山田風太郎明治小説全集 みんなのレビュー
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2005/03/28 00:02
快男児明石元二郎ここにあり
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投稿者:ピエロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の明治ものの一作で、主人公は軍人の明石元二郎。この人は実在の人物で、日露戦争時にはヨーロッパで諜報活動に従事し、後に大将になり台湾総督を務めたほどの男。この明石元二郎の若き日の姿、ロシアの怪僧ラスプーチンや胡散臭い占い師との争いを、二葉亭四迷や内村鑑三、乃木希典将軍、チェーホフなどなど実在の人物とロシア皇太子襲撃事件や森有礼暗殺事件等実際にあった事件を上手に使い、得意の伝奇風の色彩を加えて描いています。
メインは書名にあるようにラスプーチンとの争いなのですが、登場は物語も半ばを過ぎたころ、それまでは政界にも顔のきくインチキ占い師と一人の女性を巡って争います。この稲城という占い師、仇役だけあって良く書けていて、傲岸不遜でいかにも憎らしく、それでいてどこか面白みのある男。明石と稲城の丁々発止のやりとりは読み応えがあり、どっちが勝つかは言わずもがな、スキッと胸のすく思いが楽しめます。その分割りを食って、肝心のラスプーチンとの争いはいまひとつ盛り上がりに欠ける感じ。終わり方も、明石の将来を暗示するような終わり方ではあるのですが、なんともあっけなかったのが残念ですね。
2002/06/30 01:42
うーーーん、面白い!!
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投稿者:柿右衛門 - この投稿者のレビュー一覧を見る
おもしろい!!
この一言に尽きてしまうかもしれない。
日露戦争時、欧州、ロシアで間諜として大活躍した明石元二郎の青年時代の話である。
乃木希典の家族の問題を解決してみせたり、ニコライ大聖堂のうえに上ってみたり、明石元二郎は実に大物で、その大胆さぶりはとても気持ちがいい。
かれが諜報で大活躍したのもうなずける話である。
そんな明石の活躍と主に、ロシア皇太子殺傷の大津事件を奇想天外な推理を描ききった。
またこの物語には、二葉亭四迷はじめ明治時代の大物たちがちょこちょこ顔を出す。
本来なら主役級とも言える彼らのちょい役っぷりがまた面白いのだった。
明石元二郎のその後も知りたいところである。
果たして怪僧ラスプーチンには勝てたのだろうか?
2001/05/30 00:38
山風ミステリの最高峰
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投稿者:真 - この投稿者のレビュー一覧を見る
山田風太郎の本格推理小説。機械トリックだけでも見事だが、さらに最後のドンデン返しが強烈。推理小説好きなら必読の一冊でしょう。
2001/01/11 16:19
明治の混乱すらも、ミスリードに姿を変える
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投稿者:竹井庭水 - この投稿者のレビュー一覧を見る
忍法帳でおなじみ山田風太郎の明治もの。太政官弾正台(役人の汚職を取り締まる役所)に勤める大巡察、香川経四郎と川路利良がフランス人美女エスメラルダの力を借りて、不可能犯罪を解決する連作短編。
中央ホールに螺旋階段のあるホテルで胴体を真っ二つに斬られた死体が見つかった。容疑者の一人は30メートル上の展望塔におり、もう一人の容疑者の刀は以前からポッキリ折れて使い物にならなかった。容疑者がホテルに現れた理由もわからない。犯行はどうのようにしてなしえたのか?(「怪談築地ホテル館」より。)
洋館のホテルと日本刀、人力車と生霊、望遠鏡と女形など、この本で起こる事件は全て明治時代でなければ起こらないものばかり。発端はなかなか興味を引かれるものの、解決編がすぐやってきてちょっと物足りない。「頭の体操」のようにページめくるとすぐ答えってな感じ。バリバリの機械トリックはオモロイけど、なんか違和感あるなーなんて思いながら最終章。な、なんとこれらの不満、全部計算づくじゃないですか!
最終章のサプライズもさることながら、明治開期と維新政府も丹念に書かれてその癖飽きない。混乱する世間と政治は、現代の姿すら透けて見えそう。歴史小説と探偵小説が融合した極上のエンターテイメントに仕上がっております。まさに20世紀に読んでおくべきだった本。忘れてはならぬ人々が、そこにいる。
(初出:いのミス)