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謹訳源氏 みんなのレビュー

  • 林望 (訳著), 林 望
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みんなのレビュー9件

みんなの評価3.5

評価内訳

  • 星 5 (2件)
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7 件中 1 件~ 7 件を表示

紙の本謹訳源氏物語 1

2010/05/18 20:55

和歌の解釈に格段の細やかな配慮を示している

13人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:あまでうす - この投稿者のレビュー一覧を見る



りんぼう博士による源氏物語の現代語訳の刊行がはじまりました。

第一巻では桐壺から若紫までを取り扱っていますが、橋本治による前代未聞の自由奔放訳をのぞけば、これまでに発表されたどの翻訳よりもフレキシブルな現代日本語を軽快に駆使して、なにやらりんぼう博士お手製の小説のような趣で語りだされています。

この本の二番目の特色は、類書と比較して和歌の解釈に格段の細やかな配慮を示していることです。頻出する歌のやり取りは懇切丁寧に噛み砕かれ、かゆいところに手が届くように本文の中で解説されているので、男女のひめやかな交情の裏の裏が手に取るように理会されるのです。

しかしなんですね、源氏という男はどうしてこれほど好色なのでしょうか。一七歳の男子はポケットの中の手がちょっとあそこに触れただけですぐにやりたくなると多くのインテリゲンチャが語っており、私自身の経験に照らしてもそれは半面の真理なのですが、この光の君は、そういう平均レベルをはるかに超え、二七歳になっても四七歳になっても超簡単勃起型の陰茎を常備していたに違いありません。

まだ年端もゆかぬ若紫をやってしまおうかと思いながら、やはりそれは早すぎると自制した嵐の夜の帰り道、その代わりにさる女のところへ忍び込もうとして門をたたかせるが誰も出てこないので、

朝ぼらけ霧立つ空のまよひにも 行き過ぎがたき妹が門かな

などというシュプレヒコールを投げかけるというあたりに、この貴君子の本領が発揮されているような気が致しますが、はていかに。異常なまでの好色を追及した男が、その好色の咎で手痛い復讐受け、終生癒されぬ苦悩のうちに世を去るという因果応報の手の込んだプロットの裏側に、この偉大な文学者の、男って所詮はどうしようもない奴というねじれた心情が隠されているようです。


♪鶯の囃し疲れて休むかな 茫洋

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紙の本謹訳源氏物語 6

2011/08/30 21:54

源氏物語を流れている時間こそ、栄枯不変の永遠のなう

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:あまでうす - この投稿者のレビュー一覧を見る


 
かつて桐壺帝が寵愛する藤壺を犯した源氏は、このたびは朱雀帝より拝受した皇女女三の宮を政敵である太政大臣の息子柏木に犯され、またしても最愛の妻紫上を襲う六条御息所の怨霊と戦いながら、おのれの業の深さに懊悩する。まさに因果応報の地獄絵図がこれでもか、これでもかと繰り広げられて読者の目をくぎ付けにします。


最近丸谷才一の「樹液そして果実」を読んだところ、源氏物語について興味深い指摘がありました。本巻の「若菜上」では朱雀帝に乞われて源氏は彼の娘である女三の宮をめとるのですが、丸谷氏は折口信夫とともに、その理由を彼女の財産であると喝破しているのです。

古代から平安時代までは女性に幅広く財産相続の権利が認められていた母権制社会であり、源氏の時代の皇女は荘園から上がる莫大な資産を所有していました。その財産を政治的ライバルである太政大臣(元の頭中将)に奪われるということは単なる経済的な損失のみならず政治的な打撃でもあったのです。

そこで源氏は愛妻紫上を悲しませ、正妻の地位をはく奪するというリスクを払ってまで超セレブの皇女を手に入れたというのですが、この卓抜な説を知った私は源氏物語を新しい光のもとで見直すようになりました。

このほか丸谷氏は、源氏物語の本編と宇治十帖を流れる時間を比べて、後者が光彩を失った灰色の現代であるとすれば、前者が香気に満ちた、もう二度と戻ってこない遠く懐かしい昔である、というような感想を述べていますが、これまた卓見であると言わざるをえません。源氏物語を流れている時間こそ、栄枯不変の永遠のなう、なのです。

