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イッツ・オンリー・トーク みんなのレビュー

  • 絲山秋子
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みんなのレビュー6件

みんなの評価4.2

評価内訳

  • 星 5 (2件)
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  • 星 1 (0件)
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紙の本イッツ・オンリー・トーク

2010/03/02 20:27

絲山秋子のデビュー作 (第96回文學界新人賞受賞)

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る

絲山氏のデビュー作である。タイトル「イッツ・オンリー・トーク」は「ムダ話」という意味とのこと。

本書には「ちょっと変わった」人たちがこれでもかっというほど登場する。いや、正しくは――EDの議員に鬱病のヤクザに痴漢にいとこの居候――「ちょっと変わった」人しか登場しない。

一見、「ぶっとんでるなー」って思いたくなるのだけれど、読んでみるとそうも「ぶっとんで」はいない。ムダ話といわれれば「そうかもね」と思うし、「真面目に言ってるんだ」と言われればそうとも思える。あぁ、やっぱりわたしは未だ絲山作品の魅力をとらえきれていない。

これまで数冊の絲山作品を読んできて思うのは、絲山さんは「私」目線で物語を書くのが好きなのだなぁ…ということ。今まで読んだどれもがほぼ一人称で進行している。読む側からしてみれば、一人称っていうのは感情移入がしやすくて読みやすい(わたしだけ?)。こういう点も魅かれるポイントなのかな。

さて話は変わって…本書で解説を書かれているのは上村祐子さんという書店員の方だ。この上村さんの解説がめちゃくちゃいいっ!!! 何がいいかって、「絲山さんが好き!」っていう気持ちがバンバン伝わってくるのだっ!

この上村さん、『イッツ・オンリー・トーク』(単行本)の発売日に六面も陳列し、お店を移っても絲山作品を平積みにすることから仕事を始めるという気合の入れよう。

上村さん曰く、(絲山さんは)「男も女のフラットに書ける小説家。もの凄く強くて、ものすごく弱い人物たちを描ける人。」とのこと。

これの箇所を読んだわたしは「なるほどー。そう言われればそうかもしれない。」と納得する。しかし…やっぱり自分自身が魅せられている「絲山作品の魅力」を具体的に表すにはものたりない。

でも!上村さんのこの一文にはびしっとばっちり共感してしまった
―――絲山さんの作品の全ては「面白い」とか「泣ける」とかそういうことではなくてちゃんと自分の心が揺れるのがわかるのです。


「心が揺れる」


それだっ!!!!! 
こんなにぴったりくる言葉があるだろうか。


絲山作品は心が揺れる。

いとやまさくひんはこころがゆれる。

イトヤマサクヒンハコココロガユレル。


そう、絲山作品を読むとわたしの心は揺れるのだっ!!! わたしが絲山作品に魅かれる理由はただひとつ、心が揺れるから、だったのだっ!!!

と、「何を興奮しているのか」と冷ややかな目を向けられそうだけれど、それくらいこの「心が揺れる」という表現はぴったりハマる。あぁ、自分の想いを表現できるひとってすごいなぁ。と解説という思わぬところで感動してしまう。

ところで…絲山作品には絲山Aと絲山Bがあるらしい。芥川賞を受賞した『沖で待つ』は絲山Aらしいのだけれど、絲山Bに挙がるのはどの作品だろう。先月急に読みだしたばかりのにわかファンのわたしにはその違いが見出せない。今のところ、絲山作品にはある種の一貫性を感じてしまっているのだから。



『イッツ・オンリー・トーク』収録作品
・イッツ・オンリー・トーク
・第七障害

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