかわからなくなってしまった。ガリレオは地動説を再提唱し軟禁を食らう。アインシュタインは量子もつれを否定し「神はサイコロを振らない」とした。信じることと疑うこと、どちらも研究に必要不可欠だが、どちらが正しさに結びつくかは誰もわからない。ただだからこそ追い求めることに浪漫がある、そういうことだろうか？
研究者を目指す自分としては、研究者としての心構えを考えさせる本だった。

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装丁がきれいだから本棚に入れたいというだけの邪な理由で買いましたが、全く触れないジャンルだったのに面白い…本文で触れられている他の分類学の本も探している途中。

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　定期的に読書をしていると身につく能力が一つだけあると最近感じることがある。それは、面白い本を見分ける勘だ。本書との出会いはまさに偶然だった。書店に平積みされていた本書を見て、その美しい装丁に魅せられた。内容が気になるが、本はビニールで包装されているために立ち読みすることができない。そこで、勇気を出して事前のリサーチなしに本書を購入した。帰宅してさっそく本を開ける。私は習慣として、本を読むときにはまず目次をじっくり見る。目次を見ながら本の内容を想像するためだ。ところが本書については、目次を見ても何が何だかまったく分からない。仕方がないので、私は唯一のヒントである表紙の魚のみを頼りに本書を読み始めた。衝撃の連続だった。おそらく今回、事前の私の想像は何一つとして当たらなかった。そして極め付けに、本書を読み終わってから表紙の魚を見ると、”魚に見えない”のだ。このような読書体験は初めてで少々参ったが、時間を置いてから振り返ると貴重な体験だったように思う。
　
　さて、本書の内容に少しだけ触れておく。本書は、19世紀後半から20世紀初頭まで生物分類学者として活動したデヴィッド・スター・ジョーダンという人物の生涯を通して、科学の中立性への疑念と、人間が抱く秩序を求める欲望の危うさを鋭く描いた作品である。ジョーダンは「魚に名前を与えること」に人生を捧げ、自然界の混沌を秩序づけることで世界を理解しようとしたが、その思想はやがて優生学という社会的選別のイデオロギーに繋がっていった。優生学は「遺伝的に劣る」とされた人々の繁殖を防ぐことで、国家や人類の質を向上させることを目指す思想である。
　このような思想が最も露骨な形で表出したのが、20世紀アメリカにおける断種政策である。この政策は、実際に数万人規模の人々の身体と生殖の自由を奪った。その対象となったのは、知的障害を持つ者、精神疾患のある者、貧困層、移民、さらには黒人女性など、「不適者（本文より引用）」と見なされた集団であった。1927年には連邦最高裁が 、「Three Generations of Imbeciles are Enough」という言葉とともに強制断種を合憲と認めた。そしてこの判決が、各州での断種政策の実施を後押しした。カリフォルニア州などでは、州立施設に収容された人々に対し、本人の同意なしに不妊手術が行われていた。この動きはアメリカ国内にとどまらず、ナチス・ドイツの優生政策にも強い影響を与えたと言われており、優生思想の危険性は歴史的に極めて重大な帰結をもたらした。
　本書は、秩序や合理性を求める科学の論理がいかにして他者の存在を否定し、抑圧を正当化する道具になり得るかを見事に描いている。ジョーダンの科学に対する情熱は、自然界の理解という枠を超え、社会的分類と排除のツールへと変貌した。20世紀アメリカの優生政策は、科学の名のもとに人間の価値を一方的に決定し、生殖の権利すら奪う構造を社会に定着させた。それは単なる過去の過ちではなく、今なお我々が向き合わなければならない問題である。

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1. 生命の階層と序列
- アガンは生物を「身体の構造の複雑さ、単純さ」や「周囲との関係」に基づき、正しい序列で並べることができると信じていた。
- 例として、トカゲは魚よりも「よりきちんと子育てをする」ため、格上とされる。
- 生命体は無生物から人間までの階層に整理されており、正しく理解すれば創造主の意図が見えてくると考えられている。

