父と娘の 法入門 みんなのレビュー
- 大村敦志
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紙の本父と娘の法入門
2006/01/01 11:07
これって、法律入門じゃなくて民法入門じゃあない?看板に偽りあり、こういうこと、或いはさりげないというよりはうんざりするような娘の売込みって、学者がやっちゃあ拙いんじゃない?
8人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
我が家お気に入りの岩波ジュニア新書。今回はカバーイラスト=サトウナオミ、協力 大村紗良となっています。
以前から娘の進路についての心配を書いていますが、はっきりしているのは理数系はダメだろう、ということ。それから、芸術的な才能も、人より上ではあっても抜きん出てはいないこと、そういうのを捨てきって容姿で勝負するには、性格ほどのレベルではないこと、父親の皮肉を聞いて育ったせいか、物の見方に癖があって、面白いけれど、ちょっとなあ、っていうのが現状です。
こうなれば読書好きから攻めるか!ですが、人づてに聞く限り編集者なんてヤクザな職業よ、ということらしい。それなら推理小説好きとちょっと頑なな正義感を鑑みて、法学部を狙ったらどうか、なんて思ったわけです、ケアマネという手に職を持つ母親は。そんなとき、我が家で評判のいい岩波ジュニア新書にズバリのものがありました。それがこの本です。
まず目次を見てみましょう。読者のみなさんに・・・・・・、が冒頭にあって、以下、前夜「中高生のための法教育 犬も歩けば法にあたる」、第1夜「名前があるのは何のため? 我輩は猫である」、第2夜「落し物か捨て子か まいごのねこちゃん」、以下「親子であるには?親子であれば? ぞうさん」「飼い主の死後の動物 忠犬ハチ公」「動物を殺してはいけない? ねこふんじゃった」「動物の取引 ある晴れた昼下がり」「迷惑を防ぐ飼い主の責任 101匹」「野生動物を捕獲する 森のくまさん」「児童の虐待・動物の愛護 猫を紙袋におしこんで」「飼い主の移動の自由 盲導犬クイール」「コンパニオン・アニマルって何? とっとこハム太郎」、最後が第12夜「動物と共存する アマミノクロウサギ」、あとがき、読書案内、引用条文。
ちょっと引けるのが「読者のみなさんに・・・・・・」です。
「本書の話は、父と娘の対話によって進みます。はじめに、読者のみなさんに、父と娘を紹介することにしましょう。
父は1958年千葉生まれ。大学で民法を教えている。ピアノを習っているが、ぜんぜん進歩がみられない。
娘は1988年パリ生まれ。この対話の後、フランスへ留学。絵が好きで本書のイラストにも参加。」
とあります。
ふーん、娘の宣伝するんだ、イラストも参加って、でもカバー折返しには、はっきりとカバーイラスト=サトウナオミと一人分のクレジットしかないじゃん。本文の絵は娘さんが書いたってわけ?なんて思うんですね。
ま、それはともかく、今私たちにとって法律といえば、実は民法じゃなくて憲法と刑法、それに商法じゃないか、そう思うんですね。で、私はてっきりそのつもりで読み始めたんですが、要するにこの本は民法に本なんです。それなら、なんで民法入門にしないか、ですよ。無論、初めて知ったこともあるし、驚くこともあってためにはなるんです。でも、ずれてる。
そのズレは、無駄とも思える父と娘との対話にも感じられます。ユーモア感覚ゼロ、ほとんどつぶやきシローの独り言レベルです。むしろ、読者の「だからどうなの?」という興味、ノリを殺してしまいます。読者対象として中高生を考えているようですが、あまりに相手を見下していないでしょうか。
実は、対話が生きていない、ということがイラストが効果的ではない、ということに繋がっていき、そして「娘の役割ってなんだ?」という私の批判になっていくのです。ま、娘が可愛いのは分るんですが、無意味に出す必要はない。それと、民法だけで法律を語ることに無理があります。政治や経済、そして犯罪に触れずに現代社会は語れないのですから、どうしても総合的な視野が必要になります。無論、少しは触れられてはいるんですが、十分ではない、これでは法学を学ぼうという気が起きません。ジュニア新書としては不満のある一冊。
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