「若者はかわいそう」論のウソ データで暴く「雇用不安」の正体 みんなのレビュー
- 海老原嗣生
- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
1 件中 1 件~ 1 件を表示 |
紙の本「若者はかわいそう」論のウソ データで暴く「雇用不安」の正体
2010/08/05 18:11
やっと出てきた正論。本当の真実とは本書に書いてあることなのでR。
17人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ここ数年、「小泉竹中の新自由主義のお蔭で一億総中流社会が崩壊し、日本は格差社会になってしまった。その一番の被害者が若者だ」という一見もっともらしい大ウソが社会を覆い尽くしていた。そのすべてが嘘であり、大学生の就職難、大学院生の就職難、ロースクール卒業生の受難の理由は全部理由が別にあることがだんだん明らかになってきた。中でも「本当の真実」を鋭くえぐり出して白日の下に曝したのが、本書の著者海老原嗣生さんだ。彼は『学歴の耐えられない軽さやばくないか、その大学、その会社、その常識』、『雇用の常識「本当に見えるウソ」数字で突く労働問題の核心』など同工異曲の類書が多数出しているが、これだけ短期間に類書が多数出ること自体、彼の主張を読んだ読者が「目からうろこ」「本当はそうだったんだ。なーんだ」と思ったことを物語っている。
彼が語る「若者についての本当の真実」をかいつまんで言うと、
日本の若者が馬鹿になったのではない。馬鹿でも日本の大学に入れるようになったのだ。
昔なら、大学なんか入れない馬鹿が大学生になったからといって、就職市場で馬鹿が大学生として通用するわけではない。1992年をピークに若者人口が激減し今やピーク時の半数にまで落ち込んでいるのに、大学生の募集枠はむしろ拡大の一途。教育よりビジネスを優先する私立大学は、入試のレベルをどんどん落とし、とても大学教育に耐えられない学生まで入学させている。こんなナンチャッテ大学生が4年たって「学士様」を名乗れると思うほうが間違い。
企業は過去40年間、一貫して採用を増やしている。企業は既存社員を温存するために若者を排除したりなんかしていない。問題は昔から限られていた大卒枠に大量の「若者」が押し掛ける構造が出来たことが問題。
昔だったら高卒として、高卒就職市場が受け皿となっていた連中が、大卒ホワイトカラーとして就職しようとするから失敗している。高卒は高卒として単純労働に従事するのが筋。ところが日本では急速に単純労働市場が消滅しつつある。言わずと知れた中国の挑戦がその原因。単純な労働は日本から消滅しつつあり、大卒に求められるのは高度な知的作業。しかし、高度な知的作業が出来る「大学生」の絶対数は限られているし、その就職マーケットも限られている(そんなには増えな)。
俗に言う日東専駒は昔からずっと就職には苦労していた。MARCHだって昔からずっと大手企業にはなかなか就職できなかった。何も小泉竹中の新自由主義でこうした大学の卒業生が就職に苦しむようになったわけではない。
日本の企業社会のスローライフは国際的に見ても幅広い経験が積める美味しいシステム。毀誉褒貶著しい米国式雇用システムよりずっと優れている(だから日本企業は日本型雇用システムを変えようとしない)。
職能型の雇用より、社内でつぶしがきくことを最優先する「日本型総合職」はサラリーマンにとっても企業にとっても非常に美味しい便利なシステム。「私は経理の仕事しかしません」なんていっても、日本では通用しない。「君には明日から営業の仕事をやってもらう」と会社から言われればそれまで。これが日本の企業組織に柔軟性を与え、雇用のコストを抑えている。日本ではつぶしがきくジェネラリストが歓迎される所以である。
1 件中 1 件~ 1 件を表示 |