2. 神聖なるヒエラルキー
- アガンは、自然界には神聖なる創造のヒエラルキーが隠されており、これを解明することで道徳の教えが明らかになると信じていた。
- 生物は神が思いついたものであり、分類学の仕事は「創造主の御考え」を人間の言葉に翻訳することとされる。

3. 身体的特徴と道徳
- アガンは、魚と人間の身体的特徴が似ていることに注目し、外見だけでなく内面に潜む真の関係を理解することが重要だと説いた。
- 人間の身体的特徴は、神からのメッセージであり、注意を怠ると下等なものに転落するという警告も含まれている。

4. ダーウィンの影響と進化論
- アガンは、ダーウィンの進化論を否定し続けたが、若い世代の学者たちは進化論が持つ影響を認識し始める。
- デイヴィッド・スター・ジョーダンは、進化論を受け入れつつも、固定された分類は人間が便宜上作ったものだと主張した。

5. 魚類分類の変遷
- 1980年代に、分類学者たちは「魚類」というカテゴリーが存在しないことに気づいた。
- 生物は進化の近縁性に基づいて再編成され、すべての生命体は流動的であるという認識が広まっていく。

6. 優生学と社会的影響
- デイヴィッド・スター・ジョーダンは、優生学の推進者として知られ、特定の人間グループの排除を主張した。
- 彼の思想は、社会的な不適者を排除することが「自然の法則」であるとする考え方に繋がり、後のナチスの優生思想にも影響を与えた。

7. 結論と教訓
- 本書は、生命の多様性とその背後にある道徳的、社会的な教訓を探求するものである。
- 自然界の理解を深めることは、個人の倫理観や社会のあり方に影響を与える重要な要素であると示唆している。

