技術者天国　日亜化学工業、知られざる開発経営

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驚異的な成長と高収益体質:
日亜化学工業は徳島県の地方企業でありながら、過去30年で売上高を30倍に伸ばし、2023年12月期には5071億円に達した。これは四国地方の製造業でトップクラスの規模である。
営業利益率も15%を優に超える高収益企業である。
主要事業は、LEDや半導体レーザーといった光半導体であり、特にLED分野では世界トップクラスのメーカーとして知られている。
日本企業の現状と日亜化学工業の示唆:
自動車業界や家電業界など、かつて世界をリードした日本企業の多くが苦境に立たされている現状が示されている。
これは、新しい技術開発のスピードで中国企業に後れを取ったり、高いブランド力がありながら事業売却に苦慮したりといった具体的な例から伺える。
資料は、こうした悩める日本企業に日亜化学工業の知られざる開発経営がヒントを与える可能性があることを示唆している。
独自の開発経営と企業文化:
技術開発への惜しみない投資: 日亜化学工業は短期的な利益だけを追求するのではなく、長期的な視点で技術開発に多大な時間と資金を投じてきた。
迅速な意思決定: 会長や社長による「面白ければやらせてもらえる」という文化があり、研究開発に関する稟議が異常なほどシンプルで、わずか数十分で承認されるケースもある。「稟議書なんか紙ペラ1枚の稟議書で数十億円がぽんと出る」という表現に象徴される。逆に、稟議に時間をかけると叱責されることもある。
技術者の自由と主体性: 技術者の「面白い」という気持ちや「やる気、勇気、根気」といった内発的な動機を重視し、彼らに大きな自由度を与えている。彼らが自ら新しい研究開発に取り組むことを奨励する文化がある。
内製化へのこだわり: 必要な設備や治具を内製することで、外部にノウハウが流出することを防ぎ、独自の競争力を築いてきた。生産設備の内製率は50%以上、工程によっては8割に達する。
失敗を恐れない文化: 「失敗は教材」と捉え、失敗から学び、次の開発に活かすことを奨励している。失敗そのものを責めるのではなく、そこから何を得て次にどう活かすのかを重視する。
フラットな組織構造: 会長室や社長室といった個室がなく、「大部屋制」で役員と社員が同じフロアで働き、気軽に声を掛けられる雰囲気がある。これは技術者や開発者が経営トップと直接コミュニケーションを取り、迅速な意思決定を促す要因となっている。
「職商人」の育成: 技術とビジネスを切り離さず、両方の視点を持つ人材（「職商人」と呼ばれる）の育成を目指している。これは、技術者が市場ニーズを理解し、付加価値の高い製品を生み出す上で重要である。
主要製品の開発物語:
青色LED開発: 従来の100倍もの明るさを実現した高輝度青色LEDを世界に先駆けて開発し、世界を驚かせた。無名の地方企業が世界的な大手企業に先んじて成功した事例として特筆されている。開発チームは、常識を覆すほどの電流を流すといった試行錯誤を繰り返し、この画期的な製品を生み出した。
フルカラーLED開発: 赤・緑・青の各端子とアノード端子を1つにまとめた砲弾型のフルカラーLEDを開発し、市場のニーズに応えた。
半��体レーザー開発: 光ディスクや産業用レーザープリンターの光源、自動車の電動部品などに使われる半導体レーザーの開発にも成功している。特に青紫色半導体レーザーの開発は世界初の快挙であり、日亜化学工業のコア技術である無機粉末技術と分析技術が応用されている。
Micro LED開発: 現在の主力事業であるディスプレイ用光源の開発において、Micro LEDの開発に取り組んだ経験が、既存製品の性能向上や歩留まりの改善に繋がったことが示されている。当初Micro LED単体の実用化は難しかったが、開発を続けたことで現業のビジネスへの波及効果が生まれた。
知財戦略:
自社の知的財産権を厳重に保護し、他社からの特許侵害リスクにも対応している。
一方で、補完し合える技術を持つ他社とは、積極的にクロスライセンス交渉を行うなど、柔軟な姿勢も示している。
技術開発の成果を保護し、公正な市場競争を確保するために知的財産権を活用するという考え方が明文化されている。
創業者の哲学と影響:
創業者の小川信雄氏や現会長の小川英治氏の独自の経営哲学と、それが企業文化に深く根付いていることが強調されている。
特に小川英治氏の「数字」を追わない」という考え方が示されており、短期的な利益よりも技術的なブレークスルーや面白い研究開発を重視する姿勢が伺える。
「技術者のモティベーションやアクティビティー」を重視し、「面白い」という気持ちを追求する姿勢が、同社の成長の源泉であると述べられている。
今後の課題:
技術系人材の確保が今後の課題として挙げられている。
また、会長である小川英治氏の哲学に大きく依存している現状から、その考えを今後どのように引き継いでいくかが重要であると示唆されている。
まとめ