本の小べや みんなのレビュー
- エリナー・ファージョン, 石井桃子
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紙の本ムギと王さま
2001/09/17 12:01
新版では2分冊になりお話がふえて登場したロングセラー。心なぐさめられる小さな奇跡のファンタジーの数々。カーネギー賞&国際アンデルセン賞。
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る
旧少年文庫に収録されていたのは11編だが、新版では本書のほかに『天国を出ていく』が増えて2分冊となり、全部で27編に改められたと後付に断りがついている。
本を読むのが好きだし、読後感想を書くのは楽しいけれど、誰かに本を薦めるのは苦手である。自分が人に薦められたことのある本の当たり外れが激しいせいもあるかと思う。不特定多数向けに何か1冊というのならば、そのうち何分の1かの人が共感してくれるかもしれないから少しだけ安心だ。
小学校中高学年以上のお子さん向けに本を薦めるときには、アバウトで情けないのだけれど「岩波少年文庫を読んでおけばいいんじゃないですか」と言うことにしている。比較的安価だし、中規模の児童書売場がある書店なら置いていることが多い。図書館なら基本図書的な扱いだと思うから…。
少年文庫にもいろいろあるが、物語、ファンタジー系が好きな女の子ならば、この『ムギと王さま』が出てくることになる。大がかりなファンタジーではなく、現代の小さなおとぎ話集といった感じだから好き好きもあろうけれど…。活発でドライなタイプでも、女の子というのは案外この本に響くような「かけら」をどこかに持ち合わせているんじゃないかという願いを持って…。
何がおとぎ話的かというと、どこかの国や村や島が物語の舞台として設定されて、王様や小さな王女様、召使や貧しい少年少女、妖精、小人などが出てくる幻想豊かな内容だからである。
ヴィクトリア朝期に生まれ、正規の学校教育を受けず、芸術的な雰囲気の家庭で育ったという作家が、本に囲まれた部屋の片すみで、時おり午後の光が窓から射す様子を眺めながら、読んだり空想をふくらましていた。いかにも、そこから起ち上がってきた物語なのである。
自分の内に入りながらものを考えるとき、奇跡による救いを信じる気持ちが強くなっていくことはないだろうか。ある程度の年齢に達すれば、いかに敬虔な宗教の信者であろうとも「奇跡」というものは、起こらないから奇跡と呼ばれているのだということを察している。現実に起こるのは、奇跡と修飾されるものでしかないということに何とはなしに気づいている。
それでも奇跡を望む前向きな気持ちこそが事態を好転させていくから、人はときどき「奇跡のような話」がほしくなるのだと思っている。
村の畑のムギの穂と、どちらが長く金色に光りつづけることができるかを競ったエジプトの王の話が表題作「ムギと王さま」である。
昔すべての魚が海にすんでいたころ、何不足なく暮らしていた金魚が、世界のふしぎを見たいがために金魚鉢にすむようになったいきさつを描いた「金魚」、貧しい島を来訪してくれた女王を歓迎するあまり、島でたったひとつの美しいものである白いバラの木を使って水たまりをふさいだ少女が見た「貧しい島の奇跡」、若い王様が北と南と東への嫁取りのハードな旅の末、求め探していた妻を見つける「西ノ森」などが私は好きだ。
奇跡と言えば、石井桃子さんの訳も正しくそれである。
電子書籍ムギと王さま
2023/01/01 20:08
シンプルな物語にも深いメッセージが
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
相反するふたりがお互いを受け入れ理解を深めていく、「巨人と小人」が秀作です。著者の代表長編でもある「町かどのジム」の、老人と少年の友情を思い出してしました。
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