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　変な題名の本だ。でも内容はもっと変だった。この本を手にしたときの驚き──自分がサンマーク出版の本を買うなんて！──は、読んだあとのそれに比べたらモノの数ではない。どんな内容かを一言で説明することはできない。表紙の上には〝人間と、便宜上引かれた「線」の物語〟という言葉も見られるが、科学書、ノンフィクション、教養本、etc.……どんなジャンル分けもこの本には無意味である。これらの分類もまた〝便宜上引かれた「線」〟でしかないのだから。
　著者は科学ジャーナリストである（便宜上線を引けば）。そして彼女の父親は科学者だった。父は幼い娘に熱力学の第二法則を教えた。エントロピーは増大する。秩序は減少こそすれ、増大することはない。これが著者のトラウマになる。カオスは「起きるかもしれない」のではなく、「必ず起きる」。いつ起きるかわからないだけだ。カオスはあなたの植物を枯れさせ、自転車を錆び付かせ、ペットを死なせ、大切な人を奪う。彼らが見逃すことは絶対にない。
　その真実は、父をかえって楽しくさせているようだった。この世界に意味なんてない。世の中のつまらないルールなんてどうでもいいことだ、というように。でも彼女は違った。本書に写真は載っていないが、学校の男子に容姿をからかわれたという著者に、私は小説や映画でいうところの〝冴えない女子〟を想像（イメージ）する。彼女は私と同じ側の人間だ。意味がほしいのだ。自分がここにいてもいい理由が。
　そんな著者が、あるとき一人の科学者に興味を持つ。デイヴィド・スター・ジョーダン。彼の著作はまったくと言っていいほど日本語には翻訳されていないが、スタンフォード大学の初代学長を務めた著名な学者である。専門は魚類の分類学。彼の時代に判明していた魚類の二割は、彼とその助手が発見したものだ。
　デイヴィドは間違いなく成功者だが、彼の人生は必ずしも幸福な出来事ばかりではなかった。火事と地震で二度に渡って標本のほとんどが破壊され、私生活では最初の妻と最愛の娘を失った。にもかかわらず、彼は研究の手を止めなかった。いったい何が彼にそうさせたのか。著者はそれが知りたかった。カオスに屈しないための武器を。
　デイヴィドの文献を読めば読むほど、彼の科学観は父親に似ていた。「人間は無価値だ」「自然を手懐けることはできない」。だが一方で、自伝から浮かび上がってくる人物像は、そのような謙虚な科学者ではなかった。何でも自分に都合よく解釈してしまう楽観主義（賞を獲れなかったのではなく、譲ってやったのだ）。カオスさえも自分の力で制圧できるかのような自信過剰。結局、うまく生きていくには自分に嘘をつくしかないのだろうか。
　答えの出ないまま読み進むうちに、著者は衝撃の事実を知る。なんと、デイヴィドは優生思想の火付け役だった。優生思想というと、まずヒトラーとナチスを思い浮かべるかもしれない。だが、世界で先陣を切ってこれを実用化したのは、あろうことか自由の国アメリカだった。同性愛者、心身に障害を抱える人々、有色人種、前科者、ホームレスなど、六万人以上の人が断種を強いられた。デイヴィドは間違いなくこれを強力に推進���た一人だった。
　著者は彼の残忍さに背筋を凍らせただろう。後に明かされるが、彼女はバイセクシャルだからである。優生思想の時代なら、生きることを許される代わりに強制不妊手術を受けさせられていたはずだ。こんな人間に心酔しようとしていたなんて！　結局、デイヴィドの不屈さは尊大さだったのだろうか。自分は正しい行いをしているという思い上がりが、彼をカオスに立ち向かわせていたのだろうか。「お前の存在に意味はない」という容赦のない真実から目を背けるために、「自然が作り上げた序列が存在する」という思い込みにしがみついたのではないか。混沌という意味のない世界に落下する恐怖を知っていた著者だからこそ、その気持ちがわかるような気がしたのである。
　話は逸れるが、優生思想のようなバカげた歴史はもう繰り返されないだろう。そう思っているなら甘い。なぜなら優生思想は「自分が優れた人間である」という傲慢から生まれるのではなく、「不幸な人をなくしたい」という善意によって始まるからだ。不幸な人間をなくして何が悪い？と思うなら、もっと注意した方がいい。じゃあその不幸は誰が決めるのか。なくすべき人間を決めるのは誰か。どうしてあなたは自分がそれを決める側にいると無邪気に信じられるのか。
　結局、デイヴィドが人道に対する罪で裁かれることはなかった。悔恨の言葉すらも残していない。しかし著者はやがて、デイヴィドの死後に巨大な鉄槌が振り下ろされていたことを知る。それは「魚類は存在しない」という事実である。そんなバカな！　実のところ、〝魚〟というのは「水の中に棲んでいて脊椎があり四本足ではない生き物」ぐらいのざっくりした括りでしかない。もし私が「山に棲んでいる四本足の脊椎動物」という理由で、クマもシカもイノシシも同じ一つのグループにまとめようとしたら、「なんて乱暴な分類だ！」と思うだろう。実際、クジラやイルカは見た目こそ魚に似ているが、哺乳類であることをわれわれは知っている。そして、彼らは決して例外的な存在ではない。内臓の造りやどんな生物を祖先に持つかによって分けていくと、魚の中には同じ魚同士よりも爬虫類や両生類、哺乳類に近い生き物がたくさんいるのだ。にわかに信じられない著者はあちこちの大学や博物館に電話をかけてみるが、結論は同じだった。認めるか認めざるを得ないかの違いはあるにせよ、生物学ではもう魚類は存在しない。なんという皮肉だろうか。デイヴィドが生涯をかけて分類に取り組んだ魚類が、本当は存在しないなんて！
　もしかすると、みなさんもまだ魚が存在しないことを認めたくないかもしれない。なぜなら直感に反するからだ。犬に詳しくない人は、犬を見てもコッカースパニエルだとかアイリッシュセターなどの犬種を言い当てられないかもしれない。でも犬であることはわかるはずだ。なぜわかるかといえば、わかるからとしか言いようがない。直感がこれほど明確に告げているのに、それ以上に理由が必要だろうか？　しかし、その直感は本当に正しいのだろうか。オオカミを連れてこられても、その直感は正しく「犬ではない」と告げるだろうか。生物学者たちはいまコペルニクスやガリレオに思いを馳せていることだろう。彼らは直感を疑い、地球が動いていることを突き止めた。もし��イヴィドが生きていたら──彼は著書でジョルダーノ・ブルーノを礼讃していた──自分が英雄でないばかりか、人々を火炙りにしたという事実に気づいて懺悔するだろうか。
　さて、著者はそれで結局カオスと向き合う武器を手にしたのか。結論から言えばイエスだ。それはガールフレンドのおかげである。こう書くと月並みなハッピーエンドに聞こえるかもしれない。まあ最後まで読んでほしい。彼女はバイセクシャルだが、人生を共にするなら男性だと思っていたし、その女の子はタイプでもなかった。でもその子がいない人生なんていらないと思った。たしかに、宇宙から見れば人間は無意味な存在だ。しかし、それは無限にある視点の一つでしかない。自分に大切な存在ができたとき、その大切さという意味は誰にも奪うことはできない。
　そのガールフレンドは「あなたのセクシャリティを尊重する」と言った。それまでバイセクシャルというのは、社会が彼女を非難する烙印だった。そんな言葉で私のことをわかったつもり？　ところがガールフレンドの一言で、それがとても素敵なことに思えてくる。世界が変わったわけではない。自分の見方が変わっただけだ。そうだ、世界を変える必要はない。希望とは自分が変わることだ！
　言葉は世界を分節する。木は幹や枝や葉や根に分けられる。しかし「ここから枝」と線が引いてあるわけではない。人間が勝手に線を引いているのである。魚という言葉が不都合なら、魚は存在しないと言うしかない。デイヴィドの過ちは、自分の見方にしがみつくあまり、世界を変えようとしたことだった。There is grandeur in this view of life.（このように見れば、生命は壮麗である）。これは父の書斎にもデイヴィドの研究室にも得意げに飾られていた『種の起源』の一節だが、デイヴィドは自分の見たい世界しか見ていなかった。そして著者は、彼が見ることのなかった壮麗な世界を見たのである。

