女医アデリアシリーズ みんなのレビュー
- アリアナ・フランクリン, 吉澤康子
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紙の本ロザムンドの死の迷宮
2017/05/20 21:58
国家の危機
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:J・P・フリーマン - この投稿者のレビュー一覧を見る
推理小説というよりは歴史、冒険小説の色合いが濃く出ている。国家転覆を狙う一味が暗躍して、ヘンリー2世の愛人を殺害したことが推理小説の醍醐味の一つである動機を薄めているのが原因っぽい。ヘンリー2世が出てきてからの安心感は他の追随を許さないです。
2017/05/20 21:53
最後のヘンリー2世を見てたら時代劇を連想しました
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投稿者:J・P・フリーマン - この投稿者のレビュー一覧を見る
12世紀のイングランドを舞台にした歴史ミステリ。アデリア、シモン、マンスールの外国人3人組がイングランドに派遣され、そこで起きている子供ばかりを狙った殺人の犯人を捕まえるために奔走します。
残り100ページを残して犯人が死んで、まさか残りのページでアデリアとロウリー卿の恋愛を書くのかと思っていたら、まさかの苦境がやってきます。アデリアが危ういときにやってきたのがまさかのヘンリー2世。物語冒頭以来の登場です。イングランド王でありながら気さくな話し方をするおっさんです。ヘンリー2世がアデリアを苦境から救い出すシーンは見ていて小気味がよかった。アデリアとロウリー卿の関係はありきたりなハッピーエンドではないですが、続編が気になる終わり方となりました。
紙の本ロザムンドの死の迷宮
2011/08/17 20:58
心も身体も言葉さえも凍るような寒さが伝わってくるよう。
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投稿者:みす・れもん - この投稿者のレビュー一覧を見る
長い物語だった・・・。本当はもっと早く読み終える予定だったのだが。
この長い物語は、殺し屋がその仕事の依頼を受ける場面で幕を開ける。誰が誰の死を望んでいるのかは明らかではない。
第一弾「エルサレムから来た悪魔」で検死官として勇敢な働きを見せたアデリアは、娘を授かり母としての喜びを感じながら、ギルサやマンスールとともに平穏な日々を過ごしていた。
イングランド王ヘンリー二世はアデリアを故郷に帰らせることは許さなかった。彼女の優秀な頭脳を役立てたいときのためにイングランドにとどまらせていたのだ。そして、そのときはやってきた。ヘンリー二世の愛人が毒殺されたのだ。その調査をアデリアに命じた。
幼子を抱えたアデリアは再び冒険の日々に身を置くことを好まなかったが、王の命令は絶対だ。仕方なく従うことに。
イングランドの冬の厳しさがひしひしと伝わってくる。人も空気も音も何もかも凍らせてしまうような寒さ。それがアデリアの冒険を更に危険なものにしていく。そうして司教となったロウリーもまた命の危険に身を投じる。
今回は「検死官」としてのアデリアは特に活躍していない。「探偵」としての活躍はほどほどにあった。前回同様に冒険ミステリの色がかなり濃い。12世紀イングランドの歴史に詳しければ、もっと楽しむことができるのだろうな・・・。登場人物のキャラクターに魅力があるので、こういう冒険ものもたまにはいいかと思うが、やはり私は冒険より推理がメインのミステリが好きだと改めて感じる。アデリアと同じように次々と襲ってくる危機に疲れてしまうのだ。一難去ってまた一難。その連続。
冒頭に登場した殺し屋は意外なところから再登場する。そのときにもう一度最初から読み返したいという欲求にかられたということは、この物語もやはり「謎解きミステリ」だったのか。これは再読して伏線がどんな風に張られているかを確認してみないとわからない。
この作品を読むために第一弾「エルサレムから来た悪魔」を読んだのだけれど、この作品から読んでも特に困りはしない。第一弾から読むにこしたことはないが。
なんだかんだいって、私はこのシリーズが気に入ってしまっている。第一作目前半の医師としてのプライドを持ったアデリアが好きだ。愛する人と出逢い、母となったアデリアも嫌いではないのだが。
著者アリアナ・フランクリンは今年の一月に亡くなられた。このシリーズも第四弾で終わっているとのこと。アデリアとその娘アリーのこれからを楽しみにしていたのだけれど・・・。残念でならない。
あと2作。邦訳はまだだろうか。
2011/07/23 17:34
歴史と謎と冒険とロマンス。全ての要素がバランス良く含まれた物語。
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投稿者:みす・れもん - この投稿者のレビュー一覧を見る
