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エブリシング・イズ・イルミネイテッド みんなのレビュー

  • ジョナサン・サフラン・フォア (著), 近藤隆文 (訳)
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みんなのレビュー1件

みんなの評価2.9

評価内訳

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紙の本

作家と等身大のユダヤ系米国人がウクライナへルーツ探しの旅に出る。ガーディアン新人賞受賞でベストセラーとなった語りのユニークな話題作だが、違和感について物申したく…。

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 お正月バラエティ番組の一場面。日本語の下手な外国人青年が自作ラップで日本人女性に求愛していた。お安い言葉の羅列なもんで失笑を禁じ得ない。そういう笑いを誘うのが番組の意図だよと思って自分をかばいつつ見ていたら、歌が終わった。すると女の子が「バカでごめんなさい」と謝りつつ、半泣きで嬉しそうに「バカねぇ」と言いながらボーイフレンドの肩を抱いていた。なかなかいいじゃない。
 本作には、この女の子のようにしっくり物事を収める支えがなかったなと感じた。悪い小説ではない。むしろ面白くて工夫いっぱい。構成が凝っている出来の良い小説。けれども、違和感が残った。こういうノリでいいわけ?…というような。

 表紙から既に主張しているが、ユダヤ人の小説だ。ユダヤの歴史には20世紀に決定的な悲劇があって、それは「人類最大の」と冠がついてもおかしくない。多くの作家たちがいかに鎮魂を行うか腐心してきた。20世紀後半のユダヤ人文学は、鎮魂のために存在したと言っても過言ではないだろう。悲劇の前は「エブリシング・イズ・イルミネイテッド」——すべては輝きの中に…という追憶の物語だと解釈したのは私が悪いのか。でも、この装丁じゃあ仕方ないと再びかばいたくもなる。

 ジョナサン・サフラン・フォアはブルックリン在住のユダヤ人で、1999年に自分の一族の出身地であるウクライナを訪ねている。移民のルーツ探しの旅というわけだが、恩人を捜す大きな目的もあった。その女性は、ナチス・ドイツの手から祖父を守ってくれた。結果的に捜し出すことは叶わなかったが、旅の経験を元にして編まれたのが、この小説だということである。
 珍妙な独白から書き起こされている。言葉遣いや言い回しのおかしい、下手な作文のような文章。それもそのはず、作中の主人公ジョナサン・サフラン・フォアの通訳をすることになったウクライナ青年アレクサンドルが話す英語という設定なのだ。原書を読めば英語がいかにハチャメチャなのか、そのひどさが察せられる邦訳になっている。翻訳の労苦やセンスに大いに感謝しながら読む。

 本文は、おおまかに、ジョナサンとアレクサンドルが交わす手紙の内容が軸になっている。2人は旅の後にも交流を保ち、ジョナサンが1章ずつ書き進める小説を順次ウクライナに送っている。それに対しアレクサンドルから返事が来る。交互にという構成ではなく、別のテキストも挟まれる。それらがよじられることで2人の道中の展開、ジョナサン一族のトラキムブロドにおける歩み、その村に根を下ろすまでの経緯、さらに、アレクサンドル一家の出自などが明らかにされていく。正確に言うと、決してすっきり明らかにならない枠構造が浮かび上がってくる。
 そういう重層的な仕組みにより、2人が旅を思い起こして手紙をやりとりする現在、旅の出来事、過去のいくつかの時代などが入れ替わり立ち代り往還する。ややこしいが、とぼけた語り口や挿話の面白さですいすい読んでいける。
 しかし、村におけるナチスの暴挙がそこに挿入されるに至り、どうしようもない違和感に襲われた。ラップで愛を説くな、悲劇を語るなとは言わない。スタイルは自由で個性的であってよい。けれども、技巧を重んじるあまり、複数の悲劇が単なる挿話としてラップの歌詞のようにして押し流されてしまった感じが残る。鎮魂に真摯に取り組まなくても良いのか、語り口を生かすにはもっとふさわしい材料はないのか。あの女の子のように、フォローできる言葉を持てずに読み終えてしまったのが何とも残念である。

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