キリコ・ロンドン みんなのレビュー
- 著者:玖保 キリコ
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評価内訳
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紙の本キリコ・ロンドン
2004/12/04 14:06
続編のほうがお勧め
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
「いまどきのこども」で知られる玖保キリコ先生が、夫の故郷であるイギリスはロンドンで暮らし始めた当初の日々をまとめた一冊。移住したばかりの心不安定な時期を綴った「はじめてのホームシック」はエッセイとしてはかなり上質です。
しかし、もともとが「PCfan」というパソコン・ユーザー向け雑誌に掲載されていた「電脳倫敦日記」というエッセイなので、ロンドンに移り住んでマックの設定に苦労した話などパソコンにまつわる挿話が多いのが特徴です。一方でマンガ家という「在宅・不規則・長時間勤務」の身ですし、出産後は乳飲み子を抱えたこともあって、頻繁に異国の地を見聞して歩くというわけにもいかず、したがってエッセイからはあまりロンドンの香りはただよってきません。そういう点では「キリコ・ロンドン」というタイトルは内容と齟齬があると思い、あまりいただけません。
むしろ続編である「中級 キリコ・ロンドン」(ISBN:4048837923)のほうをお勧めします。続編ではロンドン生活も6年目に入り、子どもも大きくなってきた時期のエッセイをまとめていて、ロンドンやヨーロッパを逍遥するだけの時間的・精神的余裕が出てきています。続編のほうがロンドンおよびイギリスという世界をよりしっかりと見つめているので断然面白いといえます。そうそう、息子クンも自我が目覚めてきていて、その「宇宙人的言動」はかなり笑かしてくれます。
この正編を読まずにいきなり続編から読んでも何の支障もありませんのでご安心を。
紙の本キリコ・ロンドン
2000/10/21 11:08
玖保キリコの不思議な倫敦生活
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:澤木凛 - この投稿者のレビュー一覧を見る
玖保キリコ氏の漫画は非常に表情豊かである。漫画という非常に限定された中であれだけ豊かな感情表現ができるのは、もちろん玖保氏の才能ゆえであるが、単に絵がうまいということではない。状況設定が上手なのだ。主人公たちを短時間の内にある状況に追い込んでそこで決めのポーズ(もしくは表情)をとらせる。そういう意味ではスヌーピーたちが登場する「ピーナッツ」にも似ている。主人公たちは皆どことなくクールで、シチュエーションとのギャップに魅せられるのだ。
その玖保氏がいつのまにか結婚してロンドンに住んでいるという。それほど熱心なファンでない私は「でも連載とかこなしていなかったっけ?」とびっくりした。確かに玖保氏は少し前に大ブレイクした「動物占い」なんかも描いていたはず。どうやって連載を持っていたか…という秘密がこの本「キリコ・ロンドン」に書かれている(長い前置きだった…)。なんてことはない、メールやfax、国際宅配便を駆使し、さらには日本の事務所「クボ・トウキョウ」でアシスタントの石渡P氏をつかって見事に海外での漫画家活動を行っているのだ。そう考えればこの本の連載は月刊PCfanであるというのも納得がいく。こういう作業が可能になった背景には玖保氏が漫画をパソコン(マック)で描いていることにより可能となったのだから。
この本ではロンドンでの暮らしぶりがおもしろおかしく描いてある。どこにいても玖保キリコ独自の視線で物事をとらえているのは興味深い。どこに行っても動じないというか、環境適応力が抜群にいいのだろう。雑誌PCfanに連載といっていたが、パソコンと関係ない話もたくさん載っている(というより、そちらの方が多い)。特に出産にまつわる話は人生の一大事ということもあり、沢山でてくる。もちろん、漫画も載っているのだが、話とダブる事が多くてどっちつかずになっているのが残念だった。著者の漫画を期待して買うと期待はずれに終わるかもしれない。あくまでエッセイに漫画がおまけでついている、くらいに考えておくのがいいだろう。
玖保キリコという人を知ってみたいという人にはお勧めの一冊。しかし、あくまで等身大の彼女がそこにはあるだけで、けしてそれ以上でもそれ以下でもない。ただ、あの「ギャップ」がどのようにして生み出されているかは少しだけわかるはずである。それを知りたければやはり読むしかない。
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