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タイトルから生物学的な話を想像していたが、どちらかと言えば人生や世界についての哲学っぽい話だった。
デイヴィッド・スター・ジョーダンのことも、分類学のことも知らないまま読んだが、著者の視点と共に読み進められたので分かりやすく読みやすかった。
優生学の話が出てきたあたりから、特にアナとマリーの話は心苦しかったが、色々と印象的な言葉や考え方があった。
ダーウィンの『種の起源』や、最後に著者が紹介していた本も読んでみたいと思った。

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19世紀末、生涯をかけ魚類を収集・分類した科学者デイヴィッド・スター・ジョーダン。スタンフォード大学の招待総長を務めた人。彼の人生を追跡したNPR（米国公営放送）のジャーナリスト、ルル・ミラーの自叙伝的な本。

正直、著者の自分語りのボリュームが多くて、
主題の『魚が存在しない』にたどり着くまでに挫折しかけた。

序盤から、デイヴィッド氏が、なかなかにひどい男だったのだけど、
ジェーン・スタンフォード氏（スタンフォード大学の共同設立者）死亡のあたりから、どんどん黒くなってきて。
これ、どこに向かっていく、どういう本なの？って思っていたら、
想像以上にグロテスク（優生学が登場するとは想像してなかった）な展開になって驚いた。

魚類が存在しない、という事の説明が非常にわかりやすい。陸で考えるととても納得できて良かった。

表紙、イラスト、本自体のデザインが、個性的で美しく素敵。飾っておきたい。

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「進化に至る真の道は、
確信ではなく疑いで敷かれている。」

想像のはしごの頂点に
人間が居座る場所を維持し続ける為に、
人間と別の動物との類似点を軽んじる。
＊フランス・ドゥ・ヴァール(霊長類学者)

人間なんて、
そんな大層なもんじゃない、
と思っているが、
あまり一般的な感覚ではないらしい。

脳みそのカサブタがぱりぱりと
はがれていくのを楽しめる1冊。
優生学についての記述はしんどかったが。
とにかくも、美しい装丁。

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魚が存在しない理由/ルル・ミラー
#読了

科学という名をまとった人間の思い上がりを丹念に暴いていく物語。
予備知識なしで読み始めたが、予想もしない展開にページをめくる手が止まらなかった。
人生に意味はない。しかしそれでも生きる価値があると教えてくれる。