魅惑のヒロイン像が３年振りでも冴える新作

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投稿者：ＤＳＫ　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

個人的に名作認定している『甘い夜－夏の個人教授』（フランス書院文庫）から約３年……あの常盤準が帰ってきた！とお喜び申し上げる。前作で見られた魅力に溢れるヒロイン達や扇情的な誘惑描写を時を経てもなお再び味わえるのかと期待した。そして、その期待は全く以て裏切られることはなかった。魅惑の小悪魔である人妻歯科医の存在感が冴え渡るタイトル通りの作品だった。嬉しい僥倖には感謝あるのみである。

歯科医とは同級生でもあった主人公には可愛らしい妻がいるので基本はダブル不倫となる本作だが、背徳の憂いを湛えながらもセックスレスの解消として肯定的に捉えている面が（とりわけ歯科医側に）あり、かと言って単なるセックスフレンドでもない、愛情というか情愛というか、何とも言えない想いが歯科医からは向けられている。「本当に好きだったのはアナタなのよ」とでも言いたげな振る舞いは愛くるしくもあり、この歯科医の１人ヒロインでも良かったくらいとも感じたが、サブヒロインであるアシスタントのナースも含めて本作はさらに奥深いのである。

謙虚で奥ゆかしい妻が一度火が点くと淫らに豹変する夫婦の営みを序盤に配して布石とし、これが終盤で妙味のある展開に繋がっている。ナースもそうなのだが、サブヒロン達には単なる情交要員ではない役割がきちんと与えてられている。百合成分も加えた官能クライマックスには好みが分かれるところもあるが、趣向を凝らした交わりが淫猥に描かれており興奮度は高い。そして、これだけ爛れた関係でありながら最後にはセックスレスだった夫婦に望ましい結末を迎えさせているのはさすがである。

さらには、そのような良好な読後感を残しながらも最後の最後まで中心にいるのは歯科医であったことが改めて示されては、その小悪魔っぷりに脱帽するしかない。惜しむらくは、作中ではポニーテールでいることが大半だった歯科医が表紙カバーイラストにおいても同調していればと多少思うことか。