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佐々木小次郎 みんなのレビュー

  • 高橋義夫
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みんなのレビュー1件

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紙の本佐々木小次郎

2004/12/19 09:12

美しき剣鬼佐々木小次郎〜巌流島以前

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:星落秋風五丈原 - この投稿者のレビュー一覧を見る

いくら天下わけめの戦いが終わったからって、こんな男を
野に放っていいのだろうか?
思わず、こう呟いてしまうほどに、本書の主人公、小次郎は凄まじい。
静寂。一瞬の隙を突いて相手を仕留める。まだ体中が熱い。
事を終えてしまったのに、まだ血が滾り立つ。外に出る。そこに
いるのは人ではない。血なまぐさく、死をまといつかせた鬼である。そんな鬼が
乱暴に女を求め、抱く。ようやく静まると、そこには鬼の面を脱ぎ、
歌舞伎役者かと見まごうばかりの美しき姿の男がいる。
どうだろう? 危なくないだろうか?

修行中の小次郎は、毎回武芸者御用達の宿に泊まるのだが、
その宿が対戦相手や道場への橋渡しをする。
「誰々対誰々の果たし合い」と幟を立てる悠長な輩までいる。
まるで、地方巡業のスポーツの試合か、イベントだ。
しかし、それらと果たし合いが決定的に違うのは、悪くすれば死ぬと
いう事だ。
小次郎が吉岡一門に申し込む時の宿は、なんと寺である。
僧侶であれば、本来なら、「殺生は止めよ」という立場ではないのか?
人々の死に対する感覚が、先の大いくさで著しく麻痺してしまったように
思われる。
そんな世を、武蔵も小次郎も生きていたのだろうか。
頼れるものは己一人という境地になるのも、わからなくはない、と思えてきた。
かてて加えて小次郎は、唯一の肉親である父親からも追われているのだから、
永遠に彼を暖かく迎え入れてくれる場所は、存在しない。
唯一彼を迎え入れてくれる場所は、命のやり取りをする場所しかないという皮肉な運命。
だから小次郎の旅は、いつも孤高で、やるせない。

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