「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? みんなのレビュー
- 安西洋之 (著), 中林鉄太郎 (著)
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紙の本「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力
2011/11/30 11:39
日本製品とサービスを海外市場で販売する人のため「ものの見方」と「考え方」を身につける
12人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サトケン - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、とくにメイド・イン・ジャパンの製品やサービスを海外市場向けに販売する際に考えておくべきことを、デザインという観点から豊富な事例をつうじて、多面的かつ複合的に見るための視点を提供するビジネス書である。
タイトルの『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか』に端的に表現されているように、日本製品やサービスの海外普及は、その進出先のローカル市場の声に虚心坦懐に従うと、一人歩きを始めるようになることがある。
これは、浮世絵やカラオケやアニメがとくにプロモーションをしたわけでもないのに海外に拡がっていったプロセスとよく似ているが、お金を払って好きで購入するのが現地の人たちである以上、当然といえば当然だ。
だが、なぜそうなのかを考えることが、このプロセスを意識的に行うためには不可欠である。そのためには勘に頼るのではなく、現地の顧客のアタマのなかを論理的にとらえることが大事だと著者は説く。
第2章の「世界で売れる8つの日本製品」で扱われた事例は、マルちゃんのカップ麺のほか、キッコーマンの醤油、パナソニックの欧州白物家電、洗浄機能のついたTOTOの便器、ソニー・エリクソンの携帯電話といった製品だけでなく、KUMON(公文式)教室、ヴェルサイユ宮殿で開催された村上隆のアート、フランス料理のシェフとサービスにも及んでいる。著者の一人がイタリアのミラノ在住だけあって、欧州市場での事例が多く取り上げられている。
第3章の「現地化のチェックポイント」では、ローカリゼーション(=現地化)のために必要な「ものの見方」について具体低的なアドバイスが紹介されている。現地の人々のアタマのなかにある日常生活で働くロジックを知るには、製品やサービスをめぐる現地市場のコンテクスト(=文脈)を理解し、現地の歴史・地理・言語に対する関心をもち、ディテールにこだわりつつ俯瞰的(=バーズアイ)にも見るなど、異なる視点の使い分けや組み合わせ、二者比較だけでなく三点測量を行うべきなどの「ものの見方」を身につけるべきである、と。
本書は、「日経ビジネスオンライン」に連載された記事に、現地市場における日常生活のロジックを把握するツールである「ローカリゼーションマップ」の解説を記した第4章を書き下ろしで加えたものだが、もともとは、『デザインの異文化対応力』というタイトルを考えていたのだという。本書の内容はこのタイトルでほぼすべて表現しつくされているといっていいだろう。製品でもサービスでも、共通して考慮に入れておかなければならないのは、海外現地市場でローカライズするための異文化理解だからだ。
日本の国内市場が縮小していくなか、市場を世界に求めて企業活動がグローバル化していくのは不可避の流れである。現地の人々のアタマのなかを知るにはどうしたらいいかという課題をもっているのは、商品品開発やデザイン関係者だけではない。この課題をもつビジネスパーソンにはぜひ薦めたい一冊である。
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