上巻ではまだ検死から死因や死亡時期、殺された場所などを特定するという、ミステリ要素があった。けれど、下巻では冒険ものになってしまったかな、という印象。
上巻の最後でアデリアをイングランドへ連れてきた良き相棒・シモンが死亡。果たして事故なのか殺人なのか。そのどちらかを示す証拠を見つけたのは、アデリアが犯人ではないかと疑った税官吏のロウリー・ピコウであった。
シモンを失ったアデリアは、幼いユルフとお守りの犬、そして驚くことにロウリーを相棒として連続殺人鬼に向かっていく。
ユダヤ教が弾圧されているこの場所では、ユダヤ人であるシモンをその信じるべき神の元へ導くということが非常に困難なのだ。ミステリよりも、その時代の背景に興味を惹かれた。
何よりも力を持つ聖職者たち。時には王に刃向かうことも。裁判においても、その者がキリスト教の神を信じる者か否かが重要になってくる。どれほど不利な証拠が揃っていても、その者が聖職者であれば証拠そのものを信用できない、とする。逆に、神を信じない者に対しては、どんなに無実である証拠が揃っていても、ありもしない仮説が信用に足るものとされるのだ。
最後には勝利すべき者が勝利するわけだけれど、アデリアは運が良かっただけだとしか言いようがない。
さて・・・。
私としては女性検死官・アデリアは最後まで自分の仕事のみに目を向けるストイックな女性であってほしかった。けれど、下巻の後半はほぼ彼女の恋愛ストーリーで占められている。ある時には自分の医者としての仕事を投げ出しても彼を求めようとした。少し失望したのは私だけだろうか・・・。
こういうストーリーも、今後のシリーズ化に向けては必要だったのかもしれない。
ミステリとしてはかなり物足りない小説だった。殺人鬼も、論理的な思考に基づいて追い詰めていったわけではないし。ただ、歴史もの、冒険もの、恋愛ものの要素を全てちょうどよいバランスでミックスさせた小説である。一度、その世界に入ってしまえば、なかなか抜け出せない。その魅力的な世界観が大切。
次はシリーズ第二弾「ロザムンドの死の迷宮」を手に取ろう。
アデリアには娘がいるらしい。
さて、どういう物語になっているのか、楽しみだ。
2011/07/23 17:30
中世ヨーロッパの女性検死官。「科学 VS 宗教」の世界。
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投稿者:みす・れもん - この投稿者のレビュー一覧を見る
時代は中世。場所はイングランド。そこへ登場する検死官。生きている人間を診る医者ではなく、死者を診る医者・・・、いや、死者の声を聴く医者だ。その時代でも珍しい女性医師・アデリア。
その時代背景のせいなのか、溶け込むまで少し時間を要した。その小説の世界になかなか入り込めなくて。けれど、アデリアが本来の職務、検死を行うあたりから徐々にペースがあがってきて、あとは惹き付けられたまま上巻を読み終えた。
子供たちだけを狙う連続殺人。悪魔がすぐそばにいる。そしてまだその狂気は治まっていないのだ。そんな中で女性であるアデリアは「医師」という身分を隠して捜査にあたる。検死医として。まだまだ女性に対する偏見が強く残る時代。「女性医師」が、ともすれば「魔女」という烙印を押されかねない。王の命令で渋々引き受けた仕事なのに、さらにやりづらい。けれど、殺された子どもたちの声を聴くため、アデリアは引き返すことはしなかった。
科学より宗教の方が強い時代(こういう言い方は正しいだろうか?)。医師による合理的な治療よりも、神の力にすがる人々が多い時代。人の遺体を解剖するなど、死者に対する冒涜だととらえられてしまう。けれど、自分の意思に反してその命を奪われた者の最後の声を聴くことができるのは検死医だけなのだ。それを理解して貰えないもどかしさもよく表現されている。
この時代の「検死」というものが本当はどうだったのか・・・・ということにも興味はあるが、小説の中で行われる「検死」にも驚かされる。それだけの知識をアデリアが持っていたということなのだけれど、豚を試験台にして蓄積した知識をもとに、死亡時期や死亡原因などを探っていくのだ。かなり克明な描写があり、アデリアが自分の感情を殺して、機械的に作業を進めていく姿にある種の切なさも感じた。それだけ残虐な殺され方をしている・・・ということ。
まだまだミステリの要素より、その時代の描写に対する興味の方が大きい。これから謎解きが始まるのかもしれない。その始まりを感じさせる一文が上巻の最後に。連続殺人鬼はすぐそばにいるのだ。その心の中はどうであれ、身体はか弱い女性であるアデリアはどうやって立ち向かっていくのだろう。
下巻では大きくストーリーが動いていくはずだ。
大きな期待を抱きながら、ページをめくろう。
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