政治の教室 みんなのレビュー
- 橋爪大三郎 (著)
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紙の本政治の教室
2004/07/10 12:22
決断が現実を作り出すプロセス
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投稿者:aguni - この投稿者のレビュー一覧を見る
選挙のたびに共産党や社民党など、小さな(失礼)政党が街頭で声をはりあげ、一方、民主とか自民とかの政治家はTVでよくみかけるようになる。で、なんとなく選挙に行く。で、投票会場に行ってみればそのとき、誰に入れようかと悩む。そもそも現職が誰だったかも知らないことに気づく。生活の中で、身近な政治とか政治家とかの存在があまりにも希薄すぎて、いまいち、政治という世界がわからない。
考えてみれば、学校の公民の授業は「政治」について教えてくれなかった。ロジックは、憲法に定められているから、こうなっています、だった。人間社会の発展の中で、どうして今のような制度になっているのか、縦割りの科目制度の枠内では、そこまでは教えてくれなかったような気がする。…もっとも、私はあんまり優秀な生徒ではなかったから、聞いていなかっただけかもしれないが。
というわけで、選挙も近いということで何かわかりやすい本はないかと思って本屋をうろついていたら、この本にであった。タイトルがずばり、政治の教室。教室というからには先生が必要。橋爪大三郎先生である。あの名著『はじめての構造主義』で難解な構造主義をわかりやすく教えてくれた先生だけに、政治もわかりやすく読み解いてくれるものと思い、手に取った。
たしかに読みやすくわかりやすい。この本は、「原理編」「現実編」「改革編」の3章構成になっている。つまりは「過去」「現在」「未来」というわけだ。まず先生は、政治を「ある範囲の人びと全員を拘束してしまうようなことがらを決めること」(P27)と定義している。そして、決断することで現実を作り出すのが政治の原則だという。で、さらには歴史的な政治体制の変化や推移の中で、民主主義がなぜ今、広く適用されているのかを説明してくれる。簡単に言えば、その決定に対して「みんなで決める」以上の正当性を持つ制度はない、ということ。そしてその原則を規定した上で、今の日本の現状と問題点、最後に改革案を示してくれる。
印象的な結論は、草の根民主主義を作ろう、というもの。「自分のことを自分で決めることができ、それが実感できれば、必ず政治は面白くなる。」(P210)ということである。なるほど。最近でこそ自治体もメルマガを発行したりして、ちょっとはマシになってはいるが、しかし現実には身の回りにまだまだ政治情報が足りない。この本、まずは政治家に読んでもらって、勉強してもらいたい気がしなくもないが、しかし、やはり問題の根っこは、政治家に政治を任せようとする(くせに文句を言う)私のような有権者の側にも問題があるようだ。今の政治に不満があるなら自分も政策を考え、政党に参加し、グループを作ろう、と先生はおっしゃる。…こうなったら「日本愛書党」とか作りますかね?
いずれにせよ、基本を抑えつつも刺激的な一冊。サッカーでしかニッポンに関心が持てない人でも、書棚にあって損はない。
紙の本政治の教室
2001/11/25 22:29
似非民主主義者はこの真摯な姿勢を見習うべし
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:谷池真太 - この投稿者のレビュー一覧を見る
現在の日本で最も優秀で優良な民主主義者である橋爪大三郎。政治とは、民主主義とは何か丁寧に説明し、我々一般人がちゃんと政治に関心を持つことを薦めた本である。
世の中、うわべだけの反民主主義論を展開し、現実から韜晦するだけのバカか、選挙で投票に行くのが(そして野党に票を投じるのが)絶対の正義だと信じ込んでいるバカばっかである。
本書では政党とは、選挙とは何なのか、わかりやすく書いてある。政治とは「選択」によって「現実」を想像するものなのである。そこでは70%は黒で30%は白ということはあり得ない。このような場合は最適効用が得られる黒を選択し、残りの30%も黒を選ばなければならないのだ。これが、現実を作り出す、「政治」というものなのだ。「少数派の尊重」という美辞麗句に包まれた中・大選挙区制や比例代表制だが、その危うさがわかるであろう。少数をすべて生かしておいては「政治」にならないのである。
終章では我々一般人が参加する「草の根民主主義」を提案している。読者の中にはこういった提案を笑うものもいよう。だが、本当の意味での民主主義を日本に根付かせるためには、これは絶対に必要な作業なのだ。そして、陳腐で凡庸で過酷で抑圧的な民主主義は、人類が生み出した最高の政治制度なのである
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