神々の午睡 みんなのレビュー
- あさのあつこ (著)
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紙の本神々の午睡
2009/11/28 10:55
大らかで、もしかしたら人間以上に人間らしい神々の物語。本文が表紙に負けてません。
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:紅葉雪 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本神話やギリシャ・ローマ神話、そして北欧神話の神々は、大らかでのびのびとしていて、またどこか抜けている(失礼!)ところもあったりと、人間以上に人間らしい姿で描かれているのではないだろうか。
まさに『生き生きとした』、という言葉がぴったりくる。
この「神々の午睡」も同様。
神話をモチーフにしたというだけあって、やはり大らかでのびのびとした神々を描いている。
20××年。石窟から見つかった大量の羊皮紙。それには何と「神々と人間の歴史」が書かれていた。
「遥か昔、この地には豊かな森と泉と川と人々の住む街があった。人々の暮らしの傍らに神々が存在していた。木々の一本一本に、花の一つ一つに、(…略)。神はどうやって神となるのか、人と神はどうやって共存していたのか、神とはそもそもどんな存在なのか。羊皮紙の上にはあらゆることが記されていた」(P5)
そして物語は人と神、そして人と神の間にいる箜(クウ)と呼ばれる存在を紡いでいく。
短編集なので、一つ一つのストーリーをサラリと読めるのも魅力の一つ。
それぞれを楽しく読んだが、自分の一番のお気に入りは、「盗賊たちの晩餐」。
登場人物では箜(クウ)のリュイと、死を司る神グドミアノ、さらに「盗賊たちの晩餐」に出てくるピチュが気に入った。
実は。
この本の表紙の絵を見た時に、『これは小・中学生が食らいつくな』と感じた。
案の定、bk1のこの本の「利用対象」は、小学生や中学生。bk1の「この本のジャンル」によると、小学校高学年からYA向けの読みものとなっている。
と同時に、最初は少々警戒して本文を読んだのも正直なところ。
もちろんそれは杞憂に終わり、十分に物語を堪能させてもらった。
というのは。
最近、本文と表紙・イラストなどが、『お互いの足を引っ張り合ってしまう』と思える数冊の児童書と出会った。強いていうならば、本文が表紙や挿絵に『負けて』しまうのだ。
そんなことが続いたので、この表紙をみた時に、反射的に『これも…?』と早とちりしてしまった。
もちろんイラストは個人的な好みが出るところなので、読み手によって好き嫌い、本文に合う・合わない、様々な意見があって当然で、この件はだからこそ奥も深くなる。
ただ。
子どもたちは大人以上に、表紙の絵やイラストを重視して本を選ぶ。
どれほどいい本でも、絵が気に入らないと、なかなかその本を手に取ろうとしない。せいぜいが、『あとで、他に読むのがなかったら読んでみる』本に仲間入りさせる程度だろうか。
逆もまた真なり。表紙やイラストに惹かれ、ある一冊に手を伸ばすこともしばしばある。
出版する側もそれを判っているからこそ。
いわゆるアニメのような、子どもの目を引く表紙やイラスト入りの児童書が多く出されるのではないかと自分は考えてしまう。昨今の本の販売不振を脱しようと必死なのも当然だとも思う。
ただ。
それが一つ間違えると、『子どもの目をひく』ためだけの、本文に合わない表紙なりイラストなりが組み合わされる一冊を生み出してしまっているのでは、と。
この『組み合わせ』というのは何とも不思議で、本文のストーリーは非常に面白く、イラストはイラストで大変素敵なのに、組み合わされると雰囲気が壊れることが。事実自分が『合わない』と感じた本も同様だった。
では本書は。
初出は、雑誌「アニメディア」。そこに掲載された短編8編に書き下ろし2編が加わっている形だ。
あくまでも好みの問題も関わるが、自分はCLUMPのイラストは悪くないと思う。
この話の雰囲気にあっており、特に表紙は本文を巧く引きたててもいると感じた。
先に述べた、子どもに迎合するような表紙・イラストを本に使う事。それについて賛否両論があるのは確か。
だが。それが上手くいけば、独特の雰囲気をもった味わい深い、さらに子どもたちが喜んで手に取る一冊になるのだろう。
もちろんその手の本は、大人の児童書愛読者にとっては、手に取るには少々抵抗を覚えると言うのも正直なところだろうが。
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