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紙の本謹訳源氏物語 5

2011/05/15 09:21

香合わせの宴に酔う

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:あまでうす - この投稿者のレビュー一覧を見る



庇護者の源氏や朝廷の名だたるイケメンたちから愛を乞われた内大臣の隠し子玉鬘だったが、結局は髭もじゃのださいオッサンの手中に墜ち、こんなはずではなかったと後悔するのだがもはや後の祭り。あっという間に赤子を孕ませられてしまう。若い娘は昔からよくある蹉跌をまたしても繰り返してしまうのだった。

昔といえば紫式部の平安時代においても現代よりは昔の文物の方がはるかに優れていたと振りかえられるのであるが、では大陸と朝鮮半島から渡来した平城京の時代のヒトモノカルチュアがどれほど国風文化の藤原時代に勝っていたのかははなはだ疑問である。

しかし紫式部は、例えば源氏が六条院で主宰した香合わせにおいても、前代の到来物の香木の馨の深さには当代の新品なぞ物の数ではないと源氏と共に断言しているから、まあそれはそうかもしれない。法隆寺の蘭奢侍は後代の義政や信長が切り取って珍重したと伝えられる伝説の香木だが、その原産地はベトナム、タイ、インドなどの諸説が入り乱れているそうだ。

本巻の「梅枝」では、沈香でこさえた箱の硝子細工の容器の中に、「黒丸」と「梅花」という銘の二つの薫香が登場するが、おそらくこれは道長の時代につたえられた銘木であっただろう。わたしも源氏や紫の上や明石と夢の中で同席して、その芳香に酔いしれてみたいものだ。

子等揃い菖蒲湯に浸かるめでたさよ 茫洋

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紙の本謹訳源氏物語 3

2010/07/17 10:32

アンチ藤原氏の見果てぬ夢を描く

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:あまでうす - この投稿者のレビュー一覧を見る



第1巻がこの間出たと思ったら、もう第3巻でちょっと民主党の小沢を思わせる政敵右大臣の愛娘朧月夜の尚侍をまたしてもやってしまった源氏は、そりゃあんまりだ、当然の酬いだという訳で哀れ須磨に流されてしまいますが自業自得身から出た錆びの都落ちをおいおい泣いたり侘びたりするうちにまたしても都合よく明石の君を発見して奥方の紫の上を気にはするものの結局この鄙には稀な美女もおのがものにして玉のような女児をあげるのですがこういういいかげんうんざりするようなワンパターン的色好みすけこまし譚も一種貴種流離譚のようなお伽噺もすべて超インテリオバハン紫式部の空想にすぎず一世一代の色男を自分の都合のいいように手のひらの上でポンポコリンさせて色即是空させているだけのことじゃねえかと思えばなんだか物語の操り人のその怪しい手つきがほのみえてような気がしていささか興ざめにもなるのですがとはいえ平安時代は藤原道長が位人臣を極めこの世をばわが世とぞ思う望月の欠けたることもなしと思えたご時世にあって藤原氏以外の貴族たちは立身出世の道を断たれて書画骨董文芸淫美女色の脇道に深入りするしか生きるすべがなかった時代ですからいくら道長から寝ようと誘われ自作の第一読者を自任されていたとしても所詮式部は藤原一族のはしくれですらない彼女はアンチ藤原氏一同を代表して彼らの見果てぬ夢である幻想の源氏の御代を描いてその世界初世界最大最高の物語のあちらこちらにおいて道長一派を皇室を危うくする権謀術数家や権力にこびへつらう滑稽な道化師女の性を利用し踏みつけにしてどこまでも私利私欲を追い求めようとする小市民として点描することによってせめてもの気晴らし口散じをすることだけが関の山だったといえばいえるのでしょうが結果的にその小さな嫌がらせないしささやかな政治的報復行為がこの史上空前の大ロマンの多種多様な副主人公たちの光彩陸離たる大活躍につながって物語の細部を異常なまでに充実させあまつさえそこに読者の視線が集中するという思いがけない結果を生んだために恐らくは致命的欠陥になりかねなかった主人公光源氏のあほばかウドの大木的キャラの肥大化および下半身爆弾常時突貫小僧的単細胞肉体性と諸行無常的空虚感の後景化に見事に成功したといえそうです。


