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教育改革の幻想 みんなのレビュー

  • 苅谷剛彦 (著)
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みんなのレビュー8件

みんなの評価4.1

評価内訳

  • 星 5 (3件)
  • 星 4 (1件)
  • 星 3 (1件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (1件)
3 件中 1 件~ 3 件を表示

紙の本

紙の本教育改革の幻想

2006/03/15 22:42

「ゆとり教育」とは何だったのか

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:GTO - この投稿者のレビュー一覧を見る

「ゆとり教育」をめぐる教育改革論議も一段落したようであるが、一連の論議の中で最も冷静に状況を分析し、問題点を明確にし、その結果を精確に予測した本である。感情論に走らず、統計資料をていねいに追うことで、階層化社会の到来をいちはやく予言している。

 格差を広げる要因はいまや、親の収入・学歴だけでなく、住んでいる地域も関係する。私に手元にある資料では、2006年度大学入試センター試験の平均点上位50位内に、公立高校は(国立は除く)たった6校になってしまった。東大合格者数は地方の公立進学高はまだ頑張っているが、都市部では公立高校は壊滅状況である。これでは、生まれや育ちに関わりなく、有能な人材を発掘し育てるシステムの崩壊であり、国全体が活気を失うことになるだろう。

 筆者は他にも『岩波講座 9 教育の政治経済学』、『大衆教育社会のゆくえ』や『教育の地殻変動』(2006年3月現在『大学新聞』に連載中)など、どれも正鵠を射た論を展開している。アメリカが失敗した「カフェテリア教育」にならった「ゆとり教育」の失敗がほぼ明らかになってきているが、私が思うに、問題は文部科学省が正式に失敗を認めないことに加え、目先をそらすためにか、またアメリカに追従して「キャリア教育」を導入・推進しようとしていることだ。失敗を認めないかぎり、改善は望めない。大本営と同じでウソにウソを重ねていくうちに取り返しのつかない事態になる。先の大戦がどうなかったか、文部科学官僚は思い致すべきだ。

 多くの論者が言っているように、職業選択では「自分が何をしたいか」ではなく「自分は他人のために何ができるか」が大切であるのに、現教育課程で興味・関心に重点を置いたため、公教育現場で自分創り指導ではなく、自分探し指導が始まってしまった。基礎学力をつけないで何がしたいだけ問うても、答えなど出ない。

 結果、文科省は「ゆとり教育」で中高一貫私立や塾、受験産業を儲けさせた。それが供給過剰となってきたので、「キャリア教育」の名のもとに情報産業に新たな市場を与えようとしているとしか思えない。

 フランスの歴史家ミシュレの言葉にもあるように、「政治の第一課は何か。教育である。第二課は。教育である。そして第三課はと言えば、やはり教育である。」そして、教育は「国家百年の計」とも言われる。このことを、政治家並びに官僚はよく心に留めておいてほしい。

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紙の本

紙の本教育改革の幻想

2002/01/31 11:30

教育を「飲み屋談義」から救済しよう

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:小田中直樹 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 教育改革をめぐる論議が盛んだ。でも、教育に関わる各種審議会(教育改革国民会議、中央教育審議会、教育課程審議会)や文部科学省は教育の専門家のはずだから、彼(女)が構想する改革は「改善」をもたらすはずなのに、問題がなくならないのはなぜか。

 そんなことを感じてる人にとって、これは必読の一冊だ。この本は、なぜ僕らが「教育改革」って言葉に弱いのか、いま進んでる教育改革の問題点は何か、僕らはどうすればいいのか、といった問題を論じるのだから。具体的には、現在進行中の教育改革の基本理念を、ゆとり、子供の主体性や意欲や個性を尊重する「新しい学力観」、この二点で捉えたうえで、次のような問題が検討されてる。今までの教育ではゆとりがなかったか。ゆとりの時間は何に使われているか。子供の主体性と意欲と個性をイコールで結んでいいか。

 この本のメリットは次の二点。

 第一、これまでの教育改革に欠けてた「政策評価」、つまり成果を具体的に検証するって観点を取り入れたこと。そして、歴史的な経験とか具体的なデータにもとづいて、これまで実行された教育改革を評価しようと試みたこと。それによってこの本は、「教育はこうあるべきだ」っていう、たしかに必要だけど、下手すると単なる印象論に終わってしまう理想論を離れ、クールにリアルに教育を論じることに成功した。

 しかも、僕らの常識を覆す事実を、この本は次々に明らかにする。たとえば、授業時間を減らしても、テレビとゲームの時間が増えただけだし、とくに勉強しない子供がますます勉強しなくなった。教育内容を減らしても、子供の理解度や学習意欲は上がってない。「新しい学力観」は基本的知識を軽視し、「学ばない主体性」(一九〇頁)をもたらす危険がある、云々。たしかにこういった現場の実態を無視して進められる改革論議は不毛であり、ただの「飲み屋談義」であり、さらには危険でさえあるだろう。

 第二、教育改革を論じるときには、「子供」を大雑把にくくって考えるのではなく、勉強できる子供とできない子供、金持ちの子供と貧乏な子供、といった「階層間格差の視点」(九二頁)が大切だって教えてくれたこと。たしかに各々の子供の背景に応じて教育の機能は変化するはずだから、教育改革はもう少し繊細に論じる必要があるだろう。

 この本のデメリットは次の二点。

 第一、教育改革が進んでるけど成果が出ない原因は「改革の不徹底」か「誤った前提」かという論争について、苅谷さんは「生産的とはいえない」(三七頁)って言いながらも、どちらかといえば「誤った前提」派に近い立場を採る。でも、この本を読んでも「改革の不徹底」派の主張を否定する根拠はみつからない。政策評価と、改革を進めるか否かについての意思決定との間には、もう一つ理屈をはさむことが必要らしい。

 第二、学力と学校外学習時間の関係をめぐる苅谷さんの分析(一二四〜八頁)には疑問が残る。つまり、「できる子」と「できない子」の学習時間の減り方を比べるときは、減った量に差はないのに、減った割合にもとづいて「できない子が勉強しなくなった」って主張する。「まったく勉強しない」子供の増え方を比べるときは、増えた割合に差はないのに、増えた量(ポイント)にもとづいて「できない子が勉強しなくなった」って主張する。これは「結論先にありき」って感じで、いかがなものか。

 教育は誰にとっても身近なので、誰でも一家言ある、とよく言われる。しかも大抵の人は教育、とくに受験競争の敗者だから、教育を改革しようって声に弱い。でも、僕らもクールでリアルに教育を論じたいものだ。[ご意見はここに]

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紙の本

紙の本教育改革の幻想

2016/05/09 08:25

2000年代初期の我が国の一大教育改革を批判的に見た良書!

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

本書は、2001年出版で今となっては少し古い印象はぬぐえません。本書は、当時「よとり教育」、「児童中心主義教育」をモットーに、これまでの詰め込み型教育を改善していこうという政府の改革論を批判的に考察した良書です。当時、改革論者によって言われた「自ら学び、考える力を育てる」という哲学は、本来の意味ではとても素晴らしい方向なのですが、それが改革論者によってかなりゆがめられて理解、認識され、その歪みがそのまま実際の教育改革につながっていったと筆者は言います。当時、教育論争まで巻き起こした一大出来事を、再度、振り返る意味でも本書は貴重なものと言えるでしょう。

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