勝負の分かれ目 みんなのレビュー
- 著者:下山 進
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紙の本勝負の分かれ目 下
2002/04/03 10:46
新たなる時代の幕開け
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投稿者:奥原 朝之 - この投稿者のレビュー一覧を見る
下巻からブルームバーグが登場する。ブルームバーグの登場によって、これまで描かれてきたロイター、日経、時事通信の三社の戦いは四つ巴で完全に異なったフェーズへと突入していく。
ロイター、日経、時事の三社が元来マスメディアであるのに対して、ブルームバーグは株または為替チャート分析ソフトとそれを実行するハードを提供する、言ってみればシステムベンダーである。
御存知の通り、経済は世界情勢や政治によって大きな影響を受ける。一秒一秒が勝負の分かれ目となるこの世界では、世界情勢や政治の動きにも注目せざるを得ない。当然の如くブルームバーグは報道の世界にも進出していく事になる。ロイター、日経、時事が報道から商況ニュースへと進出していった動きと全く逆の動きをするのである。
これで役者が勢揃いする。ブルームバーグはそれまで閉鎖的であった日本の記者クラブを開放させることに成功する。四社が同じスタートラインにつくことになったのである。時代の波の先頭に立つブルームバーグ。遅れが目立ち始めた日経。時代は容赦無い判断を四社に下していく。
最後に生き残るのは誰なのか。ドラマとして読んでも非常に面白い。メディア史として読んでも面白い。下巻の巻末には文庫版に向けて、同時多発テロ後を書いた特別書き下ろしの章が付いている。
文句無しのお勧めで有る。
紙の本勝負の分かれ目 上
2002/03/31 02:28
速報性=付加価値
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投稿者:奥原 朝之 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ロイターというイギリスの通信社の主要な仕事が為替取引システムとその情報の提供ということを知っている人がどれぐらいいるだろうか。また基本的に相対取引であった為替取引の市場を作ったのがロイターであることを知っている人はどれぐらいいるだろうか。恥ずかしながら本書を読むまで私は知らなかった。
本書は縦軸に市場がコンピュータ化されていく様を、横軸にそれを取り巻く通信社と新聞社の変遷を描いている。
市場がコンピュータ化されていくということはどういうことなのか。それは『情報の速報性=付加価値』ということである。
日本では日本経済新聞社と時事通信社を、イギリスではロイター通信社のことを引き合いに出して通信社と新聞社の変遷を描いている。
日経新聞といえば今や経済紙として他の一般紙とは別格の扱いで、殆どのサラリーマンが購読しているだろう。しかし30年前まで、圓城寺次郎が取締役(後に社長)になるまで、は単なる株新聞と揶揄され、朝日、讀売、毎日の後塵を拝していた。これはメディアの興亡(文春文庫上下巻)に詳しいので、どちらが先でも構わないので併せて読んでもらいたい。
本書上巻では、日本の通信社として特に時事通信社の歴史に頁を割いている。
なぜ共同ではなくて時事なのか。それはロイターが日本の代理店として時事を選んだからということと、会社自体の性質も近かったからである。ロイターも時事も最初は市況報道を第一として出来た会社である。しかし時事は当時の社長が市況報道に興味が無かったためにロイターはこの話を日経に持っていく。日経の圓城寺は逡巡するもののロイターの提案を受け入れる。ここが日経と時事の大きな勝負の分かれ目となる。
当時は『コンピュータで何が出来るのか』、『情報とは何か』ということを正しく認識していた人間が殆どいなかった。しかしそれに気付く人間は日本にもアメリカにもイギリスにも同時期に居たのだ。時代はコンピュータを利用できる人間と利用できない人間とに篩をかけたのである。
現在の日本の金融市場がこの体たらくになっているのは当時の官僚、規制産業のビジネス感覚の無さが大きな原因であることは間違いないだろう。
歴史物としてではなく人間ドラマとしても面白い読み物に仕上がっている。ビジネス感覚とはなんぞや?と読みながら自問して欲しい。
紙の本勝負の分かれ目 上
2002/07/29 00:31
大著だが、是非ご一読!
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投稿者:我が名は虎之介 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ロイター・時事通信・日本経済新聞社・ブルームバーグを中心にした金融情報市場での興亡を描いたドキュメンタリーである。30年以上の時間、入れ替わる主役・勝者、市場での競争・会社の内部闘争そして一個人の人生へといった転換するテーマなど余りにも盛り沢山な内容を、緩みなくかつ分解してしまわずまとめあげた力量は全く素晴らしい。
私自身は金融業界にも報道業界にも無縁で無知な人間だが、専門用語の頻出する上下巻合せて1,000ページ近いこの大著を、飽きることなく一気に読んでしまった。日本経済新聞をテーマにした杉山隆男氏の「メディアの興亡」に匹敵するドキュメンタリーの傑作として、お勤めの業界・業種に関係なく是非一読をお薦めしたい。
惜しむらくは、それが著者のスタイルなのかもしれないが、章末などに顔を覗かせる安手のテレビ番組のような表現だ。それまでの筆致が素晴らしいだけに、何とも残念。ただし、気持ち的には星半分以下の減点であることを付け加えておく。
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