♪藤原の摂関政治にあぶれたる貴族が励みしセックスと歌 茫洋

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紙の本謹訳源氏物語 7

2012/02/11 14:12

分かりやすさとテンポの明快さは素晴らしい

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:あまでうす - この投稿者のレビュー一覧を見る




本巻に収められたのは「柏木」「横笛」「鈴虫」「夕霧」「御法」「幻」の六つの巻です。

源氏が目に入れても痛くないほど大事にしている正室の女三の宮が、かつての頭中将の息子、柏木に犯されて子をなすくだりはまことに因果応報。若き日の源氏が桐壺帝と藤壺に対して冒したあやまちを身を以て追体験させる紫式部の冷徹な断罪は、主人公のみならず現代の読者の襟をも粛然として正しめずにはおきませぬ。

自責の念に駆られてはかなくもみまかった柏木の正妻、落葉の宮を狙うのは、今は亡き葵上との間に出来た源氏の一人息子、夕霧。さうして源氏ジュニアのいかにも不器用な横恋慕をはさんで、ようやく老境にさしかかった主人公を突如襲うのが、愛妻、紫上の死であります。

そんなに大切な妻ならもう少し生前に浮気を控えて大事にしてあげればよかったのに、と思っても、後の祭りとはこのことぞ。若き日の輝かしい光も急激に色褪せ、五二歳の雲隠を目前に控えた我らが主人公の落日の悲哀を、作者は残酷なまでに抉りだすのでした。

林氏の現代日本語訳は、谷崎潤一郎訳等に比べるといささか格調には欠けますが、これまでのいずれの訳者をも凌ぐ分かりやすさとテンポの明快さは素晴らしいものがあります。

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紙の本謹訳源氏物語 9

2013/02/27 08:21

世界と欲望の対象を前にした無能と行動不全

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:あまでうす - この投稿者のレビュー一覧を見る

前巻から「宇治十帖」に入ったが、ここでは薫二十五から二十六歳までの「早蕨」「宿木」「東屋」の三つの章を収めている。
 何度読んでも歯がゆいのはその薫の優柔不断さだ。さきに美女に惚れるのはいつも薫なのに、中君も浮舟もライバルの匂兵部卿がさっさと手を出してものにしてしまう。

薫は中君よりも姉の大君に惚れていたが、その大君が死んでしまうとその面影を忘れられずに妹に惹かれ、その中君をあろうことか匂兵部卿に教えてさっさと奪われてしまうのだから自業自得もいいところだ。

しかも匂兵部卿の妻となった中君にまだ未練たらたらで、こんなことなら自分が先にものにしておけばよかったと悔やむのだからあほらしくて読んでいられない。

かててくわえて薫は、せっかく自分よりも姉の大君が好きだったと知っている中君から大君そっくりの美女、浮舟の存在を教えてもらったというのに、これまたあっというまに匂兵部卿に初物を頂戴されてしまうという体たらく。

次回はその浮舟が気の毒な目に遭うのだが、その原因はひとえにこの男の無能と行動不全にあるというても過言ではないだろう。そして「宇治十帖」があからさまにするこの「世界と欲望の対象を前にした無能と行動不全」こそが、ひときわ現代的なテーマなのである。

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紙の本謹訳源氏物語 8

2012/08/19 19:58

美しき姉妹を相手にむなしい独り相撲

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:あまでうす - この投稿者のレビュー一覧を見る

源氏が「雲隠」してから物語は第2部の宇治十帖に入り、薫が美しき姉妹を相手にむなしい独り相撲を取る。

薫の推挽でたちまち妹の中君をものにした匂宮とは正反対に、薫中将はなにごとにつけてもぐずぐず考え込み、慎重で積極的に行動せず、常に大魚を逃している。こういう人は今も昔も世間には大勢いて、他ならぬ私もその一人(笑)だが、こういう小説の中で読まされるとじつにいらいらする。

恋焦がれる大君を喪ったあとで、アホ馬鹿な薫がひとりごちたように、うまく立ちまわりさえすれば、彼は宇治の陋屋に隠れ棲む身寄りのない姉妹を二人ともおのが手中に収め、大君を死なせずにすんだはずだが、そういう駄目さ加減がこの悲劇の主人公の持ち味であり、著者の紫式部が絶妙に仕組んだ現代的な役どころであった。

同じようにいやらしい匂いを周囲に撒き散らすライヴァルの二人ではあるが、女を肉欲の対象とせず、まずは一人の人間とみなす立場を終始堅持している点で、アホ馬鹿薫は肉食ノータリン男の匂宮を頭ふたつ程抜いていると考えられる。

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