ぼくのご主人様!? みんなのレビュー
- 著者:鷹野 祐希, イラスト:和泉 つばす
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紙の本ぼくのご主人様!? 5
2008/12/22 14:18
謎解きミステリーを絡めた大団円
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る
最初からシリーズ化を想定していなかったことを考えると見事な完結と言って良いのではなかろうか。吉朗と吉香がもう一度入れ替わり、麻琴と真琴をあの状況に置いてハラハラさせつつ、千広と千尋を替えなかったことで吉朗と千尋との最初で最後の出会いを演出、雅成側の入れ替わり後の生活を挿みながら、第1巻に出てきてその後全くスルーされてたアイツらまで解決させている。前巻までにあった他の事柄もきっちり反映させており最終巻らしい展開だった。何より嬉しいのが、いつの間にかアッチでは真琴と吉香が半ば公認の仲になっていることと、前巻で兆しが見えた雅成と春生の仲も少し、お互いが意識するくらいには、進展していることである。恋愛が成就する、あるいはする方へ向かっているのはやはりイイ。そんな中でも、また起こってしまった入れ替わりから帰還するためのヒントを探していく展開にはミステリーと謎解きの要素が相応に盛り込まれており、本作が富士見ミステリー文庫から出版されていることの意味を改めて実感した。ただのTS物では無い、実は奥深い作品なのである。ただ、この入れ替わりの解決は、必然的にアッチの人達との永劫の別れでもあるために、一抹の寂しさを残しながらも、吉朗と麻琴の心温まる結末が胸にじーんと残る。もし叶うのならば、入れ替わる時の一瞬のすれ違いだけではなく、じっくりと吉朗と吉香が対面して、少なくともお互いがきちんと自己紹介出来れば良いのにな、と思った。この最終巻を読んでいる間ずっとそう思っていた。忘れた頃にまた読み返してみたいと思える作品だと思う。
紙の本ぼくのご主人様!? 3
2008/12/17 14:47
2つの世界を行き来した人が味わう感情
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者本人もビックリの第3巻らしい。あとがきで触れているが、もともと第1巻だけのつもりが続いているそうである。となれば第2巻で主人公が変わったのも、本巻のような物語になったのも頷ける。まず整理しておかなくてはならないが、吉香も真琴も千尋も元に戻っている。本巻は、メイド達もその主も元に戻った後の出来事、つまり後日談である。本シリーズの主人公は完全に佐倉家のメイド、すなわち吉朗から吉香にシフトしている。そして今回誰が入れ替わったかというと、執事兼運転手の東金さんの甥という、一見何の関係も無さそうな人なのである。だが、この甥の想いを通して、この世界へ来た人、この世界へ戻ってきた人、それぞれの心情が語られていく。向こうで出来なかった事が出来る嬉しさ、向こうで出来た事が出来ないもどかしさ、それぞれの立場でそれぞれの葛藤を浮き彫りにしながら何が正しいのかを導いていく秀逸な展開である。中身が替わっていては本当では無い。今の自分、本来の自分の気持ちを大切にするというメッセージである。それに気付いた甥(の中の人)が元の世界に戻った後のエピローグでは、全てが元に戻り新しく変わっていく佐倉家の様子が暖かく描かれており、本シリーズが大団円を迎えたことを感じさせている。少なくとも作者がそのつもりで書いている終わり方である(実際はこの後さらに2巻出ることになるのだが)。なので本巻で少し滲み出てきた真琴の吉香への想いなど、2人の恋模様をもっともっと読ませて欲しかったのだが、それは次巻と最終巻でのお楽しみとする。
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